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労働者の体調不良の原因は長時間労働だけでない
2018/06/19(Tue)
 6月19日 (火)

 フランスの労働法典では労働時間は、「オブリ法」 と呼ばれる法律によって基本的に土日を含まない7時間×5日=35時間です。週35時間を超えた場合は、1時間から8時間までは25%、それ以上の場合は50%の割増料金が支払われます。
 午後9時から翌朝6時の夜間就労や日曜労働は厳しい規制が設けられて、夜間に事業所を営業するためには企業側が夜間の経済活動の 「必要性」 と 「社会的有益性」 を明らかにし、夜間の就労に関する労働協約を締結する必要があります。
 雇用者は「1日当たり連続して11 時間の休息を労働者に与える」ことに加え、1週間に少なくとも1度は連続した24 時間の休憩を与えること」が義務付けられています。

 この 「働き方」 に、グローバル市場でのフランス企業の競争力を上げる、経済を活性化させることを理由にして労働法典改革がおこなわれました。
 2016年に成立した改正法では、繁忙期など企業経営上の喫緊の理由があれば、労働時間を1日12時間まで、1週間で46時間 (ただし、最高で12週間) まで延長することが許可されることになります。割増賃金は、週の平均労働時間が35時間を超えた場合にのみ支払われることとなりました。
 日曜および深夜就労については、15年8月に公布・施行された 「経済成長・活性化および機会均等法」により、国際観光地区の小売商店に限って日曜および平日夜9時以降の営業が認められるようになりました。これらは当時の経済大臣の名前から 「マクロン法」 と呼ばれています。
 労働法典の改正は労働組合や学生団体から批判を浴び、全国でストライキやデモが繰り返されました。
 17年の政権交代によって、マクロンは大統領になります。今後もさまざまな変更や改訂が加えられていくことが予想されます。


 16年7月21日の 「労働・労使間対話の近代化・職業保障に関する法律」 改正の一環として17年1月1日から労働者が勤務時間外や休日に仕事上のメールなどへの対応を拒否できる権利を保障する法が施行されました。「つながらない権利法 (The right to disconnect)」 と呼ばれています。(18年6月8日の 「活動報告」 参照」)
 従業員50人以上の会社に勤務時間外の従業員の完全ログオフ権 (メールなどのアクセスを遮断する権利) の定款の策定を義務付けました。罰則は設けられていませんが、従業員は権利を侵害された場合、それを理由に訴訟を起こすことが可能となりました。
 以前から一部の企業で勤務時間外のメールを制限する動きはありましたが国全体で取り組むこととして法制化しました。

 背景にあるのは、情報通信技術 (ICT) の進歩・普及による働き方の変化です。週35時間の労働時間制限が義務付けられていても、職場に広がるデジタルコミュニケーションがオン・オフの境界線をあいまいにし、労働時間制限を事実上無効にするおそれが高まっていました。「いつでも・どこでも」 繋がるツールを個人が所有することで、勤務時間外に連絡を取ることのハードルが下がっていました。
 「電子の首輪」 (電子的に常時つながれている犬) といわれ、24時間365日、いつ連絡が来るかという緊張状態を強いられ、帰宅後もバカンス中もメールで仕事を続けざるを得なくなりました。
 その結果、仕事による「燃え尽き症候群 (バーンアウト症候群)」 も問題になり、16年には約300万人の予備軍がいるといわれました。一説では労働者の10人に1人が仕事による燃え尽き症候群に陥る危険性があるともいわれています。原因は過重労働のみに限らない、社内外からの厳しい要求、過大なストレスなどがきっかけになることもあります。
 そのようななかで、16年2月には、マリソル・トゥーレーヌ厚生大臣の指揮の下、仕事による疲弊を調査するワーキンググループがつくられました。
 労働法改正の抗議デモが相次ぐなかで、唯一批判を浴びなかったのが「つながらない権利」 でした。
 法改正により、夜間・休日に届いたメールへの返信の強要はない、自分だけがメールを見ないで仕事を拒否しているわけではない、評価が下がらないという共通認識を全社員が持つことができ、不安も解消されました。


 世界保健機関 (WHO) は17年2月23日、世界で鬱病に苦しむ人が2015年に推計3億2200万人に上ったと発表しました。全人口の約4%に当たり、05年から約18%増加しています。
 日本は約506万人です。少し前は300万人といわれていました。
 16年5月23日、ILO日本事務所から2016年労働安全衛生世界デー報告書 「職場内ストレス:集団的な課題」 の邦訳が発表されました。「職場内ストレス」 が労働者の健康、安全および福祉への影響です。(16年6月10日の 「活動報告」 の再録)
 労働者の精神的体調不良は世界的な問題になっています。

 「バーンアウト」 はどのようなものでしょうか。
 「ストレスが健康に及ぼす影響は、ストレスが大きくなれば、極度の疲労、燃え尽き、不安と抑うつなどの精神・行動障害、および、循環器疾患や筋骨格障害などその他の身体障害をはじめ、健康関連の機能障害の発生を助長しかねません。
 労働災害に関する研究では、現在では、人的エラーが職場での事故に果たす役割は小さいこと、……必ずしも労働者個人に原因はないことを示す研究結果が多くあります。
 仕事関連のストレスから来る認知的症状または身体症状があれば、瞬間的な放心状態、判断ミスまたは普段の活動の失敗を増やす可能性があります。調査結果からは、精神衛生障害 (特に燃え尽き) が安全な作業実践と反比例の関係にあり、職場での事故の可能性を高めることも分かっています。……
 全体的に見て、職場でのストレスを抱える人々のリスクは、それ以外の人々よりも50%以上高くなっています。
 『燃え尽き症候群』 は、職場で情緒的および対人関係上の心理社会的リスクに慢性的に晒されたことに対する対応が長引いたものとして説明されています。その特徴は、情緒的な極度の疲労、皮肉 (役務を受ける側の人々に対する否定的、非人間的かつ無神経な態度)、非人格化、職場でのやる気のなさ、個人的な業績の低さおよび非効率にあります。燃え尽きが生じうるのは、価値観や公平性、同一性、報酬、統制、作業負荷といった作業生活の主領域に関し、組織と個人の間に断絶がある場合です。」


 では 「組織と個人の間に断絶」 とはどういうことをいうのでしょうか。
 リクルートワークス研究所の 「COLUMN」 にフランスの国立労働条件改善機構 (ANACT) の科学評議会のメンバーである社会学者のアンカ・ボボックさんの、デジタル化が労働者に及ぼす影響についての談話がのっています。

「デジタルツールの発展は、社会と労働市場との関係を劇的に変えました。『デジタル』 といっても様々で、いくつかの世代に分類することが可能です。デジタルの最初の世代はERP世代 (Enterprise Resource Planning) で、企業のあらゆる組織のスタンダード化や、中央化されたデータストレージ (資料補助) などに利用されました。次の世代では、メール、SNSなどのコミュニケーションツールが拡大し、コラボレーティブな労働 (共同作業) のツールとして発展しました。」
「また、デジタルツールの進化が触媒の役割を果たして様々な変化が生じました。すなわち、経済活動ではサービス部門が拡大し、中間・管理職層が増え、人間関係についても、デジタルツールのおかげで同時に複数のサークルに属しているような感覚、複数の空間に同時に存在しているような感覚が生まれました。」
「絶え間ないビジネスプロセスの最適化は、技術的な複雑度が増すことにもなり、従業員へのプレッシャーとストレスの原因になる可能性があります。」
「テレワーク浸透の足かせは法的障害でも技術的障害でもなく、文化的障害です。」

