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“働きかた改革” の目的は労働生産性向上
2017/06/30(Fri)
 6月30日 (金)

 昨年の春、政府は政策に 「同一労働同一賃金」 を掲げました。
 6月16日、労働政策審議会は厚生大臣に 「同一労働同一賃金に関する法整備について」 建議しました。このあと国会に法改正案が上程されます。
 基本的考え方は、「正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間には賃金、福利厚生、教育訓練などの面で待遇格差があるが、こうした格差は、若い世代の結婚・出産への影響により少子化の一要因となるとともに、ひとり親家庭の貧困の要因となる等、将来にわたり社会全体へ影響を及ぼすに至っている。また、労働力人口が減少する中、能力開発機会の乏しい非正規雇用労働者が増加することは、労働生産性向上の隘路ともなりかねない。」 などを指摘しています。
 それを克服するために
「賃金等の待遇は、労使によって決定されることが基本である。しかしながら同時に、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差の是正を進めなければならない。このためには、
(1) 正規雇用労働者・非正規雇用労働者両方の賃金決定基準・ルールを明確化、
(2) 職務内容・能力等と賃金等の待遇の水準の関係性の明確化を図るとともに、
(3) 教育訓練機会の均等・均衡を促進することにより、一人ひとりの生産性向上を図るという観点が
  重要である。
 また、これを受けて、以下の考え方を法へ明記していくことが適当である。
・雇用形態にかかわらない公正な評価に基づいて待遇が決定されるべきであること
・それにより、多様な働き方の選択が可能となるとともに、非正規雇用労働者の意欲・能力が向
 上し、労働生産性の向上につながり、ひいては企業や経済・社会の発展に寄与するものであ
 ること」
と建議します。
 具体的には 「不合理な待遇差の実効ある是正のため、昨年末に政府が提示した『同一労働同一賃金ガイドライン (案)』 について」実効性を担保していくといいます。

 政府が掲げる “働きかた改革” を貫徹しているのは 「非正規雇用労働者の意欲・能力が向上し、労働生産性の向上につながり、ひいては企業や経済・社会の発展に寄与するものであること」 です。“働かせ方改革” です。労働者の過酷な労働実態や生活格差を改善が目的ではありません。
 「賃金等の待遇は、労使によって決定されることが基本」 です。
 力関係から使用者が “自主的” に決める賃金に対する不信から 「正規雇用労働者・非正規雇用労働者両方の賃金決定基準・ルールを明確化」 のために最低賃金制は始まりました。最低賃金は何を基準にするかはそれぞれの国で違っています。一般賃金に比べて不当に低くない、労働の質と量とがちがえばその違いに相応しい 「公正賃金」 や、生活できる金額の 「生活賃金」 がありますが、少なくても労働者の生活確保・維持を目的としています。労働者が提供する労働力は商品とちがいストックできません。しかし労働者は定期的休息が必要です。そのためには、賃金は休息中にたいする補償も必要で、それによって労働力が回復できます。
 しかし実態としての非正規労働者の賃金決定は、会社が募集した時に労働者が応募し、離職しない額です。日本の最低賃金は 「公正賃金」 や 「生活賃金」 からも程遠いものです。そこに非正規労働者は存在させられています。
 非正規労働者の賃金を低く固定して労働生産性を高めてきたのがこれまでのやり方でした。その恩恵を受けてきたのが会社と正規労働者です。会社は他社との競争に勝ってきました。正規労働者は非正規労働者を犠牲にして雇用を守り、賃金を上昇させてきました。そのことをかえりみることはありません。
 労働生産性を高めるためには同じ職場にいる非正規労働者の尊厳を高めるために処遇を改善し、そのことによって意欲・能力が向上するという認識と手順が必要です。そのことが結果的に 「企業や経済・社会の発展に寄与する」 ことになります。


