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体調不良者の発生は減らすことはできます
2019/01/29(Tue)
 1月29日 (火)

 東日本大震災から間もなく8年を迎えます。
 最近の日本列島は災害大国といわれるように各地で災害が発生しています。

 16年4月16日に熊本地震が発生しました。
 「自治労通信」 2019年冬号は、特集 災害後のストレスで 「『熊本地震による自治体等職員のメンタルヘルス健康調査』 結果の概要」 で 「こころとからだのメンタルヘルス健康調査」 結果を報告しています。
 調査は、被災した熊本県と大分県の11自治体の職員を対象に18年2月から3月に行われ、震災前の入職者から3732人の回答がありました。(回収率93.3%)
 現在の業務の状況では、「復興業務を中心に行なっている」 193人 (5.3%)、「復興業務と通常業務を並行している」 678人 (16.4%)、「通常業務従事」 2772人です。

 震災前と比べた業務量の変化についての質問に、復興業務従事者の57.8%、復興業務と通常業務を並行している職員の28.3%、通常業務従事者の19.4%が 「増えている」 と回答しています。増えているの内容は、時間外労働時間21.4%、休日出勤が12.4%です。復興業務従事者では時間外労働時間46.4%、休日出勤が29.4%におよびます。
 睡眠時間について震災前と比べての質問です。減少しているは17.6%で、復興業務従事者では30.2%におよびます。

 震災後職場で起こった最大の問題については、多い順に 「人手不足による苦労が増えた」 67.3%、「震災関係の業務が多く忙しかった」 61.2%、「復旧で業務上の混乱が長く続いた」 54.8%、「家族やプライベートが犠牲になった」 54.2%、「仕事に関して自分の未熟さを感じた」 53.3%、「充分な休暇がとれなかった」 50.6%、「意図したように仕事ができなかった」 46.7%、「先が見えない仕事が多く辛かった」 42.4%などでした。
 これらの特徴は、通常業務従事者でも広くみられました。
 行政改革などで職員数が減らされてゆとりがなくなっているなかで通常にはない業務を行わなければなりません。しかし自治体職員が担わなければならない業務です。
 自治体職員を抜きにした復旧活動はありえません。
 そのなかから下記の 「自治体職員であることに誇りを感じた」 のような意識も生まれてきます。


 職員のメンタルヘルスを考えるうえで、住民とのコミュニケーションについて質問しています。
 「住民のつらい体験を聞いた」 69.1%、「住民から感謝された」 48.8%、「住民から非難されたり怒鳴られた」 44.1%です。
 被災地で職員と住民はお互いに立場は違いますが対立する関係にあるものではありません。復旧・復興は共同作業です。お互いが置かれている立場の理解が必要です。

 復興業務を成功させるための職場の上司、同僚の配慮と気遣いに関する設問への 「はい」 の比率です。
 「ねぎらいの言葉をかけられた」 73.7%、「心配してもらえた」 73.1%、「困ったとき相談にのってくれた」 64.5%、「感謝の言葉をかけられた」 61.3%、「気分をなごませたりしてくれた」 58.6%でした。
 それぞれの職場においてはお互いに 〝声掛け“ がおこなわれていたようです。

 震災を通しての自分の変化についての設問への 「はい」 の比率です。
 「人のやさしさや温かさを感じるようになった」 68.4%、「ひとまわり大きくなった」 32.4%です。家族や周囲の人間との絆への影響については、「家族などの人との絆の大切さを感じるようになった」 82.6%でした。また、「自治体職員であることに誇りを感じた」 42.7%、「熊本人であることに誇りに思った」 39.6%でした。


 現在におけるストレスの状況についての質問です。
 「非常に感じている」 10.9%、「ある程度感じている」 51.7%です。このうち、復興業務従事者においては 「非常に感じている」 19.2%、「ある程度感じている」 54.3%です。一方、通常業務従事者における 「非常に感じている」 は8.4%です。
 では、ストレスの要因は具体的にどのようなものでしょうか。(14項目中4つ以内の選択)
 多い順に、「復興業務の仕事量が多く時間が長い」 51.9%、「復興業務中住民の過剰な要求がある」 36.2%、「復興業務に伴う仕事の配分が不平等」 34.6%、「復興業務を評価してもらえない」 15.4%、「震災前職場から別職場へ異動した」 15.2%、「復興業務の不払い残業等が多い」 13.1%、「地震や復興業務の相談相手がいない」 8.6%などです。
 復興業務そのものがストレスに大きな影響を及ぼしています。
 上位4位以下は、震災前の日常的ストレスと似ています。また職員間にも震災の受けとめ方に「格差」が生まれているようにも思われます。


 「こころの問題」 による休職・退職の状況です。
 周囲に 「休職・退職はいない」 18.7%、「地震前と比べ増加した」 22.1%、「変化はない」 34.1%、「わからない」 24.0%です。ただし、復興業務従事者においては、「休職・退職はいない」 13.2%、「地震前と比べ増加した」 38.4%と大きな差があります。

 震災に関する最近1週間の最大の悩みについてです。項目に 「やや」 「かなり」 「非常に」 があてはまった率です。
 高い順に 「思いだすと気持ちがぶりかえす」 23.6%、「睡眠の途中で目が覚めてしまう」 20.5%、「イライラして怒りっぽくなっている」 16.0%、「地震のことは考えないようにしている」 14.8%、「警戒して用心深くなっている」 14.2%などの順です。
 悩みについて、心的外傷後ストレス症状測定用のIES-Rの手法を用いて診断しています。合計総得点が25点以上のケースをPTSDの疑いがあると判定します。
 平均値は9.9点。25点以上の割合は10.3%、24点以下が89.7%です。復興業務中心の従事者では25点以上が17.6% (平均値12.2)、復興業務と通常業務を並行している従事者では13.3% (平均値11.2点) となっています。
 震災後2年近くたった状況としては深刻です。
 さらに、PTSDの発症は、阪神淡路大震災では10年後に起きています。心身の健康維持の対策は長期に進められる必要があります。無理を強いて二次被害、三次被害が発生したならばそれは人災です。

