2017/07 ≪  2017/08 12345678910111213141516171819202122232425262728293031  ≫ 2017/09
「部外職場暴力」 に早急な対策を
2017/07/14(Fri)
 7月14日 (金)

 厚労省で5月19日から 「職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会」 が開催されています。
 開催趣旨です。
 「近年、都道府県労働局において、職場における 『いじめ・嫌がらせ』 の相談件数が増加しているなど、職場のパワーハラスメントが大きな問題となっており、働く方々が健康で意欲を持って働くためには、労働時間管理 やメンタルヘルス対策だけではなく、職場のパワーハラスメントを防止する必要がある。こうした中で、働き方改革実行計画 (平成29年3月28日働き方改革実現会議決定) において、『職場のパワーハラスメント防止を強化するため、政府は労使関係者を交えた場で対策の検討を行う。』 こととされた。これを受け、有識者と労使関係者からなる検討会を開催し、実効性の ある職場のパワーハラスメント防止対策について、検討を行う。」
 検討事項です。
「(1) 職場のパワーハラスメントの実態や課題の把握
 (2) 職場のパワーハラスメント防止を強化するための方策
 (3) その他」
 第1回検討会は委員全員が意見を述べました。そのなから特徴的意見を紹介します。
 連合東京副事務局長内村委員です。
「この検討会の中では、基本的には防止をしていこうということが大きなテーマだと思いますが、たくさんの事例がやはりあります。先ほどから出ている中身にもありますが、最近では特に多くなってきているのは評価です。要するに、人事評価などできちんとした評価がされない、これもいわゆるパワハラではないかというようなことも含めてです。何かちょっとしたことがきっかけで、上司の考えていることと違うことを発言したことがきっかけで、いきなり対応が変わるというケースなど、いろいろなケースがありますので、その現場の声というか、働いている労働者の声を、労働者の代表として、これからこの検討会の中で発言をしていけたらいいなと思っております。」

 7月4日の 「活動報告」 で触れましたが、労働政策研究・研修機構は2011年度に全国の都道府県労働局にあっせん申請がおこなわれた 「いじめ・嫌がらせ」 の事案284件を調査して2015年6月に報告書 「職場のいじめ・嫌がらせ、パワーハラスメントの実態 -個別労働紛争解決制度における2011年度のあっせん事案を対象に-」 を発表しました。
 そのなかに、厚生労働省はパワハラの概念規定・定義を行い 「職場のパワーハラスメントの行為類型」 を6類型の示しましたがそれらには含まれない 「経済的な攻撃」 の類型を挙げています。
 最近、人事評価において規定・規則に則さないで、指導・教育という名目で労働者のプライドを傷つけて退職強要に追いやる手法が横行していいます。まさしく 「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいう」 職場のパワーハラスメントそのものです。

 UAゼンセン日本介護クラフトユニオンの浜田委員です。
「介護の現場の、ヘルパーさんであるとかケアマネさんの労働組合です。……
 また、概念とか定義からすると少し外れてはしまうのですが、現場ではパワハラだろうがセクハラだろうが、嫌なこと、困ったことなどいろいろな相談がくるのですが、その中には実は、特に流通とか介護の現場では多いのですが、顧客であるとか、利用者家族からのハラスメントも実は無視できない状態です。例えば、しばらく前に有名になりました、土下座をさせられるであるとか、大声で長時間叱責されることもあったり、介護現場では、家族の方からの叱責があったりであるとか、いろいろな問題があるのです。実は、相談を受ける側としては、やはり労働者を守るという意味では無視できない実態が実はあるのだということです。この一定程度進まないという部分を、これまでの取組の延長線上で現状を変えられるかということを考えますと、一定程度存在するパワハラ防止対策が進まない企業を、もう少しこの検討会では、今後の法整備に向けた、これまでよりもステップアップした対応についての議論が必要ではないかと考えております。」

 第2回検討会に資料として公益財団法人介護労働安定センター作成の 「介護労働者が過去1年間に受けた利用者からのセクハラ・暴力等の経験」 が提出されました。訪問系8.332人、施設系 (入所型) 4.888人、施設系 (通所型) 6.525人への調査結果です。
 それによると、暴言 (直接的な言葉の暴力) は、訪問系21.0%、施設系 (入所型) 39.8%、施設系 (通所型) 22.3%、利用者から介護保険以外のサービスを求められたは、訪問系27.5%、施設系 (入所型) 5.2%、施設系 (通所型) 12.3%、暴力は訪問系5.6%、施設系 (入所型) 32.1%、施設系 (通所型) 12.5%、セクハラ (性的嫌がらせ) は、訪問系8.0%、施設系 (入所型) 9.0%、施設系 (通所型) 10.8%、家族から介護保険以外のサービスを求められたは、訪問系14.5%、施設系 (入所型) 3.9%、施設系 (通所型) 6.2%が経験しています。
 労働者の安全が脅かされた、放置できない深刻な問題が存在します。


 利用者からのセクハラ・暴力等のようないわゆる 「部外職場暴力」 ・第三者からの暴力については、実は、11年7月8日から開始された 「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議」 の第1回においても問題提起がおこなわれました。
 ブールミッシュ代表取締役社長の吉田委員の発言です。
「……これらとはまた別に、私どもが今、一番悩んでいるのは、お客様による私どものスタッフへのいじめ・嫌がらせと言いましょうか、これは新しい切り口だと思います。日々、いろいろな方に接しておりますと、言葉は悪いですが、やや粗暴な方などがいらっしゃるんですね。でも、そういった方たちは割と扱いやすいと言ったら語弊がありますが、ガス抜きすると大体終わります。
 一番困ってしまうのは、……おばちゃま、……これも嫌がらせと言うか、パワハラと言いましょうか、物事を上から目線で見たときに必ず起きますね。私は客よ。何、今の言葉遣いは。お宅様のお嬢様はいかがでしょうと聞きたくなる場合もあるんですけれども、そんなことを言ったらえらいことになってしまいますから、これも本当に大変な問題です。」

 しかし2012年3月15日に発表された 「職場のパワーハラスメントの予防・解決に向けた提言」 (「提言」) ではとりあげられていませんでした。

  「部外職場暴力」 ・第三者からの暴力についてはILOなどでは 「職場の暴力」 (Violence at work) として、韓国では 「感情労働」 としてかなり前から議論が積み重ねられています。
 2010年9月30日欧州社会対話は 「労働に関連した第三者暴力及びハラスメントに対処するための他部門ガイドライン」 を締結しました。そのなかで第三者暴力の形態を示しています。
「4.労働関連第三者暴力及びハラスメントは、多くの形態をもつ場合がある。それには以下である可能性がある。
 a) 身体的、精神的、口頭によるもの及び/または性的なものである。
 b) 個人または集団による一度限りの事象またはより系統的なふるまいのパターンである。
 c) 依頼人、顧客、患者、サービス利用者、生徒または親、一般の人、またはサービス提供者の行動
  またはたちふるまいから生じる。
 d) 失礼な事例から、より深刻な脅迫や身体的襲撃にまで及ぶ。
 e) メンタルヘルス問題から、および/または、感情的理由、個人的好き嫌い、性差、人種/民族、
  宗教や信念、障害、年齢、性的思考または身体のイメージにもとづく偏見に動機づけられて生じる。
 f) 組織されたまたは機械的なものかもしれず、または公的機関による介入を必要とするかもしれない
  労働者及び彼・彼女の評判または労働者や顧客の財産を狙った刑事犯罪を構成する。
 g) 被害者の個性、尊厳及び人格に深い影響を与える。
 h) 職場、公共の場所または私的な環境で起こり、かつ、労働に関連している。
 i) 幅広い情報及びコミュニケーション技術を通じたサイバーいじめ/サイバーハラスメントとして。
  起こる。」 (全国労働安全衛生センター発行 『安全センター情報』 2012年4月号)

