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ILO総会でのセクハラ対策条約議論で                                 日本政府 「態度保留」
2018/06/05(Tue)
 6月5日 (火)

 ILOの第107回総会が、5月28日から6月8日までジュネーブ開催されています。総会は、毎年1回行われ、ILO加盟国187カ国の政府、労働者、使用者からなる代表団が一同に会する最高意思決定機関で、ILO条約などの国際労働基準の策定を含め、労働問題に係る議論を行います。
 今回は7議題について議論されますが、メインテーマは 「仕事の世界における男女に対するハラスメント」 (「Ending violence and harassment against women and men in the world of work」 ) です。
 ILOにはこれらを直接取り上げた基準は存在しませんでした。ディーセント・ワークと相容れず、許容できない問題に取り組む緊急の行動を求める声に応え、今年は新たな基準の採択を目指す2回討議手続きの1回目の討議が行われます。
 『仕事の世界における男女に対する暴力とハラスメントに終止符を打つ』 と題し、仕事の世界における暴力とハラスメントの現状を、その内容、関係者、発生場所、影響、推進要素、リスク要因、危険度が特に高い職種や集団などの切り口から解説し、国際・国内の取り組みをまとめた報告書 (Report V (1) ) と、これに関する基準設定についての加盟国政労使の見解を記した報告書 (Report V (2) ) の2冊の討議資料をもとに、2年越しの検討が開始されます。

 長文ですが 、ILO駐日事務所の 「第107回ILO総会の議題について」 をコピーします。

 第5議題 「仕事の世界における男女に対する暴力とハラスメント (基準設定、第一次討議)」
 仕事の世界における男女に対する暴力とハラスメント対策に取り組むための労働基準につい て、今回の第107回 ILO 総会において第一次討議が行われ、次回の第108回総会におけ る第二次討議を経て基準の採択を目指すものである。

【仕事の世界における男女に対する暴力とハラスメントの現状】
 近年、仕事の世界における男女に対する暴力及びハラスメントに対する問題意識が高まって きており、対応措置を早急に取ることが求められている。この問題に対する対策は持続可能 な開発のための2030アジェンダの 「目標8.5の女性及び男性の完全かつ生産的雇用及びディーセント・ワークの達成;目標10の国内及び国際間の不公平の低減;目標3のすべての人のための健康な生活の確保及び福祉の増進;目標5のジェンダー平等の達成及びすべての成人女性及び少女の権利拡張」 と密接に関連している。

 仕事の世界における 「暴力」 又は 「ハラスメント」 について現在世界的に受け入れられている定義はないが、2016年の仕事の世界における男女に対する暴力に関するILO 専門家会議では、暴力及びハラスメントを身体的、精神的又は性的な痛手又は苦痛を及ぼす可能性の高い許容できない一連の振る舞い及び慣行としている。

 労働関連の暴力及びハラスメントについては、定義していない国、身体的行為に限っている国もあるが多くの国々では身体的及び精神的行為の両方を含んでいる。また、別の形態の定義では、行為そのもの (殴打、侮辱、悪態及び怒鳴ることなど) より、行為の結果また影響 (痛手、又は尊厳の喪失) に重点を置いている。

 身体的暴力の例として、職場における銃乱射事件及び殺人事件となる事案があるが、死者を出す暴力は、仕事の世界の身体的暴力の少数の事例を占めるのみである。また、仕事の世界における種々の形態の身体的暴力は一般的に精神的暴力に比べて報告される頻度が低い。精神的な暴力及びハラスメントは、 一連の口頭又は非口頭の虐待、セクシャル・ハラスメント、弱い者いじめ及び言葉による虐待・脅迫を含んでいる。

 性的暴力及びセクシャル・ハラスメントには、欲せざるコメント又は口説き、ジョーク、短い身体的接触などが含まれる。一般的な性別に基づく暴力と同様に、成人男性及び少年も性的な暴力及びハラスメントの犠牲となり得るが、対象の多くは、成人女性及び少女である。セクシャル・ハラスメントには、仕事に関する決定と関連して労働者が性的な接待を要求される場合もある。労働現場の組織又は構造から生ずる心理社会的リスクも、それが犠牲者の尊厳、安全・健康及び福祉に影響を及ぼす場合には、暴力及びハラスメントとなる。労働環境の劣化、分離及び労働者にそのスキルに相応する職を与えないことを含む労働条件や不当なノルマ (非現実的な処理件数・期限等) も一種のハラスメントと見なされる

 【暴力及びハラスメントの対象】
 潜在的に、誰でも暴力及びハラスメントの行為の加害者及び被害者となり得る。暴力及びハラスメントは職場内部の水平 (同僚間) 及び垂直 (上司と部下の間) の関係 において、また顧客や第三者など職場外部の人との間でも起こり得る。医療、教育、接客及び運輸部門においては、労働者が接触する顧客や一般公衆との間に生ずるケースも多い。

