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東日本大震災で自治体労働者がおかれた状況 (惨事ストレス)
2017/11/28(Tue)
 11月28日 (火)

 第21回ワンコイン講座は、「災害時における自治体労働者が被るストレスへの対策は」 のテーマで東京医科歯科大学大学院保健衛生学研究科博士課程の菅原千賀子さんから調査・研究を報告してもらいました。
 菅原さんは、宮城県気仙沼市出身で、2011年3月11日の東日本大震災の時は、テレビをつけたら自分の生家が津波で流されているシーンが映りだされたといいます。
 大学3年生のときで、すぐに気仙沼市に個人として医療支援に駆けつけます。周囲には 「大丈夫? 何かやるなら応援するよ!」 という仲間が気づけばたくさんいて、その声に押されてできることをやってみよう! という思いだったといいます。2トントラックに準備敷材と仲間が寄せてくれた支援物資が入った段ボールと一緒に荷台に乗って出発しました。段ボールにはたくさんのメッセージが書かれていました。
 水産業と観光で栄えていた気仙沼は、地震・津波・津波火災で大きな被害を受けていました。被災家屋は26.105棟 (全体の40.9%)、被災世帯数9.500世帯、死者数1.033人、行方不明者数215人、17年6月30日現在の震災関連死は108人です。

 市役所に設置されたDMAT (災害急性期に活動できる機動性を持ったトレーニングを受けた医療チーム) に登録し、1つのグループとして活動を開始します。
 市役所にも診療所が開設されました。市役所職員が訪れます。汚泥が埃になって目がやられていました。
 活動は避難所を回りましたが診察すると血圧が200を超える避難者もいました。

 診療所には女性は来ますが男性は近くにあっても来ません。
 3月27日から、市役所職員の健康調査を健康診断問診票を作成し、巡回して開始、31日まで続けました。
 その後も何度も訪問しました。

 12月にも市役所職員 (20代~60代) 219人について、調査者が各部署を訪問し、調査票を配布し、同意を得られた職員が質問紙に記載を終えた後、血圧を測定しました。調査票の項目は、1.性別、年齢、2.血圧薬内服状況、3.個人の被災状況、4.気分障害の有無、5.就労状況 (3月/12月)、6.睡眠状況 (3月/12月)、7.3月の体調変化の有無と対処状況、8.血圧測定です。血圧は、緊急事態に遭遇しても6か月で戻ります。初動支援のあり方について示唆を得るために実施しました。震災直後は多くの職員が高い状況でした。

 対象者の属性・被災状況です。
 男性153人 (69.9%)、女性66人 (30.1%)です。年齢は、10代から20代9.2%、30代43.7%、40代25.6%、50代から60代30.6%です。
 自宅被害あり52.1%、避難所生活の経験あり26.9%、住居変更あり25.6%、近親者を亡くした人的喪失あり73.5%です。

 3月/12月の震災対応・夜勤業務と睡眠の比較です。
 災害対応業務の状況は、半々以上が3月92.7%、12月46.6%です。夜勤業務ありは、半々以上が3月74.0%、12月46.6%です。睡眠状況は、眠れるが3月24.7%、12月76.3%です。
 2週間の休日・超過勤務の状況です。
 超過勤務20時間以上54.3%、休日取得は2日以上56.6%です。

 気分障害の有無についてです。
 うつ病・不安障害のスクリーニング調査を使用して、絶望感や憂鬱感等など6項目について0点から4点までの5段階から選択します。0点から24点の合計点が高いほど気分・不安障害が高くなります。中央値は7点でした。
 0~4点31人、5~9点35人、10~14点23人、15~19点8人、20~24点3人でした。
 7点以上との関連については、・人的喪失、・3月、12月の災害対応業務あり、・3月、12月の不眠あり、・12月の深夜業務あり、・20時間以上の超過勤務あり、震災時の体調変化あり、があげられます。

 調査対象者の血圧分布です。
 06年の国民栄養調査の分布は、正常者40.3%、正常高値者14.5%、高血圧者22.6%、高血圧内服者22.5%です。これとの比較です。
 3月は、正常者38.7%、正常高値者20%、高血圧者33%、高血圧内服者8.3%です。
 12月は、正常者27.9%、正常高値者18.3%、高血圧者42.5%、高血圧内服者11.4%です。
 3月と12月共に測定した職員は143人いました。その傾向は、3月の正常者が高血圧者や正常高値者に移行しています

 3月における体調の変化と受診行動です。
 体調変化はあった64.8%、なかった35%ですが、なかったについての理由は、それどころでなかったなどです。時間がないなどで機会がつくれませんでした。体調の変化があった職員の中で、受診行動については受診した27%、受診しなかった38%です。受診した医療機関は仮設診療所が圧倒的に多く、他は市立病院、その他の医療機関です。

 調査から見えてき血圧変化についての結論です。
 ・災害急性期は適切な健康行為が困難になるため、自治体職員を対象にした仮設
  診療所を設置し、健康相談・スクリーニング等の支援を行うことが有効である。
 ・被災地の自治体職員は、災害直後よりも9カ月経過した時点の方が血圧値が上昇
  していた。特に、中高年男性に上昇者が多く、災害対策業務が継続している特性を
  踏まえ、看護職者が職場に出向き長期的な支援を行う必要がある。


 東日本大震災以降~2016年にかけての新聞記事の見出しを追ってみました。
 2011年9月19日の朝日新聞です。「被災地市町村職員の病休増」 「過労でストレス」
 2013年3月8日の朝日新聞です。「被災42市町村 休職400人超す」 「新年度600人足りない見込み」
 2014年7月27日の毎日新聞です。「被災47市町村 震災理由に106人退職 本社調査 心身の疲弊深刻」
 2016年3月4日の神戸新聞です。「精神疾患の休職1.6倍 39市町村 復興、原発事故で疲弊」
 時間が経過しても深刻さは続いています。
 被災地自治体職員の健康問題による影響は、職員不足を深刻化させ、被災地の復旧・復興を妨げるだけでなく、被災地に暮らすすべての人々に影響を及ぼしています。
 これまでの研究でも、災害発生後、被災地自治体職員の健診データの変化においても、心血管系イベント発症を懸念する結果が表れています。
 メンタルヘルスへの影響についても、発災後、抑うつ・PTSDや精神的ストレスが上昇しています。


 被災地が生活圏である職員は自らも被災しながら災害対策事業に従事し続けなければならず、その状況が長期に及ぶことは心身に大きな影響を及ぼします。
 東日本大震災において災害関連業務に従事した被災地自治体職員に体験を語ってもらいました。
 インタビューの内容は、①当時の担当部署、役割 ②発災後の行動 ③発災後の業務内容とその期間 ④発災後、つらかったこと ⑤当時の自宅や家族状況 ⑥体調の変化の有無 ⑦うれしかったこと、 救われたこと ⑧他の自治体職員に伝えたいこと です。