 日本でも、サービス部門だけでなく災鉄道部門、医療関連部門そして行政機関の窓口で事件が発生しています。しかし対策は遅れています。
 では、実際に 「部外職場暴力」 に直面した時、労働者や周囲の者はどう対応したらいいでしょうか。
 対策は、ILOや韓国のサービス連盟が具体的に提案していますが、労働者・消費者・政府・企業それぞれの役割があります。クレームや攻撃は起こることを前提に対策を取る必要があります。
 まず企業・使用者は、トップから労働者を守る姿勢をはっきり示す必要があります。最終的責任はトップが負うというアピールが必要です。そのうえでトラブルが発生した時のサポーター体制を確立しておくことが必要です。ましてやそこでのトラブルを評価の対象にしないことが必要です。そうすると労働者は安心して対応できます。これは厚生労働省の 「職場のパワーハラスメントの予防・解決に向けた提言」 (「提言」) と同じです。
 しつこいクレーマー等にははっきりと 「業務妨害」、「暴力」 であると提示し、企業・使用者は労働者に、顧客との対応を拒否する決定権限を与えることが必要です。
 韓国で 「感情労働者に不当要求拒絶、謝らない権利を付与せよ」 を遂行することの一番の効果は、労働者の尊厳を守り、心身の安全を守り、労働環境が改善されることです。
 クレーマーは一歩譲歩すると二歩付け込んできます。クレーマーの顧客が減っても企業の売上高は大きく減少しません。むしろクレーマーに対応している時間はチャンスロスが発生しています。

 そのうえで労働者は、心構えが必要です。
 ・自分に向けられたものだとは思い過ぎない。
 ・相手の社会に対する不満がたまたま自分に向けられていると理解する。
 ・相手の感情に巻き込まれない。弁解しない。その方が早く終了する。
 ・後で誰かにその時の状況を、感情を含めて話して聞いてもらう。
 ・終了したら休息をとる。
 ・体験を共有化する。

 職場のトラブルが治まったからといって解決したということではありません。対応した職員へのいわれのない攻撃、正義感、価値観、自尊心への攻撃は放置したら傷は癒えません。労働者としての誇り、労働の誇り、喜びを奪われます。身体的打撃を受けた場合はトラウマに襲われて労働が恐怖になることもあります。有能な労働者を失うことになります。
 職場や上司は安全を確保された1人きりになれる空間で、十分な時間を確保して心の整理をするための休養を保障する必要があります。
 人格の回復のための心のケア、同僚等の支援が必要です。労働者の言い分を聞き直し、恐怖心を吐露させ、対応の正当性を共有しあって回復に向かわせる必要があります。
 そして職場として発生した問題をとらえ返した整理し、今後の対策を確認します。


 「部外職場暴力」 の実態は早急に対策が必要な状況になっています。
 現在開催されている 「職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会」 では、この問題についても踏み込んだ議論を行なってほしいと思います。

  当センター「いじめメンタルヘルス労働者支援センター」ホームページ・ご相談はこちらから 
この記事のURL | いじめ・差別 | ▲ top
治安維持管理を補強した “隣組”
2017/07/11(Tue)
 7月11日 (火)

 6月15日に強行採決された 「共謀罪」 は7月11日に施行されました。
 13年12月に成立した特定秘密保護法、15年7月に成立した安保関連法と 「共謀罪」 は一体のものです。軍事体制に合わせて治安維持管理体制が強化され、監視社会は事前に 「心の中まで監視され」 ることが合法化されます。事前とは日常的にということです。法律の成立だけで人びとは恐怖感と不安感に襲われます。これもこの法律の1つの目的です。
 「共謀罪」 は戦前・戦中の治安維持法に似ているという指摘があります。治安維持法は1925年に成立しますがすぐには行使されませんでした。今回もそうなのでしょう。
 権力の治安維持は法律で上から押さえつけるだけでは完成しません。横から、お互いの監視をさそい、猜疑心をいだかせることで相乗効果が生まれます。今、政府は監視社会を強め、まさしく 「国家と、社会と、個人のあいだの関係を変える」 ことで “強い国家” を作り上げることを狙っています。


 戦前・戦中に人びとを監視させたのが “隣組” で、工場においては産業報国連盟でした。
 明治政府は中央集権国家を目指しますが、支配権力は市町村の末端までは貫徹しませんでした。そのため部落会や町内会組織を利用しようとしますが、そこでは古くからのボスが支配している状況やその地方がもつ独特の問題がありました。徴兵令を成功させるためには 「郷土〇〇隊(団)」 などを組織しますがそれだけでは不十分でした。

 第二次世界大戦において、日本は当初から資源や食糧が不足していました。その確保を中国と東南アジアに求めていくなかで泥沼に陥っていきます。戦争を継続していくには人びとの動員を可能にするあらたな組織が必要となります。
 2014年11月26日の 「活動報告」 の再録です。
「中国との戦争の初期の段階で、中央政府の官吏は、やがて資源が不足して配給制度が必要となるであろうという見通しをもちました。だがその配給制度は、これまで日本では試みられたことがないので、突然に設立するというわけにはいきません。そのためには何らかの教育機関が必要で、それらを通して市民が、配給に馴染んでいくということが望ましいと考えられました。」 (鶴見俊輔著 『戦時期に本の精神史 1931-1945年』 岩波書店)
 1938年、東京市役所の区政課長をしていた谷川昇は、徳川時代の近所付き合いの5人組を復活させて、隣組という新しい名前を与えることを思いつきます。東京市長はこの案を受け入れて、5月19日の東京市の布告に乗せました。
「このとき谷川課長は、徳川時代の5人組という制度だけからではなく、幕末の二宮尊徳の構想した近所の互助組織からも示唆を得ています。ただし、この自発的な相互互助という側面は、谷川課長の意図にはあったとしても、1938年から1947年にかけての隣組制度の歴史においては、実現されませんでした。1947年までというのは、この制度が、占領時代の政府の指令によって廃止されたからです。
 隣組は、政府によって定められた政策を民衆生活のところまで下げていくというための道具として用いられました。……この組織は、すぐに中央政府高等官僚と陸軍軍人に乗っ取られて、これらの役人と軍人が市民の日常生活を細部に至るまで監督しそれに干渉する機関となりました。」 (『戦時期に本の精神史 1931-1945年』)

 隣組についての具体的なことについて、秋元律郎著 『太平洋戦争下の都市生活 戦争と民衆』 からみてみます。
 例えば東京の下町と山の手では住民の近所づきあいは違っていました。特に山の手では交隣共同といった習慣があったわけではありません。
 1940年の内務省訓令で、部落会および町内会が 「市町村ノ補助的下部組織トスルコト」 とされ、さらに大政翼賛会が翼賛運動を徹底させるために、活用しようとします。それは地方制度としての部落会・町内会を、市制あるいは町村制のもとにおくというのではなく、内務省が訓令をもって整備させ、指導・監督していくということです。さらに一歩進めて 「自然発生的隣保共助の精神を生かすような適正な立法」 がおこなわれます。つまりは、国家としての支配体制も変更されます。これが隣組です。
 しかし 「隣組は、こうした階層間にわだかまる人間関係のもつれを、陰湿な世界におしこめたまま、みせかけの平等化をおしすすめていったといえる。」 といいます。
 そのため、東京市市民局長などがかかわって 『隣組読本』 を作成して推進をはかります。
  『隣組読本』 です。
「事実、隣組は部落会などと違って、その困難さは大いにあるであろう、然しながら、他に私共の個人主義的な都会生活を再編して、国家の要求であるところの協同による新しい生活、国家目的に協力する奉仕の生活体制を作る方法があるかどうかというと、一寸見当たらないし、また考へつかない。結局この隣組が一番いいということになる。」

