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「部外職場暴力」 に早急な対策を
2017/07/14(Fri)
 7月14日 (金)

 厚労省で5月19日から 「職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会」 が開催されています。
 開催趣旨です。
 「近年、都道府県労働局において、職場における 『いじめ・嫌がらせ』 の相談件数が増加しているなど、職場のパワーハラスメントが大きな問題となっており、働く方々が健康で意欲を持って働くためには、労働時間管理 やメンタルヘルス対策だけではなく、職場のパワーハラスメントを防止する必要がある。こうした中で、働き方改革実行計画 (平成29年3月28日働き方改革実現会議決定) において、『職場のパワーハラスメント防止を強化するため、政府は労使関係者を交えた場で対策の検討を行う。』 こととされた。これを受け、有識者と労使関係者からなる検討会を開催し、実効性の ある職場のパワーハラスメント防止対策について、検討を行う。」
 検討事項です。
「(1) 職場のパワーハラスメントの実態や課題の把握
 (2) 職場のパワーハラスメント防止を強化するための方策
 (3) その他」
 第1回検討会は委員全員が意見を述べました。そのなから特徴的意見を紹介します。
 連合東京副事務局長内村委員です。
「この検討会の中では、基本的には防止をしていこうということが大きなテーマだと思いますが、たくさんの事例がやはりあります。先ほどから出ている中身にもありますが、最近では特に多くなってきているのは評価です。要するに、人事評価などできちんとした評価がされない、これもいわゆるパワハラではないかというようなことも含めてです。何かちょっとしたことがきっかけで、上司の考えていることと違うことを発言したことがきっかけで、いきなり対応が変わるというケースなど、いろいろなケースがありますので、その現場の声というか、働いている労働者の声を、労働者の代表として、これからこの検討会の中で発言をしていけたらいいなと思っております。」

 7月4日の 「活動報告」 で触れましたが、労働政策研究・研修機構は2011年度に全国の都道府県労働局にあっせん申請がおこなわれた 「いじめ・嫌がらせ」 の事案284件を調査して2015年6月に報告書 「職場のいじめ・嫌がらせ、パワーハラスメントの実態 -個別労働紛争解決制度における2011年度のあっせん事案を対象に-」 を発表しました。
 そのなかに、厚生労働省はパワハラの概念規定・定義を行い 「職場のパワーハラスメントの行為類型」 を6類型の示しましたがそれらには含まれない 「経済的な攻撃」 の類型を挙げています。
 最近、人事評価において規定・規則に則さないで、指導・教育という名目で労働者のプライドを傷つけて退職強要に追いやる手法が横行していいます。まさしく 「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいう」 職場のパワーハラスメントそのものです。

 UAゼンセン日本介護クラフトユニオンの浜田委員です。
「介護の現場の、ヘルパーさんであるとかケアマネさんの労働組合です。……
 また、概念とか定義からすると少し外れてはしまうのですが、現場ではパワハラだろうがセクハラだろうが、嫌なこと、困ったことなどいろいろな相談がくるのですが、その中には実は、特に流通とか介護の現場では多いのですが、顧客であるとか、利用者家族からのハラスメントも実は無視できない状態です。例えば、しばらく前に有名になりました、土下座をさせられるであるとか、大声で長時間叱責されることもあったり、介護現場では、家族の方からの叱責があったりであるとか、いろいろな問題があるのです。実は、相談を受ける側としては、やはり労働者を守るという意味では無視できない実態が実はあるのだということです。この一定程度進まないという部分を、これまでの取組の延長線上で現状を変えられるかということを考えますと、一定程度存在するパワハラ防止対策が進まない企業を、もう少しこの検討会では、今後の法整備に向けた、これまでよりもステップアップした対応についての議論が必要ではないかと考えております。」

 第2回検討会に資料として公益財団法人介護労働安定センター作成の 「介護労働者が過去1年間に受けた利用者からのセクハラ・暴力等の経験」 が提出されました。訪問系8.332人、施設系 (入所型) 4.888人、施設系 (通所型) 6.525人への調査結果です。
 それによると、暴言 (直接的な言葉の暴力) は、訪問系21.0%、施設系 (入所型) 39.8%、施設系 (通所型) 22.3%、利用者から介護保険以外のサービスを求められたは、訪問系27.5%、施設系 (入所型) 5.2%、施設系 (通所型) 12.3%、暴力は訪問系5.6%、施設系 (入所型) 32.1%、施設系 (通所型) 12.5%、セクハラ (性的嫌がらせ) は、訪問系8.0%、施設系 (入所型) 9.0%、施設系 (通所型) 10.8%、家族から介護保険以外のサービスを求められたは、訪問系14.5%、施設系 (入所型) 3.9%、施設系 (通所型) 6.2%が経験しています。
 労働者の安全が脅かされた、放置できない深刻な問題が存在します。


 利用者からのセクハラ・暴力等のようないわゆる 「部外職場暴力」 ・第三者からの暴力については、実は、11年7月8日から開始された 「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議」 の第1回においても問題提起がおこなわれました。
 ブールミッシュ代表取締役社長の吉田委員の発言です。
「……これらとはまた別に、私どもが今、一番悩んでいるのは、お客様による私どものスタッフへのいじめ・嫌がらせと言いましょうか、これは新しい切り口だと思います。日々、いろいろな方に接しておりますと、言葉は悪いですが、やや粗暴な方などがいらっしゃるんですね。でも、そういった方たちは割と扱いやすいと言ったら語弊がありますが、ガス抜きすると大体終わります。
 一番困ってしまうのは、……おばちゃま、……これも嫌がらせと言うか、パワハラと言いましょうか、物事を上から目線で見たときに必ず起きますね。私は客よ。何、今の言葉遣いは。お宅様のお嬢様はいかがでしょうと聞きたくなる場合もあるんですけれども、そんなことを言ったらえらいことになってしまいますから、これも本当に大変な問題です。」