 その中の40代の防災担当課職員の体験談の要旨です。
「(発災時すぐ) これは遂に想定されていた宮城県沖地震きちゃったなと。これは長くなるなということで、あと覚悟を決めて、やることだけ淡々とやっていくか……と。」
 同僚たちが現実離れした光景を目の当たりにして驚いている様子を横目に、覚悟を決めて災害本部設営に奔走しました。一方で刻々と変化する想定以上の浸水にとんでもない被害を予感し、恐怖をおぼえます。
 妻の安否に関して、気にする余裕さえなく、津波に流された実父が偶然助かったことを知るが、実際両親と会ったのは2、3カ月後のことでした。両親が自分が生きていることに涙を流して喜んでくれた際、気を配れる精神状態になかった自分を振り返り、“マシーン” と称しました。
「妻のことを言ったら怒られそうだけど、´大丈夫だろう。ダメだったらダメだろうし`くらい……。叔父が千葉からガソリンもって来てくれて…ここ (職場) にきて 『良かった…』 って泣きながら顔見てくれましたけど… 『はいはいはい。今忙しいから…また後でね』 って (笑) せっかく来てくれたのにひどいね。こっちに追われて、あんまり家族まで気にしなかった…。」
 日々明らかになる死者数に、防災教育に従事していた者として不甲斐なさを抱きつつ、業務に従事していました。地域住民と共にきめた避難場所に住民が避難したがために90人がなくなったことを後日知ります。上司はその被害に茫然自失となり1年後辞職しました。
「こいず防災担当もっと…なんか出来ることあったんじゃないかな…っていうのが、つらかったですかね…。」

「(半年後、異動を命じられた際は) 感情的には、がぐーって感じでしたね。まだやることはいっぱいあるのにって。……(振り返ると異動は) 良かった…のかもしれません。」
 今振り返ると異動により苦情を請け負う機会が減少し、心身の健康が保たれたと考えています。異動後の業務は災害対応よりハードであったが、同様の業務をこなす上司を間近かに懸命に従事しています。
 健診を受診したのは震災後3年経過し、´時間がとれる` と自覚してからでした。それまでは全部A判定だったのですが初めて肝臓がE判定でいた。1回病院に行って 「まあ、まだ大丈夫でしょう」 と言われて継続受診はしていません。震災後、1日3本栄養剤を飲んでいたことが原因と考えました。体力を保つため過剰摂取はだめと知りつつ飲んでいました。
「(遺体処理を) 職員に頼んでしまったけれども、それが心に引っかかったり残ったりしていなければいいな…と思いながら。……今、結構いるんですよ。役所で入院している人。そうなってもおかしくないのかな…って思いますね。」
 自分自身は市民から直接叱責を受ける立場にはなかったことを考え、今なお復興計画に従事している職員はまだ心苦しい状況が続いていることを、推し量っています。

「(全滅した地区の) 自治会長さんが何か月かして会った時に 『Aさんと課長と一緒に防災取り組みやってくれたおかげで、うちの地区でも助かった人いっぱいいたんだよ』 なんて言うのを聞いて…そういうんで報われた。心助けられたんだかもしれないですね。」
 震災前の地震の活動を肯定されたような思いに至ります。また様々な支援者・慰問者の前向きな提案に感動し、それだけで労が和らぎました。また、支援者の活動により子どもが活気づき、笑っている市民の笑顔に自身も癒されました。
「うちは本当に日本中、世界中からお世話になっているんで、せめてそういうのをお伝えして、防災対策に本気になって役立ててもらうための、一助になれば…それが被災自治体としての責任かなと。失敗事例もいっぱいありますから。」
 自治体の人びとに伝えたいことは、災害対策業務に従事するために、心身ともに健康で信念を持ち、前を向き続ける力がひつようであること、貯えの大切さです。


 体験から得られた示唆です。
 発災後、自治体職員は自身の生活を顧みることもままならないなか、その使命感から住民対応を優先し、職務に従事し続けていました。いっぽうで被災者や同僚と自身の被災状況を比べ、職務中に自身の感情を吐露することをさけ、家族と共に過ごすことができない境遇に対し負い目を感じていました。
 そのような中で被災者や市民、時にはマスコミから非難された経験を有し、やるせなさや疲弊感を感じていました。
 これらのことから、被災自治体職員の心理的影響は遅発性となりやすく、被災ストレスの遷延化を生じやすいと考えられます。また職務の尊厳を喪失する可能性も有すると考えられます。

 震災関連業務と通常業務が統合することにより被災地自治体職員の業務負荷は急激に増大し、加えて職員の被災や転居、病欠等により、慢性的で深刻な職員不足の状況が5年以上継続しました。
 終わりの見えない業務過多のなか、震災関連業務に従事し続けることで、定期検診を受診する機会を容易に逃したり、健診結果に問題が生じても適切な受診行為に繋げられていないことが考えられます。

 一方で、過酷な災害関連業務に従事しながらも自治体職員としてのキャリア形成を遂げていたことを語った職員もいました。
 その過酷さを支えたものとして
 ・自治体職員としての気構え
 ・協働した同僚の存在
 ・他者からの容認
 ・被災者の自立と復興・未来を信じる
などの要素がありました。


 まもなく震災から7年を迎えます。
 震災からの教訓は忘れることなく活かし伝承していかなければなりません。
 災害は防ぐことはできませんが、被害は減らすことができます。

   「自治体労働者の惨事ストレス対策」
   「活動報告」 2017.8.1
   「活動報告」 2017.3.10
  当センター「いじめメンタルヘルス労働者支援センター」ホームページ・ご相談はこちらから
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「サービスする側と受ける側がともに尊重される社会を目指したい」
2017/11/22(Wed)
 11月22日 (水)

 11月8日の朝日新聞の 「東京のほお~言!!」 はテーマが 【おせわさま】 です。
「顔見知りの店で買い物を済ませて出る時に、『お世話様です』 ということはありますか。東京を中心とした関東で特によく使われるあいさつです。
 明治生まれの、生粋の江戸っ子作家久保田万太郎は、地方出身の友人に 『君達は買物をして帰りがけに、どうもお世話様! なんて云う言葉は知らないだろう』 と自慢気に言っています。昭和の初めごろまでは、極めて 『東京風』 な言い方だったようです。
 『お世話様』 は、タクシーの運転手や宅急便の配達員に対しても使うように、労力を提供してくれる立場の人をねぎらう意味合いを含みます。そのため、子どもにはそぐわず、目上には言いにくいと感じられる傾向があります。この点 『ご苦労様』 と似ています。
 東京風の 『お世話様』 に対し、同じ場面で西日本では 『ありがとう』 『おおきに』 といった感謝の表現を多用します。『世話をかけた』 とかしこまるか、ストレートに感謝するか。表現にも地域差がありますね」

 いかにもあいさつとして定着しているような書きかたですが、実際に外出先での宅急便の配達員への対応や、スーパーでのレジ終了時、食堂などでの帰り際をみていると結構労いのあいさつがないのに出くわします。
 食堂などで 「○○」 「△△」 とつっけんどんの注文の声が聞こえると、「○○が食べたいのか、いらないのかどちらだ」 と店に代わって問いただしたくなります。「お願いします」 をどうして添えられないのでしょうか。それで通じていると反論されそうですが、自分の食事がまずくなります。逆に、食堂などで青年たちが 「ごちそうさま」 といいながら席を立つ場面に出くわすと、自分の食事もおいしくなります。

