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労働政策審議会が有識者だけで構成される
2017/09/19(Tue)
 9月19日 (火)

 7月31日、労働政策審議会 「労働政策基本部会」 が初会合を開きました。「労働政策基本部会」 は、昨年12月14日に 「働き方に関する政策決定プロセス有識者会議」 が提出した報告書を受けて新設されました。
 目的は、「現在行われている労働政策についての議論が分科会及び部会単位で行われており、分科会及び部会を横断するような課題については議論されにくい環境にある」 「研究会等や労政審での議論は法改正の具体的な内容が中心となり、中長期的な課題についての議論が不足している」 のでこのような問題に対応するといいます。
 具体的には、「各分科会及び部会を横断する中長期的課題、就業構造に関する課題、旧来の労使の枠組に当てはまらないような課題について審議を行う」 といいます。例えば・技術革新 (AI等) の動向と労働への影響等 ・生産性向上、円滑な労働移動、職業能力開発・時間・空間・企業に縛られない働き方等のような事項について審議します。

 構成員は 「基本部会運営規程」 に 「委員は公益を代表するもののみ」 とあり15人以内です。
 7月31日に開催された部会の委員は12人でした。学者5人、経営者4人、弁護士1人、エコノミスト1人、そして連合の元会長の古賀信明氏です。15人を予定していて残りの3人の枠は企業代表者と労働組合関係者だといいます。公益を代表するものだけでは労使自治が否定されているという意見に対応するため、実態としては労働者代表も含まれているという言い訳も準備されています。しかし決まらないままで止まっていました。8月に内閣改造がおこなわれることになると、改造前にとにかく開催の既成事実をつくっておくということになりました。
 安部政権が推し進めている 「働きかた改革」 は経産省の主導だといわれていますが、8月の内閣改造では、それまで官邸で 「仕掛け人」 として 「働き方改革実行計画」 をまとめてきた加藤勝信内閣府担当相が、厚生労働相に横滑りしています。

 労働政策についてはILOで労使の協議によって決定するということになっています。
 日本でも厚労大臣の諮問機関である労働政策審議会 (労政審) において 「労働者代表」 「使用者代表」 「公益代表」 三者の10人ずつで構成され、合意で決定することになっています。審議会の下にある7つの分科会や部会でも 「三者合意」 が徹底されています。
 「労働政策基本部会」 はそれが覆されています。このようなことを許してしまうと、労働現場の労使関係にも影響が出てきます。

 「有識者会議」 の報告書には 「法制度上は、我が国が批准しているILO条約で要請されているものを除き、法律の制定・改正を行う際に労政審での議論を必ず行わなければならないこととはなっていない」 とし、「働き方やそれに伴う課題が多様化する中、旧来の労使の枠組に当てはまらないような課題や就業構造に関する課題などの基本的課題については、必ずしも公労使同数の三者構成にとらわれない体制で議論を行った方がよいと考えられる」 としています。政府と自民党、財界は、条約の隙間を拡大解釈し、労働政策における労使自治の原則・政策決定のプロセスを否定し、解体しようとしています。
 具体的例として挙げられたのが 「・時間・空間・企業に縛られない働き方等のような事項」 は 「高度プロフェッショナル制度」 を見据えています。


 2015年6月30日に閣議決定された規制改革実施計画に 「多様な働き手のニーズに応えていくため、従来の主要関係者のみならず、様々な立場の声を吸収し、それらを政策に反映させていくための検討を行う」 ことが盛り込まれました。
 これを受け、2016年5月公表の 「規制改革実施計画のフォローアップ結果」 では 「働き方の多様化等により的確に対応した政策作りのため、労働政策審議会等の在り方について検討を行う」 とされました。
 また2016年2月23日、自民党の 「多様な働き方を支援する勉強会」 (会長:川崎二郎、事務局長:穴見陽一) からも 「労働政策審議会に関する提言」 を受けました。そこには 「ILOの政労使三者構成の原則を踏まえ、政策を議論する場面においては、厚生労働省の政務三役が会議に参加するなど、『政』 の役割を強化すべき」 とあります。
 2016年12月14日、これらの意見をうけて設置された 「働き方に関する政策決定プロセス有識者会議」 は 「労働政策基本部会」 の設置を決定しました。
 当初は、「労働政策基本部会」 を労政審本審議会の下に置くことは想定していませんでした。しかし抵抗にあい、本審議会の下に部会として置くことになりました。
 安倍政権の規制改革、働き方改革実現会議が労政審にも進出してきました。


 なぜこのような動きが登場したのでしょうか。
 2015年2月13日、労政審から 「高度プロフェッショナル制度」 に関する建議 「今後の労働時間法制等の在り方について (報告)」 が提出されました。そこには、使用者代表委員と労働者代表委員からの対立する意見が併記されています。「三者合意」 が成立しませんでした。
 規制改革実施計画が閣議決定されたのはその後の2015年6月30日です。


 2015年6月に閣議決定した 「日本再興戦略」 を踏まえて、「透明かつ公正な労働紛争解決システム等の在り方に関する検討会」 が設置され、20回の検討会の議論をへて2017年5月に報告書が提出されました。そのなかにいわゆる 「解雇自由法制」 がありました。
 報告書には 「・解決されていない法技術的論点が多く、現時点で新制度を設けるのは時期尚早等の意見もあった。」 「・解決されていない法技術的論点が多く、現時点で新制度を設けるのは時期尚早等の意見もあった。」 「現行の労働審判制度が有効に機能しており、こうした現行の労 働紛争解決システムに悪影響を及ぼす可能性があることのほか、労使の合意による解決でなければ納得感を得られないので、合意による解決を大事にすべきということや、企業のリストラの手段として使われる可能性があること等の理由から、金銭救済制度を創設する必要はないとの意見があったことを、今後の議論において、十分に考慮することが適当である。」 と記載されています。