 デジタルツールはデータ、情報を共有することを前提にします。全員が知っていることとして事態は進みます。マニュアルデータの共有はできないことをなくします。労働者は “平均以上” が当たり前になり、そのことをふまえた会社、上司の期待に対してはクリアが必須となります。
 上司を含めた周囲との関係性は、時間的、空間的に近くなります。個々人の労働者の裁量度は小さくなり、常に管理されている意識に支配されます。生活を仕事が侵食します。
 さらに個人的人間関係の構築もデジタルツールを通してだったりします。
 特に個性を、自立を大切にするフランスの風土においてのストレスは、日本では想像できないものがあります。
「フランスでの労働に関するメンタリティは徐々に変化してきています。今回、『つながらない権利』 が改正労働法に盛り込まれたのは、労働者の権利と生産性の向上を両立させるためにも朗報でした。」 (ボボックさん)
 まさしく 『つながらない権利』 は、労働者の健康維持のための文化的障害を遮断する一助となるものです。


 フランスで02年1月17日に制定された 「社会近代法」 でモラルハラスメントを 「雇われている労働者の権利や尊厳が侵されるような労働条件の切り下げを目的にした、またはその効果を狙って繰り返される行為。労働者の身体的、精神的または職業上の将来の名誉を傷つけることを目的にして繰り返される行為。」 と定義づけられています。
 日本で12年3月15日、厚生労働省は 「職場のパワーハラスメントの予防・解決に向けた提言」 でパワーハラスメントを 「職場のパワーハラスメントとは、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいう。」 と概念規定しました。
 「職場の暴力」 のとらえ方としてフランスでは 「雇われている労働者の権利や尊厳が侵されるような労働条件の切り下げを目的にした、またはその効果を狙って繰り返される行為。」 が含まれています。
 フランスにおけるその認識と権利意識、社会風土が、1週間46時間 (月184時間) 労働への 「働かせ方」 法改正にたいして労働者はストライキで抗議・抵抗し、自分たちの権利を守ろうとしました。
 その一方で労使は、労働者の精神的疲労の問題を文化的障害として 「働き方・働かせ方」 改革の課題 にしました。

 ひるがえって日本の状況はどうでしょうか。
 厚労省は02年2月に 「過重労働による健康障害防止のための総合対策」 を発表し、月45時間を超えると健康障害のリスクが高くなるとしています。
 しかし 「働き方改革法案」 審議では、労働時間が無制限の 「高プロ」、時間外労働月100時間の上限規制が争点でした。そして使用者の安全配慮義務違反を救済するのが労働安全衛生法の改正です。そこでは体調不良の原因が長時間労働による肉体的疲労からだけ問題にされています。政府にとっては 「ワーク・ライフ・バランス」 「ディーセント・ワーク」 は禁句でした。

 労働者の精神的疲労による体調不良はさまざまな原因があること、そして回復には時間がかかることをもっと考慮される必要があります。「つながらない権利」 の確保が必要です。過労死・過労自殺の原因は長時間労働だけではありません。
 日本の労働者は、自分たちの労働環境・健康保護を含めた労働条件と権利保護についてもっと関心を示し声をあげる必要があります。そうしないと 「過労死・過労自殺」 も自己責任にされてしまいます。

 「海外のメンタルヘルスケア」
 「活動報告」 2018.6.8
 「活動報告」 2016.6.10
 「いじめメンタルヘルス労働者支援センター」ホームページ・ご相談はこちらから

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女性スポーツの発展は女性解放の歴史であり、闘いの歴史
2018/06/15(Fri)
 6月15日 (金)

 毎日新聞社の6月14日の会員限定有料記事に、筑波大学教授で柔道家の山口香さんへのインタビュー記事が載りました。タイトルは 「いま、性被害を語る スポーツ界の 『絶対的な服従関係』 がセクハラとパワハラを生む」 です。会員限定有料記事ですので長文の引用は控えます。
 取材した小国綾子記者は、山口さんをインタビュー直後の5月29日の夕刊に 「あした元気になあれ アメフットとMeToo」 の記事を書いています。そこから引用します。

 山口さんは 「選手が指導者と対等にものを言い合えない服従関係こそがスポーツ界のハラスメントの温床」 と訴え続けてきました。日大事件の経過を記した 「報告文」 を読んで 「親に虐待された子の苦しみに重なりました」 と語ったといいます。
 日大側は 「指示」 を認めていませんが、それでも指導者が選手を心理的に支配していくプロセスが読み取れます。監督が試合後のミーティングで反則タックルについて 「こいつが成長してくれればそれでいい」 と述べたことについて、「虐待する親もそう。虐待しながら 『お前のためだ』 と言う。だから子は自分を責めるしかなくなる。逃げられない。親に愛されなければ生きていけないから」
 「今回の件はスポーツ界の縮図です。彼だけじゃない」 と言い切りましす。「理不尽なことを強いられ、傷つき、人知れず消えていった選手がスポーツ界にどれほどいるか。指導者だけでなく、時に仲間からも 『負け犬』 『途中で投げ出した』 と批判されながらね」
 山口さんは 「今こそMeTooを」 と呼びかけます。


 取材の後、5月29日に発表された日本大学アメリカンフットボール部選手一同の 「声明文」 の抜粋です。
「ただ、少なくとも、私たちは、私たちの大切な仲間であるチームメイトがとても追い詰められた状態になっていたにもかかわらず、手助けすることができなかった私たちの責任はとても重いと考えています。これまで、私たちは、監督やコーチに頼りきりになり、その指示に盲目的に従ってきてしまいました。それがチームの勝利のために必要なことと深く考えることも無く信じきっていました。・・・そのような私たちのふがいない姿勢が、今回の事態を招いてしまった一因であろうと深く反省しています。」
「ただし、絶対に必要だと今思っていることは、対戦相手やアメリカンフットボールに関わる全ての人々に対する尊敬の念を忘れないこと、真の意味でのスポーツマンシップを理解して実践すること、グラウンドではもちろんのこと、日常生活の中でも恥ずかしくない責任ある行動を心がけるなど常にフェアプレイ精神を持ち続けることを全員が徹底することです。」


 会員限定有料記事です。(こっそりと)
記者 スポーツ界には、セクハラが起きやすい背景があるのでしょうか。
山口 スポーツ界における指導者と選手の “主従関係” の厳しさは、一般企業の上司と部下の比ではありません。良い方に転がれば、絆の強さや信頼関係につながるのですが、悪い方に転がれば、絶対的な服従関係となってしまう。
 これは男女ともに言えることですが、スポーツ界では絶対的な服従関係が、セクハラとパワハラの両方の温床となってしまっています。選手が指導者と対等に物を言える関係ができない限り、セクハラもパワハラもなくならないと思います。

