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『ひとりで闘う労働紛争』 発刊  労使紛争とは労働者と使用者が対等な立場で交渉し、平和的に問題解決をはかること
2017/05/26(Fri)
 5月26日 (金)

 この3月に本 『ひとりで闘う労働紛争』 サブタイトル 「個別労働紛争対処法」 が発刊されました (緑風出版 1900円)。既刊 『ひとりでも闘える労働組合読本』 を大幅に書き換えたものです。既刊は三訂増補を重ね、5000冊を完売しています。

 形式はQ&Aです。ただしAは長文です。
 章立ては7章です。
 Ⅰ 労働紛争とは何か?
 Ⅱ 労働問題の相談
 Ⅲ 労働者を守る救済機関
 Ⅳ 労働者を守る法律
 Ⅴ 労働組合づくり
 Ⅵ 団体交渉のすすめかた
 Ⅶ 争議の闘いかた
 これらに付随するコラム 「余談雑談」 が13あります。

 具体的内容を抜粋します。
Ⅰ 労働紛争とは何か? のQ 「1 労働紛争にはどんなものがありますか?」 へのAです。
「労働紛争は、多様かつ非定型的で、そもそも権利義務の形でルールを設定することはむずかしいです。いま、労働関係においておきる紛争を労働紛争ということにすると、労働関係の内容に応じて、権利紛争と利益紛争、あるいは、個別紛争と集団紛争とに整理することができます。
 まず、権利紛争と利益紛争です。
(1) 権利紛争とは、主として、労働者の 「権利侵害」 にかかわる紛争であり、解雇権の濫用、不当労働行為など、契約の不履行や法のルールに対する違反が問題になります。
(2) 利益紛争とは、「紛争の対象について権利義務関係を定めた法的ルールが存在しない場合に、相互の合意によるルール形成を目指す紛争」 と定義されます。労働者の 「経済的利益」 をめぐる紛争であり、賃金や労働時間など労働条件にかかわる労働者の 「経済的利益」 を、要求交渉を通じて合意形成をめざすものです。
 次に、個別紛争と集団紛争です。
(3) 個別紛争は、個々の労働者と使用者の個別的労働関係 (雇用関係) において生じる紛争です。
(4) 集団紛争は、労働組合など労働者の集団と企業など使用者との集団的労働関係 (労使関係) において生じる紛争です。
 紛争の解決は、基本的には、当事者の合意を基礎とする自主的解決が望ましいです。第三者が関与する訴訟等にくらべて経済的・時間的コスト、信頼関係の崩壊がすくないからです。また、権利義務関係にこだわらない柔軟な解決をはかりやすいです。……」

 Q 「5 労働問題がおきたらどうしたらいいですか?」 のAです。
「『労働問題』 がおきたら、『労働問題』 にくわしい人や労働組合、公的な相談機関を訪ねてまず相談に行きましょう。一人で悩んでいるのはよくありません。病気と一緒で、時間がたてばたつほど症状が悪化します。……
(2)労働組合
 労働組合にも、当然、労働問題の相談窓口があります。連合 (日本労働組合総連合会) などナショナルセンターも労働相談窓口を設けていますが、個別労働紛争の労働相談は、合同労組、コミュニティ・ユニオン、管理職ユニオンなど個人加盟 (加入) 方式の労働組合の方が格段に相談に適しています。労働組合に加盟すれば、会社に団体交渉を申入れ、交渉によって解雇や降格・減給などの労働紛争の解決をはかることができます。
 労働組合 (個人加盟方式の労働組合は、一般的にユニオンという名称を名のっている) に労働相談するメリットは、会社と団体交渉 (団交) を行なえることです。団体交渉権 (団交権) は、労働組合法六条で次のように保障されています。……」