 暴力及びハラスメントは、様々な状況・要因と関連し、しばしば、仕事の世界及び一般社会に働くダイナミクス (力関係、ジェンダー規範、文化的及び社会的規範、差別意識など) により影響される。性別に基づく暴力及びハラスメントには、男性と女性の間の不平等な力関係から生じている場合、被害者の行動が社会的に受け入れられている性別役割に一致しないがゆえに行われている場合、妊娠・出産等と関連するマタニティー・ハラスメントなどがある。ジェンダーに基づく暴力及びハラスメントはジェンダー不一致の男女に対して行われレスビアン、ゲイ、両性愛者、トランス及びインターセックス (LGBTI) の人々が対象となる。

 仕事の世界における暴力及びハラスメントが起こりうる状況としては、仕事の行われる公的・私的空間、給与の支払い場所、食事又は休憩をとる場所、通勤途上、仕事に関連した旅行・訓練・イベント・クリスマス会などの行事、及びEメールなどを使って行われる連絡などがある。そして、仕事の世界における暴力及びハラスメントの被害者及び加害者は労働者、使用者、第三者 (取引先、顧客、サービス提供者、患者、一般公衆) と多岐に渡る。身体的暴力及びハラスメントは、教育、ヘルスケア、ソーシャルワーク、行政、宿泊・飲食業のサービスのような労働者が公衆と直接接する職業において頻繁に報告されている

 【労働者及び企業に対する影響】
 身体的な暴力及びハラスメントは、明白な身体的な傷跡のみならず、リハビリテーション及びカウンセリングを必要とする精神的傷跡を残すことがある。精神的な暴力及びセクシャル・ハラスメントは、不安、抑圧、頭痛、睡眠障害などを引き起こし、仕事の遂行能力に悪影響を及ぼす。

 経済的観点では、性的暴力及びハラスメントは、しばしば女性が労働市場に参入すること及び職に留まることへの障害となっており、女性労働者の所得能力の低下、男女賃金格差拡大に寄与している。企業にとって暴力及びハラスメントは、常習的欠勤の増加、疾病手当及び管理費用の増大を招く。また、虐待された労働者が適切なサポートなしに会社に留まる場合、生産性はしばしば低下し、それが企業の費用を増大させるほか、被害者が離職した場合には、新規労働者の採用及び訓練費用として負担増となる。さらに企業の評判・イメージの観点か らマイナス効果がある。

 【既存の対策と枠組み】
 強制労働・児童労働・差別撤廃等に関連するILO基本条約は暴力及びハラスメントに関連する対策を内在しているほか、夜間労働者、家事労働者、先住民及び種族民、船員などを対象とした国際労働基準では、一定の種類の暴力又はハラスメントに言及している。また、労働安全衛生関連の基準は、暴力及びハラスメントに直接言及していないが、労働者の安全と健康確保の観点から、その防止及び管理に関係している。しかしながら、これらは広くすべての労働者の保護と暴力及びハラスメントの防止を目指したものではない。

 ヨーロッパ社会憲章では、加盟国が使用者及び労働者の代表と協力して意識を高め、情報を提供し、職場におけるセクシャル・ハラスメントとモラル・ハラスメントの両方を防止することを求めている。米州では 「女性に対する暴力の防止、処罰及び撲滅に関する米州条約」 が多くの国における女性に対する暴力に関する法律の採択を促している。アフリカにおける女性の権利に関する 「人権および人民の権利に関するアフリカ憲章」 の議定書 が各国の職場におけるセクシャル・ハラスメント対策に寄与している

 暴力及びハラスメントのない職場で働く権利、あるいは仕事の世界における暴力及びハラスメントの禁止が、多くの国々の法律、判例法及び団体協約において規定されている。多くの場合、権利付与及び禁止は、労働法、刑法及び差別禁止法で、防止措置は労働安全衛生対策についての法律で規定されている。職場の精神的暴力及びハラスメントは、「言葉による暴力」、「弱い者いじめ」、「暴力」 又は 「ハラスメント」 などの用語に基づいて規制されて いる。

 暴力及びハラスメントをOSHマネジメントシステムの対象としている場合には、労働者参加のもとに危険要因 (職場の暴力及びハラスメントを発生させる精神的危険要因を含む) を予測し、評価し、対策を講じることになる。労働安全衛生法令で職場における該当行動の識別法と防止方針の策定、ハラスメントに関する意識向上活動、苦情手続の確立を求めている国もある。暴力及びハラスメントに関する内部紛争解決機構の設置を義務付けている国もあり、苦情の訴え・通報に基づく対処がなされる。また多くの国々では、外部紛争解決機構が、提起された苦情に基づき、一定期限内に調査、その他の措置を取っている。