 隣組の組織化が強制されていきました。
「たんに臨保共助の美風の協調だけにあったのではない。この公権力を背景とした国民統合策とは、防空・防火・登録、配給、資源回収、国民貯蓄、衛生、消費規制、防諜等といった業務がともなっていたのである。……しかもそこに行政から注入されてくる業務が、個々人の行動の一挙手一投足や、生活の細部まで規制する力をもって、さまざまな領域で個人の生活を拘束してくる。当然、そこにはこれを仲介し、統括する政治的人間があらわれてくる。こうなれば問題は、もはや純粋な地域集団の生活や機能をこえたものとなる。」

 中央-府県-市町村-町内・部落-隣組の系統にしたがって常会という少なくとも月1回の定例集会を運営します。そして種の地域常会から、職能常会および職場常会というふうに広がっていきました。
「つまるところ常会は、時局認識と相互教化のための寄合いであり、上位下達の貫徹をはかるために仕組まれた装置にほかならなかった。だからこれを徹底化するためには、完全に常会を日常的な催しとしなければならなかったし、一貫した統制のもとにおいておく必要があった。
 タテマエはともかくとして、実際にはギスギスした人間関係を内にひめた隣組生活を軌道にのせ、これを活性化していくためには、どうしても日常的接触を量的にふやし、相互教化の場を制度化していく必要があった。これを疑似自発性によって粉飾したのが常会だったのである。」
 そして大政翼賛会の傘下におさめられ、1943年月に、従来の指導と運営とを再批判して 「戦ふ常会」 の強化に乗り出します。


 隣組は工場の中にも組織され浸透していきます。5月12日の 「活動報告」 の再録です。
 戦前の戦時体制への流れを、アンドルー・ゴートン著 『日本の200年 徳川時代から現代まで』 (みすず書房) からみてみます。
日本軍は中国大陸でのはげしい抵抗にあい、予定していた資源を獲得できなくなります。さらに多くの兵士にも多くの犠牲が出ました。
「近衛内閣は1941年に国家総動員法をもちいて、経済体制の総仕上げをおこなった。すなわち、重要産業団体令を公布することによって、統制会というシステムを導入した。重要産業団体令は、各産業ごとに 『統制会』 と呼ばれる巨大カルテルをつくる権限を商工省に付与するものだった。
 統制会は、それぞれの産業内で、原料と資本の分配を決定し、価格を設定し、各企業に生産シェアと市場シェアを割り当てる権限をもった。実際には、各統制会の理事に名を連ねたのは、財閥系企業の社長たちと官僚たちだった。国家と協力することによって大企業は、これらのカルテルと統制会の運営について大きな影響力をもちゃっかりと保持した。」

 政府は戦争に反対する潮流、とりわけ労働組合の抵抗をおそれました。そのためにさまざまな懐柔をすすめながら一方で徹底した弾圧を行ないます。
経済効率を高めて社会秩序を確立するにはトップダウンの動員にかぎる、と主張する者たちは、こうした経済面の改革と平行して労働新体制の整備も推進した。1930年代のなかば以降、内務官僚と警察官僚たちは、労働者側と経営者側の代表で構成する懇談会の設置を工場ごとに義務づけ、個々の懇談会を地域連合、さらに全国連合へとピラミッド方式で組み入れる、という構想を練っていた。
 1938年7月、内務省と厚生省は、産業報国連盟 (略称産報) という表向きは独立した自主的な労働組織だが、実態としては官製の労働組織を発足させた。残っていたごく少数の労働組合の大半は、すでに戦争を支持し、経営者に協力的な態度をとっていたが、これらの組合は産報とひっそりと共存した。多くの大企業は、1920年代に組合に代わるものとして発足させていた既存の職場懇談会の名称を変更して、単位産報組織へと再編した。……
 1940年、第二次近衛内閣は産報を再編し、政府直轄の大日本産業報国会を創設した。政府は、まだ存続していた500の組合 (組合員36万人) を解散させ、新たな産業組織に参加させたほか、全国のすべての向上に産報懇談会の設置を義務づけた。1942年には、工場レベルの産報組織は約8万7000人を数え、合計約600万人の労働者を擁するまでになった。
 産報運動の推進者たちは、産報の末端組織として工場ごとの懇談会が経営者と従業員の士気を高め、双方の連帯感を育むと同時に、アジアにおける 『聖戦』 のための生産拡大に寄与するものと期待していた。……
 しかしながら、産報が、ホワイトカラーとブルーカラーの従業員がともに加入する職場組織の先例を打ち立てた、ということは少なからぬ意味をもった。産報は、あらゆる従業員が国にとっても、企業にとっても重要なメンバーだとする見方に、公式に、しかも明確なかたちでお墨つきをあたえたのである。やがて戦後の労働組合運動は、この戦時中の先例を基礎として出発し、先例を転換しながら展開していくことになる。」

 産報は、労働者にとっては自分らも参加している組織です。そこでの処遇は、ホワイトカラーとブルーカラーは同じです。そして聖戦の勝利を訴えて我慢を強い、不満を 「貧しさの平等」 で解消していきます。

 実際の体制はどうだったでしょうか。
「全体としてみれば、国家の動員計画は、計画が掲げていた国家の 『改造』 というもっと野心的で、全体主義的とさえいえる目標には到達しなかった。限定されていたとはいえ、かなりの多元主義が存続しつづけた。経済体制も、産業報国連盟も、大政翼賛会も、日本の臣民を国家の全面的な支配下に置いたわけではなかった。しかし、社会を戦争に向けて動員し、その過程で社会を変革する、というこの運動が、国家と、社会と、個人のあいだの関係を変えたことは確かである。国会は周縁的な機関に成り下がった。」
 多くの人びとに犠牲を強いながら財閥の資本家はさらに大きな富を築いていました。


 では昨今の隣組は何でしょうか。
 安倍政権のなかで開始された 「マイナンバー制度」 には1人ひとりのあらゆる情報が集めて管理しようとするものです。「ストレスチェック制度」 は、個人の “こころの問題” をさらけ出させた健康状態を自分以外の誰かに管理されます。
 そして、携帯、インターネット、ツイッターでは出所不明の情報が流され続け、否が応でも目に入ってきます。その情報はすこしづつ浸透していきます。個人が管理できないところで情報が流出されています。時には自らも他者の情報を流出する行為に組したりします。届いた情報に返事をしないと仲間はずれにされるという思いから迎合する返事をします。攻撃のターゲットにされると見ず知らずの者からも人格否定をふくめて攻撃を受けます。かつての隣組以上です。
 携帯、インターネット、ツイッターは 「共謀罪」 などの反対の抗議集会への参加も呼びかけられ、運動の盛り上がりに役立っていますが、そもそもは軍の情報収集が目的で開発されたものであるということを忘れてはいけません。機種は自分のものであってもそこを通過する情報管理は他者がおこないます。使用に際しては自己管理をもっと徹底し、人権、個人保護が認識する必要があります。

 戦時中、厚生省が創設されたのは “強い兵士” と “強い産業戦士” を育てるためでした。
 産業報国連盟の体制から抜け出せないままで日本の戦後の労働運動は出発しました。
 安倍政権は、官製春闘を組織し、“働きかた改革” を推し進めています。しかしこれらは本当に労働者のためをおもってのことではありません。“働きかた改革” は生産性を向上させるのが本質的目的です。
 さらに労働組合を無力化し無用論を登場させようとしています。そして非正規労働者の不満を政府や社会からそらして労働組合と正規労働者に対峙させようとしています。
 労働組合団体はだらしなさすぎます。労働組合は、今一度、横の繋がりとは何かをとらえ直して追究しないと、完全に政府と会社から取り込まれ、産業報国会に再編されます。歴史が足元から繰り返されます。