 Ⅴ 労働組合づくり のQ 「23 労働組合に関する法律はどのようになっているのですか?」 へのAです。
「日本国憲法は第二八条で、勤労者の団結する権利、団体交渉その他の団体行動をする権利をみとめており、この憲法の趣旨を具体的に保障することを目的として労働組合法がつくられています。
 労働組合法は、労働者が使用者との交渉において対等の立場にたつことを促進することにより労働者の地位を向上させること、労働者がその労働条件について交渉するためにみずから代表者を選出すること、その他の団体行動を行なうために自主的に労働組合を組織し団結することをよう護すること、ならびに、労働協約を締結するための団体交渉をすることおよびその手続を助成することを目的としています (労働組合法一条一項)。
 一人ひとりでは弱い労働者が団結し、使用者と対等な立場にたって労働者の地位を向上させ、かつまた勝手なまねをさせないためにも労働組合が必要なのです。使用者が労働条件の改善要求を聞きいれなければ、ストライキを行なうこともできますし、労働組合の団体交渉その他の正当な行為 (刑法三五条) に対しては、刑事罰を科せられません (刑事免責/労働組合法一条二項)。ただし、いかなる場合にも暴力の行使は、正当な行為とみとめられません。また、労働組合法八条は、『使用者は、同盟罷業その他の争議行為であって正当なものによって損害を受けたことの故をもって、労働組合又はその組合員に対し賠償を請求することができない』 と、民事免責をみとめています。……」

 Q 「30 労働組合は個人の問題を取り上げてくれないのでは?」 へのAです。
「労働組合は、多くの労働者が一緒になって団結し、共通の労働条件の向上をはかることを主たる目的としていますから、従来は、あまり個人の問題を扱うのには積極的ではなく、得意でもなかったといえます。また、『団結』 のまえに個人の問題は 『わがまま』 とされることも多かったのでしょう。とくに、企業のなかで労働組合全体の利益を守ろうとする企業別組合の場合は、まず会社とのあいだで 『基本計画』 を話し合いますから、それに反対したり同調できない人を受け入れにくい傾向があります。例えば、会社全体の組織変更について組合と会社が合意したのち、ある組合員の配置転換が問題になり、その組合員が個人としてその人事に応じられないと訴えても、その個別事情についての会社との交渉には消極的、というのが企業別組合の実情でしょう。
 しかし、現在、労働条件は一人ひとりの労働者のはたらき方のレベルまで細かくきめられ、一般的な基準だけで労働組合の側がそれを規制するのはむずかしいのです。言い方を変えれば、企業の個々の労働者に対する 『支配』 がすすんでいるということです。とくに、サービス業などの第三次産業では、労働者が一緒に、一律にはたらくということがほとんどなくなっていますから、労働組合としても、個々の組合員がどのようにはたらいているのか、キメ細かくチェックすべき時代になってきているのです。一人ひとりの問題を全体で議論しながらその解決をはかるというシステムを、つくることが求められています。裁量労働制がホワイトカラー全体に広がると、労働時間は労働組合との合意ではなく、個人個人 (と会社) がきめることになります。ただし、過半数労働組合または過半数労働者の代表者・労使委員会 (労働基準法三八条の三および三八条の四) を通じて関与できますから、組合としても、個人のはたらき方に関心をもたなくてはならないわけです。労働組合によっては、個人の生活問題等の相談に積極的に応じる 『世話役活動』 に力を入れているところもあります。
 また、個人加盟のできる労働組合もあります。そうした組合は、直接個人の問題を扱いますから、そこに相談すれば問題解決に役立つでしょう。……」


 Ⅵ 団体交渉のすすめかた のQ 「32 団体交渉ってなんですか?」 へのAです。
「労働組合法第一条は、(目的) として 『この法律は、労働者が使用者との交渉において対等の立場に立つことを促進することにより労働者の地位を向上させること、労働者がその労働条件について交渉するために自ら代表者を選出することその他の団体行動を行うために自主的に労働組合を組織し、団結することを擁護すること並びに使用者と労働者との関係を規制する労働協約を締結するための団体交渉をすること及びその手続を助成することを目的とする。』 とうたっています。
 そして第六条は、(交渉権限) として 『労働組合の代表者又は労働組合の委任を受けた者は、労働組合又は組合員のために使用者又はその団体と労働協約の締結その他の事項に関して交渉する権限を有する。』 とうたっています。
 団体交渉 (団交) とは、労働者と使用者 (会社・法人) が対等な立場で交渉のテーブルについて話し合いをかさね、平和的に問題解決をはかることです。
 団交申入
 団体交渉は労働組合 (または会社、法人) が相手方に申入れます。事前に協議して決めた交渉事項を記した団交申入書を作成し、相手方に提出します。口頭でも有効ですが、のちに申入れがあった・なかったのトラブルが発生しる危険性もありますので必ず文書で行い、回答も文書でもらうようにします。
 団体交渉申入書には、団交での協議する事項、希望する日時・場所、組合からの出席者、申し入れに対する回答期限、労組の窓口担当を記載します。会社側の出席者は、団交議題について決定権を持つ者の出席を要求します。
 そして最後に 『付記 当労働組合からの団体交渉申入れは、労働組合法第六条によるものであります。団体交渉は労働組合法第七条で正当な理由がなくて拒むことはできないことを申し添えます。』 と書き添えます。……」