 【第一次討議】
 第一次討議では、条約・勧告における暴力及びハラスメントの定義、対象となる労働者や暴力及びハラスメントが起こる状況などの範囲、すべての形態の暴力及びハラスメントの禁止、暴力及びハラスメントを受けるリスクの高い労働者 (妊婦、HIV感染者、移民、LGBTI等) が差別を受けない等労働者の権利、リスクアセスメントに基づく防止対策、労働者への情報 提供と訓練、法令の施行、被害者支援等の規定について検討される。


 ILOは、総会にむけて各国に、会議報告書のためにもっとも代表的な使用者・労働者組織と協議のうえ、2017年9月22日までに見解を提出することを要求しました。日本でも、政府、経団連、連合などが提出しています。
 報告書への条約制定にたいする日本政府の見解は 「YES」 でした。しかし 「当該条約では、各締国が仕事の世界におけるあらゆる形態の暴力およびハラスメント、とりわけあらゆる形態のジェンダーに基づく暴力を禁止す国内法、とりわけあらゆる形態のジェンダーに基づく暴力を禁止す国内法令を定めるべきであると規定すべきか?」 には回答しませんでした。


 6月4日の共同通信発信の見出し記事 「ILO、セクハラ対策条約制定へ 米反対、日本は態度保留」 です。
「【ジュネーブ共同】 国際労働機関 (ILO) の委員会は2日、職場でのセクハラや暴力をなくすための国際基準の枠組みについて、拘束力を持つ条約を制定する方針を決めた。社会規範の異なる各国の事情に合わせるため、勧告を作成し条約を補完する。会議筋が明らかにした。
 世界各地で性被害を告発する運動が広がる中、セクハラを含めたハラスメント対策は初の国際基準制定へ一歩前進することになった。
 会議筋によると、委員会の議論では、欧州連合 (EU) 各国や中国、中南米、アフリカ諸国などが条約制定に賛成。米国、ロシアなどは勧告にとどめるべきだと反対し、日本は態度を保留した。」

 共同通信の発信を、6月4日の東京新聞 【ジュネーブ=共同】 から補足します。
「(日本は) ハラスメントの定義などをきちんと議論する必要があるとしている。……
 来年度の年次総会での条約制定を目指す。条約を批准するかどうかは各国が判断する。……
 5月28日に始まった委員会には各国の政府・労働者。使用者代表が参加し、ILOがまとめた国際基準案を基に議論を進めてきた。当初、枠組みを先に決める予定だったが、議論が紛糾したため後回しにしていた。
 国際基準案は職場でのあらゆる形の暴力とハラスメントの禁止を目指すもので、ハラスメントの定義や、対象となる労働者や行為者の範囲、防止措置なども盛り込んだ。」
「日本政府は 『勧告が望ましい』 との態度を崩さず、ILOのまとめた基準案の内容を弱めるような修正案を相次いで提出するなど 『使用者側寄りとみられてもしかたがない』 (外交筋) との指摘もある。……関係者は 『条約ができても日本は批准しない恐れもある。国際的な反ハラスメントの動きに取り残されかねない』 と懸念する。」

 この後は、6月6日にILOの委員会が職場でのセクハラや暴力をなくす条約制定の方針を盛り込んだ報告を採択、8日にILO総会で報告を承認、その後、条約案と勧告案を議論して、2019年6月頃、ILOの年次総会で条約と勧告を制定する予定です。


 昨年3月28日、政府の働き方改革実現会議が決定した 「働き方改革実行計画」 には 「職場のパワーハラスメント防止を強化するため、政府は労使関係者を交えた場で対策の検討を行う」 と盛り込まれました。これをうけて 「職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会」 が10回開催され、3月30日に 「報告書」 が発表されました。
 検討会では、事業主に対する措置義務の検討を中心に検討を進めるという意見が多数をしめました。しかし使用者側委員はガイドラインに固執し、最終的にまとまりませんでした。ILOにおける日本政府の対応をみると、検討会における使用者側の “自信” が理解できます。

 「仕事の世界における男女に対する暴力とハラスメント」 報告書の内容は日本の労働者にとっても喫緊の課題であり渇望するものです。
 安倍政権が掲げる 「すべての女性が輝く社会づくり」 「女性の活躍」 とハラスメント防止に取り組みの放置は矛盾します。厚労省は、来年のILO総会にむけ新たな「職場のパワーハラスメント防止のための検討会を開催し、広く意見を聴取して職場のハラスメント対策を策定する必要があります。
 労働者の人権、人格権・尊厳を否定する日本政府の姿勢を、世論を巻き込んで転換させ、来年のILOの年次総会で条約と勧告を批准させるための運動を進めていかなければなりません。
 

 「ILO駐日事務所の『第107回ILO総会の議題について』」
 「ILOの第107回総会に向けた報告書」
 「ILOの第107回総会に向けた報告書」
 「ILOの第107回総会に向けた報告書」
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