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過労死防止対策  課題ははっきりしている
2017/09/05(Tue)
 9月5日 (火)

 過労死問題は長時間労働や医学的知見からだけでは説明できません。長時間労働はその原因やその中で発生す精神状態の分析も必要です。
 8月10日、厚生労働省は2016年度 「過労死等に関する実態把握のための労働・社会面の調査研究事業報告書」 を公表しました。

 調査の目的は、「過労死等の実態を把握するためには、『過労死等の防止のための対策に関する大綱』 にも記載されているとおり、医学面の調査研究だけではなく、長時間労働の実態、企業の取組等、労働・社会面の調査研究も必要である。とりわけ、過重労働が多く発生し、重点的な調査を行う必要のある職種、業種等を検討し、さらに詳細な調査、分析を行うことが必要である」 ことを踏まえ、「過労死等の実態を労働・社会的側面から明らかにすることを目的として」 います。

 報告書の 「第2章 既存の統計資料等の整理」 の集計対象データは 「平成27年度調査における労働者調査において、『正社員 (フルタイム)』 であり、かつ 『通常の 勤務時間制度』 で働いていると回答のあった者のうち、『最終学歴』、『平均的な1週間当たりの残業時間』、『残業が最長の週の残業時間』、『労働時間の把握方法』、『残業を行う場合の手続き』 についてそれぞれ有効回答 (回答が 『その他』 を除く。) があり、かつ、『労働時間の把握方法』 が 『特に把握されていない』 と回答した者を除いた7.242件」 についてです。

 平均的な1週間当たりの残業時間に影響を及ぼす要因についてです。
 「労働者の特性が及ぼす影響」としては、「残業時間が長くなる要因として、男性であること、年齢が低いこと、主たる家計の維持 (支持) 者であることが挙げられた。また、最終学歴においては、『中学校卒・高校卒』 の場合に比べて、『短期大学・高等専門学校卒』 の場合に残業時間が短くなる傾向が見られた」といいます。

 労働環境が及ぼす影響としては、「『職階』 では、『一般社員』 に比べて何らかの役職者の方が、残業時間が長くなる傾向が見られた。
 『従事している仕事の種類』 では、『事務職』 に比べて 『管理職』、『専門職・技術職』、『生産工程職』、『輸送・機械運転職』、『建設・採掘職』 において残業時間が長くなる傾向が見られた。特に 『輸送・機械運転職』 では、『事務職』に 比べて1週間当たり約1.8時間長くなる傾向が見られた。
 『従業員規模別』 では、『10人未満』 に比べて 『30人以上50人未満』 以上の企業において、残業時間が長い傾向が見られた」 といいます。

 企業の管理・対応等が及ぼす影響においては、「『残業手当の支給の有無』 では、残業手当が『支給されていない』 (サービス残業の者等含む) 者に比べて、『全額支給されている』 者の方が残業時間は短くなる傾向が見られた。
 『把握されている労働時間の正確性』 では、把握されている労働時間が 『全く正確に把握されていない』 場合に比べて、『正確に把握されている』、『概ね正確に把握されている』、『あまり正確に把握されていない』 場合の方が残業時間は短くなる傾向が見られた。特に 『正確に把握されている』 場合では1週間当たり6時間近い残業時間の短縮が見られた。 『残業を行う場合の手続き』 では、『本人の意思や所属長の指示に関わらず残業が恒常的にある』 場合に比べて、『事前に本人が申請し、所属長が承認する』 場合や 『所属長が指示した場合のみ残業を認める』 場合において、残業時間は短くなる傾向が見られた」といいます。

 企業の経営環境が及ぼす影響については、「企業の経営環境 (ただし、労働者による評価に基づくもの) が 『平均的な1週間当たりの残業時間』 に及ぼす影響についてみると、『この会社の経営はうまくいっている』と感じている方が、残業時間は短くなる傾向が見られた」 といいます。


 年次有給休暇の取得日数に影響を及ぼす要因についてです。
 労働者の特性が及ぼす影響については、「男性であること、年齢が低いこと、配偶者がいないこと、『こころの耳』 を知らない場合において、取得日数が短くなる傾向が見られた」 といいます。

