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規制は労働者の生活を守るためのもの
2017/12/26(Tue)
 12月26日 (火)

 全労働省労働組合から 「季刊労働行政研究」 17.11号が贈られてきました。その中に 「労働基準監督官座談会~真に求められる 『働き方改革』 は何か~」 が載っていました。
 政府主導で 「働き方改革」 が進められているなかで、労働行政の第一線で活躍する労働基準監督官が労働時間問題や労使関係の変遷、今労働現場で何が起きているかなどについて座談会形式で明らかにしました。その抜粋です。

○労働時間を巡る問題の変化 についてです。
A (ベテラン監督官) 私が入省した当時 (1980年代後半) も労働時間をめぐる問題はあ
 ったが、行政の中で過重労働の対策はそれほどウェイトはなかった。……ただし一部の業種を
 除き女性労働者の深夜労働が禁止されており、その違反は重視されていた。一部の使用者は女
 性労働者の深夜業務を隠そうと、二重の帳簿を作るなどしていたが、時間外労働手当や深夜労
 働手当は支払っている場合が多かった。手当を支払わずに長時間労働を行なわせるということ
 は少なかったように思う。
  かつては、使用者に労働者に対する一種の公的な責任感があったからではないか。現在はそ
 うした 「旦那衆」 的な意識が薄れ、社会に貢献するというより、「自分さえ儲かればよい」
 という意識が強くなっていないか。企業が地域の中で役割を果たすという意識も薄くなってき
 ている。
C (若手監督官) 使用者の姿勢として、法律ギリギリで法律に引っかからなければ何をして
 もいいという感覚がひろがっているように感じる。使用者から 「(法律上) クロと言えるか
 どうかを言え」 と言われることがよくある。監督官は法律を 「武器」 に仕事をするので、法
 律違反か否かということは基本であるが、使用者による法令ギリギリで構わないという姿勢
 の下で労働者が苦しんでいる姿が見える。

 「過労死」 の言葉が初めて登場するのは78年です。そして過労死はサービス残業とセットになっていきます。95年に成果主義賃金制度が導入されます。
 「使用者に労働者に対する一種の公的な責任感」 は労働者の保護という発想で、家族を含めた生活・生活時間にもおよびました。
 しかし昨今は、さらに使用者に対する 「物言う株主 」 の発言も大きくなっています。より多くの利益を株主に配当するため、労働者が犠牲になっています。労働者も、会社にしがみつく 「物言わぬ労働者」 になっています。


○労使関係の変化と腹らきづらさ について
司会 厚労省が毎年6月に公表している個別労働紛争解決制度の施行状況のなかで、「民事上の
 個別労働紛争」 の 「主な相談内容」 の件数を見ると、最近10年では 「解雇」 の割合が減
 少する一方、「いじめ・嫌がらせ」 の割合が10ポイント以上増加している。この点も、労使
 関係が変貌してきたことの表れではないだろうか。
D (中堅監督官) 今は、「いじめ・嫌がらせ」 が発端になり、監督署への相談につながるケー
 スが多いと思う。自己都合退職などのケースも、「いじめ・嫌がらせ」 が関係している場合が
 多い。労使の良好な関係があれば表面化しない法令違反も、「いじめ・嫌がらせ」 などをき
 っかけに表面化することが多い。
C 労使の力関係の変化も影響しているのではないか。労使間の問題も、労働者自らが使用者に
 申し立て、修復ができれば大事には至らない。それが、自分では直接使用者に言えず、名前も
 出せない、という相談が増えている。使用者側の力が増しているのか、労働者の個別化や孤立
 化が進んでいるのか、労働者がみんなで解決するという回路が失われているのではないか。
 その結果、企業全体の問題を労働者個人が監督署に持ち込むということもある。
F (ベテラン監督官) 労働組合の組織率低下は、その原因でもあり、結果でもあるだろう。
 いずれにしても、労働者にとって働きづらい環境が広がっているのではないか。

 労働組合への相談も同じような状況があります。企業名どころか、業種も職種も語らない相談がかなりあります。具体的状況がわからないと原則的な回答しかできません。せっかく相談しても解決にはつながりにくい状況が続きます。
 会社名を聞くと、一流会社もたくさんあります。しかしそのような会社ほど労働組合はあっても機能していません。
 使用者は、解雇をすると争議になるので、労働者から辞めると言わせるようにさまざまな 「いじめ・嫌がらせ」 をおこないます。しかして周囲の労働者は見て見ぬふりをし、お互いに孤立を深めていきます。そのような会社での雇用が継続しても居心地はよくありません。トラブルは再起します。


○過重労働はなぜなくならないのか についてです。
A 歩合制を取り入れた賃金制度のもとでは、相当残業を行なわなければ必要な収入を得られな
 いという事情もある。とくに自動車運転、営業などの職種では、働かなければ稼げない状況に
 ある。
  また、人員削減が進み、営業に伴う伝票処理の事務等を行う補助者がいなくなったことによ
 り、1人であれもこれもやらなければならないという状況もある。
C 80時間分の固定残業代を組み込んだ、計算すると最賃すれすれの賃金を設定し、「80
 時間は残業させなければ損」 という感覚なのか、残業80時間を前提にシフトを組むという、
 残業を労働者の自由意思でやっているとは到底言えない事情もある。

 労働者はローンを抱えていると、生活費のゆとりは残業代で稼ぐことになってしまいます。労働者は残業代をあてにしますが、使用者もまた労働者の残業をあてにした体制を作ります。
 トヨタの月60時間分の残業代を支払う裁量労働制などはまさにその典型で、残業の強制です。