 これまでは労政審を経たならば、労働者代表の同意も得たということで法改正の作業に進めたのですがそうは進みません。検討会や審議会からも期待するブーメランの報告が返ってきません。急ぐはずの 「高度プロフェッショナル制度」 の法改正は2年経過しても成立していません。全国過労死を考える家族の会などは必死に反対運動を展開しました。
 安倍政権と経産省は、「働き方改革」・「働かせ方改革」 を強引に推し進めようとしています。そのためさまざまなところで異論が出ています。逆に反対運動が盛り上がっていきます。

 「労働政策基本部会」 はその教訓を踏まえての制度改革です。反対の世論をまき起こさないで決定していく方策がとられます。安部政権は 「働き方改革実現会議」 を設置し今年3月末には 「働き方改革実行計画」 をまとめています。


 では 「高度プロフェッショナル制度」 を巡る状況は、今、どうなっているでしょうか。
 7月13日、連合の神津会長は安倍首相と会談し、これまで反対の姿勢を表明してきた 「高度プロフェッショナル制度」 の創設を 「年104日以上の休日確保の義務化」 などの条件付きで容認する姿勢を表明したことを明らかにしました。安倍首相は 「しっかり受け止めて検討する。経団連とも調整する」 と応じたといいます。神津会長は3月頃から水面下で政府と交渉をつづけてきていたことも明らかにしました。
 労政審を無視し、重要法案を労・公の “ボス交” で決定しようとしました。なおかつ裏交渉を公表してはばかりませんでした。しかし傘下単産などから反対意見に遭遇し、あらためて反対を表明せざるを得なくなりました。

 8月30日、厚労省は残業時間の上限規制と 「高度プロフェッショナル制度」 を労基法改正として一本化した方針を固めて労政審労働条件分科会で概要説明の資料を提出し説明しました。分科会は9月4日にも開催されます。
 一本化のヒントを与えたのは連合です。相反する2つの政策を一緒にすれば連合は反対の意思を表明していてもいつかは折れるとよみ、揺さぶりをかけています。連合は安倍政権に助け舟を出したのです。
 それをふまえて9月8日には 「働きかた改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案要綱」 が諮問されました。「法律案要綱」 は8種類の労働法規の改正を一まとめにした一括法案で48ページにおよびます。
 (1)労働基準法 残業時間の上限規制 ▽裁量労働制の対象拡大 ▽高プロ ▽年休取得促進
 (2)じん肺法 産業医・産業保健機能の強化
 (3)雇用対策法 「労働施策総合推進法」 に改称。働き方改革の理念を定めた基本法
 (4)労働安全衛生法 研究開発職と高プロ社員への医師の面接指導
 (5)労働者派遣法  同一労働同一賃金
 (6)労働時間等設定 勤務間インターバルの努力義務改善
 (7)短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律 (パートタイム労働法) 「パート有期法」 に改称。
   不合理な待遇の禁止 (同一労働同一賃金)。
 (8)労働契約法 期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止に関する規定を削除。期間の
   定めのある労働者は (7) に移す。

 これらの内容がこのスピードで審議し、答申されたのです。15日、労働者側は 「高プロと裁量労働制拡大は必要なく、これらを含む答申は遺憾であり、残念」 と意見表明しました。しかし答申には要綱を 「おおむね妥当」 としました。「高度プロフェッショナル制度」 の導入と裁量労働制の対象拡大に対しては、労働者代表委員からの 「長時間労働を助長するおそれがなお払拭されておらず、実施すべきではない」 の反対意見が付記されました。
 政府は原則2019年4月の施行を目指します。

 安倍政権の経済政策は挫折してしまいました。経済界はそれを克服するには労働市場の改革、雇用の流動化が必要で、生産性向上とコスト削減を目指すとなりふり構わす主張し、労働者の生活や健康には関心を示しません。労働者と労働組合は 「高度プロフェッショナル制度」 の法制化を絶対に阻止しなければなりません。

 9月5日の 「活動報告」 の再録です。
 8月10日、厚生労働省は2016年度 「過労死等に関する実態把握のための労働・社会面の調査研究事業報告書」 を公表しました。
「特に、『把握されている労働時間の正確性』 に関しては、把握されている労働時間が 『全く正確に把握されていない』 場合に比べて、『正確に把握されている』 方が、1週間当たりの残業時間が約6時間短縮される傾向があるほか、年次有給休暇の取得日数の増加、メンタルヘルスの状態が良くなる影響も示唆された。加えて…… 『1週間当たりの残業時間』 に対しては、『把握されている労働時間の正確性』 に関して 『正確に把握されている』 場合や、『残業を行う場合の手続き』 に関して 『事前に本人が申請し、所属長が承認する』 場合や 『所属長が指示した場合のみ残業を認める』 場合において、他の要因よりも長時間労働の抑制に特に強く関連性を有していることが伺えた。 これらの結果を踏まえると、労働者の心身の健康の確保、過労死等の防止に向けては、労働時間を正確に把握することや残業する場合の手続きを適正に行うことが、非常に重要な取組基盤となることが改めて確認された」
 この調査結果からも、「高度プロフェッショナル制度」 は 「過労死促進法案」 です。
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