 労働環境が及ぼす影響については、「『従業員規模別』 では、『10人未満』 に比べて従業員規模が大きい方が、取得日数が多くなる傾向が見られた(ただし、『500人以上1000人未満』 の規模は有意な違いは見られなかった)。
 『労働組合の有無』 別では、『労働組合がない、もしくは分からない場合』 に比べて、加入・未加入に関わらず、『労働組合がある』 場合において取得日数が多くなる傾向が見られた。
 また、『年次有給休暇の年間新規付与日数』 が多いほど取得日数が多くなる傾向が見られた。『平均的な1週間当たりの残業時間』 では、『0時間』 に比べて 『5時間以上』 の場合に、取得日数は少なくなる傾向が見られた。平均的な1週間当たりの残業時間が長くなるほど取得日数が短くなり、休みがとりづらい状況が伺えた。特に平均的な1週間当たりの残業時間が 『20時間以上』 の場合には 『0時間』 に比べて約3日、取得日数が少なくなることが分かった」といいます。

 企業の管理・対応等が及ぼす影響については、「『残業手当の支給の有無』 では、残業手当が 『支給されていない』 者 (サービス残業の者等含む) に比べて、『全額支給されている』 者の方が取得日数は多くなる傾向が見られた。
 『把握されている労働時間の正確性』 では、把握されている労働時間が 『全く正確に把握されていない』 場合に比べて、『正確に把握されている』、『概ね正確に把握されている』 場合の方が取得日数が多くなる傾向が見られた」 といいます。

 企業の経営環境が及ぼす影響については、「企業の経営環境 (ただし、労働者による評価に基づくもの) が 『年次有給休暇の取得日数』 に及ぼす影響についてみると、有意な関連性はみられなかった」 といいます。


 メンタルヘルスの状況に影響を及ぼす要因についてです。
 調査には 「GHQ精神健康調査票」 を使用しています。主として神経症者の症状把握、評価および発見に有効なスクリーニング調査であり、「日本版GHQ12」 は12問からなる調査で、各問の回答に応じて0点または1点を付与し、0~12点の合計得点を算出します。スコアが高いほど精神的には不健康 (メンタルヘルスの状態が悪化している) といえます。

 労働者の特性が及ぼす影響については、「『年齢が高い』、『配偶者がいる』、『勤務日1日の睡眠時間が長い』 場合において、GHQ-12のスコアが低くなる、即ち、メンタルヘルスの状態が良好になる傾向が見られた。また、 最終学歴においては、『中学校卒・高校卒』 の場合に比べて、『大学卒・大学院修了』 の場合にメンタルヘルスの状態が良好になる傾向が見られた。
 一方、『介護をしている』、『業務以外にストレスや悩みを感じた経験がある』 場合において、GHQ-12のスコアが高くなる、即ち、メンタルヘルスの状態が悪化する傾向が見られた」といいます。

 労働環境が及ぼす影響については、「『平均的な1週間当たりの残業時間』 では、『0時間』 の場合に比べて 『10時間以上』 の場合に、メンタルヘルスの状態が悪化する傾向が見られた。また、『残業が最長の週の残業時間』 では、『0時間』 の場合に比べて 『30時間以上』 の場合に、メンタルヘルスの状態が悪化する傾向が見られた。
 『ハラスメントの有無』 別では、『ハラスメントはない』 場合に比べて、『ハラスメントを受けている』 または 『自分以外がハラスメントを受けている』 場合において、メンタルヘルスの状態が悪化する傾向が見られた。
 『職場環境に対する評価』 に関しては、『自分に与えられた仕事について、裁量を持って進めることができる』場合や 『今の職場やこの仕事にやりがいや誇りを感じている』 場合及び 『全体として、仕事の量と質は適当だと思う』 場合は、そうでない場合に比べてメンタルヘルスの状態が良好になる傾向が見られた」 といいます。

 企業の管理・対応等が及ぼす影響については、「『残業手当の支給の有無』 では、残業手当が 『支給されていない』 者 (サービス残業の者等含む。) に比べて、『全額支給されている』 者の方が、メンタルヘルスの状態が良好になる傾向が見られた。
 『把握されている労働時間の正確性』 では、把握されている労働時間が 『全く正確に把握されていない』 場合に比べて、『正確に把握されている』、『概ね正確に把握されている』、『あまり正確 に把握されていない』 場合の方が、メンタルヘルスの状態が良好になる傾向が見られた
 『残業を行う場合の手続き』 では、『本人の意思や所属長の指示に関わらず残業が恒常的にある』 場合に比べて、『事前に本人が申請し、所属長が承認する』 方が、メンタルヘルスの状態が良好になる傾向が見られた」とあります。


