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コミュニティ・ユニオンはすばらしい労働組合です
2012/03/27(Tue)
3月27日(火)

 労働問題において有意義かつ優れた論文・著書に送られる第26回(2011年度)冲永賞は、独立行政法人労働政策研究・研修機構の呉学殊主任研究員の著書『労使関係のフロンティア 労働組合の羅針盤』が受賞しました。
 『本』は、円滑な労使コミュニケーションを作り上げるために各労働組合、各地の労働組合が取り組んでいる実践をいろいろな角度から分析して紹介しています。そのなかで「労働組合の紛争解決・予防 -コミュニティ・ユニオンの取り組みを中心に-」と「合同労組の現状と存在意義 -個別労働紛争解決に関連して-」が独立した章立てで紹介されています。

 『本』は、コミュニティ・ユニオンが相談を受け、会社と団体交渉をしながら紛争解決に至るには、自主解決、労働委員会での解決、司法機関での解決の3つのタイプがあるが、大半は自主解決で集結していると分析しています。そして解決した事案はそれぞれ予防や労使の職場改善に繋がったといいます。
 「コミュニティ・ユニオンは、企業内で解決できない労働紛争という社会的な問題を解決している。行政機関でも解決できない労働紛争を処理するケースもある。労働紛争の解決と言う面では、行政機関や司法機関のような働きをしているといっても過言ではなく、大多数の企業別組合とは異なる役割を果たしている。労働紛争の解決という公共的な働きに対して何らかの形で公的支援があってもよいのではないかと思われる。」とも言っています。

 合同労組における自主解決率は他の個別労働紛争解決機関の和解・あっせん成立率に比べても高いレベルといえると言います。
 合同労組が紛争予防のために求めていることの中に、「労働組合の組織率を高めるべきだ」という声が57%あったといいます。おそらく経験から感じているのでしょうが、自らの組織を拡大することが紛争予防につながると考えています。
 「一部の使用者は、合同労組から突然団交申し入れをされて戸惑うという。もちろん、その思いを理解で
 きなくはないが、駆け込みの労働者がものを言える職場環境を構築してきたかを検証するきっかけとして
 前向きに捉えてもよいのではないか。また、一部の企業別労働組合も『合同労組はけしからん』と非難
 する。……
  日本の企業別労働組合・労使関係には長短がある。調書の1つが労使協調であるが、それが行き過ぎ
 ると組合は『御用組合』と揶揄されることもある。それは組合運動をテェックする機能が弱まっているから
 である。そういう状況の中で不利益を被った組合員 や当該企業の従業員が合同労組に加入し問題を解
 決することもまれにある。合同労組から団交申し入れを受けて労使関係を危惧する企業別労働組合にさ
 らなるよい労働運動を促している側面もある。企業別労働組合がメインである日本だからこそ、企業の
 外にある合同労組の存在意義があるのではないか。」
  まさにこのようなことが、紛争を抑え込むのではなく、それをきっかけに新たな労使関係を構築するきっ
 かけになります。

 さて、『CUNNメール通信』N0.346(2012年3月6日)によれば、長野県労働委員会で長野一般労働組合(まつもとユニオン)を申立人、信州大学を被申立人として不当労働行為救済申立事件の審査が行われています。
 この事件に被申立人を代表して証人として出席した信大副学長(現在、長野県労働委員会会長)の渡邉裕理事は、合同労組を誹謗中傷し、労働委員会制度を根幹から否定する内容の「陳述書」を提出しました。
 「陳述書」です。
 「5 団体交渉について(1)地域合同労組との団体交渉の特殊性
  被申立人大学においても、大学内労働組合とは、長期的な健全な労使関係の維持確立、労使間の信
 頼関係の構築を目指して、団体交渉を行っています。このような組織形態での労使関係・団体交渉は、
 長期的な観点から相互譲歩による合意の形成を目指して行われます。従って、団体交渉に際しては、
 明示の交渉内容によって論戦が戦わせられることもあれば、阿吽の呼吸で妥協される(妥協点が得ら
 れる)ことも少なくありません。
  しかしながら、一人きりの、又は少数の労働者(被用者)が駆け込み訴えを行う地域合同労組との団体
 交渉は、長期的な労使関係を構築するのではなく、駆け込み訴えという個別的紛争課題の解決を行う、
 いわば一時的な労使関係上の団体交渉となります。このような事情から、地域合同労組との団体交渉で
 は、信頼関係を構築するというよりは、地域合同労組が個別的紛争課題を一方的に有利に解決しようと
 し、激しい闘争的戦術を多用することが多くなると言われています。
  また、団体交渉を有利に運ぶために、団体交渉外の場において、使用者側が嫌がる闘争戦術をとるこ
 とが多くなるといわれています。すなわち、企業等の門前での街頭宣伝車に大音量宣伝活動、取引先に
 対する宣伝、ビラ配布や企業等への押掛け等の戦術です。
  これらの行為は社会的信用動向に敏感な金融機関や労使関係の知識・テクニックに無知な中小企業
 に対して効果が大きいことが一般的に知られているところです。」