 労働者が司法判断を求める際の根拠となる規定の整備についてです。
「現行法においては、正規雇用労働者と短時間労働者・有期契約労働者との間の待遇差については、①職務内容 (業務内容・責任の程度) ②職務内容・配置の変更範囲 (いわゆる 「人材活用の仕組み」) ③その他の事情の3つの考慮要素を考慮して不合理と認められるものであってはならないとされている」。
 パートタイム労働法第8条と労働契約法第20条に謳われている 「均衡待遇規定」 です。
 しかし 「現行法の規定は、正規雇用労働者と短時間労働者・有期契約労働者との間における個々の待遇の違いと、3考慮要素との関係性が必ずしも明確でない」 実態があることを認めます。
「こうした課題を踏まえ、待遇差が不合理と認められるか否かの判断は、個々の待遇ごとに、当該待遇の性質・目的に対応する考慮要素で判断されるべき旨を明確化することが適当である。」 と建議します。そして考慮要素としては 「③その他の事情の解釈による範囲が大きくなっている。」 といいます。
 具体的には 「考慮要素として 『職務の成果』 『能力』 『経験』 を例示として明記することが適当である。また、労使交渉の経緯等が 個別事案の事情に応じて含まれうることを明確化するなど、『その他の事情』 の範囲が逆に狭く解されることのないよう留意が必要である。」 と建議します。このことはすでにパートタイム労働法第10条に 「職務の内容、職務の成果、意欲、能力又は経験等を勘案し、その賃金 (通勤手当、退職手当その他の厚生労働省令で定めるものを除く。) を決定するように努めるものとする」 と謳われていると説明します。「成果」 「意欲」 「能力」 「経験」 から待遇差は生じうるということです。「均等待遇規定」 と 「均衡待遇規定」 もちがいます。
 そして、現行法において 「均等待遇規定」 は、短時間労働者についてのみ規定されていたが有期契約労働者についても対象とすることが適当であるとします。
 比較対象となるのは 「同一の使用者に雇用される正規雇用労働者」 が適当であるとしています。

 “働き方改革” は、同じ非正規労働者同士に 「成果」 「意欲」 「能力」 「経験」 でによって競争をあおり、賃金格差をおこなってかまわないということです。
 労働者と労働組合は 「均等待遇」 について質問、主張したりすると 「成果」 「意欲」 「能力」 「経験」 で切り返されることもありえます。労働組合と労働者はこれらについて評価基準をはっきり設定することを要求する必要があります。
 そもそも 「成果」 「能力」 などはなにをどう評価するかについては労使にとっては現在に至るも課題になっています。それをいとも簡単に明記するということは、“賃金を上げてほしかったら言われたとおりにしろ” “とにかく実績をあげろ” ということになりかねません。自己責任論です。
 今、経済界からは雇用の流動化が必要だと叫ばれています。即戦力を得やすくするためです。企業が不要と判断した労働力を排除し、必要な労働力に切り換えることを容易にすることです。それは 「解雇の金銭解決制度」 の提案と一体のものです。ここでも労働生産性だけから議論が行なわれています。
 労働者にはそれぞれ得意業務、こなすことができる業務、挑戦してみなとわからない業務、不得手な業務があります。得意分野・専門分野を簡単に変更することはできません。日本の終身雇用は、挑戦してみなとわからない業務も時間をかけて経験させて得意分野になることを期待してきました。そのような政策が必然的に 「労働者の意欲・能力が向上し、労働生産性の向上につなが」 っていきました。そして雇用の安定は 「ひいては企業や経済・社会の発展に寄与」 してきました。
 しかし 「成果」 「能力」 を強制することは労働者間に競争を激化させ、不要と判断した労働者を容赦なく排除する方向に向かいます。労働者は孤立するなかで業務遂行を余儀なくされます。「解雇の金銭解決制度」 が成立していない中では労働者をわざと不得手な業務に配置して 「成果」 を強制します。そして 「能力」 がないと “いじめ” て離職に追い込んでいる実態がありますす。
 教育・訓練の機会の保証は能力の蓄積のためのものではなく、短期戦でのテクニック取得のためです。
 “働き方改革” における 「均等待遇規定」 は、非正規労働者にも正規労働者と同じように競争を強制させるということです。労働者の中に生まれる 「格差」 は自己責任です。そのような労働感・職場秩序がさらに作り上げられていきます。
「『フレキシブルな労働市場』 は、現在従事している仕事に全力を傾けようとする気持ちも、献身的に取り組もうとする気持ちを起こさせないし、その余地も与えない。現在従事している仕事に愛着を覚え、その仕事が求めるものに夢中になり、この世界のなかでの自分の場所を、取り組む仕事やそれに動員されるスキルと同一化することは、運命の人質になることを意味する。」 (ジグムント・バウマン著 『新しい貧困』 青土社)


 派遣労働者についてです。
 現状を踏まえると 「1) 派遣先の労働者との均等・均衡による待遇改善か、2) 労使協定による一定水準を満たす待遇決定による待遇改善かの選択制とすることが適当である。」 と建議します。
 具体的には、派遣先の労働者との均等・均衡方式として
「ⅰ) 派遣労働者と派遣先労働者の待遇差について、短時間労働者・有期契約労働者と同様の
 均等待遇規定・均衡待遇規定を設けた上で、当該規定によることとすること
 ⅱ) 派遣元事業主が 「ⅰ」 の規定に基づく義務を履行できるよう、派遣先に対し、派遣先の労働者
 の賃金等の待遇に関する情報提供義務を課す (提供した情報に変更があった場合も同様) とともに、
 派遣元事業主は、派遣先からの情報提供がない場合は、労働者派遣契約を締結してはならない
 こととすること(なお、派遣先からの 情報は派遣元事業主等の秘密保持義務規定 (労働者派遣法
 第24条の4) の対象となることを明確化すること)
 ⅲ) その他派遣先の措置 (教育訓練、福利厚生施設の利用、就業環境の整備等) の規定を強化」
が適当とします。
 そして労使協定による一定水準を満たす待遇決定方式として
「派遣元事業主が、労働者の過半数で組織する労働組合又は労働者の過半数代表者と話し合い、十分に派遣労働者の保護が図られると判断できる以下の要件を満 たす書面による労使協定を締結し、当該協定に基づいて待遇決定を行うこと
①同種の業務に従事する一般の労働者の賃金水準と同等以上であること
②段階的・体系的な教育訓練等による派遣労働者の職務の内容・職務の成果・能力・経験等の向上
 を公正に評価し、その結果を勘案した賃金決定を行うこと」
が適当とします。