記者 スポーツ界のセクハラ問題でガイドラインとなるようなものはないのですか?
山口 日本オリンピック委員会 (JOC) に女性スポーツ専門部会があり、そこでセクハラについてのガイドライン=注=を作成しました。一般に公開されているものではありませんが各競技団体を集めて説明しました。
  (注) JOCは2013年2月、加盟・準加盟計57団体の強化選手や指導者を対象にセ
  クハラや 暴力行為などについての無記名アンケートを実施した。それによると、暴力行為
  を含むパワーハラスメントやセクシュアルハラスメントを受けたと答えた選手は、全体の
  11・5% (206人)。一方、パワハラやセクハラを行ったと回答した指導者はわずか
  3・0% (43人) だった。
  記述回答では 「自分が競技をやめ、死んだら楽になるのかな。ゴミのように言われ
  存在すら否定される」 「いくら相談しても話が通じないため、自殺未遂をしたり何年た
  っても強烈なトラウマとして残る選手が多い」 と悲痛な訴えがつづられていた。
  JOCはその年、「スポーツ界における暴力行為根絶宣言」 を採択。身体的制裁、言
  葉や態度による人格の否定、脅迫、威圧、いじめや嫌がらせなどに加え、「セクシュア
  ルハラスメント」 も暴力行為として宣言に明記した。

山口 スポーツ界において、セクハラとパワハラは紙一重だと思います。その背景の一つが、女子アスリートへの偏見です。
 もともとスポーツは男性のものとしてスタートしました。1896年の第1回近代オリンピックに女性選手は参加すら許されていません。1904年の日本の新聞記事には 「女子のスポーツが発達すると、女子らしさが失われ、品位を下げるのではないか」 というような論調すら見られました。
 例えば、最近は少なくなりましたが、かつては女子選手に 「恋愛禁止」 を命じる指導者がとても多かった。「女は恋をすると弱くなる」 という偏見からです。「女性は感情をコントロールできない」 と。
 そもそも、男性指導者が女子選手に恋愛を禁じるのは、圧倒的な主従関係を維持したいからではないでしょうか。
 スポーツは社会を映す鏡です。女性活躍が叫ばれる時代ですから、スポーツ界でも日本の女子選手たちが世界で活躍しています。ところが、いまだにレスリングや柔道で強い女子選手を紹介する記事では 「ひとたび柔道着を脱げばこんなに女性らしい」 「実は料理上手」 「編み物が趣味で意外と女子力も高い」 などの記述が散見されます。


記者 セクハラなど嫌がらせの温床となっている選手と指導者の 「絶対服従」 の関係性は、どのように変えていけば良いのでしょうか。
山口 これは実はとても根が深い問題なんです。なぜなら、日本では少年スポーツからして、選手が 「服従」 を求められる場面が多い。少年スポーツの指導者の意識改革も必要になります。
 私は1993年、JOCの在外研修制度で英国に1年間留学し、現地の柔道教室で子供たちに柔道を教えました。この時に選手と指導者の関係性について多くを学びました。
 面食らったのは、良くも悪くも先生と生徒の距離が近いことでした。・・・先生を一人の人間として見ていた。尊敬しつつ、同時に、対等な関係だったんです。
 「今日はこういう練習をするよ」 と伝えると、子供たちに 「なぜ?」 と問われる。コーチには説明責任があるので、なんとか伝わるよう説明しました。・・・なぜその練習が必要なのか、選手と指導者がともに考え、合意形成をしながら練習を進めていくことを、英国では少年スポーツのレベルで学んでいるのだと思いました。

記者 確かに、今回の日大アメフット部の反則タックルの背景にも、監督やコーチと選手との絶対的な服従関係があったようです。
山口 この件に関して多くのスポーツ関係者が 「ありえない事態だ」 「こんなひどい話は聞いたことがない」 と批判しています。でも、一人一人胸に手をあてて考えてほしい。・・・
 何も理由を説明せずに・・・選手との合意形成を積み重ねることなく、一方的に命令し、選手本人との主従関係の上にあぐらをかいて、従えばいいんだ、というような指導をしていませんか?


記者 日本で#MeToo運動が広がらない背景として、声を上げた被害者へのバッシングが指摘されています。・・・
山口 これも難しい問題です。・・・スポーツの場合 「あのコーチのお陰で今の私がある」 というような思いを持つ選手は、どうしても自分の指導者を否定したくないのです。特に、チームスポーツの場合、レギュラーに起用されなかった人がセクハラ被害を訴えたら 「あの人はレギュラーから漏れたから言ってるだけ」 というような批判のされ方もします。告発した途端、指導者やコーチからだけでなく、仲間からも批判されるかもしれない。これが、被害者が声を上げにくい一因となっているように思います。
 日大アメフット部の問題では、現役選手たちがみんなで声明文を出しました。感情を抑制しつつ、責任を転嫁せずに自己反省という形で声明文を出したことで、アスリートが自立していく姿を見せてくれました。一人で記者会見したチームメートを、本当に独りにはしなかった。
 これはアメリカンフットボール界にとどまらず、スポーツ界における大きな一歩だと思います。このような連帯によって、声を上げやすい社会の実現に近づいていくと信じています

記者 山口さんはどんな思いで、スポーツ界における女性リーダーの育成を唱えてこられたのですか。
山口 スポーツは社会の縮図であり、スポーツ界の抱える問題は多かれ少なかれ社会が抱える問題です。女性スポーツの発展は、まさに女性解放の歴史であり、闘いの歴史だったと私は思っています。今でも世界を見渡せば、女性が自由にスポーツを行えない国すらあるのです。
 セクハラの被害者は女性に限りません。一人一人の選手が自立したアスリートとして、セクハラに対してきちんと声を上げていくことが大切だと思っています。そのことによって被害者が声を上げやすい社会、声を上げた被害者を一人にしない社会が実現するのだと信じています。


5月23日の 「活動報告」 です。

 事件後、テレビ出演したスポーツ評論家は、スポーツは近代国家形成とともに、お互いが遵守することを前提にしたルールをつくって競い合う民主的ゲームとして発展してきたと語っていました。そこでは全力で競うことができ、フェアプレーの精神が生まれ、相手を讃えることもできるのです。
 日大の一方的にルールを順守することを放棄し、しかも無防備な状態に身体的攻撃を加えることは、近代以前の貴族たちのものであったといわれるスポーツ遊びよりも劣ります。そこからは日大が持つ体質が見えてきます。

 これでは不十分でした。
 山口さんの 「スポーツは社会の縮図」 「女性スポーツの発展は、まさに女性解放の歴史であり、闘いの歴史だった」 は、近代社会において女性の地位はまだまだ解決していない奥深い課題であることを具体例をあげて訴えています。


 2012年に発覚した柔道女子日本代表への暴力事件について、山口さんは13年2月7日付 「朝日新聞」 のインタビューに答えています。
 13年2月26日の 「活動報告」 です。

「昨年9月、園田隆二前監督が暴力行為をしていたと、私自身、耳にしました。個人的に何人かの選手に話を聞いて事実を確認し、全日本柔道連盟の幹部に伝えました。まずはきちんと調べて、広く選手に聞き取りをして下さいとお願いした。」
 全柔連は園田前監督にだけ話を聞き、厳重注意の処分をしました。しかしそれだけでした。
「相談してくれた選手たちに 『こういう結果になってしまって申し訳ない。私の力がなかった』 と謝りました。そして 『申し訳ないが、ここから先は私ができることじゃない』 と話しました。」
「私は選手に言いました。『これからはあなたたち自身でやりなさい』 と。さらに 『あなたたちは何のために柔道をやって来たの。私は強いものに立ち向かう気持ちを持てるように、自立した女性になるために柔道をやってきた』 という話もしました。」
「悪い言い方をすれば、選手たちはここまで我慢してしまった。声をあげられなかった。『こんなひどいことが行われてきたのに、誰にも相談せず、コーチにも言えず、がっかりしている』 とも話しました」
「私はもう助けられない。だから自分たちで考えて、と。」
 12月、選手たちはJOCに告発しました。
「彼女たちは気づいたのです。何のために柔道をやり、何のために五輪を目指すのか。『気づき』 です。監督に言われ、やらされて、ということでいいのか。それは違うと」
 選手たちは自分たちだけで立ち上がりました。
 今、全柔連だけでなくJOCも社会的監視の中で対応を迫られています。


