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自分を大事にしたいから 『ちょっと今から仕事やめてくる』
2017/05/30(Tue)
 5月30日 (火)

 映画 『ちょっと今から仕事やめてくる』 を観ました。
 印刷会社の営業社員・青山は業績がまったく振るいません。連日、他の社員がいる中で部長から怒鳴られます。部長はこれでは会社に自分の面目が立たないとわめきます。職場はみな凍り付いています。朝礼のシーンで社訓を唱和します。「遅刻は10分1000円を給料から差し引く」 「有休休暇はとらない。身体がなまるから」 などなどです。
 青山は地下鉄のホームで気を失い電車にひかれそうとするところをフリーターの山本に助けられます。山本は小学校時代の同級生だと名乗りますが青山には記憶がありません。常に笑顔を振りまく山本との交流で取り戻し、業績は上がります。
 部長に怒鳴られる青山に声をかける女性の上司がいました。しかし上司も部長からノルマが達成していないと叱責されます。
 青山はやっとものにした顧客の契約を最終段階でミスしてしまいます。部長からは土下座を命じられ何度も繰り返します。実は、上司が自分の成果にするために操作し、奪い取ったのでした。
 身も心も生活もズタズタになります。眠れません。屋上から投身自殺をしようとします。また山本が現れて止めます。そして仕事を辞めた方がいいのではとアドバイスします。

 山本は何者? インターネットで調べると3年前に職場でパワハラを受けて自殺しています。幽霊?
 実は、山本は地下鉄の階段を下りていく青山とすれ違ったときに生気を失っているの見て引き返して救助したのでした。屋上から投身自殺をしようとしたとこも想定して止めるために駆けつけました。そして生きることは楽しいことだと振る舞で教えます。人間は1人ではないと諭します。

 青山は山本と2階の喫茶店で待ち合わせをし、少し待っててくれといって席をはずします。「ちょっと今から仕事やめてくる」 です。会社から戻る青山は鞄を振り回しながら横断歩道をスキップして渡ってきます。解放されて本当にうれしそうでした。その姿をみて山本は姿を消します。
 実は、山本は双子で、自殺したのは兄の方でした。
 これ以上ストーリーを紹介したら興ざめです。


 いろいろな思いが巡ってきます。
 青山にとっては就職活動が困難な中でなんとか内定をもらった会社でした。だからしがみつきます。
 しかし自分を殺してまでしがみつかなければならない会社などありません。山本が言います。「社会に会社は1つだけではない」


 日常の労働相談で青山のような労働者が訪れたらどう対応したらいいでしょうか。
 実際には、業績が上がらない労働者は “自責の念” にかられた誰かに相談をしません。どんどん自分のなかに閉じこもって孤立していきます。
 そこの方向性を変えさせるのが、本当は上司や同僚だったり、友人だったりします。しかし職場の同僚は同じようにあくせくしていてゆとりがありません。
 体調を崩してしまうと判断力も失います。その結果は自殺に至ったり、逆に会社や他者に怨念をいだきつづけることになります。それらは自己防衛する手段なのです。
 なるべく早くに山本のような人に遭遇できたらしあわせです。立場を逆にするとおせっかいが人を救うこともあります。

 相談にきたらどう対応したらいいでしょうか。実際は本人ではなく家族からは結構あります。本人は、自分の方から会社と闘う意思は持っていません。
 この場合、家族は生活は心配ないから少し休むようにと説得したり、方向転換をすすめたりします。本人がよく口に出す 「会社の迷惑をかけられない」 は、家族に迷惑をかけることを招く危険性もあります。今無理をしてもっと体調を崩すことは自分の将来と家族に対して無責任な行為だと説得します。将来を大切にするためには今休むことが必要なのです。「金は一時、健康は一生」 です。

 本人が相談に来たらどう対応したらいいでしょうか。
 2つの選択肢を提示します。1つは会社に要求を出して交渉すること、つまり闘うこと、2つ目は会社を辞めること、です。
 相談を受ける側は、本人の意思を尊重しながら闘うことに耐えられるかどうかを合わせて判断します。最終的決定は本人です。
 闘うことが体調不良を悪化させると思われることもあります。その場合はとりあえず休むことを勧めます。