 「労働者に対する待遇に関する説明の義務化」 についてです。
「非正規雇用労働者 (短時間労働者・有期契約労働者・派遣労働者) が自らの待遇をよく理解し、納得するためにも、また、非正規雇用労働者が待遇差について納得できない場合に、まずは労使間での対話を行い、不合理な待遇差の是正につなげていくためにも、非正規雇用労働者自らの待遇の内容に加え、正規雇用労働者との待遇差に関する情報を、事業主から適切に得られ、事業主しか持っていない情報のために、労働者が訴えを起こすことができないといったことがないようにすることが重要である。」 と建議します。
 そのために、短時間労働者・有期契約労働者に対して
「ⅰ) 特定事項(昇給・賞与・退職手当の有無)に関する文書交付等による明示義務、その他の労働条
 件に関する文書交付等による明示の努力義務 (雇入れ時) (パートタイム労働 法第6条第1項・第2項)
ⅱ) 待遇の内容等に関する説明義務 (雇入れ時) (パートタイム労働法第14条第1項)
ⅲ) 待遇決定等に際しての考慮事項に関する説明義務 (求めに応じ) (パートタイム労働 法第14条第2項)」
などの現状に加え、
「短時間労働者・有期契約労働者が求めた場合には正規雇用労働者との待遇差の内容やその理由等について説明が得られるよう、事業主に対する説明義務を課すことが適当である。」 とします。
 その場合、「事業主に説明を求めた非正規雇用労働者と職務内容、職務内容・配置変更範囲等が最も近いと事業主が判断する無期雇用フルタイム労働者ないしその集団との待遇差及び その理由並びに当該無期雇用フルタイム労働者ないしその集団が当該非正規雇用労働者に最も近いと判断した理由を説明することとする」 とします。
 最も近い無期雇用フルタイム労働者自体のそれぞれの賃金は 「成果」「能力」 による評価によってばらつきが発生しているからです。
「派遣労働者についても、派遣元事業主に対し、上記 (1) のⅰ) ~ⅲ) 及び派遣労働者 が求めた場合には待遇差の内容やその理由等についての説明義務・不利益取扱禁止を 課すことが適当である。」としています。


 行政による裁判外紛争解決手続の整備等についてです。
「非正規雇用労働者にとっても、訴訟を提起することは大変重い負担を伴うもので あり、これらの規定が整備されて以降も、訴訟の件数は限られている実態にある。 非正規雇用労働者がより救済を求めやすくなるよう、行政による履行確保 (報告徴収・助言・指導等) の規定を整備するとともに、行政ADR (裁判。外紛争解決手続) を利用しうるよう規定を整備することが求められる。」 と建議します
 そのために 「現状では、均等待遇規定については報告徴収・助言・指導・勧告の対象としているが、均衡待遇規定については、報告徴収・助言・指導・勧告の対象としていない。しかしながら、均衡待遇規定に関しても、解釈が明確でないグレーゾーンの場合は報告徴収・助言・指導・勧告の対象としない一方、職務内容、職務内容・配置変更範囲その他の事情の違いではなく、雇用形態が非正規であることを理由とする不支給など解釈が明確な場合は報告徴収・助言・指導・勧告の対象としていくことが適当である。」 としています。


 法施行に向けて (準備期間の確保) は 「法改正は、事業主にとって、正規雇用労働者・非正規雇用労働者それぞれの待遇の内容、待遇差の理由の再検証等、必要な準備を行うために一定の時間を要する。したがって、施行に当たっては、十分な施行準備期間を設けることが必要である。」 とあります。
 鳴り物入りで議論を始めた割には実施はかなり先になるということです。
 そうであっても労働組合は “待ち” ・ “働らかされ方改革” の姿勢です。
 本当の “働きかた改革” のためには、今こそ労働組合が現場の声を集めて政府を先取りする提案、対案をして議論をまき起こすチャンスです。

  「活動報告」 2016.6.9
  当センター「いじめメンタルヘルス労働者支援センター」ホームページ・ご相談はこちらから
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