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「再発防止の取り組み」 は会社の財産になる
2017/05/23(Tue)
 5月23日 (火)

 前々回は企業調査結果、前回は従業員調査結果を紹介しました。そのなかから特徴的なことを探ってみます。

 職場のいじめの内容は社会の動向とともに変化します。
 米国の企業などで苦情処理や問題解決にあたる制度 (組織オンブズ) のオンブズパーソン協会の元会長ニコラス・ディールさんが労働政策研究・研修機構 (JILPT) の研究会でおこなた講演がJILPTの17年3月の 「フォーカス」 に 「オンブズパーソンによる職場の苦情処理と問題解決」 のタイトルで載っています。その抜粋です。
「ハラスメントは問題として新しいものなのか、それとも問題としては長い間存在していたものが、最近になって前面に出てきたものなのか。おそらく長く潜在的に問題であったものが、社会が変わっていくなかで、顕在化してきたのだと思う。」
「管理職の役割にも変化が生じてきている。紛争を解決することや部下を守ることがその責務として加わってきていると思う。歴史的にはこういった責任は少なかったのではないか。法的にもそのような責任が出てきていると思う。まだ倫理的義務という段階だが、少しずつ法的義務の方に向かっている。職場でハラスメントを解決することが管理職の役割として加わってきている。」
 このことが実感される調査報告書でした。

 企業についての調査結果です。
「パワーハラスメントが職場や企業に与える影響として当てはまるとお考えのものを全てお教えください。(複数回答可)」 の質問についてです。(回答4.587社)
 「職場の雰囲気が悪くなる」 93.5%、「従業員の心の健康を害する」 91.5%、「従業員が十分に能力を発揮できなくなる」 81.0%、「人材が流出してしまう」 78.9%、「職場の生産性が低下する」 67.8%などです。

 パワハラの予防・解決のための取組を実施している企業への質問です。(回答2.394社)
「貴社では、パワーハラスメントの予防に向けてどのようなことを実施していますか。(複数回答可) 貴社で取り組んでいるパワーハラスメントの予防に向けた取組のうち、効果があると実感できたものを全てお教えください。(複数回答可)」 の質問についてです。
 実施についてです。「相談窓口を設置した」 82.9%、「管理職を対象にパワハラについての講演や研修会を実施した」 63.4%、「就業規則などの社内規定に盛り込んだ」 61.1%、「一般社員を対象にパワハラについての講演や研修を実施した」 41.2などです。
 効果を実感できた取組です。「管理職を対象にパワーハラスメントについての講演や研修会を実施した」 74.2%、「一般社員等を対象にパワーハラスメントについての講演や研修会を実施した」 69.6%、「相談窓口を設置した」 60.6%、「再発防止のための取り組みを行った (事案の分析、再発防止の検討など)」 59.8%、「アンケート等で、社内の実態調査を行った」 59.8%、「職場におけるコミュニケーション活性化等に関する研修・講習等を実施した」 56.8%等などです。
 「一般社員を対象にした講演や研修」 は実施率は半数ですが効果は高いです。「再発防止取り組み」 は実施率は19.1%ですが効果を実感できたは59.8%になっています。
「貴社では、パワーハラスメントに悩む従業員がいるかどうか、あるいはパワーハラスメントが疑われる事案が起こっているかどうかについて、どのような形で把握していますか。(複数回答可)」 の質問です。(回答4.587社)
「人事等の社内担当部署への相談や報告で」 64.7%、「社内または社外に設置した従業員向けの相談窓口で」 52.1%、「人事考課などの定期的な面談で」 29.9%、「労働組合への相談で」 17.4%の順です。
 従業員1.000人以上の企業では、「労働組合への相談で」 が39.2%になっています。

 窓口を設置している企業への 「貴社で設置している相談窓口において、制度上対象としている相談テーマをお教えください。(複数回答可) また、従業員からの相談内容のうち、多い内容の上位2つまでをお教えください。(2つまで)」 の質問です。(会社数3.365)

 相談テーマは、「セクシュアルハラスメント」 90.9%、「パワーハラスメント」 87.0%、「メンタルヘルス」 76.2%、「コンプライアンス」 66.3%、「賃金、労働条件等の勤労条件」 47.4%の順です。
 相談の多いテーマは、「パワーハラスメント」 32.4%、「メンタルヘルス」 28.1%、「賃金、労働条件等の勤労条件」 18.2%、「セクシュアルハラスメント」 14.5%の順です。「相談はなかった」 20.4%、「無回答」 10.4%です。
 「賃金、労働条件等の勤労条件」 がかなり多いです。実は 「パワハラ」 だったり、「メンタルヘルス」 に繋がっていきます。日本の労務政策の特徴です。