 この2週間に悩まされた最大の問題について、「衆に数日」 「週の半分」 「ほとんど毎日」 あると回答した比率です。
 「疲れた感じがする・気力がない」 55.4%、「寝つきが悪い・途中で目が覚める」 43.6%、「あまり食欲がない・食べ過ぎる」 37.0%、「気分が落ち込む・憂うつになる」 34.1%、「物事に対し興味がない・楽しめない」 32.6%などです。
 2週間の悩みについて、抑うつの状態を測定するPHQ-9の手法で算出しました。大うつ病性障害の可能性がある合計総点数は10点以上です。平均値は3.9点です。
 10点以上は12.0%、そのうち10~14点・中程度7.3%、15~19点・中程度~重度3.1%、20~27点1.5%です。
 復興業務を中心の従事者では10点以上が16.0%、そのうち10~14点10.8%、15~19点4.1%、20~27点1.0%です。復興業務と通常業務を並行している従事者では10点以上が16.2%、そのうち10~14点8.8%、15~19点4.8%、20~27点2.7%です。
 PTSDの疑いがある25点以上の割合10.3%と大うつ病性障害の可能性がある10点以上12.0%が似ています。


 “こころのケア” 実施状況です。
 「充分におこなわれた」 3.1%、「ある程度行われた」 30.3%、「あまり行われなかった」 27.3%、「まったく行われなかった」 10.5%です。ただし、復興事業従事者ついてだけでは、「あまり行われなかった」 34.8%、「まったく行われなかった」 14.4%で、約半数になっています。

 “こころのケア” 実施状況と現在の健康状態におけるストレス有無等との関係については、「こころのケアがおこなわれた」 職員においては 「現在の健康状態」が 「良い」 52.1%、「悪い」 12.4%です。「こころのケアがおこなわれなかった」 職員においては 「良い」 41.2%、「悪い」 23.7%です。同じように 「ストレスの有無」 については、「感じている」 57.4%と71.1%です。
 震災対応の職員には “こころのケア” は不可欠です。しかし各自治体において対応・体制に差があったようです。


 “こころのケア” を妨げている問題は何でしょうか。
 回答は15項目中4つ以内の選択です。項目を職員の思いと体制の問題に分けると職員の思いとしては、高い順に 「職場に余裕がなく対応ができない」 38.0%、「ケアが役に立つのかわからない」 28.1%、「職場での対策や取り組みがない」 17.0%、「管理職の理解と研修が不十分」 16.0%、「自治体の取り組みが消極的」 11.7%です。
 体制の問題としては、「ケアの必要な人が誰かわからない」 37.0%、「必要な人への対応方法がわからない」 30.6%、「相談窓口があっても利用されない」 19.2%、「労働者の理解が不十分」 13.5%、などです。

 上記の復興業務を成功させるための職場の上司、同僚の配慮と気遣いに関する設問への「はい」の比率とは違った結論になっています。
 職員は、組織としての対応を期待していたのかもしれません。
 また、体調不良などは個人的に我慢する傾向がまだあります。
 16年5月下旬には地震の対応をしていた阿蘇市の50代の男性職員が自宅で自殺しています。
 管理職は全体に対する取組等の周知と 「無理をするなよ」 の声掛けが大切です。


 阪神淡路大震災を経験し、東日本大震災を経て教訓は活かされているように思われます。
 災害はなくすことはできませんが減らすことはできます。
 同じく、災害支援において体調不良者の発生はなくすことはできませんが減らすことはできます。

 「心のケア」
 「活動報告」 2018.7.10
 「活動報告」 2018.6.12
 「活動報告」 2017.11.28
 「活動報告」 2017.8.1
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人格権を見逃すと職場が暗くなる
2019/01/25(Fri)
 1月25日 (金)

 1月16日、大阪地裁は、大阪市交通局 (当時・現大阪メトロ) の2人の職員に対して「ひげを理由にした考課の減点は裁量権の逸脱で違法」 とし、計44万円の支払いを命じました。
 大阪市は橋下前市長時代の2012年5月、服務規律を強化する 「職員基本条例」 を制定しました。それをうけて大阪市交通局は12年9月、独自の 「身だしなみ基準」 を制定し、地下鉄やバスの現場職員の服装や外見を男女別に細かく規定し、男性職員のひげについては 「伸ばさず綺麗 (きれい) に剃 (そ) ること (整えられた髭 (ひげ) も不可)」 と禁止しました。
 2人の職員はそれまで10年以上ひげを生やして勤務していましたが上司からひげを剃るよういわれます。拒否すると、13、14年度連続で5段階で最低か、下から2番目の人事考課を受ました。

 2人は、ひげを剃って乗務する職務上の義務がないことの確認と2年連続低評価になると分限処分で降任または免職の可能性が出てくるということで処分の差止、損害賠償請求、そして人事考課による低額支給と賞与の差額分など計約450万円を求めて提訴しました。
 裁判では、ひげを剃ることを拒否したため人事考課で低い評価を受けたことは 「人格権」 を保障した憲法に違反すると主張しました。

 1月16日の判決理由は、「伸ばさずきれいにそること」 と定めた内規について、「ひげは社会で広く肯定的に受け入れられているとまでいえないのが現状」 と合理性を認め 「命令ではなく任意協力を求める趣旨」 として適法と判断しました。そのうえで運転士に対し形状を問わず一律に禁じ、低い考課や、上司が面談で 「守らなければ処分対象とする」 と指導した点は、内規の趣旨を逸脱し違法と認めました。
 市は控訴しました。


 『労働法律旬報』 18年3月10日号は 「シンポジウム 職場における人格権を考える」 でこの問題を取り上げています。
 開会あいさつでの裁判の原告代理人の村田浩治弁護士の発言です。
「日本社会において、仕事や会社に支配されているという感覚が非常に隅々まで行きわたっているのではないかという感覚があります。職場における評価にしても、仕事に対する評価というよりは、いかに熱心に会社のために尽くすかが評価の対象になっている。日本社会において会社と個人の関係をあまり突き詰めたかたちで議論ができていないのではないかと感じています。」