 選手たちは自分たちだけで立ち上がりました。JOC作成の 「セクハラについてのガイドライン」 はこのすぐあとです。
「日大アメフット部の問題では、現役選手たちがみんなで声明文を出しました。感情を抑制しつつ、責任を転嫁せずに自己反省という形で声明文を出したことで、アスリートが自立していく姿を見せてくれました。一人で記者会見したチームメートを、本当に独りにはしなかった。」

 スポーツ界のハラスメント、セクシャルハラスメントは、さまざまな種目から聞こえてきます。
 #MeToo運動がもっともっと広がることが人権を確立・拡大します。
 #MeToo運動は社会への 「共に立ちあがろう」 のアピールです。
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想定外のことが起きることをふまえた対処を
2018/06/12(Tue)
 6月12日 (火)

 東日本大震災から7年3か月が過ぎました。
 各地で震災・災害に見舞われています。自然を破壊し、地球をいじめ過ぎているのでしょうか。
 熊本地震から4月で2年が過ぎました。震災復興に携わってきた自治体職員の心身の疲労が深刻な状況にあります。

 5月31日の熊本日日新聞は 「地震2年、熊本市職員 うつ、PTSD疑い88人」、5月27日の西日本新聞は 「うつ・PTSD疑い」 4.3% 熊本市職員 地震発生から2年、割合は減少 [熊本県]」 の見出し記事を載せました。熊本市は、市民病院の職員と教職員を除く全職員約9千人を対象に4月中旬から下旬に 「食欲が増えたり減ったりしているか」 「ささいな音に過敏に反応するか」 など、被災体験の日常生活への影響を12項目についてアンケート調査を行っています。16年の地震発生3週間後、17年4月にも行なっています。
 16年にうつや心的外傷後ストレス障害 (PTSD) の疑いがあった職員は696人 (回答の13.9%)、17年は130人 (同7.2%) でした。今年4月時点では回答した2064人の4.3%に当たる88人でした。内訳はうつの疑い38人、PTSDの疑い26人、両方の疑い24人で、16年から3回続けて疑いがあるとされた職員は7人いました。

 アンケートに回答した職員数は23%です。理由は、そんなことをしている暇はない、関心はあるが正直に回答したら体調不良がばれる、アンケート調査で体調不良の結果が出るのが怖い、調査そのものに不信感を持っている、などさまざまです。その一方、自分の深刻な状況を市に伝えようとしているものもあると思われます。
 不調者数は減ってきていますが、全体に自分を犠牲にして職務をはたそうとしている姿がうかびあがってきます。深刻な状態が続いています。市はこれ以上無理をさせない対策をとる必要があります。16年から連続疑いがあるとされた職員については配置転換や休職の措置が必要です。


 4月27日の熊本日日新聞は 「『心のケア不十分』 4割弱 県内自治体職員アンケート」、5月14日の西日本新聞は 「職員の7割超がストレス訴え 熊本地震の復興業務 休退職や自殺事例も 自治労が調査」 の見出し記事を載せました。
 自治労は、1月から3月、熊本県庁と熊本地震の被害が甚大な10市町村の職員を対象に調査を行いその結果を発表しました。

 強いストレス後に表れる代表的な症状を例示して尋ねたところ、回答者3732人のうち、「地震のことを思い出すと、その時の気持ちがぶり反ってくる」 に23.6%が 「当てはまる」 と回答。「睡眠の途中で目が覚めてしまう」 も20.5%いました。地震前と比べ、 心の問題で休職や退職した人が 「職場で増えた」 と感じている人が22.1%いました。
 現在の健康状態は、23.4% (206人) が 「やや悪い」 「非常に悪い」 と答えました。

 回答者4002人のうち復興業務従事者は881人です。そのうち73.4% (647人) がストレスを 「非常に感じている」 「ある程度感じている」 と答えました。理由は、多い順に 「復興業務の仕事量が多く労働時間が長い」 「住民から過剰な要求がある」 「仕事の配分が不公平」 でした。
 また、自治体による心理的ケアは 「あまり行われなかった」 「まったく行われなかった」 が合わせて37.8%で、「十分に行なわれた」 「ある程度行われた」 の同33.4%を上回わりました。心理的ケアを実施する上での問題 (複数回答) としては38.0%が 「職場に余裕がなく対応できない」 でした。

 地方公務員災害補償基金熊本県支部は、災害対応に追われて病気やけがをした職員計23人について、地震に絡む公務災害と認定しました。
 2016年5月に自殺した阿蘇市の男性職員も17年2月14日公務災害に認定されました。熊本地震に対応して亡くなった県内自治体職員の初めて認定でした。(16年6月7日の 「活動報告」 参照)
 自治体関係者によると、他にも復興業務に従事し自殺した職員が複数いるが、遺族が申請をためらう事例もあり、正確な数は不明といいます。
 復興業務担当職員の休退職も判明分だけで県内計10人です。国民健康保険料の減免申請窓口や災害ごみ処理業務などの担当者で、業務増や心的負担が理由といいます。
 また、体調不良から退職したものもいます。


 職員のメンタルヘルスケアは、阪神淡路大震災の時よりは進んでいますが、東日本大震災の時の教訓が十分に生かされていようには思えません。
 『消防科学と情報』 2015 (冬季) 号に掲載された、東日本大震災の宮城県石巻市の教訓を中心に語られている 「自治体職員の惨事ストレスに対するメンタルサポート -初期支援、そして中・長期的な取り組みを振り返る-」 からの抜粋です。

「少なくとも被災地の自治体職員が経験する以下3点の問題点を有するためである。
 第一に、自治体職員自身が被災者であり、自身の家族の安否を確認できぬまま、もしくは職員自身も人的・物的喪失を伴いつつ業務に従事している職員がいることである。
 第二に、自治体は被災者のサポートや地域復興の拠点であるため、通常の業務に加え、長期的、且つ見通しの立たない業務が増大することである。
 最後に、被災地住民の生活やそれと関連するサポートに従事しているにもかかわらず、やり場のない住民からのクレームの対象となり、自らの仕事の意義を見失ってしまう可能性をもつことである。このように自治体職員は、メンタルヘルス上、ハイリスクの状況下にある。」

「震災初期に惨事ストレスとして注目されるのは、急性ストレス反応 (Acute Stress Response: ASR)、そして ASR の持続期間により判断される心的外傷後 (Post Traumatic Stress Disorder: PTSD) の問題である。……
 自分自身、また同僚や部下といった周囲の人々が、未知の体調不良や違和感を経験することは、非常に不安なことである。また、この不安は今後の見通しに対して否定的な意味付けを与え、自分自身や周囲との関係において混乱を引き起こす可能性をもっている。そのような出来事を回避するため、筆者らは、現状、または今後に、自分自身や周囲に起こりやすい心身の反応や問題についての知識の提供、つまり、心理教育を行っていった。
 ・・・
 管理職・監督職にある職員は、自分自身の問題もさることながら、部下、または部署全体の問題を懸念することも多いためである。例えば、終わりがみえない、または、見通しが立たない業務に対して、意図的に区切りを設け、労をねぎらう場を作るといった取り組み、さらには、各部署で上手くいった方法を共有することが功を奏することもあった。後者の個別面談では、健康調査を基に、心理的問題の知識の提供を行うとともに、今後、専門家による個別的、継続的な援助の必要性、医療機関への受診の提案などスクリーニングによりその後の必要な支援につなげることを実施していった。」

