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どうするストレスチェック制度
2018/02/05(Mon)
 2月5日 (火)

 15年12月1日にストレスチェック制度の実施が開始されてから2年が経過しました。
 様々なところから様々な意見がでています。

 従業員が50人以上の企業は年1回の実施が義務づけられましたが実施状況はどうでしょうか。
 企業は実施結果を所轄の労働基準監督署に報告する必要があります。結果は、17年6月末時点で、実施義務対象事業場のうち82.9%が実施していました。その事業場でストレスチェックを受けた労働者は78.0%でした。さらにそのうち医師による面接指導を受けた労働者は0.6%でした。
 ストレスチェックを実施した事業場のうち集団分析を実施した事業場は78.3%でした。

 17年12月21日の毎日新聞は、多くの企業で高ストレスと評価されても医師面談に手を挙げる人が少ないことが課題になっていると報告しています。理由は、高ストレス者が医師面接を受ける際に会社に申し出なければならないからです。義務化以前から取り組んでいる企業では逆に 「よほど会社に物申したい人以外、なかなか手を挙げなくなった」 といいます。労働者は 「メンタルヘルス不調者のあぶり出し」 に利用され不利益な対応をされるのではないかという恐れから相談の心理的ハードルが高くなったといいます。体調不良者は相談するのをやめたり、社外の相談できるところにむかいます。
 以前は、保健師ら産業保健スタッフがまず面談し、深刻な状態の場合は本人の同意を得て会社と連携して対処していました。

 ストレスチェック制度の導入・実施に至るまでにはかなりの紆余曲折がありました。(2015年12月1日の 「活動報告」)
 法案の議論が進むうちに 「メンタルヘルス不調の未然防止」 が 「メンタルヘルス不調者の未然防止」 に変えられました。使用されるストレスチェックの 「票」 は 「仕事のストレス要因」 だけでなく 「心身のストレス反応」 「周囲のサポート」 に関する項目も一緒になっている57項目か、短縮版の23項目のアンケートが盛り込まれていることが必須になりました。

 「メンタルヘルス不調の未然防止」 とは 「予防医学」 の一次予防として職場のストレス要因をあぶり出し環境改善を行うことです。しかし改正法の運用に際しては 「仕事のストレス要因」 の分析は努力義務になりました。
 代わって 「メンタルヘルス不調者の未然防止」 のために二次予防 「早期発見」 を 「心身のストレス反応」 でおこなうことが目的になりました。事業場によって労働者1人ひとりの精神状態に関する検査とデータ作成が (世界で初めて) 合法的に行える、労働者は第三者から 「心の管理」 が行われることになりました。しかし 「あぶり出し」 を含めて結果への対処は自己責任です。
 
 制度をわかりやすくするためにイギリスの例を紹介します。
 イギリスのストレスチェックは 「職場のストレスの多くの原因は、人事関係の問題である。職場のいじめ、長時間労働の慣習、人員整理とそれによって残された人々にかかる作業負荷、そして、女性差別や民族差別のようなことは、全て人事が対処すべき問題である」 ととらえ、企業が職場のストレスレベルを測定し、その原因を特定し、問題に取り組むスタッフに役立てることを目的としています。
 日本のように個人の 「心身のストレス反応」 をチェックして個人対応に導くものではありません。わかりやすくいえば 「仕事のストレス要因」 「周囲のサポート」 の問題から 「心身のストレス反応」 が起きるという捉え方です。
 イギリスと日本とは、職場全体の問題か、個人的問題かと捉え方が大きく違います。

 その典型が厚労省のメンタルヘルス対策、長時間労働対策です。
 「過重労働による健康障害防止のための総合対策」 「労働時間等見直しガイドライン」 などが策定されています。しかし通達や指針などで、禁止の強制力を持つ法律ではありません。使用者にとっては努力義務で遵守しなくても違法にはなりません。労働時間についてはあらためていうまでもなく労基法がザル法に改訂されています。
 「過重労働による健康障害防止のための総合対策について」 です。
 「事業者は、労働安全衛生法等に基づき、労働者の時間外・休日労働 時間に応じた面接指導等を次のとおり実施するものとする。
 ① 時間外・休日労働時間が1月当たり100時間を超える労働者であって、申出を行った
  ものについては、医師による面接指導を確実に実施するものとする。
 ② 時間外・休日労働時間が1月当たり80時間を超える労働者であって、申出を行ったも
  の (①に該当する労働者を除く。) については、 面接指導等を実施するよう努めるもの
  とする。
 ③ 時間外・休日労働時間が1月当たり100時間を超える労働者 (① に該当する労働者
  を除く。) 又は時間外・休日労働時間が2ないし6月の平均で1月当たり80時間を超え
  る労働者については、医師による面接指導を実施するよう努めるものとする。」
 長時間労働が前提にあり、100時間労働は違法ではないが 「100時間を超えたら体調を崩すものが出るかもしれない」 との判断から 「医師による面接指導」 を取り上げています。

 使用者が 「100時間を超えた者は医師による面接指導」 を実行したら 「使用者の安全配慮義務」 は履行したことになり、訴訟などを提起されても反論し、労働者の自己責任と主張できることになります。
 ストレスチェック制度も同じです。長時間労働などの 「仕事のストレス要因」 を解決しようとしないから 「心身のストレス反応」 のチェックが必要なのです。