 労使関係は押し競饅頭の攻防戦です。しかし現在は残念ながら労の側は押されっぱなしの状況が続いています。
 評価制度は戦中から行われています。評価要素は、成績、情意、能力の三大要素があり、「情意」 は 「規律性」 「協調性」 「積極性」 「責任性」 をいいます。
 戦後も引き継がれますが、労働組合の監視などで示威的な評価は排除されてきました。その後も賃金・評価制度は変遷し、94年に成果主義賃金制度が導入されます。
 しかしこれも失敗すると修正が加えられたりして現在は 「役割給」 と呼ば制度が導入されています。「役割」 は職務に 「ミッション」 が加わります。ミッションとは、企業全体の経営方針や価値観についての 「職責を果たすために進んでとるべき行動」 や 「貢献することの責任」 です。企業全体がめざす方向と個々の労働者が仕事上で同じ方向性、つまりは企業への忠誠心が要求されます。その役割の達成度に評価が行われて賃金が決定します。
 まさしく村田弁護士のいう 「いかに熱心に会社のために尽くすかが評価の対象」 になっています。あわせて職場環境が大きく変えられてきました。人権、人格権が後退させられています。


 大阪市立大学の西谷敏名誉教授の基調報告を抜粋します。
「職場における労働者の人格権がいろんな角度から侵害されています。・・・
 労働者は、本来1人の主体として、様々な属性もあり、個性もあり、人生観もあるという個人です。そういう労働者の主体としても側面がだんだん抑圧されて、労働者があたかも経営者や当局の手段、もしくは管理の対象とされている。ここに問題の最も根本的な要因があると思います。」

「人格権とはいったいどのような権利なのか。・・・一言でいうと、労働者が一個の人格として尊重されるべきことを要求する権利で、法的には 『憲法十三条』、幸福権追及権や個人の尊重の法原則に根拠があります。・・・
 人格権という問題を考えるときに出発点をどこに据えるのか。労働者は一個の独立した存在であるというところから出発しなければなりません。・・・
 『問題の出発点は、二十四時間自由な個人でなければならない』 です。人は本来24時間自由でなければなりません。これは近代法の大原則です。奴隷的な拘束は許されません。
 その個性は様々な属性を持っています。性別は違うし、人種や国籍も違うし、信条も違う。いろいろな趣味の違いもあります。最近は 『ダイバーシティー (多様性) という言葉がしばしば用いられます。これは正しい。企業の従業員は一色であてはならない。多様性を持った諸個人でなければならない。・・・
 ダイバーシティーということを本当に考えるとすれば、いろいろな属性を持った個人が自分で自由に決定しなければならない。これを 『自己決定』 といいます。その自己決定を尊重することがダイバーシティーの大前提のはずです。」


 このようなことをふまえて 「ひげ裁判」 を検討します。
「会社で従業員として働いている以上は一定の制約があります。その制約はいったいどこから出てくるのか。・・・
 労働契約を結んで、会社のために労務を提供する。それに対して、会社が賃金を支払うという労働契約に根拠をおいています。・・・本来24時間自由な個人が、労働契約を結んで、その契約の範囲内においてのみ使用者に拘束されます。
 どういう点で拘束されるのかというと、一番中心的なのは労働義務です。労働契約を結んだ以上は働かなければならない。働くということは、ただ単にロボットのように体を動かしていたら済むということではありません。やはり一定の客観的に合理的な働き方をしなければならない。・・・
 そこで、個人の本来持っている自由と労働契約上の義務とはどこで折り合いをつけるのかという構造になってきます。これを労働者側から見ると、人格権の保障という問題になってきます。したがって、使用者が、労働契約上労働者に課せられている義務を超えて労働者の自由や自己決定を制約することはできません。」

「『ひげの自由と労働契約』 の問題を考えます。そもそもどういう服装をして会社に行くのか。ひげを生やしていくのかひげをそっていくのか。これは、本来は労働者の自由な自己決定の問題です。それでは、100%自由なのか、どんなひげでも自由なのか。それはそういう訳にはいきません。・・・
 どこに問題があるかというと、労働義務と抵触する可能性がないとは言えないからです。つまり、職務の性質によっては、一定の服装なりひげが、職務遂行に明らかな悪影響をおよぼす可能性があります。そういう場合には、服装の自由、ひげの自由は限界に持つことになります。・・・
 ひげや服装の場合も、信用保持義務と関係することがありますが、基本的には、これは労働義務の問題です。つまり、仕事をきちんとやっているかどいうかという問題に収斂できると考えていいと思います。」

 判決は、職務遂行に悪影響をおよぼす可能性があるとは判断しませんでした。
 労働契約を結んでいながら、その契約の範囲を逸脱して強制的に行なわれているのがサービス残業、その結果が過労死です。
労働者は契約以外の時間帯も自由がありません。まさしく人格権の剥奪です。しかし会社の労働組合も、そして社会も容認しています。
 しかし労働契約は、労働者が奴隷労働からの解放の闘いの中で獲得したものです。そこにおいては心身共にそれ以上の義務わず、人格権は保障されます。


 シンポジウムのもう一つのテーマは職場のハラスメントです。
 フジ住宅株式会社では、会長によって業務内容とは関係のない、「韓国人は出ていけ」 「韓国は、売春立国である」 「慰安婦はいなかった」 の部分に手書きで線が引かれたり、丸で囲んであったりしたヘイトハラスメントに該当する大量の資料が勤務時間中に配布されています。「外国人世帯は、市県民税、所得税ゼロ円です」 という文書が韓国籍の社員にも配られました。社員は会社から支払われる賃金から市県民税、所得税が徴集されています。そのことも知らないかのようです。
 自治体は教科書採択の際に各出版社の教科書を公開してアンケートをとります。会社は就業時間中にそこに社員を動員し、「育鵬社に 『〇』 をしてください」 と記入例を示します。
 このようなことに対して、弁護士が改善を申し入れましたがなされなかったので、大阪弁護士会に人権救済申し立をしました。その後、改善を要求した社員に退職勧奨がおこなわれたことを契機に提訴に至りました。