 11月21日の朝日新聞 「天声人語」 の抜粋です。
「おもてなしの国、世界一心のこもったサービス……。そんな美名の疑念を、作家の石田衣良さんがかつて雑誌に書いていた。『最高のサービスの裏に最低の客が隠れているのではないか』。そう疑いたくなると▼客としては王様のように振る舞うが、サービスや商品を提供する側に回ると、下僕のようにさせられる。日本社会を大きな目で見れば、消費者である私が労働者である私を追い詰めてはいないか」


 11月16日、UAゼンセン流通部門は、調査結果 「悪質クレーム対策 (迷惑行為) アンケート調査結果 ~サービスする側、受ける側が 共に尊重される社会をめざして~」 の速報版を公表しました。

 調査結果の 「はじめに」 で 「私たちの産業は、顧客第一主義を大原則に掲げ、消費者の行動は常に正しいとの認識が強く、消 費者からの意見に対しては不当なものであっても耐えなくてはいけない風潮があります。そして、そのことが社会的にもモンスター化する消費者を助長させ、接客応対の難しさから退職者の増加や働く仕事として敬遠される傾向にあると言えます。」 と訴えています。

 UAゼンセンは、今年6月~7月に、接客対応されている流通部門所属組合組合員 (販売・レジ業務・クレーム対応スタッフ等) を対象に調査を行い、168組合50,878人から回答がありました。これまでどの機関においても実態調査が実施された例はありませんでした。
 調査目的は、「職場で起こっている悪質クレーム (迷惑行為) の実態について調査し、傾向を分析する。また、調査内容は具体的な事例も示す調査とし、結果については、関係諸団体への要請活動時に提示する資料として活用する。」 です。「クレームとは、商品・サービスに関して消費者から不満がおこり、会社 (店舗) に責任ある対応を求められることです。」
 回答者の内訳は、男性15,640人、女性28,997件、無回答6,161件です。年齢では10代539件、20代7,396件、30代10,842件、40代14,089件、50代12,089件、60代4,992件、70代161件、無回答770件です。

 調査結果です。
 設問1: あなたは、業務中に来店客からの迷惑行為に遭遇したことがありますか? についてです。
 「ある」 3万6002人 (73.9%) です。男女別で比較すると、男性は 「ある」 12,057人 (78.9%)、女性19,694人 (71.3%) です。
 部門別の比較です。
 「ある」 は多い順に百貨店1,750人 (86.4%)、家電関連1,750人 (84.9%) で、スーパーマーケットは8,712人 (65.8%) です。商品説明などで消費者と会話を交わす機会が多い方が 「ある」 になります。消費者は設問7の 「ストレスのはけ口になりやすい」 相手を探しています。
 設問2: あなたは、業務中に次のような来店客からの迷惑行為に遭遇したことがありますか? 【複数回答可】 についてです。
 多い順に、「暴言」 24,107人 (47%)、「何度も同じ内容を繰り返すクレーム」 14,268人 (28%)、「権威的 (説教) 態度」 13,317人 (26%)、「威嚇・脅迫」 12,920人 (25.4%)、「長時間拘束」 9,752人 (19.2%)、「セクハラ行為」 4,953人 (9.8%) です。「土下座を強要」 が1,580人 (3.1%) いました。「土下座を強要」 はテレビドラマ 「半沢直樹」 の放映後増えました。
 男女別を比較して差が大きいのは、「暴言」 は男性8,244人 (52.7%)、女性13047人 (45%)、「威嚇・脅迫」 は男性5,747人 (36.7%)、女性5,710人 (19.7%)、「セクハラ行為」 は男性519人 (3.3%)、女性4,018人 (13.8%)、「土下座の要求」 は男性1,051人 (6.7%)、女性374人 (1.3%) です。
 「暴言」 ではないですが、スーパーなどのレジで携帯で誰かと話をしながらお金を払うという行為は従業員の存在を 「無視」 する失礼な行為ではないでしょうか。

 設問3: 迷惑行為を経験された方は、迷惑行為から受けたご自身への影響を教えてください についてです。
 「強いストレスを感じた」 19,917人 (53.2%)、「軽いストレスを感じた」 13,500人 (36.1%)、「影響なし」 2,775人 (7.4%)、「精神疾患になったことがある」 359人 (1.0%) でした。
 男女別を比較して差が大きいのは、「軽いストレスを感じた」 は男性が4,209人 (36.1%)、女性7,670人 (26.5%) です。
 「強いストレスを感じた」 「精神疾患になったことがある」 は、職場環境を悪化させ退職につながっていきます。
 設問4: 迷惑行為にあった時、あなたはどのような対応をしましたか? についてです。
 多い順に、「謝りつづけた」 17,587人 (37.8%)、「上司に引き継いだ」 13,979人 (30.1%)、「毅然と対応した」 9,410人 (20.2%)、「何もできなかった」 2,687人 (5.8%) でした。
 すべての項目で男女に開きがあります。「謝りつづけた」 は男性6,268人 (40.9%)、女性9,218 (36.0%)、「上司に引き継いだ」男性3,663人(23.9%)、女性8,602人(33.6)、「毅然と対応した」男性4,116人(26.9%)、女性4,214人(26.9%)、「何もできなかった」 は男性476人 (3.1%)、女性1,914人 (7.5%) でした。
 「謝りつづけた」 「何もできなかった」 は、組織的対応として当該任せで、それ以外の対応方法を周知されていないということです。

 設問5: 迷惑行為にあった時、あなたのとった対応の結果、問題の行為は収まりましたか? についてです。
 「収まった」 24,443人 (61.3%)、「長時間の対応を迫られた」 6,702人 (16.8%)、「収まらなかっ た」 4,581人 (11.5%)、「さらに態度がエスカレートした」 1,938人 (4.9%) でした。
 男女の比較で差が大きいのは、「収まった」 男性7,791人 (56.3%)、女性13,652人 (64.0%)、「長時間の対応を迫られた」 は男性3,298人 (23.8%)、女性2,675人 (12.5%) でした。

 設問6: 迷惑行為は、近年増えていると感じていますか? についてです。
 「増えている」 24,880人 (49.9%)、「あまり変わらない」 14,940人 (30.0%)、「減っている」 1,664人 (3.3%) でした。
 「あまり変わらない」は多い状況が変わらないのか、少ない状況が変わらないのか不明です。
 設問7:迷惑行為が発生している原因をどう考えますか? 【複数回答可】 についてです。
 「消費者のモラル低下」 32,651人 (30.4%)、「消費者のサービスへの過剰な期待」 26,192人 (24.4%)、「ストレスのはけ口になりやすい」 26,008人 (24.2%)、「従業員の尊厳が低く見られている」 20,082人 (18.7%) でした。
 男女比較で差が大きいのは、「ストレスのはけ口になりやすい」 男性6,821人 (20.4%)、女性16,134人 (26.3%) です。
 「消費者のモラル低下」 は、設問6の迷惑行為が 「近年増えている」 につながっていると思われます。消費者は反論されないと思うとストレスのはけ口の対象にします。「従業員の尊厳が低く見られている」 が業務上はまったく関係のない設問2の迷惑行為 「セクハラ行為」 につながっていきます。