   「活動報告」 2017.6.30
   「活動報告」 2017.5.12
   「活動報告」 2014.11.26
  当センター「いじめメンタルヘルス労働者支援センター」ホームページ・ご相談はこちらから
この記事のURL | 仲間・連帯・団結 | ▲ top
「自動車運転従事者」 は過労死予備軍
2017/07/07(Fri)
 7月7日 (金)

 7月5日、国土交通省は今年3~5月に労働組合を通じて実施した全国のバス運転手の勤務状況アンケート調査結果を発表しました。7.083人が回答しました。2016年1月15日に起きた軽井沢スキーバス事故の対策を検討する有識者委員会の要請を受けたものです。
 直近4週間の勤務状況を尋ねたところ、国は運転手の拘束時間について 「原則13時間以内」 などとする基準を定めていますが、1日当たりの平均拘束時間が 「13時間以上」 は19.1%でした。睡眠時間についての規定はありませんが、平均睡眠時間が 「5時間未満」 24.9%、「5~7時間」 63.7%、「7時間以上」 11.4%でした。その結果、約2割が1日13時間以上拘束され、4人に1人は睡眠が5時間未満という実態が明らかになりました。
 一方、1200のバス事業者を対象とした調査では、「運転手を仮眠させる施設の確保に苦労する」 「高齢化、運転手不足が課題」 という意見が多かったといいます。
 業種がおかれている状況は深刻です。


 6月30日、厚労省は2016年度 「過労死等の労災補償状況」 を公表しました。
 「脳・心臓疾患に関する事案の労災補償状況」 については、請求件数825件で支給決定件数は260件、そのうち死亡件数は107件です。
 請求件数は12年までは800件台半ばに至っていましたが、13年度からは700件台に減っていました。16年度はまた800件台になりました。
 支給決定件数は13年度まで300件台でしたが、14年度から200件台に減っています。認定率は、11年度43.2%、12年度45.6%、13年度44.8%、14年度43.5%でしたが、15年度は37.4%、16年度38.2%と急減しています。
 「審査請求事案の取消決定等による支給決定状況」、つまり一旦請求は認められなかったが不服を申し立てて支給決定になった事案が、16年度は16件ありました。この数字は 「脳・心臓疾患に関する事案の労災補償状況」 には含まれていません。合わせると16年度の支給決定認定件数は277件です。

 支給決定件数を職種別 (中分類) にみると 「自動車運転従事者」 が89件で断トツです。続いて 「法人・団体管理職員」 22件、「飲食物調理従事者」 14件、「商品販売従事者」 13件、「営業職業従事者」 10件の順です。「自動車運転従事者」 3分の1を占めます。
 年齢別では50~59歳が99件、40~49歳が90件、30~39歳が34件、60歳以上が33件です。
 労働時間数別の支給決定件数では、時間外労働時間が1か月又は2~6か月における1か月平均80時間以上が全体の94%、100時間以上では52%を占めます。160時間が17件です。

 しかし6月5日の労働政策審議会の時間外労働の上限規制についての建議は、現行の時間外限度基準告示の①自動車の運転の業務、②建設事業、③新技術、新商品等の研究開発の業務、④厚生労働省労働基準局長が指定する業務、についてはそのまま上限規制の適用除外を容認し、さらに医師を追認しました。
 上限規制の法改正がおこなわれた施行期日の5年後に、年960時間以内の規制を適用することとし、将来的には一般則の適用を目指す旨の規定を設けることが適当であるとしています。
 全国のバス運転手の勤務状況アンケート調査結果と 「過労死等の労災補償状況」 をみるとバス運転手は過労死等の予備軍です。放置することは許されません。抜本的改善が早急に必要です。


 「精神障害の労災補償状況」 については、請求件数1.586件で支給決定件数 (いわゆる労災認定) は498件、認定率は36.8%です。請求件数はこの間増え続けていて13年度から1.400件台、15年度に1.500件台に達しました。労災認定の基準は11年12月に 「判断指針」 から 「認定基準」 に改善されました。それにより12年度以降は申請件数、支給決定認定件数が増えました。申請件数が15年度と比べて16年度に71件増えている背景としては過労死防止法案をはじめとして労災問題にたいする社会の関心が強まったことが影響していると思われます。
 支給決定認定率はこの間30%後半で大きな変化はありません。
 「審査請求事案の取消決定等による支給決定状況」 は16年度は13件ありました。13年度12年、14年21件、15年21件でした。これらの数字は 「精神障害の労災補償状況」 には含まれていません。合わせると16年度の支給決定認定件数は511件です。そのうち自殺者 (未遂を含む) は91件です (84+7)。

 支給決定件数を職種別でみると、専門的・技術的職業従事者115件 (前年度114件1位)、事務従事者81件 (93件2位)、サービス職業従事者64件 (53件3位)、販売従事者63件 (48件4位)、生産工程従事者52件 (36件6位)、輸送・機械運転従事者32件 (37件5位) の順になっています。
 職種の中分類別では、一般事務従事者47件、営業職業従事者37件、法人・団体管理職員29件、自動車運転従事者26件、商品販売従事者25件の順です。

 発表された資料から細かいことはわかりませんが、政府はいま、高度な能力を持つ人に労働時間でなく、仕事の成果に応じて賃金を決める働き方を認める 「高度プロフェッショナル制度」 の導入をおこなおうとしています。
 専門的・技術的職業従事者など 「専門的・・・」 の職種の労働者は 「高度プロフェッショナル制度」 の対象者ではないでしょうか。だとしたらやはり時間外労働を野放しにすることは危険です。

 年齢別では、40~49歳144件、30~39歳136件、20~29歳107件、60歳以上20件です。
 支給決定件数を、時間外労働時間が1か月又は2~6か月における1か月平均の20時間刻みの労働時間数区分でみると、100時間以上が120時間未満49件、120時間以上140時間未満38件、140時間以上160時間未満19件、160時間以上52時間となっています。この状況はあまり変化がありません。一方、20時間未満が84件、40時間未満43件、60時間未満41時間です。体調不良におちいる原因は労働時間だけでないことを物語っています。

 「出来事の類型」 では、出来事の類型の 「事故や災害の体験」 では 「(重度の) 病気やケガをした」 が42件、「悲惨な事故や災害の体験、目撃をした」 53件です。「仕事の量・質」 では 「仕事内容・仕事量の (大きな) 変化を生じさせる出来事があった」 63件、「2週間以上にわたって連続勤務を行った」 47件、「役割・地位の変化等」として「配置転換があった」 14件、「対人関係」 として 「ひどい嫌がらせ、いじめ又は暴行をうけた」 74件、「上司とのトラブルがあった」 24件、「セクシャルハラスメント」 として 「セクシャルハラスメントを受けた」 29件などとなっています。
 「配置転換があった」 は、リストラ部屋などが含まれるのでしょうか。