「震災発生から概ね1年前後という時期は、自治体職員のストレス反応を把握する上で一つの区切りとしてみることができる。・・・
一方で、復興業務と関連して起こる、抑うつと心身への負荷、業務内容の格差、対人関係上の問題へと徐々に移行する。とりわけ、多忙や過重労働による抑うつ、そして心身の疲弊 (バーンアウト) の問題が顕著である。」

 熊本現地は、現在この段階ではないでしょうか。


 現地では人手不足が深刻な問題になっています。
 この問題について、『労働調査』 16.7号に掲載された、田中浩二・自治労・総合企画総務局長のNew Wave 『突如起こる災害への備えと、公的な役割について考える』 の抜粋です。
「こうした震災の度に指摘されるのは、自治体の職員数が足りないこと。・・・
 地震大国日本。私たちは古くから地震災害と向き合ってきたし、地殻変動が激しく火山活動も活発な日本で暮らす以上、避けては通れない。今回地震で役場や学校、病院などの多くの公的施設も甚大な被害にあった。住民サービスを担う公共施設等が被害にあえばたちまち住民生活に影響が出る。全国どこでも大規模災害は起こりうるもので、非常時でも住民サービスを低下させないための準備は自治体の責務であり、人減らしが進む自治体にとっては職員が足りないからと言い訳などできない。『想定外の・・・』 と、5年前の東日本大震災でもこの言葉が多く使われた。過去の経験から学び、同じことを繰り返さないために対策を施し、いざという時の備えを積み重ねてきたにも拘らず、である。仮に、『想定外の事は必ず起こりうるもの』 とするなら、そもそも想定することに意味がないようにも思えてくる。いずれにせよ、『こうしておけば良かった』 などと後で言わないための対策が重要なのは今更言うまでもない。」


 通常でギリギリの体制では緊急事態が発生した時に取れる体制は限度があります。長期対応は不可能です。全国から支援もゆとりがない中からおこなわれています。本来的に当てにすることはできません。
 しかし無理に無理を重ねている現実があります。そこに被災住民から自治体窓口への不満・要望が舞い込みますが当たり前のことです。

 このようなことを見過ごしたままにしておくことは地震大国にあるべき姿ではありません。そこで発生する被害は人災です。

 「自治体職員の惨事ストレス・ケア」
 「自治体職員の惨事ストレスに対するメンタルサポート」
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「つながらない権利」  いつでも・どこでもつながる便利さと引き換えに、自由を失った
2018/06/08(Fri)
 6月8日 (金)

 相談活動の中で、「相談できる人はいません」 「友だちはいません」 と答える相談者がたくさんいます。自分の方から、関係をつくるのを断っているなら他者に相談しません。
 人恋しいけど、自分で友だちをつくれないで他者からの誘いを待っています。「かわいそうなヒロイン」 を見逃して誘ってくれないで仲間にいれないのは周囲がいけないのであって、自分は被害者なのです。

 電車のなかでほとんどの乗客が携帯を片時も離さずに手元に持っている光景を見かけます。みな、緊急事態が発生していて連絡を待っているのでしょうか。そうではなく、みな 「かわいそうなヒロイン」 を訴えているようにしか見えません。


 さて、フランスでは2016年7月21日の労働法改正・ 「労働・労使間対話の近代化・職業保障に関する法律」 (通称エルコムリ法案) 改正の一環として17年1月1日から労働者が勤務時間外や休日に仕事上のメールなどへの対応を拒否できる権利を保障する法が施行されています。「つながらない権利法 (The right to disconnect)」 と呼ばれています。
 従業員50人以上の会社に対し、勤務時間外の従業員の完全ログオフ権 (メールなどのアクセスを遮断する権利) の定款の策定を義務付けています。現在のところ罰則は設けられていませんが、従業員は権利を侵害された場合、それを理由に訴訟を起こすことが可能になりました。
 以前から一部の企業で勤務時間外のメールを制限する動きはありましたが国全体で取り組むことして法制化しました。

 背景にあるのは、ICTの進歩・普及による働き方の変化です。週35時間の労働時間制限が義務付けられていても、職場に広がるデジタルコミュニケーションがオン・オフの境界線をあいまいにし、労働時間制限を事実上無効にするおそれが高まっていました。「いつでも・どこでも」 繋がるツールを個人が所有することで、勤務時間外に連絡を取ることのハードルが下がっていました。
24時間365日、いつ連絡が来るかという緊張状態を強いられ、帰宅後もバカンス中もメールで仕事を続けざるを得なくなりました。「電子の首輪」 (電子的に常時つながれている犬) といわれていました。

 仕事による燃え尽き症候群も問題になっており、16年には約300万人のバーンアウト症候群の予備軍がいるといわれていました。また、労働者の10人に1人が、仕事による燃え尽き症候群に陥る危険性があるといわれています。バーンアウト症候群の原因は過重労働のみに限らない。社内外からの厳しい要求、過大なストレスなどがきっかけになることもあります。
 そのようななかで、16年2月には、マリソル・トゥーレーヌ厚生大臣の指揮の下、仕事による疲弊を調査するワーキンググループがつくられました。
 労働法改正は、労働者にとって不利益な法だと捉えられ、全土で抗議デモが相次ぎましたがその中で、唯一批判を浴びなかったのが、「つながらない権利」 でした。


 以前から一部の企業で勤務時間外のメールを制限する動きはありました。
 フランステレコム (France Telecom) は10年に従業員に24時間常に連絡可能な状態を求めるのをやめました。エルコムリ労働相は労働法改正案を起草するに当たり、オレンジ社 (旧フランス・テレコム) の人事部に助言を求めました。
 旧フランス・テレコムは、08年から09年の間に、全国で従業員30人が自殺しました。

 『週刊エコノミスト』 の17年2月14日号です。
 旧フランス・テレコムは、08年から09年の間に、全国で従業員30人が自殺して大スキャンダルになった。
 フランス・テレコムは、もともと郵政省の一部で、国営企業だった。それが改革、民営化の波を受け、1988年に完全民営化した。そして06年、会社幹部は「全国11万人の従業員のうち、2万2000人に3年以内に辞めてもらい、新たに7000人のIT技術に長 (た) けた若い従業員を雇用するプラン」を打ち出した。
 雇用が厳しく守られている労働法下にあって、従業員を簡単に解雇することはできない。そこで、ありとあらゆる手法の 「モラルハラスメント」 が行われた。
 ある女性は、1年間に3回転勤を命じられた。また、あるプロジェクトのリーダーだった社員は、部が引っ越すというので新しいビルに行ってみると電話もコンピューターもオフィス器具もないがらんとした部屋をあてがわれた。ある女性が出社してみると上司が彼女の資料をすべて処分していた。自分の専門職とは全く関係のない単純事務を強要された。
 当時、会社社長は 「自分から辞めないのであれば、ドアからでも、窓からでも追い出してやる」 と言い、幹部は心理的圧力をかけて辞めてもらうプランを 「ネクスト」 と呼び、トップダウンで進めていった。心療内科に通う従業員が急増し、社内の心療内科医さえ、これ以上、従業員の話を聞くのは耐え難いといって辞職するぐらいであった。
 自殺、あるいは自殺未遂をした人の中には、会社の駐車場で焼身自殺した人、ミーティング中に自分を刺した人、また会社のビル4階から身投げをした人もいた。最終的に、数千人が辞職していった。
 つながらない権利はオレンジ社で大いに歓迎されたという。少なくとも過去の経験から、職場の労働環境改善につながるという期待は大きい。
 (フランステレコムについては、「労働安全衛生」 → 「海外のメンタルヘルス」 参照)