 設問8: 迷惑行為からあなたを守るために、どのような措置が必要と考えますか? 【複数回答可】 についてです。
 「迷惑行為への対応を円滑にする組織体制の整備」 20,916人 (22.7%)、「企業のクレーム対策の教育」 12,560人 (20.9%)、「法律による防止」 19,196人 (20.8%)、「消費者への啓 発活動」 18,455人 (20.0%)、「企業のマニュアルの整備」 12,560人 (13.6%) でした。
 男女比較で差が大きいのは、「法律による防止」 は男性7,931人 (26.0%)、女性9,163人 (18.0%)、「迷惑行為への対応を円滑にする組織体制の整備」 は男性5,827人 (19.1%)、女性12,529人 (26.6%) です。男性は社会的規制、女性は職場内での体制づくりを期待しています。
 法律による防止やマニュアルがあると従業員は、自分を守る手段があることを認識し、毅然とした対応ができます。

 「設問9: あなたが実際に体験した迷惑行為の内容を教えてください。記入内容 ① 【・・・ような対応をしたら、消費者から・・・ような行為をされた。】 ②具体的な対応時間・対応回数・発言内容などを記載ください。」 の欄に記載された具体的な迷惑行為の事例です。2万人がみずからが受けた被害の詳細を書いてきました。
 ・商品返品時に 「バカか、謝るしかできないのか」 などと1時間近く暴言を言われた
 ・店で扱っていない商品を売るよう求められ、「仕入れしない方が悪い」 「早く仕入れ先に
  電話しろ」 などと怒鳴られた
 ・背後から尻を触られたり 「年いくつ?」 などと聞かれたりした
 ・商品の場所を手で指して知らせたところ 「何なんだ、その態度は」 と胸ぐらをつかまれた
 ・機嫌の悪い客から買い物カゴや小銭を投げられたりした。
 ・20分以上謝り続けた。
 ・3時間以上説教を受けた。
 ・商品の在庫を訊ねられ、在庫が無い旨お伝えしたところ、「売る気ないんか、私が店長だっ
  たらお前なんか首にするぞ」 と延々怒られました。
 ・商品不良の交換対応時に店までの交通費及び迷惑料を要求されました。出来ないことを
  伝えると大声でどなられ、(中略) 生活出来ないようにしてやると脅されました。
 ・(女性従業員が) 110番通報され警察で厳重注意を受けた客が逆ギレし、通報した店員へ
  の誹謗中傷をネットの掲示板で実名と共に書き、拡散された。
 ・ポイントカードの入力を間違えたスタッフが土下座をさせられ犯罪者呼ばわりされた。
 ・客の勘違いで購入した商品を間違えたのに 「店の説明不足だ」 と自宅に呼び出され、返金を
  要求された。深夜1時までおよそ10時間にわたって拘束された。
 ・酔っている客から横腹を殴られた。
 ・2時間にわたって正座させられ片方の耳が聞こえなくなった。
 ・客から腕で何度も胸をつつかれ、上司に報告したが、「大ごとになる」 と対応してもらえ
  ず、体調を崩して精神疾患になった。
などなど


 調査結果公表の記者会見に先立ち、UAゼンセンは厚労省に 「職場における上司・部下関係のハラスメントだけでなく、消費者 (顧客) ・労働者の関係性の中にもハラスメントがある。その対策も検討してほしい」 と要請行動を行ないました。項目は
 ・悪質クレームから労働者を守るために、事業者が講ずべき措置を定めること
 ・厚労省や消費者庁、警察庁などの公的機関が実態調査・対策に関する研究を行うこと
 ・労働者が受ける違法行為を抑止するための施策を講じること
です。
 厚労省側からは 「理解できる内容だ」 「業界団体との意見交換も必要だ」 「パワハラ検討会で検討を深めていきたい」 などの回答がありました。

 UAゼンセンは調査と並行し、8月に、悪質クレームの定義と対応に関するガイドラインを作成しました。(10月6日の 「活動報告」 参照)
 さらに業界団体との意見交換も行っています。

 「職場の暴力」 への対策がやっと開始されました。
 UAゼンセンは 「サービスする側と受ける側がともに尊重される社会を目指したい」 と語っています。
 「消費者である私が労働者である私を追い詰めてはいないか」 が問われています。

 伊藤園の 「おーいお茶」 に載っていた11歳の少年が詠んだ俳句大賞の作品です。
   おはようと 言った数だけ 心のわ

   「職場の暴力」
   「活動報告」 2017.10.6
   「活動報告」 2017.9.29
   「活動報告」 2017.7.14
   「活動報告」 2016.12.21
   「活動報告」 2015.11.26
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過酷としか表現できない医療現場
2017/11/17(Fri)
 11月17日 (金)

 11月7日の毎日新聞に 「香川 年2258時間残業 3病院67人が月80時間超え」 の見出し記事が載りました。
 毎日新聞の情報公開請求で、香川県立病院で2016年度の1年間に計2,258時間の時間外労働をした勤務医がいたといいます。3病院に16年度に在籍した正規・嘱託の医師計207人のうち67人の残業時間が 「過労死ライン」 とされる月80時間を超えていました。勤務医の長時間労働が常態化している一端が明らかになりました。
 法定労働時間は1日8時間、週40時間ですが、2つの病院は 「月100時間を6回を限度に、年800時間」、「月70時間を3回を限度に、年480時間」 まで延長可能の36協定を結んでいました。3病院で月の残業時間が協定上限を超えたのは計38人、年間では計46人。年1000時間以上の時間外労働は計20人に上りました。
 医師には正当な理由なく診療を拒めない 「応招義務」 があります。各病院は長時間労働の背景に救急患者への対応や医師不足がある、「医療はストップできない」 と説明します。

 昨年1月、新潟市民病院の女性研修医 (当時37歳) がうつ病を発症して自殺しました。うつ病発症直前1カ月の残業時間が160時間を超えていたとして、今年5月、労基署が労災認定しました。
 市への情報公開請求では、同院の研修医30人以上が昨年6月の1カ月間に80時間以上の時間外労働をしていたことが分かりました。
 新潟市民病院は医師不足から多くの科で紹介状がない患者は受け付けていません。
 今、「働きかた改革」 が声高に語られ、政府は1か月あたりの時間外労働は最長でも100時間未満 (これだけですでに長時間) の法案を準備しています。しかしそこでも医師の時間外労働は制限がないまま法制施行から5年間猶予されます。

 このような状況をふまえ、ある研究会で 「医療労働の現場は、いま」 のテーマで医療現場の労働組合役員の方をまねいて講演会を開催しました。
 現在の病院を取り巻く状況です。
 医療法の改訂によって 「新しい医療関連サービス (派遣・委託等) の会社」 等が多くの病院の業務を請け負っています。製薬会社、医薬品卸、医療機器メーカー、医療事務用コンピューターなどです。その分職員は少なくなっていき、外部が儲かるようになっていて、産業の食い物にされています。
 病院の収入のほとんどを占める 「診療報酬」 改訂で、マイナス続が続き、病院の経営が悪化してきています。
 医療の高度化・複雑化等で医師・看護師等医療スタッフが不足しています。マンパワー不足です。
 救急外来のコンビニ化、「モンスターペイシェント」 増加に伴い、医療従事者の疲弊が増加しています。ちょっとしたことで救急車を依頼します。また救急外来に老人が運ばれてきます。病院は救急医療から潰れていっています。
 患者と医療者の関係は対等で、サービス提供者と顧客ではありません。しかし医療者が患者を「患者様」と呼び、お客様扱いをして医療者がへりくだった考えを持つ風潮が広がっています。患者はお客様の立場で好き勝手、わがまま放題になってしまっています。「モンスターペイシェント」 については、現在厚労省で開催されている 「職場におけるパワーハラスメント防止対策についての検討会」 でやっと議題に取り上げられました。