 支給決定件数・率が都道府県によって大きなばらつきがあります。問題があると思われる府県の請求件数、決定件数、支給決定件数について、12年度、13年度、14年度、15年度、16年度の流れを見てみます。カッコは支給決定率です。
 埼玉県 43件-42件-50件-50件-48件   45件-34件-49件-36件-39件
      6件 (13.3%)- 8件 (23.5%)-22件 (44.9%)-11件 (30.5%)-16件 (41%)
 千葉県 46件-43件-46件-48件-48件   41件-47件-39件-48件-39件
      9件 (21.2%)-13件 (27.7%)-19件 (48.7%)-17件 (35.4%)-12件 (40%)
 愛知県 67件-57件-61件-67件-98件   83件-51件-51件-52件-81件
      19件 (22.9%)-10件 (19.6%)-17件 (33.3%)-10件 (19.2%)-27件 (33.3%)
 三重県 16件-12件-22件-19件-21件   14件-13件-12件-21件-23件
      0件 ( 0.0%)- 2件 (15.3%)- 6件 (50.0%)-6件 (28.6%)-9件 (39%)
 熊本県 15件-10-件18件-14件-22件   16件- 8件-13件-10件-17件
      3件 (18.7%)- 2件 (25.0%)- 4件 (30.8%)-3件 (30%)-6件 (35.3%)
 これらの県は、まだまだ総就業者と比べて今も申請件数が少ないです。労働者が期待していません。


 今回初めて裁量労働制対象者に係る支給決定件数が6年分発表されました。
 「脳・心臓疾患に関する事案の労災補償状況」 は、11年度専門業務型1件、企画業務型0件、12年度は4件と0件、13年度は5件と0件、14年度は7件と1件、15年は3件と0件、16件度は1件と0件です。
 「精神障害の労災補償状況」 は、11年度専門業務型2件、企画業務型0件、12年度は11件と0件、13年度は10件と0件、14年度は6件と1件、15年は7件と1件、16件度は1件と0件です。
 裁量労働は労働者の都合にあわせて業務遂行できる、早期に終了した時は自由に時間を使えるなどをうたい文句に導入されましたが、特に専門業務型は逆な状況になっていることが明らかにされました。
 働きかた改革においても議題になっていますが安易な導入・促進派危険です。


 「過労死等の労災補償状況」 と 「精神障害の労災補償状況」 を合わせて750人以上が労災に認定され、しかも200人近くが死亡・自殺 (未遂) している状況が続いている国は他にあるでしょうか。しかも経済的問題、時間の問題で申請に至らなかったり、別の対応で解決している事案もたくさんあります。また認定基準が厳しすぎるから認定率が低いことをしってあきらめる人も多くいます。
 労働者の命の価値が低く取り扱われています。しかし政府も使用者も労働者もこれらの数字に慣らされています。
 労災の申請数が増えることは歓迎されることではありません。
  “働き方” “働かせ方” “働かされ方” について労働者の側から根本的問い直しが必要です。


 6月1日の河北新報は 「宮城の労災死傷者2467人 3年ぶり増加」 の見出し記事を載せました。
 宮城労働局がまとめた2016年の労災発生状況によると、県内の死傷者数 (休業4日以上) は前年比185人増の2467人となり、3年ぶりに増加した。東日本大震災の復興事業で作業員が足りず、現場監督や安全教育が不十分になっているためとみられている。
 業種別の死傷者数は、製造業が前年比53人増の474人、建設業は60人増の432人だった。全体の死者数は6人減の16人で統計を始めた1998年以来、最少となったが、そのうち建設業が5人、製造業が4人と半数以上を占める。
 16年は、高台移転などの土地造成が終わった地域で、建物やインフラの建設が進み、資材の製造も多くなった。作業員が重い材料を運ぶ際に手足を挟まれたり、製造ラインの機械や重機に巻き込まれたりする事故が目立った。
 同局は 「復興事業の人員不足で事故が増えた一方、作業現場で高所からの転落防止機能の設置が進んでおり、死者数は減った」 と分析している。
 ほかの業種では、サービス業が全体で56人増の1115人。内訳は小売りが25人増の310人、社会福祉施設が12人増の170人だった。介護機器が十分に普及していない施設で、介護士らに過度の負担がかかり、腰痛などを患うケースが多いという。
 17年1~4月の県内の労災死傷者数は、前年同期比62人減の609人。建設業では28人減の104人となっている。同局担当者は「今年は件数が減るよう対策を考えたい」と話した。

 東日本大震災の被災地の岩手や福島も同じj状況だと思われます。人手不足は長時間労働をもたらしています。
 人手不足をもたらしたのはオリンピックです。オリンピックにかまけて被災地が忘れられ、そして被災地では労働安全衛生に目をつぶった作業が進められています。
 被災地にとってオリンピックは人災の災害です。
 国土交通省は、オリンピック工事がおわったら 「輸送・機械運転従事者」 「自動車運転従事者」 でも人手に余剰が出てくると考えているから深刻さがないのでしょうか。
 今、状況は深刻です。

   「活動報告」 2017.6.9
  当センター「いじめメンタルヘルス労働者支援センター」ホームページ・ご相談はこちらから
この記事のURL | 長時間労働問題 | ▲ top
PIP (業績改善計画) が退職強要に利用されている
2017/07/04(Tue)
 7月4日 (火)

 6月27日の第20回ワンコイン講座は、4月18日に厚労省が発表した第2回 「職場のパワーハラスメントに関する実態調査」 報告書作成に検討委員会委員として携わった労働政策研究・研修機構の内藤忍副主任研究員をおまねきして、調査から見えて来たもの、5年前の調査からの変化などについてお話を伺いました。(『実態調査』 報告書については2017年5月23日の 「活動報告」 参照)
 お話は、2011年度に全国の都道府県労働局にあっせん申請がおこなわれた 「いじめ・嫌がらせ」 の事案284件を対象に労働政策研究・研修機構が調査して2015年6月に発表した報告書 「職場のいじめ・嫌がらせ、パワーハラスメントの実態 -個別労働紛争解決制度における2011年度のあっせん事案を対象に-」 についてとの比較検討も行われました。
 2つの 「報告書」 に重なる気になることがありました。

 2012年3月15日、厚生労働省は 「職場のパワーハラスメントの予防・解決に向けた提言」 (「提言」) を発表しました。「提言」 は、日本で初めて職場のいじめ・パワーハラスメントの概念規定・定義を行いました。「職場のパワーハラスメントとは、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいう。」 です。
 続けて 【職場のパワーハラスメントの行為類型】 を挙げています。【職場のパワーハラスメントの行為類型 (典型的なものであり、すべてを網羅するものではないことに留意する必要がある)】 と断ったうえで6類型をあげています。
 ①暴行・傷害 (身体的な攻撃)
 ②脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言 (精神的な攻撃)
 ③隔離・仲間外し・無視 (人間関係からの切り離し)
 ④業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害 (過大な要求)
 ⑤業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと (過小な要求)
 ⑥私的なことに過度に立ち入ること (個の侵害)

 「職場のいじめ・嫌がらせ、パワーハラスメントの実態」 報告書は 【職場のパワーハラスメントの行為類型】 の6類型以外に大分類として 「7経済的な攻撃」 (重複計上) を取り上げています。63件ありました。これらを中分類すると 「1.経済的不利益を与えること」 の行為数43件 (15.1%)、「2.労働者の権利を行使させないこと」 の行為数20件 (7.0%) となります。
 さらに小分類がおこなわれています。「1.経済的不利益を与えること」 は 「1.経済的な不利益・制裁」 行為数14件 (4.9%)、「2.不当な評価(降格等)」 7件 (2.5%)、「3.成果の取り上げ・成果をあげる機会の取り上げ」 5件 (1.8%)、「4.事実上の解雇となる雇用の終了」 9件 (3.2%)、「5.労働日・労働時間の短縮、残業禁止命令」 8件 (2.8%) です。「2.労働者の権利を行使させないこと」 は 「6.権利の剥奪」12件 (4.2%)、「7.権利に関わる問い合わせに応じないこと」 8件 (2.8%) です。
 
