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「自動車運転従事者」 は過労死予備軍
2017/07/07(Fri)
 7月7日 (金)

 7月5日、国土交通省は今年3~5月に労働組合を通じて実施した全国のバス運転手の勤務状況アンケート調査結果を発表しました。7.083人が回答しました。2016年1月15日に起きた軽井沢スキーバス事故の対策を検討する有識者委員会の要請を受けたものです。
 直近4週間の勤務状況を尋ねたところ、国は運転手の拘束時間について 「原則13時間以内」 などとする基準を定めていますが、1日当たりの平均拘束時間が 「13時間以上」 は19.1%でした。睡眠時間についての規定はありませんが、平均睡眠時間が 「5時間未満」 24.9%、「5~7時間」 63.7%、「7時間以上」 11.4%でした。その結果、約2割が1日13時間以上拘束され、4人に1人は睡眠が5時間未満という実態が明らかになりました。
 一方、1200のバス事業者を対象とした調査では、「運転手を仮眠させる施設の確保に苦労する」 「高齢化、運転手不足が課題」 という意見が多かったといいます。
 業種がおかれている状況は深刻です。


 6月30日、厚労省は2016年度 「過労死等の労災補償状況」 を公表しました。
 「脳・心臓疾患に関する事案の労災補償状況」 については、請求件数825件で支給決定件数は260件、そのうち死亡件数は107件です。
 請求件数は12年までは800件台半ばに至っていましたが、13年度からは700件台に減っていました。16年度はまた800件台になりました。
 支給決定件数は13年度まで300件台でしたが、14年度から200件台に減っています。認定率は、11年度43.2%、12年度45.6%、13年度44.8%、14年度43.5%でしたが、15年度は37.4%、16年度38.2%と急減しています。
 「審査請求事案の取消決定等による支給決定状況」、つまり一旦請求は認められなかったが不服を申し立てて支給決定になった事案が、16年度は16件ありました。この数字は 「脳・心臓疾患に関する事案の労災補償状況」 には含まれていません。合わせると16年度の支給決定認定件数は277件です。

 支給決定件数を職種別 (中分類) にみると 「自動車運転従事者」 が89件で断トツです。続いて 「法人・団体管理職員」 22件、「飲食物調理従事者」 14件、「商品販売従事者」 13件、「営業職業従事者」 10件の順です。「自動車運転従事者」 3分の1を占めます。
 年齢別では50~59歳が99件、40~49歳が90件、30~39歳が34件、60歳以上が33件です。
 労働時間数別の支給決定件数では、時間外労働時間が1か月又は2~6か月における1か月平均80時間以上が全体の94%、100時間以上では52%を占めます。160時間が17件です。

 しかし6月5日の労働政策審議会の時間外労働の上限規制についての建議は、現行の時間外限度基準告示の①自動車の運転の業務、②建設事業、③新技術、新商品等の研究開発の業務、④厚生労働省労働基準局長が指定する業務、についてはそのまま上限規制の適用除外を容認し、さらに医師を追認しました。
 上限規制の法改正がおこなわれた施行期日の5年後に、年960時間以内の規制を適用することとし、将来的には一般則の適用を目指す旨の規定を設けることが適当であるとしています。
 全国のバス運転手の勤務状況アンケート調査結果と 「過労死等の労災補償状況」 をみるとバス運転手は過労死等の予備軍です。放置することは許されません。抜本的改善が早急に必要です。


 「精神障害の労災補償状況」 については、請求件数1.586件で支給決定件数 (いわゆる労災認定) は498件、認定率は36.8%です。請求件数はこの間増え続けていて13年度から1.400件台、15年度に1.500件台に達しました。労災認定の基準は11年12月に 「判断指針」 から 「認定基準」 に改善されました。それにより12年度以降は申請件数、支給決定認定件数が増えました。申請件数が15年度と比べて16年度に71件増えている背景としては過労死防止法案をはじめとして労災問題にたいする社会の関心が強まったことが影響していると思われます。
 支給決定認定率はこの間30%後半で大きな変化はありません。
 「審査請求事案の取消決定等による支給決定状況」 は16年度は13件ありました。13年度12年、14年21件、15年21件でした。これらの数字は 「精神障害の労災補償状況」 には含まれていません。合わせると16年度の支給決定認定件数は511件です。そのうち自殺者 (未遂を含む) は91件です (84+7)。