 映画は 「感情労働」 もテーマにしていました。身体と心が乖離している中での労働が強制されています。
 映画の最後に流れた主題歌はコブクロの 『心』 です。

  いつから僕たちは はぐれてしまったの?
  君と1つだった いつも一緒に風を感じてた

  胸の中の暗がり 湿った段ボールの中に
  君を閉じ込めていた
  黙って僕を見つめる君が 昨日よりも小さくなっている

  君は僕の心 生まれた時から共に生きている
  僕の方が弱いから 君のせいにばかりしてきたけど
  君を守れるのは 僕しかいないのに
  そこから動けない君を置いて 僕はドアを閉めた

  ……

 コブクロの小渕健太郎がコメントを書いています。
「この 『心』 という楽曲は、映画 『ちょっと今から仕事やめてくる』 の書き下しとして作りました。
僕自身、営業職として、外回りをしていた経験があります。高卒で新卒入社の僕は、その環境しか知らず、『会社とはこういうものだ』 『働くとはこういう事だ』 と思い込みただ無我夢中で働いていました。
働くことで、自分を知り、楽しい経験も数多くできました。しかし、心はボロボロなのに、身体だけで出社している様な日もありました。
この映画を見て、リアルに思い出した事が沢山ありました。その記憶が突き刺さった場所には、あの頃、うまくコントロール出来なくなっていた 『心』 がありました。
自分の中には、『心』 というもう1人の存在があり、一心同体で、1人の人間として生きていると感じます。
『心』 は、他人には見えないので、顔は元気そうにしても実は、心は萎れ、今にも腐ってしまいそうな人だっています。
しかし、風も光も入らない場所に心を閉じ込めておけば、腐るのは自然の摂理で誰かが気付いてあげなければ、心はそのまま朽ちてしまいます。
そんな光に、光や風を送るのも、守るのも、自分しかいないと思うのです。
心が生き生きし始めると、様々なイメージが沸き、閉じこもっていた時とは全然違う自分になります。

『心と生きること』
それが、自分の人生を変えるという事をこの曲を通じて、感じてもらえたら嬉しいです。」

 感情労働の説明はこれ以上不要です。


 「心はボロボロなのに、身体だけで出社している」 労働者が相談にきたらどう対応したらいいでしょうか。
 「朝玄関を出ようとしたら足が前に進まなかった」 「駅で電車に乗れなかった」 など身体が 「心」 を拒否することがあります。精神を殺してまともな仕事はできません。身体の拒否は休めのサインです。「心」 に従うことが大切です。
 労働者が 「会社の迷惑をかけられない」 と思っているほど会社は労働者のことを思っていません。労働者のことを本当に思っているならそこまで至るような労働をさせません。
 深刻な場合は辞めることを勧めます。「こんな会社はこちらから辞めてやる。オレは自分と家族を大切にする」 と決断させます。逃げたと思われてもかまいません。逃げることは自分を守ること・大切にすることです。
 相談活動をしている中のデータでは、労働者は生涯に平均3回以上転職をしています。以前は転職は不正をして解雇になった、我慢が足りないなどと陰口をたたかれましたが、今は大企業といわれるところでも会社都合の退職が結構あります。周囲の目よりも自己を確信する必要があります。

 一昨年、国会で機密保護法案が国会で審議されている最中、作家のなかにし礼は毎日新聞に詩 『平和の申し子たちへ -泣きながら抵抗を始めよう』 を載せました。

  ……
  戦争の恐怖をしらない人たちよ
  ぼんやりしていてはいけない
  それはすぐそこまできている
  だからみんな
  さあ逃げるんだ!
  急いで逃げるんだ!
  どこへ
  決まっているじゃないか
  平和の中へさ
  平和を護る意志の中へ
  さあ逃げるんだ
  急いで逃げるんだ!
  平和を堅持する行動の中へ
  平和とは戦争をしないことだという
  あたりまえのことを高らかに歌おう
  平和こそ僕らの聖域 (アジール) であり
  抵抗の拠点なのだから

 逃げて安全なところに辿り着くと冷静に自分をとらえ返すチャンスを得ます。
 そして再就職できたら 「同じ轍を踏まない」 と教訓を活かしながら働くことが大切です。これが本当に有効なセーフティネットです。
 そして同じような労働者に出会ったらおせっかいをやきます。職場でも、社会でもおせっかいをやいたりやかれたりすることが本物のセーフティネットです。その関係性を 「仲間」 と呼びます。

   「感情労働」
   「活動報告」 2015.10.23
  当センター「いじめメンタルヘルス労働者支援センター」ホームページ・ご相談はこちらから
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