 第2回 「職場のパワーハラスメントに関する実態調査」 報告書の企業調査で 「貴社で設置している相談窓口において、制度上対象としている相談テーマをお教えください。(複数回答可) また、従業員からの相談内容のうち、多い内容の上位2つまでをお教えください。(2つまで)」 の質問に対する回答です (回答3365社)。
 相談テーマとして 「人評価・キャリア」 39.3%、「賃金、労働時間の勤労条件」 47.4%が設置しています。そのなかで 「従業員から相談の多いテーマ (2つまで)」 は 「賃金、労働時間等の勤労条件」 18.2%、「評価・キャリア」 9.3%となっています。
 「パワーハラスメントに関する相談件数が増加した (または変わらなかった) 理由としてどのよう なことが考えられますか。当てはまるものを全てお教えください。(複数回答可)」 の質問にたいする回答で (回答1322社)、「評価・処遇への不公平感、不満が増加している」 が13.2%ありました。少なくない数値です。
 「過去3年間にどのようなパワーハラスメントに関する相談がありましたか。具体的な内容及び加害者と被害者の関係として当てはまるものを全てお教えください。(複数回答可)」 の質問にたいする回答で、6類型には含まれない 「その他」 として 「パワーハラスメントに関する相談の内容」 5.9%、「パワーハラスメントに該当すると判断した事案の内容」 2.4%がありました。

 従業員に対する質問で 「あなたの勤務先が設置している相談窓口で、あなたご自身が実際に相談したことがあるものがあればお教えください。(複数回答可)」 の質問にたいする回答 (3741人) で 「人事評価・キャリアについて」 が5.8%、「賃金、労働時間等の勤労条件について」 が5.5%ありました。
 「あなたが受けたパワーハラスメントは以下の6つの (行為類型の) どれに当てはまるかお教えください。(複数回答可)」 の質問にたいする回答に、6類型には含まれない 「その他」 が全体で6.2% (前回は8.6%) ありました。
 明らかに6類型には含まれない行為で少なくなく起きています。


 最近の労働相談のなかでは 「賃金」 「評価」 に関連する案件が目立ちます。特に、PIP (Performance Improvement Plan 業績改善計画) の相談が増えています。これが2つの報告書にも表れているのだと思われます。
 PIPとは、労働者への業績改善 (向上) のための指導方法です。具体的には、会社 (上司) が人事評価が低いと判断した労働者にたいして具体的な業績目標や取るべき行動等改善目標を設定し、期間を設けて進捗状況を確認しながら改善を促します。
 往々にして目標設定は会社 (上司) が一方的に設定し、労働者は従います。業績目標は数値だけではありません。改善目標の項目に労働者が達成できないような無理難題をわざと挙げたりすることもあります。そして改善できなかった場合には大幅な降給、さらに肩たたき・解雇にも至ります。実際には、会社が戦力外と判断した労働者や、余剰人員がでた時などにターゲットを絞ったリストラをするときにおこなわれます。会社によっては規定に 「目標達成に至らなかった場合は解雇する場合がある」 と謳っているところもあります。
 PIPは業務指導として行われます。労働者は指導なので拒否できないと思い込んで不本意ながらも従います。自分の認識とは違う能力不足を通告された時は会社にたいして不信感が生まれますが、同時に自信を喪失し、反論するエネルギーを奪われます。その結果、“行き過ぎた”指導で体調を崩す労働者も出ています。
 日本では従業員教育として、社内で先輩が後輩と一緒に日常の業務をこなしながら知識やスキルを教える 「職場内研修」 ・OJT (On The Job Training) と、社外でおこなわれる研修などを受講する 「職場外研修」 OffJT (Off The Job Training) があります。
この研修を通じて会社は必要な人材を育成し、長期に活躍してもらうことを期待しました。しかし最近はあまり行われていません。その理由の1つに、労働者同士がライバルになったことが上げられます。また会社は長期の雇用を期待していません。

 PIPは、OJT、OffJTとは逆に会社から排除する手法として使われています。
 行き過ぎた指導は 「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいう。」 で職場のパワーハラスメントそのものです。


 ある研究会でこの問題が議論になった時、いじめ問題か、人事制度、賃金・評価制度の問題として対応すべきかかという議論になりました。
 実態としては、会社は人事制度、賃金・評価制度の問題から切り離し、規定・規則に則った対応はとりません。労働者は、わけがわからない、どうしたらいいかわからない、反論できないことが指導の口実で執拗に追及されています。あきらかにいじめが指導の名のもとにおこなわれます。そして経済的不利益を被るに至ります。
 議論では、労働者と労働組合は、反撃の手法を見失っていますが、やはり賃金・評価制度の問題として対応していかなければならないのではないかということになりました。


 1995年に導入された成果主義賃金制度 (成果の定義は実際には難しい) は、評価によって日本で初めて 「降給」 を “合法化” するものでした。しかし、生産性の向上を目指して導入した制度は機能せず、逆に職場秩序を解体し、生産性を低下させることになり短期間で変更を余儀なくされました。
 その後、成果主義は修正され、“名ばかり” の実質的実績主義がはびこりました。その後、「役割給」 が登場します。「役割」 は職務に 「ミッション」 が加わります。ミッションとは、企業全体の経営方針や価値観についての 「職責を果たすために進んでとるべき行動」 や 「貢献することの責任」 です。企業全体がめざす方向と個々の労働者が仕事上で同じ方向性、つまりは企業への忠誠心が要求されます。そこには “上司の顔色を伺う” ことも含まれます。評価に企業への忠誠心が加味されると労働者は尊厳が奪われます。そのような役割の達成度にたいして評価が行われて賃金が決定します。
 成果主義賃金制度が導入されると労働者間の賃金差が大きくなります。使用者は労働者の個別管理の徹底をはかってきました。
 役割給は、労使の関係が従属・隷属になることを要求します。そして一方的業務指示、そして排除・退職勧奨に至っています。
 
 日本ではなぜ 「降給」 がなかったのでしょか。
 労働者の 「職能」 における 「成果」 は、日々研讃を積んで発揮されます。日々スキルアップします。逆に労働者の 「能力」 は一朝一夕にして落ちることはありません。
 つまり本物の 「成果」 は短期間で下がることはありません。評価が下がるのは、①業務が変更になった、②職場環境が変化した、③評価制度が変更になった、④評価者が 「成果」 を人為的に 「評価」 した、⑤労働者が体調を崩した、またはサボタージュをした、⑥社会が大きく変動した、場合です。
 ⑤以外は労働者の責任ではありません。⑤でも長時間労働などで体調を崩した場合は労働者の責任ではありません。労働者は、騙されないよう気をつけなければなりません。自分自身の職能にもっと自信を持ち主張する必要があります。

 労働者は使用者と労働契約を締結して就労します。使用者は労働条件を明記した就業規則を提示しなければなりません。労働基準法第2条は 「労働条件は、労働者と使用者が、対等な立場において決定すべきものである」 と謳っています。
 労働基準法第89条に就業規則に盛り込まれる事項が列記されています。賃金に関しては 「二 賃金 (臨時の賃金等を除く。以下この号において同じ。) の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項」、職業訓練については 「七 職業訓練に関する定めをする場合においては、これに関する事項」 と明記されています。
 賃金についての 「賃金規定」 は就業規則の一部です。評価は賃金を決定します。ですから 「評価規定」 は賃金規定の一部です。評価においては公明な 「評価規定」 と公平な運用が必要です。評価規定では 「評価基準設定」 と 「評価基準適用」 が開示されなければなりません。
 PIPの運用はこのようなことを逸脱して行なわれています。

 労働者保護のための労使対等を原則とする労働法制は闘いによって勝ち取られてきたものです。労働契約によらない一方的契約・契約解除は労働者に奴隷的拘束を課すもので認められません。労働契約によらない評価は正しい評価とはいえません。労使対等を基本に据えた対応が必要です。