 医療関係従事者数です。
 平成24年の厚生労働省大臣官房統計情報部資料では、医師は303,268人で6割が開業医です。医師会が大きな権力をもっています。歯科医師は103,551人です。5人に1人がワーキングプアで年収200万以下です。開業医は6,800人で、この数はコンビニより多いです。1日に4医院・クリニックが潰れています。薬剤師は280,052人です。
 平成25年の厚生労働省医政局資料では、保健師58,532人、助産師36,395人、看護師1,103,913人、准看護師372,804人です。平成23年の厚生労働省大臣官房統計情報部資料では、常勤換算の数値として、理学療法士 (PT) 61,620.8人、作業療法士 (OT) 35,427.3人、視能訓練士6,818.7人、言語聴覚士11,456.2人、義肢装具士138.0人、診療放射線技師49,105.9人、臨床検査技師62,458.5人、臨床工学技士20,001.0人です。

 医療福祉労働者の雇用者数は750万人です。そのうち組織労働者 (労働組合員) は約49.5万人です。組織率は6.6%です。病院8,400のうち約1,900に組合があります。

 医療現場が他の労働職場と違う点です。
 他の労働現場と違って人件費率が高く45%から60%です。材料費30%、経費15%です。医師の平均年手は1,200万円です。
職種が多いです。ほとんどの病院は中小企業です。
 病院は独自でコストを決められません。2年に一度の診療報酬改定、3年に一度の介護保報酬改定に沿ってしか決めることができません。医療法7条は 「利益を出してはいけない」 と謳われています。そのうえで財源削減の自己目的化、質の維持を無視した国の医療政策に左右されています。
 患者の在院日数が短いほど診療報酬の保険点数が高く設定されます。一般病棟では、入院日から14日以内で340点、30日以内で150点、31日以上で50点と早期退院を促す点数制度になっています。病院にインセンティブの意識が働きます。患者が治りきれないうちにでも採算が合わない患者を退院・転院させて追い出し・たらいまわしをする傾向があります。

 医師や看護師等医療スタッフが不足しています。病院経営の内情は年々悪化を続けています。医師の確保ができず、休止となる診療科も目立ち始めています。
 特に産婦人科と小児科です。産婦人科は1人の患者と長時間関わることになります。そして、現在社会問題化なっている貧困状態のなかで子供を置いていなくなる患者もいます。
 また医療訴訟が増えています。患者の意識も変化しています。医療事故については、人びとの興味を引く部分のみを切り貼りした報道によって、事実の一部を誇張して事故の当事者を罪人に仕立て上げ、それを煽り立てることで患者としての権利意識のみが増幅してしまいました。極端に言えば、患者と医療者を 「被害者」 と 「加害者」 に仕立て上げています。
 看護師は離職率が高い職場です。その一方で 「聖職」 意識が植え付けられています。
 その一方で医師総数は増えています。偏っています。
 病院経営にかかる費用は、2008年の全国公私病院連盟の調査では、1床1カ月当たりの平均人件費は72万円、材料費38万円 (うち薬剤費23万円)、経費21万円です。費目では人件費が最大赤字です。
 人件費の中心は医師、看護師です。給与水準は、あまり変化していませんが、人数が増えています。

 2010年の日本医労連の 「看護職員の実態労働調査」 では、看護師の約8割が 「仕事を辞めたいと思っている」 と回答しています。理由の上位2択は 「人手不足で仕事がきつい」 (46.1%)、医療事故の原因です。約9割が 「慢性的な人手不足による医療現場の忙しさ」、約9割が 「この3年間にミスやニアミスを起こしたことがある」 と回答しています。
 かつて看護現場は3Kと言われました。「汚い」 「きつい」 「危険」 です。いまは9Kと呼ばれています。「規律が厳しい」 「給料が安い」 「休暇が取れない」 「化粧ののりが悪い」 「根気が遅い」 「薬に頼って生きている」 が加わります。
 そのため毎年12万人以上が辞めています。免許を持ちながら看護職として働いていない 「潜在看護職」 が約60万人存在します。男性看護師は4%存在しています。
 その一方、高齢化の中で2025年には60万人の看護職人員が不足すると言われ 「2025年問題」 といわれています。
 医労連の 「2011年度夜勤実態調査」 では、2交代の比率は23.7%です。そのうち16時間以上の拘束となる夜勤は6割をこえます。

 訪問看護の利用者は約386,000人です。10年前から15万人増えています。しかし訪問看護ステーションで働く看護師は2010年は約30,000人で10年間に4,000人増えただけです。
 介護保険制度が2000年に創設され、介護サービス利用、介護サービスの供給量も増加しました。しかし労働条件・低賃金に多くの問題を抱えたままです。利用者がサービスを選べる状況になっていません。家族に依存する在宅介護の現状は変わっていません。
 最近介護現場ではサービス利用をおさえるがごとくに 「自立」 というキーワードが利用されています。

 2018年は 「診療報酬」 「介護報酬」 の同時改訂があります。段階の世代が 「高齢者医療」 に流れ込んでいく時代になります。
 医療は 「弱者」 がさらに 「自立」 を要求されて追いつめられる状況にあります。
 自分自身の問題として医療関係労働者と一緒に要求をあげ改善させていくことが必要です。

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近代日本をどう捉えるか
2017/11/14(Tue)
 11月14日 (火)

 歴史の教科書から坂本竜馬や吉田松陰、上杉謙信、武田信玄などの人物や、四日市憲法などの項目が消えるといいます。
 歴史書は政権をとった者がその経過を記述させて残します。それは現代においてもです。歴史教科書は政権に都合がいいように編集され、新たな項目が盛り込まれたり、消されたりします。そのたびに議論が繰り返されてきました。
 1960年代には、家永三郎が編集した高校の教科書が不採用になり裁判闘争になりました。

 81年の文部省検定で高校教科書 「現代社会」 から丸木位里・俊さんが描いた 「原爆の図」 は、それまで何度も採用されていましたが、「悲惨すぎる」 という理由で削除指示をうけました。
 8月5日、俊さんは文部省教科書検定課長に抗議にいきました。そのやり取りです。
 俊 「削った理由を直接聞きにきました」
 課長 「極端に悲惨なものは除くのが前々からの方針です」
 俊 「合格した教科書の中には、『原爆の図』 が載っているものもあります」
 課長 「(削除させた) この口絵は、色が原画にちかく、生なましくて、悲惨すぎます」
 俊 「悲惨といっても、これは、たかが絵です。私は、本当のヒロシマを知っている。ハエがわき、
  しかばねをを焼くにおいを覚えています。私どもは、ハエもにおいも描いていません。現実は、
  もっと悲惨ですよ」
 課長 「いや、やはり、この絵は悲惨です」
 俊 「あなたは、自分の子どもに、戦争は何だと教えますか」
 課長 「戦争とは、人を殺すことで、いけないことと教えます」
 俊 「戦争は、悲惨でしょう」
 課長 「悲惨です。極端に、極端に悲惨です」
 俊 「悲惨な戦争だから、悲惨なものを除け、というのは 『悲惨でない戦争』 を教えろと
  いうことですか」
 課長「高校生といっても発達段階というものがあり、まだ未成年です。従って、極端に
  悲惨なものは遠慮してもらっている」
 ・・・