 ドイツでは連邦労働安全衛生研究所 (BAuA) の統計によると、精神的な問題が原因の病欠は2008~11年で40%以上増えたといいます。健康保険組合によると、「バーンアウトによる病気休暇は、04年には組合員1000人あたり4.6日だったが、11年には86.9日に急増しました。
 大企業はここ数年で、幹部に24時間いつでも連絡がつくことが当然とされることへの負の効果に気付き始めました。仕事に関連した精神疾患が急増し、従業員に対する要求の見直しを迫られています。「バーンアウト (燃え尽き症候群)」 は近年の流行語となっています。

 自動車大手フォルクスワーゲン (Volkswagen) などの企業はここ3、4年で、従業員が家にいる間に大量の業務メールが押し寄せないよう、ネット上でせき止めるシステムを導入しました。
 フォルクスワーゲンは11年末、労働組合との間で 「メール停止労使協定」 を締結しました。夕方6時15分から翌日の朝7時までは、従業員の仕事用の携帯電話にメールが転送されないようになっています。元々は約1000人いる事務職の従業員が対象の措置だったが、今では国内の全従業員25万5000人のうち5000人程度に適用されています。

 自動車大手のBMWは、17年から従業員約3万人以上に対して、上司との相談の上、職場以外の場所や勤務時間外で業務をこなすことを認めています。例えば、メールへの返答に1時間かかった場合、1時間の時間外労働として換算されます。ただ 「従業員と上司との間にある程度の信頼感と対話があることが前提」。「仕事と私生活の間に境界線が必要だと考えているが、働き方における柔軟性の利点を損なうような厳格な規則はいらない」 といいます。
 13年12月、休暇中の従業員のメールボックスに届いたメールを削除するシステムを採用しました。メールの送り主には、その従業員の不在が伝えられ、別の従業員に連絡するようメッセージが配信されます。

 ダイムラー社は13年12月、休暇の際に受け取った電子メールは削除してもよいとしています。メールの送り主には、その従業員の不在が伝えられ、別の従業員に連絡するようメッセージが配信されます。(ただ自動返信にして勤務時間に折り返すことが推奨されている)。
 10年、通信大手ドイツテレコム (Deutsche Telekom) は従業員に24時間常に連絡可能な状態を求めるのをやめました。
 労働大臣は14年8月、労働者のストレスを取り除くことを企業に義務付ける基本法 「アンチ・ストレス法」 の制定を目指すと表明し、政府の研究機関に効果ある対策の検討を指示しました。


 ジョンソン・エンド・ジョンソンは世界60か国に265以上のグループをもち従業員は12万7000名を数えます。15年7月からグループ4社で、午後10時以降と休日の時間外社内メールへの連絡対応を過剰労働につながるとして原則禁止にしました。管理職や役員も例外ではありません。16年4月から、勤務日の午後10時以降と休日に社内メールを自粛することを全社的に呼びかけています。社員のワーク・ライフ・バランス (仕事と生活の調和) を推進することが目的ですが、緊急案件は対象外となっています。

 会社は、「我が信条(Our Credo)」 をかかげ、2つ目に 「全社員に対する責任」 の項目があります。「社員が安心して仕事に従事できるよう環境を整えるほか、家族に対する責任を十分に果たせるよう (会社が) 配慮すべき」と明記されています。この信条によるものといわれています。
 また、背景として 「勤務時間外にまで業務メールに追いかけられては気が休まらない。せめて夜間と休日は仕事を忘れてリフレッシュしてほしい。その方が勤務時間中の業務効率も上がる」 があります。


 韓国では、業務時間後も上司や同僚から頻繁にメッセージが送られてくることが、社会問題化しました。
 17年8月7日の中央日報の見出し記事「退社後のSNS禁止法案発議、『業務指示続けば延長手当て支給』」 です。

 退社後にカカオトークなど各種ソーシャル・ネットワーキング・サービス (SNS) を利用して出す業務指示を制限する法案が提出された。
 国民の党のイ・ヨンホ政策委員会議長はこうした内容を盛り込んだ 「勤労基準法改正案」 を代表発議したと6日に明らかにした。
 今回の改正案はSNSを通じて行われる直接的な業務指示だけでなく、グループトークルームを通じた間接的な業務指示まで制限対象に含めた。
 例外も盛り込んだ。もし労働時間外の時間にSNSを利用して直接的・間接的に業務指示を出すだけの正当な理由がある場合だ。だが理由が認められてもこれは延長労働に該当するため通常賃金の50%以上を加算して支給するようにした。
 イ議員は 「労働者の相当数が時間と場所に関係なく鳴るグループトークメッセージのため 『24時間出勤しているようだ』 とストレスを訴えている」 と話した。

 大統領選挙で文在寅 (ムン・ジェイン) 大統領は労働時間外の電話、ショートメッセージ、SNSなどを通じた業務指示を制限すると公約し、「正しい政党」 の劉承ミン (ユ・スンミン) 議員も 「定時退勤法」 を大統領選挙の2号政策に掲げ退社後のカカオトークなどSNSを利用した業務指示を禁止するといった。
 一方、韓国政府もこうした業務指示慣行を改善するための対策作りに乗り出した。
 雇用労働部は3日、「労働時間外の業務指示を制限するなど労働者の休息権保障対策準備を推進している」 と明らかにした。退社後のSNSを通じた業務指示のために実質労働時間が増え、労働者が疲労感を訴えるなど副作用が現れ、仕事と家庭の両立が難しくなるという分析のためだ。このため雇用労働部は年末までに労使双方の意見を取りまとめ実態把握に向けた研究を進める。また、昨年 「退社後業務連絡禁止法」 である 「エル・コムリ法」 を施行するフランスの事例も参考にすることにした。
 だがこうした法案や政府の対策が実際に適用されるかに対しては懐疑的な見方もある。会社員のキム・ソクヒョンさん (35) は 「政府が携帯電話をいちいち監視することもできず、チーム内のグループトークで行われる事案を申告することも現実的に難しいだろう」 と否定的な反応を見せた。これに先立ち雇用労働部は昨年提示した 「勤務革新10大提案」 で、勤務時間ではない深夜や明け方に電話、ショートメッセージ、SNSなどでの業務指示を自制するよう勧告している。


 さて、日本はどうでしょうか。
 ダイヤモンド社はジーンリサーチの協力を得て全国の男女200名に 「休日や勤務時間外における仕事上のやり取りについて」 のアンケート調査をおこないました。調査範囲は社内・取引先からの連絡 (メール、電話含む) すべてです。
 Q: 「つながらない権利」は必要だと思いますか?
  はい……73.0%
  いいえ……27.0%