 企業内組合の中には評価の問題は個人の問題だから取り組まないと宣言しているところもあります。しかし具体的評価内容は個人的問題でも、評価規定の運用は労働条件の問題であり労働組合が介入する必要があります。「個人的問題」 は取り組まないための口実です。
 また個人の結果は掌握出来なくても、労組として全体の動向については掌握をしておく必要があります。

 労働者の 「職能」 における 「成果」 は、指導・訓練・教育によってさらに高められます。PIPは本当にそのようなものであるかを確認する必要があります。意欲を奪ったり、逆に疑問を増すような、ましてや体調を崩すような指導は指導とはいえません。
 当り前のことですが、早期に成果が上がるか、それなりの時間を要するかは人によって違います。早期に成果をあげる者だけが能力があるなどという判断はだれにもできません。


 使用者が労働者の労働意力を奪うことが一番の生産性向上の疎外になります。逆に労働者に安心感を与えて、その力量を正しく評価し、発揮させたときに最も生産性は向上します。

   「活動報告」 2017.5.23
この記事のURL | 賃金制度 | ▲ top
“働きかた改革” の目的は労働生産性向上
2017/06/30(Fri)
 6月30日 (金)

 昨年の春、政府は政策に 「同一労働同一賃金」 を掲げました。
 6月16日、労働政策審議会は厚生大臣に 「同一労働同一賃金に関する法整備について」 建議しました。このあと国会に法改正案が上程されます。
 基本的考え方は、「正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間には賃金、福利厚生、教育訓練などの面で待遇格差があるが、こうした格差は、若い世代の結婚・出産への影響により少子化の一要因となるとともに、ひとり親家庭の貧困の要因となる等、将来にわたり社会全体へ影響を及ぼすに至っている。また、労働力人口が減少する中、能力開発機会の乏しい非正規雇用労働者が増加することは、労働生産性向上の隘路ともなりかねない。」 などを指摘しています。
 それを克服するために
「賃金等の待遇は、労使によって決定されることが基本である。しかしながら同時に、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差の是正を進めなければならない。このためには、
(1) 正規雇用労働者・非正規雇用労働者両方の賃金決定基準・ルールを明確化、
(2) 職務内容・能力等と賃金等の待遇の水準の関係性の明確化を図るとともに、
(3) 教育訓練機会の均等・均衡を促進することにより、一人ひとりの生産性向上を図るという観点が重要である。
 また、これを受けて、以下の考え方を法へ明記していくことが適当である。
・雇用形態にかかわらない公正な評価に基づいて待遇が決定されるべきであること
・それにより、多様な働き方の選択が可能となるとともに、非正規雇用労働者の意欲・能力が向上し、
 労働生産性の向上につながり、ひいては企業や経済・社会の発展に寄与するものであること」
と建議します。
 具体的には 「不合理な待遇差の実効ある是正のため、昨年末に政府が提示した『同一労働同一賃金ガイドライン (案)』 について」実効性を担保していくといいます。

 政府が掲げる “働きかた改革” を貫徹しているのは 「非正規雇用労働者の意欲・能力が向上し、労働生産性の向上につながり、ひいては企業や経済・社会の発展に寄与するものであること」 です。“働かせ方改革” です。労働者の過酷な労働実態や生活格差を改善が目的ではありません。
 「賃金等の待遇は、労使によって決定されることが基本」 です。
 力関係から使用者が “自主的” に決める賃金に対する不信から 「正規雇用労働者・非正規雇用労働者両方の賃金決定基準・ルールを明確化」 のために最低賃金制は始まりました。最低賃金は何を基準にするかはそれぞれの国で違っています。一般賃金に比べて不当に低くない、労働の質と量とがちがえばその違いに相応しい 「公正賃金」 や、生活できる金額の 「生活賃金」 がありますが、少なくても労働者の生活確保・維持を目的としています。労働者が提供する労働力は商品とちがいストックできません。しかし労働者は定期的休息が必要です。そのためには、賃金は休息中にたいする補償も必要で、それによって労働力が回復できます。
 しかし実態としての非正規労働者の賃金決定は、会社が募集した時に労働者が応募し、離職しない額です。日本の最低賃金は 「公正賃金」 や 「生活賃金」 からも程遠いものです。そこに非正規労働者は存在させられています。
 非正規労働者の賃金を低く固定して労働生産性を高めてきたのがこれまでのやり方でした。その恩恵を受けてきたのが会社と正規労働者です。会社は他社との競争に勝ってきました。正規労働者は非正規労働者を犠牲にして雇用を守り、賃金を上昇させてきました。そのことをかえりみることはありません。
 労働生産性を高めるためには同じ職場にいる非正規労働者の尊厳を高めるために処遇を改善し、そのことによって意欲・能力が向上するという認識と手順が必要です。そのことが結果的に 「企業や経済・社会の発展に寄与する」 ことになります。


 労働者が司法判断を求める際の根拠となる規定の整備についてです。
「現行法においては、正規雇用労働者と短時間労働者・有期契約労働者との間の待遇差については、①職務内容 (業務内容・責任の程度) ②職務内容・配置の変更範囲 (いわゆる 「人材活用の仕組み」) ③その他の事情の3つの考慮要素を考慮して不合理と認められるものであってはならないとされている」。
 パートタイム労働法第8条と労働契約法第20条に謳われている 「均衡待遇規定」 です。
 しかし 「現行法の規定は、正規雇用労働者と短時間労働者・有期契約労働者との間における個々の待遇の違いと、3考慮要素との関係性が必ずしも明確でない」 実態があることを認めます。
「こうした課題を踏まえ、待遇差が不合理と認められるか否かの判断は、個々の待遇ごとに、当該待遇の性質・目的に対応する考慮要素で判断されるべき旨を明確化することが適当である。」 と建議します。そして考慮要素としては 「③その他の事情の解釈による範囲が大きくなっている。」 といいます。
 具体的には 「考慮要素として 『職務の成果』 『能力』 『経験』 を例示として明記することが適当である。また、労使交渉の経緯等が 個別事案の事情に応じて含まれうることを明確化するなど、『その他の事情』 の範囲が逆に狭く解されることのないよう留意が必要である。」 と建議します。このことはすでにパートタイム労働法第10条に 「職務の内容、職務の成果、意欲、能力又は経験等を勘案し、その賃金 (通勤手当、退職手当その他の厚生労働省令で定めるものを除く。) を決定するように努めるものとする」 と謳われていると説明します。「成果」 「意欲」 「能力」 「経験」 から待遇差は生じうるということです。「均等待遇規定」 と 「均衡待遇規定」 もちがいます。
 そして、現行法において 「均等待遇規定」 は、短時間労働者についてのみ規定されていたが有期契約労働者についても対象とすることが適当であるとします。
 比較対象となるのは 「同一の使用者に雇用される正規雇用労働者」 が適当であるとしています。