 今回は項目が大幅に削除されるといいます。理由は、これまでの歴史教育は、歴史認識ではなく、項目を説明できるように暗記することや、その逆の事態・状況を何と呼ぶかということが主要でした。ですから歴史解釈は皆同じになってしまいます。歴史観の押しつけで、歴史に流れがありません。
 これに対して教育方法の変更を目指すといいます。
 さらに、最近は小説やドラマなどでフィクションが加えられた歴史上の人物が捏造されて登場し、項目がどんどん増えていました。
 坂本龍馬は教科書に載っていなかったので受験勉強で暗記した記憶がありません。しかし今では日本の近代をつくった中心的人物に祭り上げられています。
 吉田松陰については 「征韓論の先駆者」 という史実が隠されています。
 でも吉田松陰は教科書から消えないでしょう。なぜなら、安倍首相と同じ長州藩だからです。なんだかんだと言っていても 「忖度」 されます。

 四日市憲法については、当時すでに共和制を謳っていた、人権を盛り込んでいた、編者たちはあの時代に西欧の政治思想を先取的に享受していたなどの評価があります。しかしそこには、西欧の政治思想・体制は優れている、それに比べて日本は劣っていていたという価値観が根底にあります。このような評価は、コンプレックスとなって明治維新以降今日に至るまでずっと存在します。満州侵略から第二次世界大戦に突入する原因にもなりました。

 西欧の政治思想を学習していたのは四日市憲法の編者たちだけではありません。江戸末期、幕府は多くの人材を派遣していたし、明治政府はかなりの書物を取り寄せて翻訳をしています。そして市井にはそれらが出回っていて人びとの知識欲を満たしていました。そのなかから自分たちが作り上げたい体制を模索して憲法として作成していきました。人びとは国家、体制は遠くの存在ではないと捉えて理想と期待を盛り込みました。
 しかし現実との落差は大きいものがありました。


 例えば、秩父困民党が明治17年に蜂起した埼玉県下吉田村の隣に位置する街道として栄えていた小鹿野町は、(当時県内に町は川越町と2つしかなかった) 定期市がたち、小説ですが、そこではルソーの 「契約論」 も売られていて、困民党の党員は買って読んでいたといいます。困民党は国家・天朝様との 「契約」 を問い直して蜂起の必要性を確信します。
 信州から駆け付けた井出為吉の生家には今でも 「仏蘭西革命論」 などたくさんの書物が保存されています。
 困民党は 「恐れながら 天朝さまに敵対するから加勢しろ」 といって農民をオルグして回りました。
 
 秩父困民党は目標を掲げました。
 一.高利貸しのため身代を傾け生計に苦しむもの多し、よって債主に迫り一〇か年据え
   置き四〇か年賦に延期を乞うこと
 一.学校費を省くため三か年間休校を県庁へ迫ること
 一.雑収税の減少を内務省に迫ること
 一.村費の減少を村吏に迫ること
 行動を起こすにあたっての軍律五か条です。蜂起直前に読みあげられました。
 第一条.私に金円を掠奪する者は斬
 第二条.女色を侵す者は斬
 第三条.酒宴をなしたる者は斬
 第四条.私の怨恨を以て放火その他乱暴をなしたる者は斬
 第五条.指揮者の命令に違反し、私に事をなしたる者は斬
 これらの要求項目や行動規律は、空想的政治展望ではなく、人びとにとっては切羽詰まった状況に実行を迫るものでした。

 明治時代は江戸末期から連なっていきます。政権が交代したからといって人びとの生活がすぐに変わりません。
「村の家々は5戸前後がまとまって5人組をつくり、相互に助け会うとともに、年貢収入などのさいには連隊責任を負った。5人組は、領主が、百姓同氏を相互に監視させ、また連隊責任によって年貢を確実に徴収するためにつくらせた組織だが、いったんできると、今度は百姓たちの互助扶助組織として重要な役割を果たした。」 (渡辺尚志著 『江戸・明治 百姓たちの山争い裁判』 草思社)
 江戸時代にも近代国家の基礎となる税制度を遵守する制度は確立していました。そして生活安定のための互助扶助組織も確立していました。しかし経済発展のなかで村のなかにも格差が拡大し崩れていきます。さらに明治13・4年の松方財政は互助組織を崩壊させるとともに、秩父事件のような困民党を登場させます。
 また共同組合のルーツとしての互助組織は江戸末期から流通経済が進むと共同事業が開始され、輸出が始まるとお茶や生糸などの協同組合的な組織は生まれました。農業技術の共同開発、肥料などの共同購入も進められました。人びとの知恵と努力で経済活動は発達していました。

「名主は村運営の最高責任者、組頭はその補佐役であり、百姓代は名主・組頭の監視・補佐を主な職務としていた。名主は世襲で人気がないこともあれば、任期制のこともあった。前者の場合は、村内で特定の有力な家の当主が、代々名主を世襲した。後者の場合には、入札 (いれふだ・投票) で後任を選ぶこともあった。江戸時代から、選挙で代表者を決めていた村もあったのである。」
 明治憲法が制定されて国会が解説され、議員が選挙されても、県知事、郡長は任命制です。そして官僚制の確立とともに任命制をとおして地域の共同体を破壊していきました。江戸時代の方よほど民主的でした。

 江戸時代においても農民や商人は頻繁に訴訟を起こしていました。彼らやその子弟の多く は寺子屋に通い、読み書きができ、相当の知識も習得していました。また有力藩は藩校を創設し、留学生なども送り出しています。
 百姓たちは訴えたいことがあると、幕府領なら自分の住む村を管轄する代官所、大名領なら藩の代官所や郡奉行所、領主が異なる場合は幕府に訴えます。基本的には一審制で非公開でした。裁判にあたる役人は法律や判例に依拠して判決を下していました。
 名奉行も生まれました。名奉行は時には 「法」 を曲げても 「道理」 に基づいて裁判を行い人びとの共感を得ました。


 来年は、明治維新から150年を迎えます。さまざまな行事が計画されています。
 明治維新は、武士階級の崩壊、幕府の政権の行き詰まり、地方武士や商人の台頭、幕府に代わる朝廷の祭り上げ、外国からの開港要請などさまざまな要素が複合的に入り組んでいます。
 しかしそれらを見ながら人びとは連綿と生活を持続させてきました。

 天皇制が日本の近代国家の中心的支柱であったという評価があります。
 近代において敗戦国で王室や元首が残ったのは戦後の日本の天皇制だけです。その理由はなぜなのかを現在に引き付けて問い直してみることが必要です。
 はたして150年で、戦後75年で日本の民主主義、人権意識はどこまで確立されたでしょうか。
 歴史を人びとのもとに取り戻し、今に活かしてかなめればなりません。