 1月15日の日経BizGateに 「ストレスチェックで分かるブラック企業」 が載りました。
 筆者は医師で株式会社健康企業代表の亀田高志さんです。
「……ストレスチェックを拒否した人は実に2割を超えていたのです。この2割以上の拒否した人の中にこそ、不調の恐れのある人が含まれているかもしれないのですが。……
 ストレスチェックは……働く人が職場ストレスや自覚症状に気付いて、うまく対処することで、不調にならないよう 『未然に防止するため』 という謳い文句で導入されました。
 ストレスチェックは定期健診と違って拒否しても構わないのです。既にうつ病で治療中の人があえて受ける必要は無いでしょうし、それを会社には黙っていたい場合もあるでしょう。
 メンタルヘルスにかかわる深刻な悩みを職場で尋ねてほしくない人もいるからです。拒否したい理由は他にもあります。例えば、ストレスに関する質問に正直に回答しても大丈夫だろうかと心配する人も少なくありません。リストラやコスト削減の影響で、人員がギリギリの職場で働かされていると感じている人は、職場でストレスの状況を尋ねられること自体に違和感を覚えるかもしれません。
 また、雇用や身分が保障されていないと感じる人は、チェック後の安全が確保されていないと不安を感じて、回答しない可能性があります。そのため、受検を拒む従業員に、就業規則で無理やりストレスチェックの受検を強制したり、懲戒してはならないことが法律で定められています。」

「しかし、現実にはストレスチェック制度の義務化によって、かえって 『会社のブラック度』 が分かるようになってしまいました。ブラックな面をオブラートに包んで触れないようにしていたのに、それが 『はげ落ちた感じ』 と言えるかもしれません。
 日本では 『従業員のことを大切に』 と謳う会社は少なくありません。株主だけを最優先するのではなく、従業員や顧客、地域社会を重視するのが日本的な経営だという見方もあるでしょう。しかし、法的義務であるストレスチェックを実施せず、あるいはおざなりにやりっ放しにするなど、従業員のことを粗末に扱うことが判明した会社もかなりの数に上っています。このほか、チェックを実施しているけれど、それが形ばかりにとどまる会社も少なくありません。初年度では平成28年11月末か翌年3月末までが実施期限だったのに、労基署の指導があってはじめて、重い腰を上げた会社もかなりあります。」

「職場の健康問題を話し合う衛生委員会を開催し、そこでストレスチェックに関する懸念や意見を従業員側から集めるように会社は求められています。そして、従業員に不利益な取り扱いをしないと説明しなければならないのです。これらを怠っている会社もあります。
 実施後には丁寧に評価や判定を行う必要がありますが、受検した人の10%前後と想定される高ストレス者の割合が、それをはるかに超えて高い会社もあります。
 反対に高ストレス者の割合が限りなく0%に近いところもあります。この場合、受検した人たちが正直に書いた結果であればよいのですが、パワハラが横行するような職場で回答することで危険が及ぶと考え、うそを書いていることもあり得ます。
 このようなストレスチェック制度の不適切な運営やストレス対策として好ましくない状況は、会社のブラックな面のあらわれなのです。」
「ストレスチェックを実施する一方で、受検する人のプライバシーを守るというお題目が加わり、上司にとって部下の回答結果はブラックボックスとなってしまいました。悪気はなくとも部下がどのような回答をしているのかを気にしている管理職は相当な数に上ります。」


 そして筆者は 「職業性ストレス簡易調査票の57項目の質問は、ほとんどが上司と対話ができれば事足りる問題ばかりです。仕事や職場の状況について困っているなら、素直に上司に相談できると簡単にストレスの原因が解消される可能性があります。それによって職場の人間関係が好転することもあるでしょう。その結果、仕事の満足度も高くなるかもしれません。」 といいます。
 つまりは、日常的コミュニケーションがしっかりとれていればあらためてストレスチェックを実施しなくても済むことです。残念ながら職場が殺伐としているから、上司が部下との関係性ができていないから、あらためて制度として義務付けて実施することになっています。
「このようにストレス解消のヒントは、ストレスチェック制度の中ではなく、その多くは日ごろからの上司と部下との直接の対話の中にあるのです。」


 しかし、これまでも繰り返してきましたが、実際のストレスチェック制度には他の目的があるのかもしれません。(16年11月18日の 「活動報告」 参照)
 現場の労働者は、ストレスチェック制度が実施されても、検査を受けることは義務ではありません。法律によって拒否できます。
 やむなく検査をうけざるを得ないとしても 「心身のストレス反応」 は拒否しましょう。
 チェック票にマイナンバーを記載することに反対しましょう。個人情報が流出して知らないところで管理される危険性があります。
 一次予防が目的なら、チェック票は無記名での提出も有効です。無記名でも 「検査結果の集団ごとの分析」 はできます。
 労働者と労働組合は、実施されても、体調不良者のリストアップ、排除・退職勧奨等に繋がらないよう監視をして行く必要があります。

   「活動報告」16.11.18
   「活動報告」15.12.1
  「いじめメンタルヘルス労働者支援センター」ホームページ・ご相談はこちらから
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