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ストレスチェック情報はマイナンバーで管理され・・・
2017/04/07(Fri)
 4月7日 (金)

 4月7日付の朝日新聞は 「マイナンバーシステム、利用に年100億円?」 の見出し記事が載りました。そのまま紹介します。

 中小企業の会社員らが加入する 「協会けんぽ」 や大企業の 「健康保険組合」 などが、加入者やその家族のマイナンバーを使って所得確認などをするシステム利用料が、合計で年約100億円にのぼることがわかった。ただ健康保険組合連合会 (本部・東京) が 「高額にすぎる」 と反発。厚生労働省は引き下げの検討を始めた。
 ステムは7月の稼働を目指し、厚労省主導で220億円をかけて開発を進めている。健保組合などが加入者のマイナンバーを使って、住民票のデータや家族の収入、年金を受け取っているかどうかなどの情報が取り寄せられる。加入者の扶養家族の確認や、傷病手当金と公的年金を二重で受け取っていないかなどもチェックできるという。……

 マイナンバーは、保険組合などが加入者の住民票のデータや家族の収入、年金を受け取っているかどうかなどの情報が取り寄せられる、加入者の扶養家族の確認や、傷病手当金と公的年金を二重で受け取っていないかなどもチェックできる制度になるということです。


 マイナンバーは、当事者は管理されている情報がわかりません。しかし当事者の情報は他者によって管理され、利用されます。
 マイナンバーには93項目の情報が入ることになっています。
 戸籍、住所、氏名、年齢・・・のほかにも資産、収入関係、年金、保険関係などがあります。保険の具体的なものとしては、年金保険料や年金額、確定拠出年金 (日本版401k) の記録、健康保険があります。さらに医療、福祉関係として、かかった医療機関や医療費の金額、持病、医療情報、医薬品による副作用情報、身体障害者手帳の交付、生活福祉資金貸付、生活保護に関する情報等があります。雇用関係としては、雇用保険の失業給付、労災保険の給付などがあります。要するに、資産、健康状況や雇用状況などあらゆる情報が管理されることになります。
 よく言われることですが、徴兵制が採用されたら、国は健康診断などの手続き抜きで召集令状を発行することが可能になります。


 さて、このようなマイナンバー制度とストレスチェック制度の関係はどのようになるでしょうか。危惧していたことが実現しようとしています。あらためてストレスチェック制度の危険性を指摘するために、15年12月8日の 「活動報告」 を再録します。

 ストレスチェック制度の開始で何がどう変わるでしょうか。
 最大の点は、チェック票の 「心身のストレス反応」 の導入です。事業者によって労働者1人ひとりの精神状態に関する検査とデータ作成が合法的に行えるようになりました。労働者は、第三者から 「心の管理」 が行われるのです。残念ながら法案作成から成立までの間に、人権・人格、基本的人権、個人情報保護というような問題は議論に上がりませんでした。
 今後、「心身のストレス反応」 検査の合法化は前例となり、他のところでも第三者によって 「心の問題」 への干渉が悪用されていきかねません。
 世界的には人格権侵害、人権無視の行為であり得ないことです。これは 「安全配慮」 以前の問題です。

 第1回の専門検討会にイギリスの例が紹介された資料が提出されました。
 そこには記載されていないですが、イギリスのストレス調査は、「職場のストレスの多くの原因は、人事関係の問題である。職場のいじめ、長時間労働の慣習、人員整理とそれによって残された人々にかかる作業負荷、そして、女性差別や民族差別のようなことは、全て人事 (HR) が対処すべき問題である。」 「もし事業者が労働時間、労働量、管理形式のような分野に及ぶ基準を満たそうとするなら、人事部は重要な役割を果たさなければならない。」 ということを目的とされています。人事関係とは日本でいう労務管理のことです。人事関係・人事部の対処こそが調査されるのです。