 しかし2012年3月15日に発表された 「職場のパワーハラスメントの予防・解決に向けた提言」 (「提言」) ではとりあげられていませんでした。

  「部外職場暴力」 ・第三者からの暴力についてはILOなどでは 「職場の暴力」 (Violence at work) として、韓国では 「感情労働」 としてかなり前から議論が積み重ねられています。
 2010年9月30日欧州社会対話は 「労働に関連した第三者暴力及びハラスメントに対処するための他部門ガイドライン」 を締結しました。そのなかで第三者暴力の形態を示しています。
「4.労働関連第三者暴力及びハラスメントは、多くの形態をもつ場合がある。それには以下である可能性がある。
 a) 身体的、精神的、口頭によるもの及び/または性的なものである。
 b) 個人または集団による一度限りの事象またはより系統的なふるまいのパターンである。
 c) 依頼人、顧客、患者、サービス利用者、生徒または親、一般の人、またはサービス提供者の行動
  またはたちふるまいから生じる。
 d) 失礼な事例から、より深刻な脅迫や身体的襲撃にまで及ぶ。
 e) メンタルヘルス問題から、および/または、感情的理由、個人的好き嫌い、性差、人種/民族、
  宗教や信念、障害、年齢、性的思考または身体のイメージにもとづく偏見に動機づけられて生じる。
 f) 組織されたまたは機械的なものかもしれず、または公的機関による介入を必要とするかもしれない
  労働者及び彼・彼女の評判または労働者や顧客の財産を狙った刑事犯罪を構成する。
 g) 被害者の個性、尊厳及び人格に深い影響を与える。
 h) 職場、公共の場所または私的な環境で起こり、かつ、労働に関連している。
 i) 幅広い情報及びコミュニケーション技術を通じたサイバーいじめ/サイバーハラスメントとして。
  起こる。」 (全国労働安全衛生センター発行 『安全センター情報』 2012年4月号)

 日本でも、サービス部門だけでなく災鉄道部門、医療関連部門そして行政機関の窓口で事件が発生しています。しかし対策は遅れています。
 では、実際に 「部外職場暴力」 に直面した時、労働者や周囲の者はどう対応したらいいでしょうか。
 対策は、ILOや韓国のサービス連盟が具体的に提案していますが、労働者・消費者・政府・企業それぞれの役割があります。クレームや攻撃は起こることを前提に対策を取る必要があります。
 まず企業・使用者は、トップから労働者を守る姿勢をはっきり示す必要があります。最終的責任はトップが負うというアピールが必要です。そのうえでトラブルが発生した時のサポーター体制を確立しておくことが必要です。ましてやそこでのトラブルを評価の対象にしないことが必要です。そうすると労働者は安心して対応できます。これは厚生労働省の 「職場のパワーハラスメントの予防・解決に向けた提言」 (「提言」) と同じです。
 しつこいクレーマー等にははっきりと 「業務妨害」、「暴力」 であると提示し、企業・使用者は労働者に、顧客との対応を拒否する決定権限を与えることが必要です。
 韓国で 「感情労働者に不当要求拒絶、謝らない権利を付与せよ」 を遂行することの一番の効果は、労働者の尊厳を守り、心身の安全を守り、労働環境が改善されることです。
 クレーマーは一歩譲歩すると二歩付け込んできます。クレーマーの顧客が減っても企業の売上高は大きく減少しません。むしろクレーマーに対応している時間はチャンスロスが発生しています。

 そのうえで労働者は、心構えが必要です。
 ・自分に向けられたものだとは思い過ぎない。
 ・相手の社会に対する不満がたまたま自分に向けられていると理解する。
 ・相手の感情に巻き込まれない。弁解しない。その方が早く終了する。
 ・後で誰かにその時の状況を、感情を含めて話して聞いてもらう。
 ・終了したら休息をとる。
 ・体験を共有化する。

 職場のトラブルが治まったからといって解決したということではありません。対応した職員へのいわれのない攻撃、正義感、価値観、自尊心への攻撃は放置したら傷は癒えません。労働者としての誇り、労働の誇り、喜びを奪われます。身体的打撃を受けた場合はトラウマに襲われて労働が恐怖になることもあります。有能な労働者を失うことになります。
 職場や上司は安全を確保された1人きりになれる空間で、十分な時間を確保して心の整理をするための休養を保障する必要があります。
 人格の回復のための心のケア、同僚等の支援が必要です。労働者の言い分を聞き直し、恐怖心を吐露させ、対応の正当性を共有しあって回復に向かわせる必要があります。
 そして職場として発生した問題をとらえ返した整理し、今後の対策を確認します。


 「部外職場暴力」 の実態は早急に対策が必要な状況になっています。
 現在開催されている 「職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会」 では、この問題についても踏み込んだ議論を行なってほしいと思います。

  当センター「いじめメンタルヘルス労働者支援センター」ホームページ・ご相談はこちらから 
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