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まず自分を守ること
2017/08/01(Tue)
 8月1日 (火)

 地球の温暖化のせいなのかはわかりませんが異常気象がつづいています。
 7月5日、福岡、大分県を襲った九州北部豪雨は土砂崩れも発生し36人の死者をだしました。追い打ちをかけるように台風が襲いました。
 6日、大分県日田市では警戒活動に従事していた消防団員が土砂崩れに遭いました。地域を回って周囲に避難を呼び掛け高齢者を避難所に運ぶなどの活動をしていました。いったんは公民館に避難しましたが被害の状況を確認しようとして出かけました。

 5月4日、横浜市で、消防団員のあり方を考えるシンポジウムが開催されました。東日本大震災のときに岩手県宮古市田老地区での救援活動で指揮をとった2人の消防団員が報告をしました。
 教訓として 「逃げることは恥ずかしくはない。生き抜くことがいかに大切か」 「津波のときにはとにかく自分の身を守るということが大前提。自分を守らなければ、人は助けられない」 と語りました。
 そして心身の疲弊を懸念し、交代で休みを取れるよう特別な部隊編成に見直すとともに、臨床心理の専門家によるストレスチェックを受けられるよう消防署と掛け合ったことも披瀝しました。
 東日本大震災では、地震が発生すると消防団員は水門を閉めに海のほうに走った、地域住民に避難をよびかけてまわった、1人では避難できない住民と一緒に避難をして波に巻き込まれたなどの話をたくさん聞きます。250人の消防団員が亡くなっています。

 東日本大震災のあと消防団のあり方の議論が進んでいます。そして消防団員だけでなく防災の議論も進んでいます。
 15年3月20日の 「活動報告」 の再録です。
「『階上中学校といえば 「防災教育」 といわれ 内外から高く評価され 十分な訓練もしていた私たちでした。』
 しかし東日本大震災で3人の卒業予定者を亡くしてしまいました。
 階上中学校では震災前は3年間の間に 『自助』 『共助』 『公助』 のサイクルで防災訓練を行ってきたといいます。
 震災を経て防災教育の見直しをしました。何よりも自分の命を確実に守ること、それが多くの人の命を守ることになるという確認をしました。その結果、『自助』 『自助・共助』 『自助・公助』 のサイクルで、『自助』 を基盤にした防災学習に変えました。
 「とにかく自分の身を守る。自分を守らなければ、人は助けられない」 です。

 東日本大震災のとき、消防団員は震災後も避難所の運営などにたずさわりました。
 全国から駆け付けた救援部隊による捜索活動には地元の地理と状況を知っているということで水先案内もおこないました。捜索活動は知っている方の遺体にもであいました。しかしたずさわっている任務が優先です。個人的行動は後回しです。
 このようなことは今回の災害においてもそうだったと思われます。しかし救援活動にたずさわる人たちもくれぐれも 『自助』 『自助・共助』 『自助・公助』 を心にとめてほしいと思います。


 朝日新聞は 「てんでんこ 皇室と震災」 を連載しました。その6月6日の記事です。
「陸上自衛隊東北方面総監の君塚栄治さん (15年死去) は宮城県東松島市の松島基地で両陛下を迎えた。
 かつて君塚さんに取材したとき、印象深かった話がある。『遺体の扱い』 だ。3月14日に被災地の陸海軍の統合任務部隊指揮官に任命された際、当時の北沢俊美防衛相 (79) に 『ご遺体は生きている人と同じように、丁寧に扱ってください』 と言われたという。
 君塚さんは大臣の言葉を部下に伝えるにあたり 『自分の家族と同じように』 と言い換えた。『被災地の現場に行くのは18歳から20歳の若者。身近に死体を見る経験もない隊員たちにもわかるように説明する必要があった』」

 防衛相の発言は間違いで危険です。
 この発言のテレビニュースを消防団員の方と一緒に見ていました。
 彼は間髪を容れずに 「この対応は間違い」 と叫びました。「ご遺体は生きている人と同じように、丁寧に扱ってください」 の対応をしていたら、救援者は持ちません。
 防衛相は背広組ですから実際の対応方法がわからないこともあります。しかし制服組の幹部も同じ発言をするとは驚きです。消防団では周知されていることを自衛隊では幹部が知りません。