 11月初め、20回目の秩父困民党の足跡を追うたびに行ってきました。
 第一回は1992年、PKO法が成立し、自衛隊の海外派兵が始まった年です。それまでも戦後政治の転換がいわれ続けていましたが、さらに大きく転換しました。仲間うちで学校の歴史教育の視点からではなく自分たちで歴史を見直そうと大それました。
 蜂起の中で倒れた人びと、いきばてになった人びと、死刑になって処刑された人びとのお墓参りをしてきました。
 彼らも現在日本の礎を築いたと深く確信すると同時に、今と重ねても無念さを共有してしまいます。

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「みんなで渡れば怖くない」 が会社の危機に
2017/11/10(Fri)
 11月10日 (金)

 日産、スバル、神戸製鋼などで品質管理体制の不正が発覚しています。
 しかし記者会見をする当該の会社上層部には、なんで今頃、違法ではないことでこんなに騒がれるんだ、他社でもやっている、という困惑がありありです。そこには 「みんなで渡れば怖くない」 と黙認してきた業界の“団結” と監督行政との “連携” の崩壊の実態があります。何らかの形で発覚してきた企業だけが叩かれています。
 不正の自覚がない日産やスバルの労働者の中には、冬季のボーナスは大丈夫だろうかの心配のほうが大きいといいます。
 1つの企業に閉じこもった労使関係のなかで、自分の技能、製品の出来具合にこだわり、自慢できるものを社会に提供するという労働者の誇りが消えています。

 10月初めに国内3位の鉄鋼メーカー・神戸製鋼でアルミ部品などの強度偽装が発覚しました。(鉄鋼部門の年間粗鋼生産量は、トップが新日鉄住金で4200万トン、2位はJFEスチール2800万トン、神戸製鋼は3位の720万トン)
 神戸製鋼は1年前にも同じような不祥事が起きています。組織ぐるみでトカゲのしっぽ切りをし、隠ぺいをはかっていたということです。
 今回問題となったのは、強度などを示す検査証明書のデータを書き換え、顧客と契約した製品仕様に適合しているように見せかけ出荷していました。対象製品は自動車、航空機、電子機器など幅広い分野におよび、納品先は、トヨタ自動車や三菱重工業グループ、JR東海など約200社におよびます。
 10月8日、梅原尚人副社長は記者会見で、「組織ぐるみか」 と問われると 「はい」 と答えました。そして 「管理職も含まれている。実際に手を下した、知りながら黙認していた、うすうす知っていた。いろんな段階がある。」 と答えました。
 背景として、「納期を守り、生産目標を達成するプレッシャーの中で続けてきた」 と分析しました。一方で、「品質に関する意識が弱いとは考えていない。(納入先との) 契約を守る意識が低かった」 と釈明しました。そして 「かなり古い時期から (不正が) あった」 とも話しました。10年前から改ざんが続いているケースも確認され、常態化の可能性を認めました。
 神戸製鋼は17年3月期まで2年連続で純損益が赤字決算でした。

 神戸製鋼は記者会見を続けざまに5回行なうことになりました。
 10月下旬になると、子会社で不正や加工品の測定データ改ざんやねつ造されていたと発表しました。製品の中に日本工業規格 (JIS) を満たしていないものがあり、JIS認証が取り消されるという事態も起こっています。JIS取り消しは昨年もグループ会社でありました。品質を軽視する企業体質が改めて浮き彫りになりました。


 検査をする者の資格は国家資格などではなく、企業独自の制度です。企業が自ら決めた有資格者が、企業が決めた手順を進める独自のものです。
 神戸製鋼では、鉄鋼製品でもアルミでも納入先企業が求める寸法や強度などの規格 (協定仕様) に合致しているかどうかを出荷時に工場で検査します。規格から外れていても、使用目的において不足が生じなくて部材として使える場合は、顧客に通知し、了解を得たうえで 「特別採用 (トクサイ)」 と称して出荷していました。
 トクサイは法令に反するものではないので製造業で広く使われていいます。歩留まりを上げる努力はしているものの、わずかに規格から外れる製品は発生するのでそれを救済するのがトクサイという商慣習です。
 同業の関係者のはなしでは、この段階では確かに不具合や事故は想定できないといいます。
 しかし神戸製鋼では規格に合っていない場合でも、検査証明書 (ミルシート) を書き換え、規格通りの製品として出荷していました。これでは顧客先は 「トクサイ」 の伝達がないことになりますので齟齬が生じ、事故が発生する危険性が出てきます。
 「不適切な製品を出荷したことで、すぐにクレームにつながったわけではない。これぐらいなら何とかお客様が使いこなしてくれるのでは、問題ないのではと経験的に感じて、人事異動の少ない工場で長年やっていたのではないか」 (OBの発言)

 11月10日、神戸製鋼所は、検査データ改ざん問題をめぐる社内調査の報告書を経済産業省に提出し、公表しました。
 報告書は、データ改ざんや捏造 (ねつぞう) について、①収益評価に偏った経営と閉鎖的な組織風土 ②バランスを欠いた工場運営 ③不適切行為を招く不十分な品質管理手続き ④契約に定められた仕様の順守に対する意識の低下 ⑤不十分な組織体制――の5項目が原因と結論づけました。
 再発防止に向け、「品質憲章」 の制定や対話集会の充実、不適切な行為を可能としたシステムの仕組みの見直しなどに取り組むとしました。また、「品質管理」 と 「品質保証」 の機能を明確に分離し、強化するといいます。
 OBは 「(不正を) 見ていながら見ないふりをする企業風土があった。しかし、不正を発見したら注意する文化を育ててきたつもりだ。結局、企業文化を作れなかったということか。経営陣の責任だ」と話しています。


 10月2日、日産自動車は、国内全ての車両組み立て工場で資格のない従業員が完成検査をしていた問題で、再点検のため販売済みの約121万台をリコール (回収・無償修理) する方針を発表しました。
 不正は国交省の抜き打ちの立ち入り検査で発覚しました。完成検査は道路運送車両法に基づき実施されるもので、本来は国がする出荷前の安全確認をメーカーが代行して実施します。国交省は各社が社内規定で認定した 「官製検査員」 が行うよう定めています。しかし、日産ではこの認定を受けていない 「補助検査員」 だけで一部の検査を実施していました。現場では資格者の印章の流用や書類偽装が常態化していました。
 西川社長はこうした事態が起きた背景の一因について、資格のある検査員がしなければいけないという認識が現場で 「多少薄れていたのかもしれない」 との見方を示しました。


 10月28日、スバルは資格を与えていない従業員に新車の検査をさせていたと発表しました。30年以上にわたって続いていた慣行で、日産自動車の無資格検査問題を受けた社内調査ではじめて判明したといいます。
 スバルでは資格者を、検査の知識の習得や現場での研修を経て、筆記試験に合格した者を認めています。しかし筆記試験前の無資格者が検査に携わっていました。
 検査後は、正規の 「完成検査員」 の印章を流用し、法令通りに検査したと見せかけていました。


