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過酷としか表現できない医療現場
2017/11/17(Fri)
 11月17日 (金)

 11月7日の毎日新聞に 「香川 年2258時間残業 3病院67人が月80時間超え」 の見出し記事が載りました。
 毎日新聞の情報公開請求で、香川県立病院で2016年度の1年間に計2,258時間の時間外労働をした勤務医がいたといいます。3病院に16年度に在籍した正規・嘱託の医師計207人のうち67人の残業時間が 「過労死ライン」 とされる月80時間を超えていました。勤務医の長時間労働が常態化している一端が明らかになりました。
 法定労働時間は1日8時間、週40時間ですが、2つの病院は 「月100時間を6回を限度に、年800時間」、「月70時間を3回を限度に、年480時間」 まで延長可能の36協定を結んでいました。3病院で月の残業時間が協定上限を超えたのは計38人、年間では計46人。年1000時間以上の時間外労働は計20人に上りました。
 医師には正当な理由なく診療を拒めない 「応招義務」 があります。各病院は長時間労働の背景に救急患者への対応や医師不足がある、「医療はストップできない」 と説明します。

 昨年1月、新潟市民病院の女性研修医 (当時37歳) がうつ病を発症して自殺しました。うつ病発症直前1カ月の残業時間が160時間を超えていたとして、今年5月、労基署が労災認定しました。
 市への情報公開請求では、同院の研修医30人以上が昨年6月の1カ月間に80時間以上の時間外労働をしていたことが分かりました。
 新潟市民病院は医師不足から多くの科で紹介状がない患者は受け付けていません。
 今、「働きかた改革」 が声高に語られ、政府は1か月あたりの時間外労働は最長でも100時間未満 (これだけですでに長時間) の法案を準備しています。しかしそこでも医師の時間外労働は制限がないまま法制施行から5年間猶予されます。

 このような状況をふまえ、ある研究会で 「医療労働の現場は、いま」 のテーマで医療現場の労働組合役員の方をまねいて講演会を開催しました。
 現在の病院を取り巻く状況です。
 医療法の改訂によって 「新しい医療関連サービス (派遣・委託等) の会社」 等が多くの病院の業務を請け負っています。製薬会社、医薬品卸、医療機器メーカー、医療事務用コンピューターなどです。その分職員は少なくなっていき、外部が儲かるようになっていて、産業の食い物にされています。
 病院の収入のほとんどを占める 「診療報酬」 改訂で、マイナス続が続き、病院の経営が悪化してきています。
 医療の高度化・複雑化等で医師・看護師等医療スタッフが不足しています。マンパワー不足です。
 救急外来のコンビニ化、「モンスターペイシェント」 増加に伴い、医療従事者の疲弊が増加しています。ちょっとしたことで救急車を依頼します。また救急外来に老人が運ばれてきます。病院は救急医療から潰れていっています。
 患者と医療者の関係は対等で、サービス提供者と顧客ではありません。しかし医療者が患者を「患者様」と呼び、お客様扱いをして医療者がへりくだった考えを持つ風潮が広がっています。患者はお客様の立場で好き勝手、わがまま放題になってしまっています。「モンスターペイシェント」 については、現在厚労省で開催されている 「職場におけるパワーハラスメント防止対策についての検討会」 でやっと議題に取り上げられました。


 医療関係従事者数です。
 平成24年の厚生労働省大臣官房統計情報部資料では、医師は303,268人で6割が開業医です。医師会が大きな権力をもっています。歯科医師は103,551人です。5人に1人がワーキングプアで年収200万以下です。開業医は6,800人で、この数はコンビニより多いです。1日に4医院・クリニックが潰れています。薬剤師は280,052人です。
 平成25年の厚生労働省医政局資料では、保健師58,532人、助産師36,395人、看護師1,103,913人、准看護師372,804人です。平成23年の厚生労働省大臣官房統計情報部資料では、常勤換算の数値として、理学療法士 (PT) 61,620.8人、作業療法士 (OT) 35,427.3人、視能訓練士6,818.7人、言語聴覚士11,456.2人、義肢装具士138.0人、診療放射線技師49,105.9人、臨床検査技師62,458.5人、臨床工学技士20,001.0人です。

 医療福祉労働者の雇用者数は750万人です。そのうち組織労働者 (労働組合員) は約49.5万人です。組織率は6.6%です。病院8,400のうち約1,900に組合があります。