 国際安全衛生センターの資料からです。
 2004年11月、イギリス安全衛生庁 (HSE) は、職場ストレスに関する新しいマネージメント基準を発表しました。基準は法で規制されるものではないですが、企業が職場のストレスレベルを測定し、その原因を特定し、この問題に取り組むスタッフに役立てることを目的としています。
 最初のマネージメント基準は2003年6月に公表されました。この基準では6つの重要な職場のストレッサーである 「作業要求」、「管理」、「支援」、「関係」、「役割」、「変化」 を低減する目標を設定しています。この目標達成のためには、一定の割合のスタッフが、ストレッサーの管理方法に満足しているということを示すことが事業者にとって必要となります。
 さらに法では、5人以上の労働者を有する企業は、労働関連ストレス、いじめ、いやがらせを防止する上での対策が含まれている安全方針を文書で作成しなければなりません。
 職場ストレス原因は多種多様ですが最も重要ないくつかの潜在的根源をあげ、克服できないものはないと断言しています。効果的なストレスマネージメントの鍵の1つは、これらのストレッサーが発生するおそれがある場所を認識し、ストレッサーが現実の問題となる前に、それに対応する準備があるかということです。

 職場ストレスの主原因として、次のようなものが特定されています。
 ・企業内での不適切、あるいは不十分なコミュニケーション、特に人事異動期間中についての家庭及
  び仕事に基づいたストレスは成長し、お互いに影響し合い増大する
 ・個々人に与えられた作業要求は、各々の能力に適合したものでなければならない。そして、作業量
  は作業要求にふさわしい作業方法に見合っていなければならない
 ・過重労働及び過少労働ともにストレスになり得る
 ・交替制勤務及び夜勤は、本質的にストレスが多く、災害発生の高いリスクにつながるおそれがある
 ・自宅勤務は、労働者に孤独感を感じさせるおそれがあるので、支援体制が必要となる
 ・ホット・ディスキング(職場で個々人の机を決めていないこと)や、短期間契約は、特別な プレッシャ
  ーにつながる
 ・役割のあつれき、不明確で変化する役割は、全てストレスにつながる
 ・神経をすり減らし、いじめがある管理の仕方は相談、支援、管理でのバランスが必要となる
 ・中間管理職のコミュニケーションスキルの不足。管理職は、コミュニケーション訓練が要求され、通常の
  人よりも、このスキルが必要となる
 ・余剰人員整理のためには、スペシャリストを訓練するという特別なニーズが必要となる
 ・照明が不適切で不十分な職場は、スタッフが不快に思い、かつモチベーションが高まらない環境と
  なる
 ・新技術の導入において、計画的かつ、斬新な方法で行われない場合には、ストレスレベルを高める
 ・労働者が常に働いていることを要求されているように感じる職場環境

 日本のストレスチェック票と比べると明らかですが、「仕事のストレス要因」、「周囲のサポート」 はありますが 「心身のストレス反応」 はありません。ストレスは個人的問題か、職場全体の問題かというような捉え方はしません。イギリスが特異なのではありません。本来の職場のストレスチェックはこのようなもので、日本が特異なのです。
 イギリスがこの地平に至ったのは、労働政策の決定が政・労・使で激論のすえ行われているからです。日本は、使・使の代弁者・労の不在で行われていのが実態です。これでは労働者の人権・人格は保護されません。


 作成されたチェック票の管理は誰が行うのでしょうか。
 ストレスチェックの結果、労働者の体調不良が明らかになったら医師や保健師は労働者に結果を通知します。労働者は面接を希望する時は事業者に面接の申し出をすることができます。厚労省はこのようなシステムだから、事業者は労働者個人の情報を勝手に取得できないと説明します。
 ではチェック票はだれが保存・管理するのでしょうか。ちゃんとした保健室があり、産業医や看護師がいる職場ならそこが管理するでしょう。それ以外は。事業主が管理します。事業主は労働者の健康に関する情報は喉から手が出るほど欲しいです。猫に魚の番をさせることになりかねません。労働者の不信は消えません。