 支給決定件数を職種別でみると、専門的・技術的職業従事者115件 (前年度114件1位)、事務従事者81件 (93件2位)、サービス職業従事者64件 (53件3位)、販売従事者63件 (48件4位)、生産工程従事者52件 (36件6位)、輸送・機械運転従事者32件 (37件5位) の順になっています。
 職種の中分類別では、一般事務従事者47件、営業職業従事者37件、法人・団体管理職員29件、自動車運転従事者26件、商品販売従事者25件の順です。

 発表された資料から細かいことはわかりませんが、政府はいま、高度な能力を持つ人に労働時間でなく、仕事の成果に応じて賃金を決める働き方を認める 「高度プロフェッショナル制度」 の導入をおこなおうとしています。
 専門的・技術的職業従事者など 「専門的・・・」 の職種の労働者は 「高度プロフェッショナル制度」 の対象者ではないでしょうか。だとしたらやはり時間外労働を野放しにすることは危険です。

 年齢別では、40~49歳144件、30~39歳136件、20~29歳107件、60歳以上20件です。
 支給決定件数を、時間外労働時間が1か月又は2~6か月における1か月平均の20時間刻みの労働時間数区分でみると、100時間以上が120時間未満49件、120時間以上140時間未満38件、140時間以上160時間未満19件、160時間以上52時間となっています。この状況はあまり変化がありません。一方、20時間未満が84件、40時間未満43件、60時間未満41時間です。体調不良におちいる原因は労働時間だけでないことを物語っています。

 「出来事の類型」 では、出来事の類型の 「事故や災害の体験」 では 「(重度の) 病気やケガをした」 が42件、「悲惨な事故や災害の体験、目撃をした」 53件です。「仕事の量・質」 では 「仕事内容・仕事量の (大きな) 変化を生じさせる出来事があった」 63件、「2週間以上にわたって連続勤務を行った」 47件、「役割・地位の変化等」として「配置転換があった」 14件、「対人関係」 として 「ひどい嫌がらせ、いじめ又は暴行をうけた」 74件、「上司とのトラブルがあった」 24件、「セクシャルハラスメント」 として 「セクシャルハラスメントを受けた」 29件などとなっています。
 「配置転換があった」 は、リストラ部屋などが含まれるのでしょうか。

 支給決定件数・率が都道府県によって大きなばらつきがあります。問題があると思われる府県の請求件数、決定件数、支給決定件数について、12年度、13年度、14年度、15年度、16年度の流れを見てみます。カッコは支給決定率です。
 埼玉県 43件-42件-50件-50件-48件   45件-34件-49件-36件-39件
      6件 (13.3%)- 8件 (23.5%)-22件 (44.9%)-11件 (30.5%)-16件 (41%)
 千葉県 46件-43件-46件-48件-48件   41件-47件-39件-48件-39件
      9件 (21.2%)-13件 (27.7%)-19件 (48.7%)-17件 (35.4%)-12件 (40%)
 愛知県 67件-57件-61件-67件-98件   83件-51件-51件-52件-81件
      19件 (22.9%)-10件 (19.6%)-17件 (33.3%)-10件 (19.2%)-27件 (33.3%)
 三重県 16件-12件-22件-19件-21件   14件-13件-12件-21件-23件
      0件 ( 0.0%)- 2件 (15.3%)- 6件 (50.0%)-6件 (28.6%)-9件 (39%)
 熊本県 15件-10-件18件-14件-22件   16件- 8件-13件-10件-17件
      3件 (18.7%)- 2件 (25.0%)- 4件 (30.8%)-3件 (30%)-6件 (35.3%)
 これらの県は、まだまだ総就業者と比べて今も申請件数が少ないです。労働者が期待していません。