 Ⅶ 争議の闘いかた のQ 「42 会社の経営にまで組合はタッチできるのですか?」 へのAです。
「組合が団体交渉で会社に要求できる事項は、主に労働条件、雇用条件などとされています。しかし、団交の際に、会社側が賃上げ要求に対して 『会社に支払い能力がない』 として、賃上げを拒否したり、賃上げ幅を抑えようとしてくることがよくあります。これに対抗するには、経営状態、売上げや経費、利益の実態を調べ、経営内部の状況をよく分析、把握しておく必要があります。労働条件や雇用条件は経営の根幹をなすものであり、それだけに、組合側がその面から経営内容を深く追求して経営全体に迫り、経営のあり方をチェックすることは可能であり、当然ともいえます。
 例えば、ベースアップ・ゼロや昇給制度の改悪は、経営の失敗や無能を従業員に転嫁し、犠牲を押し付けようとするものにほかなりませんから、そういう事態をまねいた経営者の責任を追及するとともに、経営のあり方についてさまざまな角度から批判し、要求していくことが重要です。現状の日本企業の、閉鎖的な、相互もたれあい主義の経営から脱皮するために、組合が経営に対してもっと積極的に、正当なチェック機能を果たすことを期待されています。
 会社の役員人事などを、組合側から要求することはムリだと一般に考えられています。しかし、役員人事を含めていわゆる経営事項が、すべて『経営権』に属する会社の専決事項ということではありません。……さらに、取締役の追放を目的とする争議行為も、労働条件改善のための必要な手段として行われる場合は、正当な争議目的とされます。
 ところで、『経営権』 という概念は、『施設管理権』 と同様、法律上の概念ではありません。しいて定義すれば、『資本所有権の企業経営面における一つの作用ないし権能』 であるとされていますが、要するに、労働条件や労働者の経済的地位向上と関連性をもたない経営上の専決事項は、非常に限られているということです。現在、日本の企業では、株主総会や監査役、取締役会は単に形式的な法律手続として存在するだけで、まったく機能していないのが実情です。こうした異常な状態に、クサビを打ち込み、経営のチェック機能を果たすことは、労働組合の社会的責任です。」