 まとめにあたる 「留意事項」 です。
「労働者の特性や労働環境、企業の管理・対応等のいずれも、『平均的な1週間当たりの残業時間』、『年次有給休暇の取得日数 (2014年度)』、『メンタルヘルスの状況』 (GHQ-12) と有意に関連している可能性が示唆されるとともに、『平均的な1週間当たりの残業時間』 に関しては、企業の経営環境とも関連している可能性が示唆された。また、労働環境としての 『週間当たりの残業時間』 は 『年次有給休暇の取得日数 (2014年度)』 や 『メンタルヘルスの状況』 (GHQ-12) と有意に関連しており、残業時間が長いほど年次有給休暇が取りづらく、また、メンタルヘルスの状態が悪化する可能性があると考えられた。
 さらに、労働者の特性や労働者が置かれている労働環境は様々であるが、そうした要因を考慮してもなお、企業の管理・対応等は、残業時間や年次有給休暇の取得日数だけでなく、メンタル ヘルスの状態にも関連している可能性が示唆された。特に、『把握されている労働時間の正確性』 に関しては、把握されている労働時間が 『全く正確に把握されていない』 場合に比べて、『正確に把握されている』 方が、1週間当たりの残業時間が約6時間短縮される傾向があるほか、年次有給休暇の取得日数の増加、メンタルヘルスの状態が良くなる影響も示唆された。加えて…… 『1週間当たりの残業時間』 に対しては、『把握されている労働時間の正確性』 に関して 『正確に把握されている』 場合や、『残業を行う場合の手続き』 に関して 『事前に本人が申請し、所属長が承認する』 場合や 『所属長が指示した場合のみ残業を認める』 場合において、他の要因よりも長時間労働の抑制に特に強く関連性を有していることが伺えた。 これらの結果を踏まえると、労働者の心身の健康の確保、過労死等の防止に向けては、労働時間を正確に把握することや残業する場合の手続きを適正に行うことが、非常に重要な取組基盤となることが改めて確認された」 といいます。


 この調査結果から、今、働きかた改革において法案化がおこなわれようとしている 「残業代ゼロ法案」 ・ 「高度プロフェッショナル制度」 (高プロ) をみたらどうなるでしょうか。
「『残業を行う場合の手続き』 では、『本人の意思や所属長の指示に関わらず残業が恒常的にある』 場合に比べて、『事前に本人が申請し、所属長が承認する』 場合や 『所属長が指示した場合のみ残業を認める』 場合において、残業時間は短くなる傾向が見られた」
「『把握されている労働時間の正確性』 では、把握されている労働時間が 『全く正確に把握されていない』 場合に比べて、『正確に把握されている』、『概ね正確に把握されている』、『あまり正確に把握されていない』 場合の方が残業時間は短くなる傾向が見られた。」
「『把握されている労働時間の正確性』 では、把握されている労働時間が 『全く正確に把握されていない』 場合に比べて、『正確に把握されている』、『概ね正確に把握されている』、『あまり正確 に把握されていない』 場合の方が、メンタルヘルスの状態が良好になる傾向が見られた。」
 「高度プロフェッショナル制度」 はこのような実態に逆行しています。これだけでメンタル状況は不調になります。


 これらの調査結果のほとんどは日々の労働相談のなかで実感していることです。しかし行政は “素人” の意見・要求は聞き入れません。
 日本における行政の調査は、取り組みの糸口を探るのではなく、データを作成して公表することで落着してしまいます。糸口を探ろうとするなら沢山の課題が見えています。
 調査結果を公表してそれ以降は企業の良心に任せるのではなく、議論をまき起こし、行政は指導、規制、法制化へと進めていかなければなりません。
 そうでないとせっかくの過労死対策も絵に描いた餅になってしまいます。

   「活動報告」 2017.7.7
   「活動報告」 2017.6.9
   「活動報告」 2017.1.31
  当センター「いじめメンタルヘルス労働者支援センター」ホームページ・ご相談はこちらから
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