 今回だけでなく製造業での不祥事が相次いでいます。
 本来ならもっと早くに内部からの告発があっても不思議ではありません。それよりも内部告発を抑制する風土・社風がありました。
 「納期を守り、生産目標を達成するプレッシャーの中で続けてきた」 などという理由だけでは説明しきれません。
 「組織ぐるみ」 「管理職も含まれている。実際に手を下した、知りながら黙認していた、うすうす知っていた。いろんな段階がある」、「品質に関する意識が弱いとは考えていない。(納入先との) 契約を守る意識が低かった」、「不適切な製品を出荷したことで、すぐにクレームにつながったわけではない」、「(不正を) 見ていながら見ないふりをする企業風土があった」 などの認識をどう捉えたらいいのでしょうか。

 中根千枝の 『タテ社会の人間関係』 (講談社現代新書) から探ってみます。
「日本人が外に向かって (他人に対して) 自分を社会的に位置づける場合、好んでするのは、資格よりも場を優先することである。記者であるとか、エンジニアであるということよりも、まず、A社、S社のものということである。他人がしりたいことも、A社、S社ということがまず第一であり、それから記者であるか・・・ということである。・・・
 ここで、はっきりいえることは、場、すなわち会社とか大学とかいう枠が、社会的に集団構成、集団認識に大きな役割をもっているということであって、個人のもつ資格事態は第二の問題となってくるということである。・・・
 『会社』 は、個人が一定の契約関係を結んでいる企業体であるという、自己にとって客体としての認識ではなく、私の、またわれわれの会社であって、主体化して認識されている。そして多くの場合、それは自己の社会的存在のすべてであり、全生命のよりどころというようなエモーショナルな要素が濃厚にはいってくる。
 A社は株主のものではなく、われわれのものだという論法がここにあるのである。この強い素朴な論法の前には、いかなる近代法といえども現実に譲歩せざるをえないという、きわめて日本的な文化的特殊性がみられる。」
「このような枠単位の社会的集団認識のあり方は、いつの時代においても、道徳的スローガンによって強調され、そのスローガンは、伝統的な道徳的正当性と、社会集団構成における構造的な妥当性によってささえられ、実行の可能性を強く内包しているのである。」
「外部に対して、『われわれ』 というグループ意識の協調で、それは外にある同様なグループに対する対抗意識である。・・・したがって、個人の行動ばかりでなく、思想、考え方にまで、集団の力がはいり込んでくる。こうなると、どこまでが社会生活 (公の) で、どこからが私生活なのか区別がつかなくなるという事態さえ、往々にして出てくるのである。これを個人の尊厳を侵す危険性として受けとる者もある一方、徹底した仲間意識に安定感をもつ者もある。要は後者のほうが強いということであろう。」

 日本では、会社という 「場」 は、使用者も労働者も 「われわれ」 です。ここがヨーロッパの労使関係の構造とは決定的に違います。そしてそこではいわゆる “しがらみ” の関係性が大きく作用します。「みんなで渡れば怖くない」 の発想、意志一致はこのようななかから生まれます。そして扇動する者が最も強い愛社精神をもっていると評価されます。
 規律違反、違法行為にたいする不安感や恐怖感も払拭され、逆に自信となっていきます。
 今回の事態はこのような中から常態化しました。まさしく会社ぐるみとしてです。
 これがさらに進むと 「人権は会社の門の前で立ち止まる」 (熊沢誠) になっていきます。
 しかし 「われわれ」 はリスク管理の意識を欠落させます。外部からの指摘に対してはなすすべがありません。会社にとっては世論と取引中止が一番のリスクです。神戸製鋼は存亡の危機がいわれています。

 人類学者の中根千枝は 『タテ社会の人間関係』 のなかで日本社会をインド社会と比較しています。
「日本に長く留学していたインド人が、筆者に不思議そうに質ねたことがある。
『日本人はなぜちょっとしたことをするのも、いちいち人に相談したり、寄り合ってきめなければならないのだろう。インドでは、家族構成としては (他の集団成員としても同様であるが) 必ず明確な規則があって、自分が何かしようとするときには、その規則に照らしてみれば一目瞭然にわかることであって、その規則外のことは個人の自由にできることであり、どうしてもその規則にもとるような場合だけしか相談することはないのに。』
 これによってもわかるように、ルールというものが、社会的に抽象化された明確な形をとっており (日本のように個別的、具体的なものではなく)、『家』 単位というような個別性が強くなく・・・個人は家の外につながる社会的ネットワーク (血縁につながるという同資格者の間につくられている) によっても強く結ばれているのである。」

 確かに日本では、契約関係も形式で遵守しなくてもいいという認識があり、規則・法律の履行に際しても “伺いをたて”、それに従います。契約内容に従う、規則・法律を遵守する者は “融通がきかない者” として 「われわれ」 から排除されます。
 そのため自分を守るという手法からも法遵守意識が希薄になっていきます。
 このようななかさらに中央集団的組織が強化されます。

 なぜ法遵守意識が希薄なのでしょうか。
「『タテ』 のエモーショナルな関係は、同質のもの (兄弟・同僚関係) からなる 『ヨコ』 の関係より、いっそうダイナミックな結び方をするものである。古い表現をとれば、保護は依存によって答えられ、温情は忠誠によって答えられる。すなわち等価交換ではないのである。
 このために 『ヨコ』 の関係におけるよりいっそうエモーショナルな要素が増大しやすく、それによって、いっそう個人が制約される。この関係は下 (子分) をしばるばかりでなく、上 (親分) をも拘束するものである。『温情主義』 という言葉に表されている情的な子分への思いやりは、つねに子分への理解を前提とするから、子分の説、希望を入れる度合いが大きい。」
「西欧的な意味でのコントラクト (契約) 関係が設定されにくいいということは、すでにふれた丸抱え式雇用関係にもはっきりあらわれている。筆者は、日本の近代企業が、その初期から、労働力の過剰・不足にかかわらず、終身雇用的な方向をとってきているという事実は、雇用において、西欧的な契約関係が設定されにくい (雇用する側とされる側と両方に原因があるのだが) という理由に求められるのではなかろうかと思うのである。経営者側としては、当然、コンスタントな労働力を確保するために、労働者 (特に熟練労働者) のひきとめ策として、コントラクト制を発展させる代わりに、より日本人にあった生涯雇用制の方向をうちだしてきたのではなかろうかと思う」
 労・使双方が受け入れてきた経緯があります。
 労は、雇用を維持させるために契約内容を変更させてきました。これに対して、使は抱き合わせ・バーターとして別項目の受け入れを求めてきました。その関係性が今の労使関係を形成しているという事実もあります。


 今回の神戸製鋼等の事態をみるとき、労働組合は役割の捉え返しが必要です。労働組合は会社から独立して存在し、監視し、発言をしていかないと不正を隠ぺいする共犯者となり、自己の技能を否定し、運命共同体の道を歩むことになります。会社の不正に手をかす労働組合はまともな労働運動をできるはずがありません。
 まず労働者を統制するのではなく、会社からも労働組合からも 「自立」 させなければなりません。とはいっても、昨今の 「自己責任」 の強制とは違います。お互いに個人・個性を尊重し、人権を保障し合うことから始め、その上での横のつながりをつくる必要があります。そうすると仕事への誇りと責任を自覚できます。そして問題があると思われた時はきちんと声を上げることができます。
 労働組合は、労働者が会社や周囲からの攻撃を受けた時に盾になる役割をはたす存在です。
 労働組合は、負の現実を労働組合再生の契機に作り替えていく必要があります。
 

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