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住宅は安全に、安心して暮らすためのもの
2017/04/14(Fri)
 4月14日 (金)

「地震が多い日本では、大きな地震が起こると、ただちに為政者は救済を行ったという記録が残されています。奈良時代、地震などの災害に対する救済施策の根本的な思想は、天譴論にもとづいたものでした。
 天譴論は、もともと古代中国の孔子・孟子らの儒教にもとづく思想であり、日本にはすでに奈良時代からあったと言われています。天譴論の原義は、地震、風水害、火山噴火などの事前災害を、『王道に背いた為政者に対する天の警告』 とみなす考え方です。
 王道は、天の意思にもとづいておこなわれなければならない。この天の意思とは、公平無私な仁徳に満ちた政治を行うことであって、政治をつかさどる天子 (天皇) はこのような意志に従って国を治めなければならない。これに背いた場合には、ただちに天子としての責任を負わなければならない。
 つまり、自然災害は、『天子の不徳から発生する』 という考えです。しかし、災害に遭遇したとき、実際にその災厄を受けるのは、もちろん人民全体です。このことは、天子が、自分の不徳によって引き起こした災いを人民にかぶせることを意味します。これは、天子としては大きな恥であり、したがって、天子は、善政を行い、同時に、災害の犠牲者に対して手厚い救済処置をとらねばならず、それが天子の唯一絶対の道であるというものです。

 奈良・平安時代の自然災害の記録を調べてみると、地震災害に対する具体的な救済の方法が3つあります。
 その1つは 『検地震使』 の派遣です。地震災害発生の報が入ると、直ちに朝廷から派遣され、王道の欠陥から生まれた人民の困窮・苦痛を慰問し、また被災地の行政官と共に震災対策を講じるのです。例えば、869年 (貞観11年) 5月には、大地震によって東北地方の三陸沿岸に津波が発生し、1000人以上の死者を出しましたが、その際には9月に、京の都から 『検陸奥国地震使』 が派遣されています。
 2つ目は、賑恤 (しんじゅつ) です。賑恤とは、被災者、困窮者の救済で、食料や衣服などの供与、家屋の補修あるいは死者の埋葬などがその内容です。……
 3つ目は、この時代に国民に課せられた納税および労役義務である租・庸・調を免除する 『免租庸調』 です。」(伊藤政雄著 『歴史の中のろうあ者』 近代出版)


 4月11日で東日本大震災から6年と1か月、熊本大震災から1年が経ちました。
 東日本大震災から6年目が近づくと、復興事業の進捗度についての報道が目立ちました。
 具体的数字です。
 除染作業は帰還困難指定区域以外はほぼ終了といわれています(総事業費4.0兆円)。 しかし帰還区域の1つの敷地内においても、放射線量が高いとことが残っている指摘されたりしています。
 住宅についてです。
 被災した住居の対策は、高台や内陸への 「集団移転」、浸水した市街地の 「かさ上げ」 による宅地造成と、返済ができない等の理由で自宅建設ができない被災者にむけて自治体が建設する 「災害公営住宅」 があります。
 これらの進捗状況です。
 高台移転は333地区、48764戸が完了しています。進捗度は84%です (5900億円)。
 災害公営住宅は3万108戸のうち70%が工事完成しています (9600億円)。被災3県の計画は、岩手県5700戸、宮城県1万6000戸、福島県8000戸です。
 土地区画整理 (かさ上げ) は、50地区、1万130戸のうち25%が完了しています (3400億円)。
 
 これが6年過ぎた被災地の状況ですが、あらたな問題が発生しています。
 「かさ上げ」 が待ちきれなくて移転した被災者も多くいます。特に商業を営んでいた自営業の人たちは切実で、我慢の限界にきて諦めざるをえませんでした。人口の減少が続く中で、営業してもこの先あまり期待ができません。空き地のままのところも出てきています。
 災害公営住宅を希望した人のなかにも、待ちきれなくて辞退した人が出てきています。また入居者後に引っ越しをした人もいます。また入居者・入居予定者は小家族の高齢者が多くいます。死亡や施設への入居者も出てきています。将来、空室が大量に出てくることが予想されています。
 被災者が個人で住宅を立てた造成地のなかにはインフラ整備が進んでいなくて、市町村役所などが遠いだけでなく、病院やスーパーも遠く、不便を感じている人たちも出てきています。被災者が個人で住宅を立て直そうとしても造成が進んでいない宅地もあります。
 震災直後は同じ地域に住んでいた人たちと一緒に “街づくり” をした地区でも、ぼつりぽつりと人が減っていき、予定を変更したり、可能に陥っている地区も出てきています。

 その一方、被災3県で、2月末段階で、3万3854人がまだプレハブ仮設住宅に暮らしています。911カ所あった仮設団地は、空室も目立つようになりましたが746カ所残っています。
 県別では、岩手県1万383人、宮城県1万1616人、福島県1万1855人です。
 石巻市は、19年9月末までの仮設住宅解消を目指しています。あと2年以上存在することになります。