 今回初めて裁量労働制対象者に係る支給決定件数が6年分発表されました。
 「脳・心臓疾患に関する事案の労災補償状況」 は、11年度専門業務型1件、企画業務型0件、12年度は4件と0件、13年度は5件と0件、14年度は7件と1件、15年は3件と0件、16件度は1件と0件です。
 「精神障害の労災補償状況」 は、11年度専門業務型2件、企画業務型0件、12年度は11件と0件、13年度は10件と0件、14年度は6件と1件、15年は7件と1件、16件度は1件と0件です。
 裁量労働は労働者の都合にあわせて業務遂行できる、早期に終了した時は自由に時間を使えるなどをうたい文句に導入されましたが、特に専門業務型は逆な状況になっていることが明らかにされました。
 働きかた改革においても議題になっていますが安易な導入・促進派危険です。


 「過労死等の労災補償状況」 と 「精神障害の労災補償状況」 を合わせて750人以上が労災に認定され、しかも200人近くが死亡・自殺 (未遂) している状況が続いている国は他にあるでしょうか。しかも経済的問題、時間の問題で申請に至らなかったり、別の対応で解決している事案もたくさんあります。また認定基準が厳しすぎるから認定率が低いことをしってあきらめる人も多くいます。
 労働者の命の価値が低く取り扱われています。しかし政府も使用者も労働者もこれらの数字に慣らされています。
 労災の申請数が増えることは歓迎されることではありません。
  “働き方” “働かせ方” “働かされ方” について労働者の側から根本的問い直しが必要です。


 6月1日の河北新報は 「宮城の労災死傷者2467人 3年ぶり増加」 の見出し記事を載せました。
 宮城労働局がまとめた2016年の労災発生状況によると、県内の死傷者数 (休業4日以上) は前年比185人増の2467人となり、3年ぶりに増加した。東日本大震災の復興事業で作業員が足りず、現場監督や安全教育が不十分になっているためとみられている。
 業種別の死傷者数は、製造業が前年比53人増の474人、建設業は60人増の432人だった。全体の死者数は6人減の16人で統計を始めた1998年以来、最少となったが、そのうち建設業が5人、製造業が4人と半数以上を占める。
 16年は、高台移転などの土地造成が終わった地域で、建物やインフラの建設が進み、資材の製造も多くなった。作業員が重い材料を運ぶ際に手足を挟まれたり、製造ラインの機械や重機に巻き込まれたりする事故が目立った。
 同局は 「復興事業の人員不足で事故が増えた一方、作業現場で高所からの転落防止機能の設置が進んでおり、死者数は減った」 と分析している。
 ほかの業種では、サービス業が全体で56人増の1115人。内訳は小売りが25人増の310人、社会福祉施設が12人増の170人だった。介護機器が十分に普及していない施設で、介護士らに過度の負担がかかり、腰痛などを患うケースが多いという。
 17年1~4月の県内の労災死傷者数は、前年同期比62人減の609人。建設業では28人減の104人となっている。同局担当者は「今年は件数が減るよう対策を考えたい」と話した。

 東日本大震災の被災地の岩手や福島も同じj状況だと思われます。人手不足は長時間労働をもたらしています。
 人手不足をもたらしたのはオリンピックです。オリンピックにかまけて被災地が忘れられ、そして被災地では労働安全衛生に目をつぶった作業が進められています。
 被災地にとってオリンピックは人災の災害です。
 国土交通省は、オリンピック工事がおわったら 「輸送・機械運転従事者」 「自動車運転従事者」 でも人手に余剰が出てくると考えているから深刻さがないのでしょうか。
 今、状況は深刻です。

   「活動報告」 2017.6.9
  当センター「いじめメンタルヘルス労働者支援センター」ホームページ・ご相談はこちらから
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