 ストレスチェック制度が開始された12月1日は、特定秘密保護法が完全施行された日でもあります。今後は秘密を漏らす恐れがないと 「適正評価」 を受けて選定された者たちだけで特定秘密を取り扱っていきます。取扱者は、薬物乱用や精神疾患、酒癖などが調べられました。自衛隊員だけでなく国家公務員、警察官、さらに民間企業の社員もいます。取扱者数は今後もっと増えるといわれています。
 この後、適正評価に際し、対象者を1人ひとり呼び出して調査したり、周囲に対象者であることを知られないで判断できる方法はないでしょうか。こう考えた時、精神疾患の 「適正評価」 については、せっかく実施したストレスチェック票の 「心身のストレス反応」 を流用したいという考えが浮かんで来るのは必然です。これがいつからかストレスチェック制度導入の目的になっているのではないでしょうか。防衛省は、人びとの健康に関する情報は喉から手が出るほど欲しいです
 厚労省は、ストレスチェック制度では事業者でも労働者個人の情報を勝手に取得できないと説明します。しかし昨今のパソコンからの情報の流出状況を見ていると、完全に保護されている情報はありません。

 2016年1月1日からマイナンバー制度がスタートします。
 総務省は、「マイナンバー制度は、住民票を有する全ての方に1人1つの番号を付して、社会保障、税、災害対策の分野で効率的に情報を管理し、複数の機関に存在する個人の情報が同一人の情報であることを確認するために活用されるものです。マイナンバーは、行政を効率化し、国民の利便性を高め、公平かつ公正な社会を実現する社会基盤」 と説明しています。
 「情報提供ネットワーク」 の役割があると言われています。しかし自治体で管理する、利用者からは見えない情報の収集です。
 具体的には、法第6条の 「利用範囲」 で、社会保障分野、税分野、災害対策分野などに利用されます。
 実際は、社会保障分野はさらに年金分野、労働分野、福祉・医療・その他の分野に分けられます。労働分野は、雇用保険等の資格取得・確認・給付を受ける際に利用、ハローワーク等の業務に利用とあります。
 福祉・医療・その他の分野は、医療保険法等保険料徴収等の医療保険における手続き、福祉分野の給付、生活保護の実施等低所得者対策の業務に利用とあります。マスコミ等では社会保障分野として 「メタボ検診」 や予防接種がクローズアップされています。
 注意しなければならないのは、健康保険法、船員保険法、国民健康保険法、高齢者の医療に関する法律による保険給付の支給、保険外の徴収に関する事務も含まれます。保険給付の支給は、人びとの健康状態の掌握が可能になります。
 2015年10月14日、マイナンバー制度のシステム設計の契約に絡んで厚労省の室長補佐が収賄容疑で逮捕されました。厚労省のシステム設計や開発に関わる調査業務2件の企画競争にシステム開発会社が受注できるように便宜をはかった見返りとして現金を受け取っていました。室長補佐は情報政策担当参事官室室長補佐ですが、収賄が言われるときは社会保障担当参事官室に在籍しています。開発内容は病院が持つ情報と連携させるシステム作りなどです。患者の病名、通院・入院の頻度の情報がマイカードに蓄積されるのです。


 企業は、賃金支払い、税の徴収・納付のために労働者からのマイナンバーの報告を受けて提出書類に記載することになっています。会社は社員のマイナンバーを掌握することになります。賃金計算を、子会社、経理専門会社や社労士などに委託している企業も多くあります。企業はナンバーの流出を止めることはできません。
 ストレスチェック票にマイナンバーが記載されて管理されたら、個人情報が知らないうちに流出していることになりかねません。マイナンバー制度によって、労働者の健康状態・情報が個人が知らないところで企業に 「提供」 され、管理されることになりかねません。
 その 「活用」 で、労務・人事管理において差別・排除、退職勧奨がわけがわからないうちに進められていきます。
また体調不良で退職した労働者が再就職しようとした時に、相手会社から理由が明らかにされないまま拒否されるという事態が発生しかねません。