 ヘイトハラスメント事件についての西谷名誉教授の報告です。
「これは自己決定の問題はなく、人種や国籍の問題ですので労働者としてはいかんともできない問題です。そういうことによって差別してはならないというのは、平等原則の根幹です。・・・
 このような状況に置かれた在日コリアンである原告が、どのような利益を侵害されているのか。これは・・・1つは、自分の属性をいわれなく非難されない権利です。
 第二に、良好な職場環境で就労する権利です。自分とは異なった、あるいは自分とは敵対的な思想が使用者によって異常な形態でばらまかれることによって、良好な職場環境が害されるという問題です。それが、とりわけ人種や国籍に関する場合は、労働者のプライドを著しく傷つけます。
 これは、たとえて言えば、職場環境型のセクシャルハラスメントと共通する面があります。
 第三の側面として、自由な人間関係を形成する権利です。これは、関西電力事件が言ったところですが、『職場における労働者相互の人間関係は、労働者が自由に形成できるべきであり、使用者が職場八分、嫌がらせの慫慂 (しょうよう) などにより、自由な人間関係に介入してはならない』と。これと共通する問題を持つであろうということです。」

 しかし日本社会では、精神的な攻撃はまだ容認される状況にあります。暴言、強迫、無視、差別などなどです。しかしこれらは、人権、人格を深く傷つける凶器です。そして周囲の人たちは自己保身から見て見ぬふりをします。


 ひげ裁判の代理人が裁判の意義について発言しました。
「職場において労働者個人の人権、人格権といった重要な利益がたやすく制限されてはならない。・・・この当たり前のことを確認する訴訟の1つがこの裁判だと思っています。
 この裁判の支援の会の代表者が・・・この裁判について、『身だしなみ基準のような規則が裁判で認められるとは夢にも思わないが、このことが職場を暗くしている事実は許せない。こういう不合理な制約で息苦しい思いをしながら働かなければいけない。それは、職場環境を暗くすることであって、そういう事実は絶対に許せない』 と語っています。
 過度な職場内ルールの存在は、健全な職場環境を損なうことに他ならないと思います。『たかがひげぐらい我慢しろよ』と考える人も世のなかにはたくさんいるかもしれませんが、『ひげぐらい』 と言っているうちに、個人の意見を会社が制限して、思ったことを自由に口にできない職場環境になっているかもしれません。」

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東日本大震災での聴覚障碍者の死亡率は2倍
2019/01/22(Tue)
 1月22日 (火)

 阪神淡路大震災から1月17日で24年が経ちました。
 5時48分は自宅でテレビ中継を観ていました。

 震災直後からボランティアで避難所に何度か通い、1年目、2年目の1.17は現地で過ごしました。
 直後最初に避難所に行ったとき、避難者の交流の場は瓦礫を集めてきてのたき火でした。そこでの話です。「うちらの部屋にろうあ者がいる。だれとも会話ができず、情報も入らない。部屋はアルコール禁止だけれど昼間からワンカップを飲んでいる」。アルコールに対する不満の話ではありません。どうしたらいいかの問いかけです。筆記での会話ができるじゃないかと思いましたが手を差しのべる人はいないようです。
 地震の恐怖は健常者には想像がつきません。不安と溜まったストレスをアルコールで紛らしていたと思われます。
 ボランティアは勝手に部屋に入れません。どうなっているのかと気になっていましたが何もできませんでした。

 帰省で避難所を離れ、被災地の状況を観察しながら駅に向かっている途中、「手話できます」 のゼッケンをつけた一段とすれ違いました。「よかった」 と安堵しました。


 1年が近づいたころ、東京で永六輔らによって震災報告集会が開催されました。そこで報告された話です。
 手話ボランティアはエリアにとらわれずに活動するため、市・区役所等への登録をしませんでした。その中に忙しすぎて頸肩腕症候群になり治療中の人がいるということでした。治療は、業務ではないので労災は適用されず、ボランティア保険にも入っていなかったので自費です。
 手話通訳士は通常、講演会などでは20分で交代を繰り返します。そして帰宅してからはダンベルなどを使って身体の手入れを欠かしません。しかしそのようなゆとりはありませんでした。
 ボランティア保険は、震災から1か月が過ぎた頃から各自治体の窓口で保険会社の協力で始まりました。

 この話を聞いて、いつか役に立つと思い、手話の勉強を始めました。しかし○○からの手習いはなかなか上達しません。それでも1週間に1回の夜の授業を6年間続けました。
 そこの先生の話です。NHKの手話ニュースや 「みんなの手話」 に出演している手話通訳士の方たちは、NHKに手話が入った番組を増やすよう要請しました。そして災害などが発生した時は臨時手話ニュースを流せるようにと、しばらくは自主的にローテーションを組んで待機していたといいます。個人事業主の待機は無償です。
 もうひとつの話です。
 1999年9月30日、茨城県東海村のJCO東海事業所の核燃料加工施設内で事故が発生しました。周辺の住民に防災無線で避難指示が出されました。
 しかし聴覚障碍者は事態を知ることができず、普通どおり生活を続けていたといいます。揺れ、匂い、温度変化、色もない災害のなかで取り残されました。しばらくして事態に気が付いたとき周囲には誰もいません。地域がぬけのカラで、どうしたらいいかわかりませんでした。


 その後、聴覚障碍者団体からの要請などで教訓は活かされ、改善されてはきています。
 東日本大震災の時は直後に民間ボランティア団体によって宮城県石巻に対策本部が設置されました。