 医療現場が他の労働職場と違う点です。
 他の労働現場と違って人件費率が高く45%から60%です。材料費30%、経費15%です。医師の平均年手は1,200万円です。
職種が多いです。ほとんどの病院は中小企業です。
 病院は独自でコストを決められません。2年に一度の診療報酬改定、3年に一度の介護保報酬改定に沿ってしか決めることができません。医療法7条は 「利益を出してはいけない」 と謳われています。そのうえで財源削減の自己目的化、質の維持を無視した国の医療政策に左右されています。
 患者の在院日数が短いほど診療報酬の保険点数が高く設定されます。一般病棟では、入院日から14日以内で340点、30日以内で150点、31日以上で50点と早期退院を促す点数制度になっています。病院にインセンティブの意識が働きます。患者が治りきれないうちにでも採算が合わない患者を退院・転院させて追い出し・たらいまわしをする傾向があります。

 医師や看護師等医療スタッフが不足しています。病院経営の内情は年々悪化を続けています。医師の確保ができず、休止となる診療科も目立ち始めています。
 特に産婦人科と小児科です。産婦人科は1人の患者と長時間関わることになります。そして、現在社会問題化なっている貧困状態のなかで子供を置いていなくなる患者もいます。
 また医療訴訟が増えています。患者の意識も変化しています。医療事故については、人びとの興味を引く部分のみを切り貼りした報道によって、事実の一部を誇張して事故の当事者を罪人に仕立て上げ、それを煽り立てることで患者としての権利意識のみが増幅してしまいました。極端に言えば、患者と医療者を 「被害者」 と 「加害者」 に仕立て上げています。
 看護師は離職率が高い職場です。その一方で 「聖職」 意識が植え付けられています。
 その一方で医師総数は増えています。偏っています。
 病院経営にかかる費用は、2008年の全国公私病院連盟の調査では、1床1カ月当たりの平均人件費は72万円、材料費38万円 (うち薬剤費23万円)、経費21万円です。費目では人件費が最大赤字です。
 人件費の中心は医師、看護師です。給与水準は、あまり変化していませんが、人数が増えています。

 2010年の日本医労連の 「看護職員の実態労働調査」 では、看護師の約8割が 「仕事を辞めたいと思っている」 と回答しています。理由の上位2択は 「人手不足で仕事がきつい」 (46.1%)、医療事故の原因です。約9割が 「慢性的な人手不足による医療現場の忙しさ」、約9割が 「この3年間にミスやニアミスを起こしたことがある」 と回答しています。
 かつて看護現場は3Kと言われました。「汚い」 「きつい」 「危険」 です。いまは9Kと呼ばれています。「規律が厳しい」 「給料が安い」 「休暇が取れない」 「化粧ののりが悪い」 「根気が遅い」 「薬に頼って生きている」 が加わります。
 そのため毎年12万人以上が辞めています。免許を持ちながら看護職として働いていない 「潜在看護職」 が約60万人存在します。男性看護師は4%存在しています。
 その一方、高齢化の中で2025年には60万人の看護職人員が不足すると言われ 「2025年問題」 といわれています。
 医労連の 「2011年度夜勤実態調査」 では、2交代の比率は23.7%です。そのうち16時間以上の拘束となる夜勤は6割をこえます。

 訪問看護の利用者は約386,000人です。10年前から15万人増えています。しかし訪問看護ステーションで働く看護師は2010年は約30,000人で10年間に4,000人増えただけです。
 介護保険制度が2000年に創設され、介護サービス利用、介護サービスの供給量も増加しました。しかし労働条件・低賃金に多くの問題を抱えたままです。利用者がサービスを選べる状況になっていません。家族に依存する在宅介護の現状は変わっていません。
 最近介護現場ではサービス利用をおさえるがごとくに 「自立」 というキーワードが利用されています。

 2018年は 「診療報酬」 「介護報酬」 の同時改訂があります。段階の世代が 「高齢者医療」 に流れ込んでいく時代になります。
 医療は 「弱者」 がさらに 「自立」 を要求されて追いつめられる状況にあります。
 自分自身の問題として医療関係労働者と一緒に要求をあげ改善させていくことが必要です。

  当センター「いじめメンタルヘルス労働者支援センター」ホームページ・ご相談はこちらから
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