 「はい」 と答えた人の意見は、
 ・プライベートの時間にまで仕事の事を考えたくもないし、縛られたくもない
 ・勤務時間外は自分の自由な時間であって、給料をもらっている時間ではない
 ・多くの場合はタダ働きであり、対応を求めるのは言わば相手の善意につけ込んだ
  フリーライダーである
 「いいえ」 と答えた人の意見は、
 ・勤務時間外であっても、会社員である以上、対応するのは仕方ない
 ・業務上、緊急の問い合わせはあり得るので、まったくつながらないのも問題
 ・お客さんあっての仕事だから、どんな状況でも出られる範囲で対応したほうが良いと思う

でした。
 携帯は、便利でしょうか、不自由でしょうか。

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ILO総会でのセクハラ対策条約議論で                                 日本政府 「態度保留」
2018/06/05(Tue)
 6月5日 (火)

 ILOの第107回総会が、5月28日から6月8日までジュネーブ開催されています。総会は、毎年1回行われ、ILO加盟国187カ国の政府、労働者、使用者からなる代表団が一同に会する最高意思決定機関で、ILO条約などの国際労働基準の策定を含め、労働問題に係る議論を行います。
 今回は7議題について議論されますが、メインテーマは 「仕事の世界における男女に対するハラスメント」 (「Ending violence and harassment against women and men in the world of work」 ) です。
 ILOにはこれらを直接取り上げた基準は存在しませんでした。ディーセント・ワークと相容れず、許容できない問題に取り組む緊急の行動を求める声に応え、今年は新たな基準の採択を目指す2回討議手続きの1回目の討議が行われます。
 『仕事の世界における男女に対する暴力とハラスメントに終止符を打つ』 と題し、仕事の世界における暴力とハラスメントの現状を、その内容、関係者、発生場所、影響、推進要素、リスク要因、危険度が特に高い職種や集団などの切り口から解説し、国際・国内の取り組みをまとめた報告書 (Report V (1) ) と、これに関する基準設定についての加盟国政労使の見解を記した報告書 (Report V (2) ) の2冊の討議資料をもとに、2年越しの検討が開始されます。

 長文ですが 、ILO駐日事務所の 「第107回ILO総会の議題について」 をコピーします。

 第5議題 「仕事の世界における男女に対する暴力とハラスメント (基準設定、第一次討議)」
 仕事の世界における男女に対する暴力とハラスメント対策に取り組むための労働基準につい て、今回の第107回 ILO 総会において第一次討議が行われ、次回の第108回総会におけ る第二次討議を経て基準の採択を目指すものである。

【仕事の世界における男女に対する暴力とハラスメントの現状】
 近年、仕事の世界における男女に対する暴力及びハラスメントに対する問題意識が高まって きており、対応措置を早急に取ることが求められている。この問題に対する対策は持続可能 な開発のための2030アジェンダの 「目標8.5の女性及び男性の完全かつ生産的雇用及びディーセント・ワークの達成;目標10の国内及び国際間の不公平の低減;目標3のすべての人のための健康な生活の確保及び福祉の増進;目標5のジェンダー平等の達成及びすべての成人女性及び少女の権利拡張」 と密接に関連している。

 仕事の世界における 「暴力」 又は 「ハラスメント」 について現在世界的に受け入れられている定義はないが、2016年の仕事の世界における男女に対する暴力に関するILO 専門家会議では、暴力及びハラスメントを身体的、精神的又は性的な痛手又は苦痛を及ぼす可能性の高い許容できない一連の振る舞い及び慣行としている。

 労働関連の暴力及びハラスメントについては、定義していない国、身体的行為に限っている国もあるが多くの国々では身体的及び精神的行為の両方を含んでいる。また、別の形態の定義では、行為そのもの (殴打、侮辱、悪態及び怒鳴ることなど) より、行為の結果また影響 (痛手、又は尊厳の喪失) に重点を置いている。

 身体的暴力の例として、職場における銃乱射事件及び殺人事件となる事案があるが、死者を出す暴力は、仕事の世界の身体的暴力の少数の事例を占めるのみである。また、仕事の世界における種々の形態の身体的暴力は一般的に精神的暴力に比べて報告される頻度が低い。精神的な暴力及びハラスメントは、 一連の口頭又は非口頭の虐待、セクシャル・ハラスメント、弱い者いじめ及び言葉による虐待・脅迫を含んでいる。

 性的暴力及びセクシャル・ハラスメントには、欲せざるコメント又は口説き、ジョーク、短い身体的接触などが含まれる。一般的な性別に基づく暴力と同様に、成人男性及び少年も性的な暴力及びハラスメントの犠牲となり得るが、対象の多くは、成人女性及び少女である。セクシャル・ハラスメントには、仕事に関する決定と関連して労働者が性的な接待を要求される場合もある。労働現場の組織又は構造から生ずる心理社会的リスクも、それが犠牲者の尊厳、安全・健康及び福祉に影響を及ぼす場合には、暴力及びハラスメントとなる。労働環境の劣化、分離及び労働者にそのスキルに相応する職を与えないことを含む労働条件や不当なノルマ (非現実的な処理件数・期限等) も一種のハラスメントと見なされる

 【暴力及びハラスメントの対象】
 潜在的に、誰でも暴力及びハラスメントの行為の加害者及び被害者となり得る。暴力及びハラスメントは職場内部の水平 (同僚間) 及び垂直 (上司と部下の間) の関係 において、また顧客や第三者など職場外部の人との間でも起こり得る。医療、教育、接客及び運輸部門においては、労働者が接触する顧客や一般公衆との間に生ずるケースも多い。

 暴力及びハラスメントは、様々な状況・要因と関連し、しばしば、仕事の世界及び一般社会に働くダイナミクス (力関係、ジェンダー規範、文化的及び社会的規範、差別意識など) により影響される。性別に基づく暴力及びハラスメントには、男性と女性の間の不平等な力関係から生じている場合、被害者の行動が社会的に受け入れられている性別役割に一致しないがゆえに行われている場合、妊娠・出産等と関連するマタニティー・ハラスメントなどがある。ジェンダーに基づく暴力及びハラスメントはジェンダー不一致の男女に対して行われレスビアン、ゲイ、両性愛者、トランス及びインターセックス (LGBTI) の人々が対象となる。

 仕事の世界における暴力及びハラスメントが起こりうる状況としては、仕事の行われる公的・私的空間、給与の支払い場所、食事又は休憩をとる場所、通勤途上、仕事に関連した旅行・訓練・イベント・クリスマス会などの行事、及びEメールなどを使って行われる連絡などがある。そして、仕事の世界における暴力及びハラスメントの被害者及び加害者は労働者、使用者、第三者 (取引先、顧客、サービス提供者、患者、一般公衆) と多岐に渡る。身体的暴力及びハラスメントは、教育、ヘルスケア、ソーシャルワーク、行政、宿泊・飲食業のサービスのような労働者が公衆と直接接する職業において頻繁に報告されている

 【労働者及び企業に対する影響】
 身体的な暴力及びハラスメントは、明白な身体的な傷跡のみならず、リハビリテーション及びカウンセリングを必要とする精神的傷跡を残すことがある。精神的な暴力及びセクシャル・ハラスメントは、不安、抑圧、頭痛、睡眠障害などを引き起こし、仕事の遂行能力に悪影響を及ぼす。

 経済的観点では、性的暴力及びハラスメントは、しばしば女性が労働市場に参入すること及び職に留まることへの障害となっており、女性労働者の所得能力の低下、男女賃金格差拡大に寄与している。企業にとって暴力及びハラスメントは、常習的欠勤の増加、疾病手当及び管理費用の増大を招く。また、虐待された労働者が適切なサポートなしに会社に留まる場合、生産性はしばしば低下し、それが企業の費用を増大させるほか、被害者が離職した場合には、新規労働者の採用及び訓練費用として負担増となる。さらに企業の評判・イメージの観点か らマイナス効果がある。