 NHK 「福祉ネットワーク」 のインターネットからです。
 NHK 「福祉ネットワーク」 取材班は、震災の発生から半年となる9月11日に 「東日本大震災6か月 取り残される障害者」 の特集番組を放送するにあたり、あらためてどれだけの障害者が亡くなったのかを取材し、多くの自治体の協力を得てデータをまとめることができました。
 取材したのは岩手、宮城、福島で10人以上の犠牲者が出た、沿岸部の30市町村です。27市町村から回答をいただきました。行方不明者は入っていません。さらに内訳として、身体障害者手帳の中での種別 (視覚障害・聴覚障害・肢体不自由)、療育手帳所持者、精神障害者保健福祉手帳の所持者の人数もお聞きしました。
 結果として、まず総人口に対する死亡率が1.03%であったのに対し、障害者の死亡率は2.06%と2倍に上ることがわかりました。障害のある人が、障害のない人に比べて大きな被害を受けたことが初めてデータとして明らかになりました。なかでも身体障害のある人の被害が大きくなっています。・・・
 番組では紹介しませんでしたが、目につくのが地域差です。宮城県の沿岸部は被害の大きさと同時に、人口全体の死亡率に対する障害者の死亡率の高さが目立ちます。しかし、岩手県の沿岸部は大船渡市を除き顕著な差は見られず、一部では障害者の方が被害が少なくなっています。こうした違いがどのような要因によるものかはわかっていません。
 本来であれば国がこうしたデータをまとめ、検証してほしかったと思いますが、厚生労働省に問い合わせたところ、その予定はないとのことで、NHK独自での取材になりました。しかし、大きな被害を受けた自治体で協力いただけなかったところもあり (仙台市、石巻市、岩手県大槌町) データとしてはまだまだ不十分です。ぜひ今後、調査と検証の必要性を検討していただければと思います。

 NHK調査では、3県には聴覚障害者が3753人いましたが75人が犠牲になっています。

 別の調査では、障害者全体の死亡率は3.5%で、手帳の種類別では、身体障害者が3.9%、精神障害者3.1%、知的障害者1.5%の結果があります。

 翌年4月に東京で開催された交流会では、財団法人全日本ろうあ連盟の報告として、岩手、宮城、福島3県の聴覚障害者1671人の安否を調べたら17人の死亡を確認したといいます。全国ろうあ連盟は聴覚障碍者全員を組織しているわけではありません。


 14年5月23日の 「活動報告」 の抜粋です。
 2014年5月6日付の 『河北新報』 に 「ハンカチでSOS 聴覚障害者ら災害時使用 塩釜市社協が作製」 の見出し記事が載りました。
 塩釜市社会福祉協議会は聴覚障碍者らから、「避難時に意思を伝える物が欲しい」 という意見が寄せられました。それをうけて災害時や緊急時に使用する 「たすけてハンカチ」 を300枚作製し、市内の対象者約150人に配りました。ハンカチは20センチ四方のタオル地で、大きく 「Help たすけてください」 と書かれています。首都圏の自治体では同様のバンダナを作った例はあるが、県内では初の試みといいます。
 社協の事務局長は 「災害で助けが必要なときに周囲に伝えやすい。日常でも車いすで道路の段差を越えられなかったり、重い荷物を運べなかったりしたときにはハンカチを見せてほしい」 と話しています。
 対策は、平時にとられていなければ緊急時には活かされません。
 「減災」 対策はマンパワーです。防潮堤の高さではありません。


 手話通訳士の必要性は増していますがなかなかは増えません。手話通訳士は労災り患などを考えると業務は1週間25時間が限度といわれています。しかし現在の時給だけでは生活が成りたたず、自立できません。実際は、時間のやりくりに融通が利くもう一つの仕事との兼業か、誰かの扶養家族として活動しています。
 福祉に力を入れているといわれる行政においても 「ボランティア」 の位置づけ以上にはなっていません。

 1月11日には午後5時46分に東京・日比谷公園小音楽堂でもイベントが開催されました。神戸での朝の実行委員会の方たちが 「神戸の火」 を運んで、グラスにろうそくをたてて3・11の文字を作って火をともしました。参加者はそれぞれ3・11の体験を語りました。この後は毎年、東京でもイベントが行われます。


 阪神淡路大震災関連の死者は6500人と発表されています。被災直後の発表は4500人でした。2000人が関連死です。
 95年4月を過ぎると行政は避難所から避難者の排除を始め、自立を強制しました。
 ボランティアで訪れていた避難所は、閉校になった小学校だったので他で排除された避難者もあらたに集まってきていました。
 秋頃に訪れた時、1つの教室の前に線香立が置かれていました。
 行政の立ち退きの催促に、行き場がなかった避難者が首をつって自殺しました。
 この方は、自死なのでしょうか、関連死としてカウントされているのでしょうか。

 まもなく3・11を迎えます。
 手話の力量はまだまだです。
 ちなみに、手話でボランティアをどう表現するか。「一緒」プラス 「歩く」 です。何かをしてあげるのではなく、「共に歩む」 がボランティアです。
 

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女性差別の根底にあるのは 「無意識のバイアス」
2019/01/17(Thu)
 1月17日 (木)

 1月11日の朝日新聞 オピニオン&フォーラムは、ハーバード大学ケネディ行政大学院教授の行動経済学者イリス・ボネットさんへのインタビュー 「男女平等 デザインする」 です。その中から抜粋します。