 11年4月22日の 「活動報告」 の再録です。
「米軍の制服組を養成する学校には遺体を扱うときの留意事項が列挙されたマニュアルがあります。『遺体が救援者に引き起こす気持ちの変化:救援者向けパンフレット』 として防衛医科大学の医師が翻訳しています。日本でも消防庁では活用されています。(加藤寛著『消防士を救え!』 東京法令出版刊)
 しかし、自衛隊では救援活動は本来の任務でないということからかあまり活用されていないのでしょうか。軍としての 「殺す」 という任務は側面で 「殺される」 ということも覚悟していると思われますが。
 パンフレットを紹介します。
 【基本的な心構え】
 ・業務の目的を忘れないでください。そして、それを見失わないようにして下さい。
 ・業務前に「心の準備」をすることは簡単ではありません。そのため、業務内容で何が求められ
  ているのか、可能な限り事前に知ることが大切です。また、同じような経験をした同僚から話
  を聞くことも大切です。
 ・休息をこまめにとり、衛生を保ち、食事と水分をしっかり摂って下さい。
 ・業務外の時間では、心身ともに休んでください。
 【遺体への接し方】
 ・遺体に接する時間は必要最小限にして下さい。そして、ほかの人にも必要以上に見せないように、
  敷居、カーテン、パーティーション、カバー、袋などを用いて下さい。
  業務中は、防御服・手袋を着用し、二次感染の危険性を減らしてください。
 ・特定の遺体に集中しすぎないようにして下さい。自分が強い気持ちを抱きやすい遺体には、
  特に注意が必要です。
 ・遺体はあくまでの遺体であって、もう生きてはいないことを、自分の中で言い聞かせてみるのも
  一法です。これは、必要以上に気持ちが流されないためなので、業務終了後、そのような距離感を
  取ったことに対して、決して自分自身を責めないでください。
 ・遺体の近くにある遺留品は、身元確認のために重要であり、遺族にとって大切な所持品です。扱い
  には注意を払ってください。しかし遺留品への必要以上な執着は、あなたの気持ちを必要以上に
  つらくしますので、注意が必要です。
 ・臭いを消すための香水や香料は、業務体験とともに後々の記憶に (悪い形で) 残してしまうことが
  ありますので、使用にあたっては注意が必要です。」
 自衛隊では 「まず自分の身を守ること。自分を守れてはじめて他の人も助けられる」 の 「まず自分を守ること」 が組織的に行なわれていません。

 そして今回の朝日新聞の記事を見て思うのは、このような記事を何のためらいもなく載せるということは、救援活動ではなくても現場に駆けつけることがある新聞記者自身と新聞社においても 「まず自分を守ること」 の必要性が理解・周知されていないことがうかがわれることです。いつか新聞社そのものが深刻な事態に陥る危険性があります。


 雑誌 「トラウマティック・ストレス」 の13年12月号に東日本大震災の経験について防衛大学の医師らが共同で 「自衛隊における惨事ストレス対策―東日本大震災における災害派遣の経験から―」 を寄稿しています。
「東日本大震災では、自衛隊史上最大の災害派遣規模に加え、遺体関連業務や被爆関連業務が多くの隊員が関わることになったため、発災当初、『メンタルヘルスの問題を抱える隊員が大量に生じるのでは?』 と懸念されたのが正直なところである。しかし、これまでのところ、そうした事象は確認されていない。
 PTSDの症状は心的外傷性体験した多くの隊員で観察されたが、それは一時的なもので、多くは数日、残りのほとんども数週間で自然消退した。PTSDの診断基準を満たす症状を有し、それが1か月以上続き、診断に至った隊員も若干名いたが、数カ月の治療で軽快、寛解しており、精神障害として重症化した事例は現時点では認められていない。……
 長期フォローアップのスクリーニングについても、カットオフポイント以上を示した隊員は数%のみであり、そのほとんどが上司との面談、心理職によるカウンセリングにより改善もしくは経過観察となっており、医療機関に受診となった例はわずかであった。結果的に、2011年の自衛隊全体の精神科受診患者数は、例年と変わらない数に留まっている。
 今回の災害派遣では、任務の中に隊員に心的外傷をもたらす体験があったことは間違いないと思われるが、幸い私たちが懸念していたような事態には至らなかった。」

 誤った指示をうけても大きな影響が出ていません。信じられない報告です。結論先にありきの報告なのかもしれません。教訓をくんで生かそうとしていません。このような報告を信じて対処していたら次には大変な事態が発生します。
 自衛隊員の対応は正直に答えたら不利益が生まれるなどの何らかのバイアスがかかっていると思われます。それは自衛隊が持つ体質からきています。東日本大震災の直後、派遣された部隊から逃亡した自衛隊員がいました。派遣を回避するため事件を起こした自衛隊員がいました。彼はその後どうなったのでしょうか。派遣後に自殺した隊員もいます。(16年3月9日の 「活動報告」)
 「とにかく自分の身を守ること」 を周知しないで 「他の人も助けられる」 任務を遂行できません。
 自衛隊は隊員を大事にしていません。

 自衛隊にとっては自衛隊法に救援活動は任務と謳ってあるといっても本来の任務ではありません。不得手な部隊に押し付けると無理・無駄が生まれます。国としては早期に専門の 「災害救助隊」 のような組織を創設すべきです。

   「軍隊の惨事ストレス対策」
   「心のケア」
   「活動報告」 2016.3.9
   「活動報告」 2015.3.20
  当センター「いじめメンタルヘルス労働者支援センター」ホームページ・ご相談はこちらから
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