 マイナンバー制度は 「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」 に基づくものですが、改正マイナンバー法が成立した2015年9月3日には 「改正個人情報保護法」 も衆院本会議で成立しました。個人情報保護法は国及び地方公共団体の責務等を明らかにしていますがプライバシーの保護はありません
 改正個人情報保護法は第一条で (目的) を謳っています。
「……国及び地方公共団体の責務等を明らかにするとともに、個人情報を取り扱う事業者の遵守すべき義務等を定めることにより、個人情報の適正かつ効果的な活用が新たな産業の創出並びに活力ある経済社会及び豊かな国民生活の実現に資するものであることその他の個人情報の有用性に配慮しつつ、個人の権利利益を保護することを目的とする。」
とあります。
 太字の部分が追加されました。つまりは、個人情報は産業の創出並びに活力ある経済社会及び豊かな国民生活の実現のために利用していいということになり、その他の個人情報の前に位置づけられています。簡単にいうと、改正によって企業が持つ個人データを使いやすくするのとプライバシー保護の在り方が見直されます

 第15条は (利用目的の特定) を謳っています。 改正前です。
「個人情報取扱事業者は、個人情報を取り扱うに当たっては、その利用の目的 (以下 「利用目的」
 という。) をできる限り特定しなければならない。 ……
2 個人情報取扱事業者は、利用目的を変更する場合には、変更前の利用目的と相当の関連性を
 有する
と合理的に認められる範囲を超えて行ってはならない。」
これが改正では、企業などが本人の同意なしに変えられる個人情報の使い道の範囲が 「相当の関
 連性」 があるから 「関連性を有する」 範囲に変わりました。
 第23条は (第三者提供の制限) を謳っています。
「個人情報取扱事業者は、以下の場合を除いては、あらかじめ本人の同意を得なければ、個人データを
 第三者に提供してはならない。……
2.人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得ることが
 困難であるとき。」
 身体の保護が、「個人の権利利益を保護することを目的とする」 と使用者の安全配慮義務を拡大解釈して、使用者が勝手に情報を取得するような状況が生まれないでしょうか。一度集めた個人情報は別の目的にも転用できます。


 ストレスチェック制度では情報の不正利用に対する罰則が設けられているから大丈夫という人たちがいます。
 しかし個人情報保護法は、企業が情報取得を秘密裏に行い、漏えいが発覚したら後付の説明を行って合法だと居直れるように 「改正」 されました。居直るにしても謝罪するにしても、取得したら 「勝ち」 です。

 個人情報保護は、自分がしっかりとプライバシーを守っていれば大丈夫というレベルの問題ではありません。日本では個人情報が外部に漏らされることが人格権侵害という捉え方は小さいです。個人情報が他者から管理される、情報がどう利用されることになるか、そして個人が国家に管理されることに抵抗がありません。集団の中では仕方ないという諦めや、当たり前と捉える傾向があるようです。だから無防備と同時に他者のことも顧みず、いろいろなところに干渉したり、インターネットなどで他者の情報が流れていると書き込みをして追加の “情報提供” をしています。
 すでに様々な情報は収集されて管理されているのです。

 安倍政権のこの時期に、「ストレスチェック制度」、「秘密保護法」、「マイナンバー制度」、「個人情報保護改正」 が施行されるのは偶然でしょうか。
 くりかえしますがマイナンバー制度はあらゆる情報が盛り込まれ、人びとの一切を管理しようとするものです。


 「職場のストレスチェック制度」 は、チェック票の 「心身のストレス反応」 がなかったら、労働者の期待するところであり有効活用も可能でした。労働組合や安全衛生委員会などで議論する資料にもなりえます。しかし開始される制度は 「検査結果の集団ごとの分析」 は努力義務ということです。
 「心身のストレス反応」 を含んで 「検査結果の集団ごとの分析」 が行われ、議論ための資料として活用することは個人の労働者を犠牲にするものです。
 ストレスチェック制度が実施されても、労働者にとって検査を受けることは義務ではありません。
 やむなく検査をうけざるを得ないとしても 「心身のストレス反応」 は拒否しましょう。
 チェック票にマイナンバーを記載することに反対しましょう。
 一次予防が目的なら、チェック票は無記名での提出も有効です。無記名でも 「検査結果の集団ごとの分析」 はできます。
 実施されても、体調不良者のリストアップ、排除・退職勧奨等に繋がらないよう監視をして行く必要があります。

  当センター「いじめメンタルヘルス労働者支援センター」ホームページ・ご相談はこちらから
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