 【既存の対策と枠組み】
 強制労働・児童労働・差別撤廃等に関連するILO基本条約は暴力及びハラスメントに関連する対策を内在しているほか、夜間労働者、家事労働者、先住民及び種族民、船員などを対象とした国際労働基準では、一定の種類の暴力又はハラスメントに言及している。また、労働安全衛生関連の基準は、暴力及びハラスメントに直接言及していないが、労働者の安全と健康確保の観点から、その防止及び管理に関係している。しかしながら、これらは広くすべての労働者の保護と暴力及びハラスメントの防止を目指したものではない。

 ヨーロッパ社会憲章では、加盟国が使用者及び労働者の代表と協力して意識を高め、情報を提供し、職場におけるセクシャル・ハラスメントとモラル・ハラスメントの両方を防止することを求めている。米州では 「女性に対する暴力の防止、処罰及び撲滅に関する米州条約」 が多くの国における女性に対する暴力に関する法律の採択を促している。アフリカにおける女性の権利に関する 「人権および人民の権利に関するアフリカ憲章」 の議定書 が各国の職場におけるセクシャル・ハラスメント対策に寄与している

 暴力及びハラスメントのない職場で働く権利、あるいは仕事の世界における暴力及びハラスメントの禁止が、多くの国々の法律、判例法及び団体協約において規定されている。多くの場合、権利付与及び禁止は、労働法、刑法及び差別禁止法で、防止措置は労働安全衛生対策についての法律で規定されている。職場の精神的暴力及びハラスメントは、「言葉による暴力」、「弱い者いじめ」、「暴力」 又は 「ハラスメント」 などの用語に基づいて規制されて いる。

 暴力及びハラスメントをOSHマネジメントシステムの対象としている場合には、労働者参加のもとに危険要因 (職場の暴力及びハラスメントを発生させる精神的危険要因を含む) を予測し、評価し、対策を講じることになる。労働安全衛生法令で職場における該当行動の識別法と防止方針の策定、ハラスメントに関する意識向上活動、苦情手続の確立を求めている国もある。暴力及びハラスメントに関する内部紛争解決機構の設置を義務付けている国もあり、苦情の訴え・通報に基づく対処がなされる。また多くの国々では、外部紛争解決機構が、提起された苦情に基づき、一定期限内に調査、その他の措置を取っている。

 【第一次討議】
 第一次討議では、条約・勧告における暴力及びハラスメントの定義、対象となる労働者や暴力及びハラスメントが起こる状況などの範囲、すべての形態の暴力及びハラスメントの禁止、暴力及びハラスメントを受けるリスクの高い労働者 (妊婦、HIV感染者、移民、LGBTI等) が差別を受けない等労働者の権利、リスクアセスメントに基づく防止対策、労働者への情報 提供と訓練、法令の施行、被害者支援等の規定について検討される。


 ILOは、総会にむけて各国に、会議報告書のためにもっとも代表的な使用者・労働者組織と協議のうえ、2017年9月22日までに見解を提出することを要求しました。日本でも、政府、経団連、連合などが提出しています。
 報告書への条約制定にたいする日本政府の見解は 「YES」 でした。しかし 「当該条約では、各締国が仕事の世界におけるあらゆる形態の暴力およびハラスメント、とりわけあらゆる形態のジェンダーに基づく暴力を禁止す国内法、とりわけあらゆる形態のジェンダーに基づく暴力を禁止す国内法令を定めるべきであると規定すべきか?」 には回答しませんでした。


 6月4日の共同通信発信の見出し記事 「ILO、セクハラ対策条約制定へ 米反対、日本は態度保留」 です。
「【ジュネーブ共同】 国際労働機関 (ILO) の委員会は2日、職場でのセクハラや暴力をなくすための国際基準の枠組みについて、拘束力を持つ条約を制定する方針を決めた。社会規範の異なる各国の事情に合わせるため、勧告を作成し条約を補完する。会議筋が明らかにした。
 世界各地で性被害を告発する運動が広がる中、セクハラを含めたハラスメント対策は初の国際基準制定へ一歩前進することになった。
 会議筋によると、委員会の議論では、欧州連合 (EU) 各国や中国、中南米、アフリカ諸国などが条約制定に賛成。米国、ロシアなどは勧告にとどめるべきだと反対し、日本は態度を保留した。」

 共同通信の発信を、6月4日の東京新聞 【ジュネーブ=共同】 から補足します。
「(日本は) ハラスメントの定義などをきちんと議論する必要があるとしている。……
 来年度の年次総会での条約制定を目指す。条約を批准するかどうかは各国が判断する。……
 5月28日に始まった委員会には各国の政府・労働者。使用者代表が参加し、ILOがまとめた国際基準案を基に議論を進めてきた。当初、枠組みを先に決める予定だったが、議論が紛糾したため後回しにしていた。
 国際基準案は職場でのあらゆる形の暴力とハラスメントの禁止を目指すもので、ハラスメントの定義や、対象となる労働者や行為者の範囲、防止措置なども盛り込んだ。」
「日本政府は 『勧告が望ましい』 との態度を崩さず、ILOのまとめた基準案の内容を弱めるような修正案を相次いで提出するなど 『使用者側寄りとみられてもしかたがない』 (外交筋) との指摘もある。……関係者は 『条約ができても日本は批准しない恐れもある。国際的な反ハラスメントの動きに取り残されかねない』 と懸念する。」

 この後は、6月6日にILOの委員会が職場でのセクハラや暴力をなくす条約制定の方針を盛り込んだ報告を採択、8日にILO総会で報告を承認、その後、条約案と勧告案を議論して、2019年6月頃、ILOの年次総会で条約と勧告を制定する予定です。


 昨年3月28日、政府の働き方改革実現会議が決定した 「働き方改革実行計画」 には 「職場のパワーハラスメント防止を強化するため、政府は労使関係者を交えた場で対策の検討を行う」 と盛り込まれました。これをうけて 「職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会」 が10回開催され、3月30日に 「報告書」 が発表されました。
 検討会では、事業主に対する措置義務の検討を中心に検討を進めるという意見が多数をしめました。しかし使用者側委員はガイドラインに固執し、最終的にまとまりませんでした。ILOにおける日本政府の対応をみると、検討会における使用者側の “自信” が理解できます。

 「仕事の世界における男女に対する暴力とハラスメント」 報告書の内容は日本の労働者にとっても喫緊の課題であり渇望するものです。
 安倍政権が掲げる 「すべての女性が輝く社会づくり」 「女性の活躍」 とハラスメント防止に取り組みの放置は矛盾します。厚労省は、来年のILO総会にむけ新たな「職場のパワーハラスメント防止のための検討会を開催し、広く意見を聴取して職場のハラスメント対策を策定する必要があります。
 労働者の人権、人格権・尊厳を否定する日本政府の姿勢を、世論を巻き込んで転換させ、来年のILOの年次総会で条約と勧告を批准させるための運動を進めていかなければなりません。
 

 「ILO駐日事務所の『第107回ILO総会の議題について』」
 「ILOの第107回総会に向けた報告書」
 「ILOの第107回総会に向けた報告書」
 「ILOの第107回総会に向けた報告書」
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