 “働き方改革” は、同じ非正規労働者同士に 「成果」 「意欲」 「能力」 「経験」 でによって競争をあおり、賃金格差をおこなってかまわないということです。
 労働者と労働組合は 「均等待遇」 について質問、主張したりすると 「成果」 「意欲」 「能力」 「経験」 で切り返されることもありえます。労働組合と労働者はこれらについて評価基準をはっきり設定することを要求する必要があります。
 そもそも 「成果」 「能力」 などはなにをどう評価するかについては労使にとっては現在に至るも課題になっています。それをいとも簡単に明記するということは、“賃金を上げてほしかったら言われたとおりにしろ” “とにかく実績をあげろ” ということになりかねません。自己責任論です。
 今、経済界からは雇用の流動化が必要だと叫ばれています。即戦力を得やすくするためです。企業が不要と判断した労働力を排除し、必要な労働力に切り換えることを容易にすることです。それは 「解雇の金銭解決制度」 の提案と一体のものです。ここでも労働生産性だけから議論が行なわれています。
 労働者にはそれぞれ得意業務、こなすことができる業務、挑戦してみなとわからない業務、不得手な業務があります。得意分野・専門分野を簡単に変更することはできません。日本の終身雇用は、挑戦してみなとわからない業務も時間をかけて経験させて得意分野になることを期待してきました。そのような政策が必然的に 「労働者の意欲・能力が向上し、労働生産性の向上につなが」 っていきました。そして雇用の安定は 「ひいては企業や経済・社会の発展に寄与」 してきました。
 しかし 「成果」 「能力」 を強制することは労働者間に競争を激化させ、不要と判断した労働者を容赦なく排除する方向に向かいます。労働者は孤立するなかで業務遂行を余儀なくされます。「解雇の金銭解決制度」 が成立していない中では労働者をわざと不得手な業務に配置して 「成果」 を強制します。そして 「能力」 がないと “いじめ” て離職に追い込んでいる実態がありますす。
 教育・訓練の機会の保証は能力の蓄積のためのものではなく、短期戦でのテクニック取得のためです。
 “働き方改革” における 「均等待遇規定」 は、非正規労働者にも正規労働者と同じように競争を強制させるということです。労働者の中に生まれる 「格差」 は自己責任です。そのような労働感・職場秩序がさらに作り上げられていきます。
「『フレキシブルな労働市場』 は、現在従事している仕事に全力を傾けようとする気持ちも、献身的に取り組もうとする気持ちを起こさせないし、その余地も与えない。現在従事している仕事に愛着を覚え、その仕事が求めるものに夢中になり、この世界のなかでの自分の場所を、取り組む仕事やそれに動員されるスキルと同一化することは、運命の人質になることを意味する。」 (ジグムント・バウマン著 『新しい貧困』 青土社)


 派遣労働者についてです。
 現状を踏まえると 「1) 派遣先の労働者との均等・均衡による待遇改善か、2) 労使協定による一定水準を満たす待遇決定による待遇改善かの選択制とすることが適当である。」 と建議します。
 具体的には、派遣先の労働者との均等・均衡方式として
「ⅰ) 派遣労働者と派遣先労働者の待遇差について、短時間労働者・有期契約労働者と同様の
 均等待遇規定・均衡待遇規定を設けた上で、当該規定によることとすること
 ⅱ) 派遣元事業主が 「ⅰ」 の規定に基づく義務を履行できるよう、派遣先に対し、派遣先の労働者
 の賃金等の待遇に関する情報提供義務を課す (提供した情報に変更があった場合も同様) とともに、
 派遣元事業主は、派遣先からの情報提供がない場合は、労働者派遣契約を締結してはならない
 こととすること(なお、派遣先からの 情報は派遣元事業主等の秘密保持義務規定 (労働者派遣法
 第24条の4) の対象となることを明確化すること)
 ⅲ) その他派遣先の措置 (教育訓練、福利厚生施設の利用、就業環境の整備等) の規定を強化」
が適当とします。
 そして労使協定による一定水準を満たす待遇決定方式として
「派遣元事業主が、労働者の過半数で組織する労働組合又は労働者の過半数代表者と話し合い、十分に派遣労働者の保護が図られると判断できる以下の要件を満 たす書面による労使協定を締結し、当該協定に基づいて待遇決定を行うこと
①同種の業務に従事する一般の労働者の賃金水準と同等以上であること
②段階的・体系的な教育訓練等による派遣労働者の職務の内容・職務の成果・能力・経験等の向上
 を公正に評価し、その結果を勘案した賃金決定を行うこと」
が適当とします。


 「労働者に対する待遇に関する説明の義務化」 についてです。
「非正規雇用労働者 (短時間労働者・有期契約労働者・派遣労働者) が自らの待遇をよく理解し、納得するためにも、また、非正規雇用労働者が待遇差について納得できない場合に、まずは労使間での対話を行い、不合理な待遇差の是正につなげていくためにも、非正規雇用労働者自らの待遇の内容に加え、正規雇用労働者との待遇差に関する情報を、事業主から適切に得られ、事業主しか持っていない情報のために、労働者が訴えを起こすことができないといったことがないようにすることが重要である。」 と建議します。
 そのために、短時間労働者・有期契約労働者に対して
「ⅰ) 特定事項(昇給・賞与・退職手当の有無)に関する文書交付等による明示義務、その他の労働条
 件に関する文書交付等による明示の努力義務 (雇入れ時) (パートタイム労働 法第6条第1項・第2項)
ⅱ) 待遇の内容等に関する説明義務 (雇入れ時) (パートタイム労働法第14条第1項)
ⅲ) 待遇決定等に際しての考慮事項に関する説明義務 (求めに応じ) (パートタイム労働 法第14条第2項)」
などの現状に加え、
「短時間労働者・有期契約労働者が求めた場合には正規雇用労働者との待遇差の内容やその理由等について説明が得られるよう、事業主に対する説明義務を課すことが適当である。」 とします。
 その場合、「事業主に説明を求めた非正規雇用労働者と職務内容、職務内容・配置変更範囲等が最も近いと事業主が判断する無期雇用フルタイム労働者ないしその集団との待遇差及び その理由並びに当該無期雇用フルタイム労働者ないしその集団が当該非正規雇用労働者に最も近いと判断した理由を説明することとする」 とします。
 最も近い無期雇用フルタイム労働者自体のそれぞれの賃金は 「成果」「能力」 による評価によってばらつきが発生しているからです。
「派遣労働者についても、派遣元事業主に対し、上記 (1) のⅰ) ~ⅲ) 及び派遣労働者 が求めた場合には待遇差の内容やその理由等についての説明義務・不利益取扱禁止を 課すことが適当である。」としています。


 行政による裁判外紛争解決手続の整備等についてです。
「非正規雇用労働者にとっても、訴訟を提起することは大変重い負担を伴うもので あり、これらの規定が整備されて以降も、訴訟の件数は限られている実態にある。 非正規雇用労働者がより救済を求めやすくなるよう、行政による履行確保 (報告徴収・助言・指導等) の規定を整備するとともに、行政ADR (裁判。外紛争解決手続) を利用しうるよう規定を整備することが求められる。」 と建議します
 そのために 「現状では、均等待遇規定については報告徴収・助言・指導・勧告の対象としているが、均衡待遇規定については、報告徴収・助言・指導・勧告の対象としていない。しかしながら、均衡待遇規定に関しても、解釈が明確でないグレーゾーンの場合は報告徴収・助言・指導・勧告の対象としない一方、職務内容、職務内容・配置変更範囲その他の事情の違いではなく、雇用形態が非正規であることを理由とする不支給など解釈が明確な場合は報告徴収・助言・指導・勧告の対象としていくことが適当である。」 としています。


 法施行に向けて (準備期間の確保) は 「法改正は、事業主にとって、正規雇用労働者・非正規雇用労働者それぞれの待遇の内容、待遇差の理由の再検証等、必要な準備を行うために一定の時間を要する。したがって、施行に当たっては、十分な施行準備期間を設けることが必要である。」 とあります。
 鳴り物入りで議論を始めた割には実施はかなり先になるということです。
 そうであっても労働組合は “待ち” ・ “働らかされ方改革” の姿勢です。
 本当の “働きかた改革” のためには、今こそ労働組合が現場の声を集めて政府を先取りする提案、対案をして議論をまき起こすチャンスです。

   「活動報告」 2016.6.9
  当センター「いじめメンタルヘルス労働者支援センター」ホームページ・ご相談はこちらから
この記事のURL | 厚労省 交渉・審議会 | ▲ top
前ページ | メイン | 次ページ