 福島県の放射線量が高いということでの避難者についてです。
 原発事故直後の避難指示者は8万1000人でした。現在の住民登録者数は7万6000人です。そのうちすでに解除済みになっていたのは1万9000人です。今年4月1に避難解除されたのは3万2000人で、解除のめどが立っていない人が2万4000人です。
 避難指示区域以外からの自主避難者もいます。合わせると2012年5月時点での避難者は16万4000人でした。県内10万2000人、県外6万2000人です。

 しかしすでに避難指示解除された区域でも、実際に戻った住民の割合は平均13.5%です。戻った住民は高齢者が中心で、子どもがいる世帯は戻っていません。3世代家族では子供の親子は避難先や新たに決めた住居に住み、祖父母だけが戻っています。祖父母は子どもたちに危険だから里帰りや墓参りにも来なくていいと告げています。原発事故は家族をバラバラにしました。
 家業である農業を再開するのも、荒れ果てた田畑を元に戻すには10年かかるといわれます。政府は安易にとらえています。祖父母の世代が今からそれに挑戦します。
 人口が減少したところでは、商業は成り立ちません。新たな産業を誘致するにも働き手がいません。
 自主避難者は、県内に3万9000人、県外に4万人います。3月31日からは仮設住宅の提供や家賃などの国からの支援が打ち切られています。支援打ち切りということでの帰還の強制は人権を無視しています。
 安全と安心は違います。安全にしても基準がまちです。国が示す基準が本当に安全だとはいえません。住宅は住むためだけでなく、安心して暮らすためのものです。
 原発は町を、地域を、共同体を、家族を破壊しました。「天子の不徳から発生」 した人災に対して政府が今進めている政策は棄民です。


 防潮堤は677海岸のうち25%が完了しています (1.4兆円)。
 3月23日の毎日新聞・記者の目はタイトルが 「東日本大震災6年 防潮堤を考える」 でした。
「防潮堤事業は青森県から千葉県までの太平洋沿岸の計677カ所で進む。うち9割近い591カ所が岩手、宮城、福島の3県に集中し、震災前は延長約165キロだった高さ5メートル以上の3県の防潮堤は倍近い約300キロに増える。土地の用途によって所管が国土交通省、農林水産省などに分かれており……。
 防潮堤計画は、震災を受けて政府の中央防災会議が2011年にまとめた津波対策が基になっている。数十年から百数十年に1度起きる津波を 「L1」、1000年に1度とされる最大クラスを 「L2」 に分類し、L1を防潮堤で守ることを基本とした。これを基に国交省や農水省などが高さについての通知を出し、シミュレーションをしたうえで各県が地域ごとにL1を防げるよう、高さを決めた。
 その後、全677カ所のうち、約200カ所は当初計画より高さを下げたり、位置が変更されたりした。集落が高台移転したため当初計画の高さが必要ないと判断されたケースが多く、ほとんどは震災前と同じ高さに落ち着いている。」

 現在の建設状況です。
「東日本大震災から6年が過ぎた被災地で、津波から街を守る防潮堤の建設が進んでいる。津波から街を守る有効な手段であることは否定しないが、高い防潮堤は海とともにあった古里の景観を激変させてしまうのも確かだ。建設には住民の合意が必要と思うが、行政が見切り発車と言われても仕方がない形で着工した例もある。これでは、防潮堤が地域を分断する構造物になりかねない。禍根を残さないよう、自治体は住民と十分協議すべきだ。」
 陸と海を分断してしまう、海の変化が見えずかえって危険になるとの声も根強くあります。一方、「議論がまとまらないと、他の復興が遅れる」 と工事を強行している自治体もあります。
 現在、677カ所のうち、6カ所は住民が合意しておらず、工事が始まっていません。
 防災のために必要なのは強固な建造物だけではありません。共同体の人たちの共通認識と備えと助け合いです。それが壊されたら防災は機能しません。


 地震と津波は天災ですが、「減災」 を考えていなかった社会で生じた被害は 『天子の不徳から発生』 したものです。減災は形あるものだけが対象ではありません。「災害の犠牲者に対して手厚い救済処置をとらねばならず、それが天子の唯一絶対の道で」 す。
 ましてや原発事故は為政者による人災です。「天子としての責任を負わなければな」りません。

 熊本でも多くの被災者が仮設住宅に住んでいます。震災から1年が過ぎますが、東北と同じ轍は踏まないようにしなければなりません。
 復興工事の遅れは、人手不足、資材の高騰などによります。2020年予定のオリンピックがそうさせています。
 「復興五輪」 といわれました。しかし実際は 「復興 VS. 五輪」 の構造になっています。政府はオリンピックを利用して復興を忘れさせようとしています。

   「活動報告」 2017.1.24
   「活動報告」 2017.1.6
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