 ――行動経済学とジェンダーとは、珍しい組み合わせです。
「昨日、会議があって、国際通貨基金のラガルド専務理事と日本の課題について話したのですが、女性をもっと労働力として取り込まないと、国内総生産 (GDP) は縮む一方です。壁になっているのは、女性の能力や適性を低くみる 『無意識のバイアス (偏り)』 です。行動経済学により、バイアスを取り除く行動を促す 『行動デザイン』 を示すことができます」
 ――イメージがわきません。
「1枚のカーテンが変化をもたらした例を話しましょう。1970年代以降、米国の多くの交響楽団がカーテン越しに団員を審査する方法を採りました。当初はバーンスタインを始め、多くの楽団監督がこの方法に反対しました。『我々は外見には左右されない。音楽の質しか気にしない』 と。でも現実は、女性演奏家の割合が5%から35%に増えたのです」
 ――そんなに簡単な方法で?
「行動デザインが監督たちの考え方を変えたわけではありません。『外見ではなく音で選ぶ』 という行動を取りやすくするように介入しただけなのです」
     ■     ■
 ――日本では前財務次官のセクハラ事件があり、国は省庁幹部の研修を義務化したのですが。
「最近、私の同僚が行った研究が参考になるかもしれません。イタリアで教師にIATテスト (本人も自覚できない潜在的な態度を調べられるテスト) を受けてもらったところ、女子と移民の成績を厳しくつける傾向が明らかになりました。しかしリベラルな価値観を持つ教師は、このテストを受けた後、自分の傾向を意識するようになりました。テストが自らへの 『警告』 になったのです。一方、元々差別的な傾向を持つ教師には効果がありませんでした。女性蔑視的な人にも効果がある対策を考える必要があります」
 ――医大の不正入試も大きな問題となりました。ある大学は 「女子の方がコミュニケーション能力が高い」 という理由で、女子を不利に扱いました。こんなことがまかり通っていいのでしょうか。
「いいえ! たとえ男性の方がコミュニケーション能力が高かったとしても、反対です。医大側は、医師としての成功と関係するような筆記試験や面接をデザインして選考すべきです。不正のせいで、素晴らしい女性医師が生まれる機会を逃したかもしれないのですから。なぜこんな不正が?」
 ――女性は子どもを産むと、戦力として劣るからというのが理由の一つのようです。
「なんと、本当に女性を差別しているんですね。母親の育休は確かに、理想的な制度ではありません。父親も取るようになれば、雇用主が女性差別をしなくなるのですが。スウェーデンのように両親が同等に取るモデルが理想です」
     ■     ■
 ――ロールモデルと言えば、世界的に広がった#MeToo運動をどう評価しますか。
「この運動は二つのことをもたらしました。一つは、セクハラの被害者が声を上げてもいいと思えるようになったこと。もう一つは世間の見方が変わり、セクハラに有罪判決がでるようになったことです。ただ変化に伴う痛みもあります。今は男性も女性も 『これをしたらセクハラなのか』 と判断に迷っています。シートベルトの例がわかりやすいですが、数十年前はつけている人は少数派でした。でも今は、大の男がつけても恥ずかしいことではなくなりました。変化には時間が必要です」
 ――男女の格差を無くそうという動きに、男性を巻き込むにはどうすればいいでしょう。
「娘を持つ男性はよき味方になります。それに男性だって、背の高さや体形や知性によって差別されたことがあるはずです。私はいつも 『これは女性だけの問題ではなく、みんなが暮らしやすい社会をつくる取り組みだ』 と伝えています」

 男女差別が根拠のないものであることが喝破されています。


 昨年9月11日、在日スウェーデン大使館で、 「女性の社会進出先進国」 として知られているスウェーデンが今の状況をどのようにしてつくり上げたのかを探る討論会 「男女平等を実現する手段としての税制 スウェーデンの経験と日本の選択」 が開催されました。
 時事通信の報告記事です。
 日本でも今年1月からの配偶者控除見直しをめぐり、税制と女性の社会進出を絡めた議論が盛んになったのを踏まえて行われた。来日したスウェーデンのレイヨン元法相は、女性の社会進出を促した転換点と言われる1970年代初頭のスウェーデンの税制改革について 「(突然) クーデターが起きたわけではない」 と指摘。60年代から盛んに議論を重ね、先行して一部を導入し試してみた上での変革だった点を強調した。
 スウェーデンは70年代の税制改革で、世帯を基本にした 「夫婦合算税方式」から、男性も女性も一課税対象として扱う「個別課税方式」 に切り替えた。個々人の生涯所得に基づいて年金支給額を決めるなど、男女共に働きに出るよう促す体制づくりを進めていった。

 レイヨン氏は、フランスの作家ボーボワールや米学者マーガレット・ミードに代表される60年代の 「性の革命」 やフェミニズムの世界的な高まりが、当時のパルメ首相らを改革の方向へと導いた面があると振り返った。ただ 「男女平等と並び、既婚女性を労働予備軍と見なす需要も強かった」 と語り、深刻な労働力不足に陥っていた経済界からの要望があったことも指摘した。
 ストックホルム大のアニタ・ニベリ名誉教授は 「税制改革の前から女性の就労は増え始めていた」 と分析。現実を追認する格好で制度を変えた結果、女性の社会進出をますます促したと考えている。
 一方で、税制改革の後も 「子育て支援、産休や育児休暇の拡充、子育て中の親の時短勤務の権利確立、父親の子育てや家事参加の意識改革といった対策を次々行って、子供を育てながら母親が働ける環境づくりを続けている」 と強調。「こういうことは徐々に進むもので、時間はかかる」 と語り、スウェーデンも一夜で変わったわけではないと解説した。


 ではどのようなことが転機となったのでしょうか。
 17年のハフポスト日本版の取材に対しての男女平等担当大臣 (子供・高齢者担当兼務) のオーサ・レグネールさんの回答です。
 スウェーデンでは、1970年代の経済発展に伴って、女性の労働力が必要になった。
 人手不足に悩んだ経済界は、男女の別や子供の有無を問わずに働く労働者を必要としていた。また、福祉国家を目指すため、国家としても税収の増加を必要としていた。
 そこで進めたのが、社会保障制度や課税単位を世帯から個人単位へと変更することだった。これによって、家事労働をしていた女性たちが外で働くモチベーションを高めたという。
男女平等は人権の問題でもありますが、同時に経済成長のツールでもあります。これは、決して女性への贈り物ではない、ドライでテクニカルなものなんです。日本では配偶者控除の廃止が2016年に大きな議論になったと聞いています。スウェーデンでは、課税システムの変更は男女がそれぞれ外で働くためのモチベーションを大いに高めました
 同時に、スウェーデンでは保育園や介護施設の整備による 「福祉国家」 化と、育児休業制度の充実を進めた。そして、働く女性と保育・介護職などとして働く場所の両方を増やすことに成功したという。