 「42 会社の経営にまで組合はタッチできるのですか?」 に関連するコラムです。
「会社は誰のもの
 ……
 会社法は、労働者とっては馴染みが薄いというよりはあまり関心がもたれません。以前のように、銀行を併せ持った財閥グループ企業による株の持ち合いや、その傘下に中小企業を抱えていた時は、株主は株価や配当にあまり関心を持ちませんでした。労働者にとっても労使関係・労働条件決定に大きな影響はありませんでした。
 しかし会社の存続や組織再編を左右する株主総会、企業再生などの決定手続きなどには重要な問題が含まれています。
 それぞれの取締役は職務を行なうに際しては、民法の規定によって善良な管理者の注意義務 (善管注意義務) と、『法令及び定款の定め並びに総会の決議を遵守し会社のため忠実にその職務を遂行する義務 (取締役の忠実義務)』 があります。さらに判例で 『監視義務』 と 『リスク管理体制の構築義務』 を迫っています。過労死をめぐる裁判では、遺族は会社だけでなく個々人の取締役を被告として善管注意義務や監視義務を怠った会社法違反で損害賠償を起こして勝訴しています。
 グローバル化による投資の国際化の中で 『物言う株主』 が登場すると会社のあり方も変わってきました。投資家は日々の株価の動向を睨んで売買を繰り返し、短期間で利益を上げようとします。長期的会社経営には関心がなく、時には会社経営を委任されている経営陣と大きく対立することになります。
 一五年八月二十二日の毎日新聞に 『黒田電気 個人株主、村上氏を警戒』 の見出し記事が載りました。村上氏とは、かの 『お金を儲けることはいけないことですか』 と発言した村上ファンドの村上世彰。村上の長女がCEOを務める投資会社C&Iホールディングスは黒田電気の株約一六%を握り、二十一日の株主総会に村上世彰ら四人の社外取締役選任案を提出します。そして 『今後三年間、最終 (当期) 利益の一〇〇%を株主還元できる』 と訴えました。
 株主総会では、現経営陣の従来の手堅い経営を志す政策と、村上側の企業の合併・買収 (M&A) を通じた高成長を求める意見が真っ向から対立したといいます。村上側としては、最高益を達成しているときがM&Aのチャンスで、高騰した株が売れたら撤退します。
 会社への愛着はまったくありません。それが 『お金を儲けることはいけないことですか』。
 しかし村上側の提案は最終的には約六割の株主の反対で否決されました。……
 さて、このような中で社員、労働組合はどのように登場できるでしょうか。八月五日、黒田電気 『自生会 従業員』 一同は四人の社外取締役選任に反対する 『声明文』 を発表しました。取締役会は株主総会の決定に従うので、M&Aなどが行われると労使関係や雇用関係は変更に至ります。社員と社員を含んだ 『会社と経営陣・支配株主等との間の利益相反』 により影響が及ぶような動向に対して労働組合が声を上げるのは必要なことです。
 労働者と労働組合は、労働者の側からの 『コンプライアンス』 ・秩序を対峙させて主張する必要があります。なぜなら、会社の利益をつくり出しているのは労働者だからです。
 ……
 会社は、社会の中に存在し、関連する事業・企業があって存在することができ、利用者があって維持できています。そして会社の中には労働者が存在しています。『ステークホルダー』 (利害関係者) のものです。さらに利害関係者は拡大し、顧客・消費者、そして事業所が存在する地域の人たちも含めるまで捉えられるようになってきています。法人としての会社には社会的責任もあります。
しかしバブルが崩壊し、ファンドが飛び交うようになった頃から、会社は誰のものかという議論が起きると 『ストックホルダー』 (株主) の主張がはびこっています。経済のグローバル化が進むなかでのグローバル・スタンダードではさらにそうです。
 『お金を儲けることは悪いことですか』 の問いに 『労働者を差別して、踏み台にしてお金を儲けることは悪い。そのために生死の境に追いやられている者もいる。私たちはそうしない。私たちはそのような社会を変えたい』 という認識と行動で対峙することが必要です。労働組合は社会の中に存在し続ける必要があります。」

 各項には解説もあります。
 宣伝活動における 「ビラ内容の正当性」 です。
「ビラの内容
 ビラを作成するときは、だれに読んでもらいたいかの対象を決めてから内容を決める。会社への要請・抗議、社員への事態の伝達や協力要請、市民への事態報告と支援要請など。
 訴えかたは 『ラブレターを書くときのように』 といわれる。『せめて○○さんはこの気持ちをわかってください』 と訴えて説得するトーンで。
 通行人が宣伝マイクに耳を傾けるのはせいぜい20秒。そのなかで引きつけるフレーズが勝負となる。ビラは、歩いていてふと目に留まる見出しが必要。見出しのインパクトと大きさが大切。まず受け取らせる努力が必要。
 正当性
 ビラの内容が使用者の労務政策の批判攻撃である場合は、内容が全体において真実であれば正当性が認められる。使用者の経営政策の批判攻撃である場合は、それが労働条件や労働者の待遇と関連性があり、内容が全体として真実であれば正当性がある。(正当性なしとされた事例、中国電力事件・最高裁判決/平成四年)」


 『ひとりで闘う労働紛争』 は、現在職場で起きているかなりの問題について取り上げることができませんでした。そこで続編として、
  労働契約の変更・継続・終了への対応
  人事考課への対処
  企業再編、倒産争議にどう戦うか
  職場いじめの労働相談
  メンタルヘルス・ケアと職場復帰 (復職)
などを取り上げる準備をしています。

  当センター「いじめメンタルヘルス労働者支援センター」ホームページ・ご相談はこちらから
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