○使用者の意識変化 についてです。
D 賃金不払 (サービス) 残業の理由を本人の能力によるものだとする使用者が多いのはたし
 か。一方、労働者のもう力を引き出せない使用者の責任が意識されることは少ない。
C 大手企業も、三六協定の特別条項などにより法律に合わせる手法が進んでいるだけで、長時
 間労働に対する根本的か解決に向かっているわけではない。
B 大企業の対応で気になるのは 「長時間労働につながる効率の悪い仕事は、中小下請けに任
 せよう」 という姿勢だ。
C 以前、トラック運送業の長時間労働を指導した際、当該の会社から下請を活用するという対
 策が示されることがあった。労働法の適用を受けない働き手を使う動きともつながっていく。
 こうした請負の取引関係にも何らかの規制が必要なのではないか。

 かつてリストラがはびこった時、会社は中高年労働者を辞めさせました。その結果、社員の世代の構成にひずみができ、若手を指導できる世代がいなくなったと言われました。その時の若手が管理する立場になっています。どのように指導したらいいかわからない管理職が増えています。
 孤立化はお互いの思いやりを奪います。正規労働者は非正規労働者の処遇や精神状況に思いを巡らすことはあまりありません。そのような中で改善をはかるとき、無意識に下請け、外注に無理強いを行なっています。改善されるのは自分の身の回りだけです。


○過重労働対策に問題はないか についてです。
C 現在の労働時間に関する法制度は複雑で理解しにくいのではないか。労働者あるいはその家
 族から長時間労働に関する相談に対し、何ができるかという説明を行なおうとすると、相談者
 が理解できなくなってしまうことがある。……違反は実物の36協定を見てみないとわからない。
 それを伝えると、相談者に驚かれる。
F 法制度に現場の声が反映しておらず、労使が妥協を探る中で、ますます複雑な仕組みとなっ
 ていないか。労働者が一目見てわかる法律であるということは、労働法として大切な要素では
 ないか。
A 当初は職場の労使関係の中で対等な話し合いが行なわれることで妥当な規制ができると考え
 られていたが、これが実態に合わなくなってきているのだろう。
  使用者側が勝手に協定に押印してしまうなど、労働者代表が全く無力なばあいもあり、36
 協定のなかにも手続的に無効なものが一定存在すると思う。
C 時間外労働の上限を法令で規制するというのは重要だと思う。ただ、現在議論されている時
 間では長すぎると思う。さらに適用除外を作らないようにするという姿勢が大事だと思う。
 規制は労働者の生活を守るためのものであり、こうした趣旨の最低限度に例外を設けるのは、
 最低基準という労働基準法の存在意義を脅かすことにつながるのではないか。
F 高度プロフェッショナル制度の適用者は、管理監督者や裁量労働制とちがい、自分で労働時
 間の配分や仕事の進め方を決められる立場でなくてもよく、時間外労働を命じられる側の者。
 従来の適用除外制度とかなり異質なものではないか。

 労働法制は、使用者の逃げ道が確保されています。また時間外労働に関する労働基準法はまさしく “ザル” です。労働者の健康・安全・生活を保護するものとはなっていません。逆に労働者保護をうたう 「過労死ライン」 などは指針・通達で罰則規定がありません。
 高度プロフェッショナル制度はこれらをさらに脅かすものでしかありません。
 労使自治が崩れています。使用者にとっては労働者は 「使用人」 となっています。


○行政運営の課題は何か についてです。
C 監督署の指導手段に集団指導というものがあるが、基本的に使用者相手に指導するというこ
 とを不思議に感じている。労働者にとっても、労働法の趣旨、内容を知ることは重要であり、
 労働者を対象とする集団指導があってもよいのではないかと思う。労働者が自分たちの意思で
 労働環境を決められる部分もあるし、変えられる部分もあるのに、こういった意識を労働者が
 持っていない場合がある。自分たちがこういう制度に守られているということや職場を自ら変
 えていけるということを、労働行政が労働者向けに打ち出していくという観点が、弱いのでは
 ないかと思う。
D 労働者の多くは、働き始めてから労働に関する権利や規制を学ぶが、働き始める前に身に
 着けておくことも大事だと思う。法令や制度を早い段階で確実に教えるべきだろう。

 労働法制は誰のためのものかという議論が起きてきます。本来労働者のための労働法制が、使用者が最低限を守ればいいもの、違法がばれなければいいものになっています。
 それを許しているのが労働組合であり、労働法制の知識を身に着けていない労働者です。日常的に理不尽と思うこと、不思議に思うことは周囲の仲間に話しかけ、解決の道を探ることが必要です。労働法制は活用しなければ宝の持ち腐れです。解決は声を上げることから始まります。


 労働基準監督官は日常的にたくさんの疑問を抱きながら臨検などの業務を遂行していることが垣間見られます。疑問が多いということは、労働者にとって働きづらい職場がたくさんあるということです。
 労働者と労働組合は、第三者や労働基準監督官に頼るのではなく、まず自分たちで労働法制の知識を習得し、自分の職場に照らし合わせて違法行為があれば指摘して改善させる、労働法制を自分たちの下に取り戻すことが必要です。
 そのうえで使用者が違法行為を続ける場合は労働基準監督署との連携が必要となります。

  当センター「いじめメンタルヘルス労働者支援センター」ホームページ・ご相談はこちらから
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