 現在、スウェーデンの国会議員の44%、さらに閣僚22人中12人を女性が占めている。レグネール氏は、女性の政界進出の起点になったのは、1990年代だったという。
 スウェーデンの選挙は立候補者個人ではなく、党に対して投票する形。党は立候補者に優先順位をつけて名簿にまとめ、優先順に当選していく仕組みになっている (拘束名簿式比例代表制)。
 1994の総選挙で、9年ぶりの政権奪還を狙っていた社会民主党 (2017年現在は最大政党) は、女性票を獲得することが最大の目標となっていた。
 この選挙を前に、党内の女性グループは、党に対して名簿に男女を交互に記載し、ほぼ同数で当選することになる 「サンドイッチ名簿制度」 の導入を求め、実施しなければ 「独立して新たに女性党を結成する」 と迫った。
 女性の議員と支持者が離れることを恐れた党側は、この要求を受け入れた。その結果、社民党は女性票を集めて大勝し、国会議員全体に占める女性の比率も40%以上に増えた。以降、他の主要政党も次々に類似の制度を導入するきっかけとなった。
あくまでも各政党が自発的にクオータ制を取り入れ、それが有権者の支持を集めた。そして、閣僚に登用される女性が増え、政府の方針に影響を与えるに至ったのです

 「まだ解決できていない問題」 として語ったのが、女性に対する暴力への対策だ。1990年代後半から、男女平等政策の焦点は社会全体から私的なレベルへと移りつつあり、現在最も力を入れている問題だ。
 1998年に女性に対する暴力禁止法が導入され、99年には性的サービスの購買禁止法 (売る側は違法ではない) が発効された。また、政府でも被害者向けのシェルターの設置や、支援方法の改善・普及事業などを進めているという。


 さて、12月18日、スイスのシンクタンク、世界経済フォーラムは2018年の男女平等度ランキングを発表しました。調査は、政治、経済、教育、健康の4分野14項目で男女格差を分析します。首位は10年連続でアイスランド。次いでノルウェー、スウェーデン、フィンランドと北欧諸国が並びました。
 日本は149カ国中110位で、前年から4つ順位を上げました。国会議員や閣僚級に占める女性の割合など政治分野で評価が低かったほか、年収格差、管理職比率といった経済分野でも下位。高等教育機関の入学割合も低評価でした。賃金格差の縮小や女性の労働参加率向上などが寄与しました。

 安倍政権は女性活躍推進・「すべての女性が輝く社会づくり」 を唱え、15年9月に 「女性活躍推進法」 を制定しました。本気で取り組む気があるならスウェーデンから学ぶことがたくさんあります。しかし3年が過ぎても絵に描いた餅のままです。
 スウェーデン政府は男女平等を目指すことをアピールしたとき、「目指すというのは単なるスローガンではありません」 と確認したといいます。

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たまにはため息も
2019/01/11(Fri)
 1月11日 (金)

 1956年から75年まで、3月になると東北本線に集団就職列車が走っていました。75年に15歳だったらまもなく定年退職、18歳だったら定年を過ぎています。
 64年には 「あゝ上野駅」 がヒットしました。上野駅には夢よりも不安を抱いて降りました。
 65年には 「金の卵」 が流行語になりました。今と同じように労働力が不足していた時代に人集めのためのフレーズでした。
 彼等は、年末になると、新品の服にコートを羽織り、お土産を両手にかかげて上野駅に集まります。それまで履いて来た傷だらけの靴は駅前の店で買い替えます。靴屋には脱ぎ捨てられた靴の山ができたといいます。脱ぎ捨てられた靴から、田舎の家族には見せまいとするそれまでの苦労が伝わってきたといいます。
 元気で立派な姿を見せて安心させました。

 現在の外国人労働者、技能実習生の置かれている状況をかつての 「金の卵」 と似ているといった人がいました。なかなか労働力が集まりにくい仕事に就かされ、耐えられずに数年で離職する者が多かったのも確かです。「石のうえにも3年」 は長すぎる時間でした。高度経済成長期には田舎も人手不足でしたので戻ることも可能でした。

 昨今は、集団就職列車に乗って上京した人たちがお正月に帰省することも減ってきています。故郷が時間的にも感覚的にも近くなり、お正月のまとまった休暇を利用しなくても簡単にできるようになりまいた。消滅してしまった田舎もあります。


 12月29日配信のヤフーに、47年間新橋駅前で靴磨きをしている87歳の中村さんが平成世相の変化について 「みんな、足が速くなったわね」 と話すインタビューがありました。

 中村さんについては13年2月22日の 「活動報告」 でも書きましたので再録します。
「・・・昨年の有線放送大賞候補のなかにあさみちゆきが歌う 『新橋2丁目7番地』 がありました。

  1.うすい座布団 一枚で
    地べたに座って 四十年
    時が流れて 人が流れる
    濁流うねる この都会(まち)で
    流されまいと 流されまいと
    小石のように うずくまる
    靴を磨けば こころも晴れる
    今日も元気に がんばって
    雨の日も 風の日も
    新橋二丁目 七番地

 有線放送から流されるとリクエストが次々と寄せられました。
  「流されまいと 流されまいと
   小石のように うずくまる」
 昨今の哀歌そのものです。だから中村さんのことではなくサラリーマンへの応援歌だといわれています。
 新橋駅を利用するのは労働者というよりはサラリーマン、そして官公庁の職員たちです。おばあさんは客の靴から、そして通り過ぎる人たちの姿を40年間、「虫の目」 で見てきました。

  2.こんな私に 出来たのは
    一生懸命 生きること
    秋の夕暮れ ひとつため息
    赤チン色の 赤ちょうちん
    一杯飲めば 一杯飲めば
    人間なんて 立ち直る
    靴の汚れは 心の汚れ
    夢も磨けば また光る
    雨の日も 風の日も
    新橋二丁目 七番地

  「秋の夕暮れ ひとつため息
   赤チン色の 赤ちょうちん」
 客が靴を磨いてもらうためには、束の間パイプ椅子に座ります。そしてため息をつきます。ため息をつく心情が靴の汚れにも出ています。人は立ったままでは 「心の汚れ」 =ストレスは取れません。身体が落ち着かないなかでは心が落ち着くことはありません。その束の間が 「心の汚れ」 =ストレスを解消します。
 そして同じようにため息をつきたそうな人たちが、寒くてひび割れをした時などに塗る赤チンと同じ色の赤ちょうちんに入っていきます。心の憂さをアルコールに浸します。そして翌日の活力を回復します。
  「靴の汚れは 心の汚れ
   夢も磨けば また光る」
です。