 労働委員会は、労働組合法に則って結成された労働組合の活動と使用者の対応について審査します。そこでは労働組合の大小、組織形態は問題になりません。
 にもかかわらず、しかも長野県労働委員会会長の立場にある者がこのような「陳述書」を提出するとは言語道断です。
 「一人きりの、又は少数の労働者(被用者)が駆け込み訴えを行う地域合同労組との団体交渉は、長期的な労使関係を構築するのではなく、駆け込み訴えという個別的紛争課題の解決を行う、いわば一時的な労使関係上の団体交渉となります。」に反論します。
 労働者にとって、「駆け込み」は泣き寝入りしないで問題解決に向かう第一歩です。社内に相談できる窓口がない場合などにコミュニティユニオンを探して相談に来ます。「一時的な労使関係」も確かに多くあります。しかし労使とも、それを一過性のトラブルと捉えるか、教訓・経験と捉えるかで、労働組合員の有無に関係なくその後の労使関係が違ってきます。
 結局は、使用者にとって相談できる窓口があることがまず迷惑なのです。
 最近は、雇用状況が悪化していることも影響して、紛争解決に至っても退職しない労働者が増えています。労働組合員1人だけでも使用者をチェックしたり、仲間づくりに成功し分会・支部結成に至った例もあります。少数派でありながら職場の従業員代表選挙に立候補し、過半数以上を獲得した例もあります。
 逆に有無を言わせないでユニオンショップ制の労働組合に加入させられている場合は、労働組合脱退の自由もありません。この方が不当です。
 結局、使用者は「阿吽の呼吸で妥協される」信頼関係がある組織だけを労働組合と認め、労働組合はそれに屈伏しているのです。

 しかし長野県労働委員会会長と同じようなことを主張する学者や労働委員会の各委員が存在するのも事実です。その1人が独立行政法人労働政策研究・研修機構の濱口桂一郎部門統括研究員です。著書『日本の雇用と労働法』(日経新聞出版社)に次のようにあります。
 「以上のようなメンバーシップの企業別組合とは全く異なるタイプの労働組合として個人加盟のコミュニテ
 ィユ ニオンがあります。その源流は1950年代に当時の総評が中小企業の組織化対策として推進した
 合同労組運動にありますが、この運動の大半が個々の中小企業に企業別組合を作ることになったのに
 対し、その流れの一部は既存の企業別組合から排除された(あるいは入っても十分に守ってもらえない)
 中小零細企業労働者、非正規労働者、女性労働者、管理職といった人々のためのサービスを提供する
 という方向に進化していきました。
  もともと日本の労働法制は個別紛争処理のための仕組みを用意しておらず、不当な扱いを受けた労
 働者は費用と時間のかかる民事訴訟をするか、泣き寝入りをするしかありませんでした。それに対して、
 労働組合法は不当労働行為制度を設け、組合員であることを理由に解雇したり不利益な扱いをすること
 や、団体交渉の申し入れを拒否することを禁じ、労働委員会による救済命令という行政措置を用意して
 います。
  コミュニティユニオンは、解雇や労働条件の切り下げ、いじめ・嫌がらせといった事態に遭った労働者が
 駆け込み、その組合員となって企業に団体交渉を申し入れるという形で、集団的労使関係法制を個別紛
 争に活用するのです。これは、一種のNGOとして社会的に存在意義の大きいかつどうであることは確か
 ですが、法制の趣旨とはかけ離れたものになってしまっていることは否定できません。現在、労働委員会
 に持ち込まれる集団的労使紛争の7割は合同労組事件であり、その半分以上が駆け込み訴えです。」

 「もともと日本の労働法制は個別紛争処理のための仕組みを用意しておらず」だから個別紛争に遭遇した労働者には救済手段はないという主張でしょうか。使用者だけでなく企業別組合の提灯持ちの主張です。
 紛争は「現場」で起きているのです。集団であれ個別であれ、紛争は解決されなければなりません。それを労働組合法を駆使して解決に取り組んでいるのがコミュニティユニオンです。
 厚労省の機構の中に個別紛争相談機関があるし、訴訟という手段もあるという意見があります。しかし労使紛争は、第三者の介在に依存すべきではなく、基本的に労使間で解決されるべきものです。その方が労使関係の長期的安定につながります。
 第三者の介在は解決ではなく瞬間的な「終了」です。

 長野県労働委員会会長と同じようなことを主張するのは労働現場を知らない、知ろうとしない、労働者の喜・怒・哀・楽を理解できない人たちです。そのような人たちに労働問題を論じる資格はありません。
 「総評時代に『全国一般』は他の産別から『ごみ組合』と言われました。大単産には加盟できない小さな
 雑多な労働組合・労働者が混じっているということです。しかしこの表現は差別発言で、偏見もあったと思
 われます。
  ユニオンは『全国一般』より小さな混合組織です。だとしたらユニオンは『芥組合』だといって笑ったこと
 があります。
  『ごみ組合』『芥組合』という表現は、他の単産が捨てた、奪われたものを大切にしているということでは
 正しい表現です。名誉です。他の単産は何を捨て、奪われたのか。権利紛争、団体交渉権です。ユニオ
 ンはこれを大切にします。ユニオンの武器です。
  『ごみ組合』『芥組合』は、いろんなものが混在しているから、純粋でないから、逆に視野が広くなり、社
 会が見えます。自己を検証できます。
  『雑多な面』は労働運動の宝です。」(11月15日、11月18日、11月21日の『活動報告』)


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