 靴を磨いてもらう姿は対面です。中村さんは黙っていても足先から 「エンパワーメント」 するカウンセラーの役割を果たします。「はい、きれいになりましたよ」 と言われて磨かれた靴を見た時、それまでと違う自分になれます。だから 「夢も磨けば また光る」 のです。

 新聞に載っていた御徒町駅前で靴磨きをしている方のエピソードです。
 会社訪問をしている学生が黒ではない靴を履いていました。上手くいっている様子ではありません。「会社の中には格好で判断するところもあるから、安くてもいいから黒い靴を買って訪問した方がいいよ」 とアドバイスしました。
 すると後日、学生が内定をもらったと報告に来たということでした。靴の色を変えたからかどうかはわかりません。しかし靴磨きの方の 「エンパワーメント」 が学生の意識を攻勢的にさせたのは事実です。

  3、明日はきっと 明日はきっと
    いいことあるさ 大丈夫
    つらい気持は 靴みりゃわかる
    今日もあなたは がんばった
    雨の日も 風の日も
    新橋二丁目 七番地

  「つらい気持は 靴みりゃわかる
   今日もあなたは がんばった」
 つらい気持ちが伝わるのは汚れだけではありません。減り具合です。
 営業先の顧客の対応、社内での上司の視線などなどが浮かんできます。
 しかし、会話はなくてもその心情をちゃんと受け止めているように、中村さんはせっせと手を動かし続けて磨きあげます。
 
 靴磨きを生業とする人は減っていきました。急激に減ったのは64年の東京オリンピック開催のためです。
 東京オリンピックは、多くのものを排斥し、隠しました。都心から集合住宅を移転させました。どぶ川に蓋をしてコンクリートの歩道にしました。川の上に高速道路を走らせました。
 人々が生活していた街を破壊しました。「鳥の目」 からはコンクリート群が見えます。それが 「立派に立ち直った日本の姿」 なのです。

 今、オリンピックの東京招致が叫ばれています。今度は何を排除し、隠すのでしょうか。
 コンクリートは立派でも労働者が生活しやすい街ではありません。
  「濁流うねる この都会(まち)で
   流されまいと 流されまいと
   小石のように うずくまる」
 東京は、息苦しい街です。みな、ため息をつける場所を探しています。

 日々の労働相談では、『新橋二丁目7番地』 の中村さんと同じような心情に至ることがしばしばです。」 


 それから5年、世相が変わっています。
 インタビューは昨年末です。
「『朝はね、9時半くらいからよ。午前中はパーッとお客来るんです。1日そうね、30人くらいは来るね。なんだかんだで夜までね。・・・』
『人の流れが速いわねぇ。みんな、足が速くなったわね。ゆっくりする暇がないんだか、ちゃっちゃちゃっちゃ通りますよ。前はね、この辺で、3人くらいで並んでしゃべっている女の人もいたけど、もうね、じっとしてる人を見なくなった。ゆったりしてるところがないの。一生懸命だから足も速くなるのかね』

 大勢のサラリーマンが急ぎ足で通り過ぎていく
『今はみんないい靴履いてるわね。イタリーとかスペインの靴とかね。きれいよ。昔は違うの。汚れてるから来るの。悪い靴でも磨いたんだけど、今はいい靴ばっかり。いい靴履いてるけど、もっとよく見せたいっていう人が多いのね』
『女性のお客、増えたわね、最近。10年くらい前から。でもひとりもんが多いの。30でも40でも結婚したことないっていう人が多いわね。なんでかしらね。今、男の人はね、『奥さんが(靴)磨いてくれない』って。『外で磨いてらっしゃい』 って言われるんだって。磨いてくれる奥さんもいるみたいね。でも 『きれいに磨かないんだよ』 って言うから、『それ言っちゃダメよ』 って。奥さんがっかりして磨かなくなるから。『きれいになった』 って言っときなさい、って言うの』

 客から悩みを聞くことも多いという。
『子供ができないだの、借金だらけだのってね。よくね、電車ね、毎日のように人身事故あるでしょ? 暮れになると必ずあるもの。人間ね、やっぱり死んだらいいことないんだからね。『生きてね』 って言うの。『コツコツ、一生懸命生きてね』 って。私だって苦労したんだよ。今でも苦労だよ、ふふふ。他人は良く見えるのよ、他人は。でもみんなそれぞれね、悩みがあるの。私はこんなとこ座ってね、みじめだなと思ったけど、今は思ってない』
『靴はね、大事に履きなさいって私言うの。どんなに古くても、磨けばきれいになるから。まだ履けるから。底が大丈夫なうちはね、少し破れたって、磨けばね、元通りに近いようになるんだから』

 靴墨で汚れた手。長年の仕事で
 指紋は薄くなった中村さんは靴墨を素手で塗り込む。手は真っ黒だ。
『黒くなんなきゃ商売になんないでしょ。こんなのね、洗えば落ちるのよ。手の汚れは洗えば落ちるけど、人の心の汚れは落ちないのよ。お客さんがきれいになれば、私は汚れようがなんだっていいのよ。私の名前は幸子。幸せな子。だから、幸せにしたいの。みんなを幸せにして、自分が幸せになる。みんなが幸せにならなかったら、私も幸せになれない。平成終わったって、仕事やりますよ。いつまでって? 死ぬまでよ」


 「いい靴履いてるけど、もっとよく見せたいっていう人が多いの」 の社会は生きづらいです。
 さらにロボットの頭脳に人間は支配されていくのでしょうか。
 さらに、コンクリートや経済の数字の大きさを見せびらかす20年のオリンピックは今度は東京から何を消すのでしょうか。
 世の中がせわしくなりました。
 でも、たまには立ち止まりたくもなります。「ひとつため息」 をつきたくなります。それも大切なことです。
 2019年はそれができる年にしたいと思います。

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