「個別のパワーハラスメント事案についての実態を把握する上で課題であると感じているのは、どのようなことでしょうか。当てはまるものを全てお教えください。(複数回答可)」 の質問です。(会社数2288)
「被害者や加害者等の証言が一致しない」 37.1%、「加害者・ 被害者のプライバシーの確保」 34.7%、「被害者にヒアリングをするスキル、ノウハウのある人材の教育・育成」 31.8%、「被害者にヒアリングをするスキル、ノウハウのある人材の不足」 27.4%、「加害者・被害者の周囲の協力」 22.8%などです。
 「対応する人材の教育・育成」 は早急な課題になっています。そのためには他力本願ではなく、社内で経験を蓄積することが一番です。それは会社の財産です。


「パワーハラスメントに関する相談件数が増加した (または変わらなかった) 理由としてどのようなことが考えられますか。(複数回答可)」 の質問です。
 「パワーハラスメントに対する関心が高まった」 42.5%、「職務上のストレスが増加している」 41.1%、「パワーハラスメントについて相談しやすくなった」 40.9%、「就労意識の変化や価値観が多様化している」 32.5%、「職場のコミュニケーションが少ない/減っている」 32.5%の順です。
「パワーハラスメントに関する相談件数が減少した理由としてどのようなことが考えられますか。当てはまるものを全てお教えください。(複数回答可)」 の質問です。
 「管理職のパワーハラスメントに対する認識・理解が進んだ」 57.8%、「パワーハラスメントに対する関心が高まった」 44.3%、「職場のコミュニケーションが円滑化した」 33.6%、「経営層のパワ-ハラスメントに対する認識・理解が進んだ」 27.3%の順です。

「パワーハラスメントの予防・解決のための取組を進めた結果、パワーハラスメントの予防・解決以外の効果として、どのようなことがありましたか。当てはまるものを全てお教えください。(複数回答可)」 の質問です。(会社数2394)
 「管理職の意識の変化によって職場環境が変わる」 43.1%、「職場のコミュニケーションが活性化する/風通しが良くなる」 35.6%、「管理職が適切なマネジメントができるようになる」 28.2%、「会社への信頼感が高まる」 27.5%、「従業員の仕事への意欲が高まる」 18.5%、「休職者・離職者の減少」 13.4%、「メンタルヘルス不調者の減少」 13.1%などです。
 取り組みはさまざまな面に効果が表れます。

「パワーハラスメントの予防・解決のための取組を進める上での課題、問題点としてどのようなことが考えられますか。当てはまるものを全てお教えください。(複数回答可)」 の質問です。(会社数4587)
 「パワーハラスメントかどうかの判断が難しい」 70.9%、「発生状況を把握することが困難」 35.6%、「管理職の意識が低い/理解不足」 30.7%、「パワーハラスメントに対応する際のプライバシーの確保が難しい」 26.7%、「適正な処罰・対処の目安がわからない」 20.6%などです。
 「パワーハラスメントかどうかの判断が難しい」 はかなり高いです。労働相談のなかでも多いです。


 従業員調査です。
「あなたの勤務先はパワーハラスメントについて、従業員に説明したり、研修等を行うなど予防・解決のための取組をしていますか。(単数回答)」 の質問です。
 「積極的に取り組んでいる」 5.6%、「取り組んでいる」 20.5%、「ほとんど取り組んでいない」 21.5%、「全く取り組んでいない」 30.1%です。従業員規模別では、1.000人以上では 「積極的に取り組んでいる」 と 「取り組んでいる」 を合わせると51.6%、300人~999人では33.3%です。
 会社と従業員との認識にずれがあります。また取り組みの対象が限定されていたりします。

「(管理職のみ) パワーハラスメントに関連して、あなたご自身が普段から気をつけたり、気にしていることはありますか。(複数回答可)」 の質問です。(回答者は874人)
 「あなた自身がパワーハラスメントと言われるようなことをしないように注意している」 58.5%、「部下、同僚の気持ちを傷つけないように言い方や態度に注意している」 43.7%、「飲み会などへの参加を強要しないようにしている」 39.1%、「個人のプライバシーに関わることは聞かないようにしている」 34.1%、「あなたの部下がパワーハラスメントと言われるようなことをしないように注意している」 25.9%、「(まんべんなく) 周りの人と意識的に会話をするようにしている」 25.4%、「特になし」 33.0%などです。
「(管理職のみ) あなたがパワーハラスメントについて知りたいと感じるものはありますか。当てはまるものを全てお教えください。(複数回答可)」 の質問です。(回答者901人)
 「パワーハラスメントにならない指導、部下等への接し方」 39.3%、「パワーハラスメントになる行為とならない行為の違い」 34.1%、「パワーハラスメントを受けたときの対応の仕方」 23.5%の順です。「特にない」 36.4%です。
 「男性正社員」 「女性正社員」 にも同じような傾向がみられます。管理職だけではなく日常的にかなりの気遣い、気配りをしています。「特になし」 は無関心の一方、取り組みが進んですでに日常的に信頼関係が形成されているも含まれます。

「労働組合があり、加入している」 と回答した者に対する 「あなたの勤務先の労働組合は、従業員の悩み、不満、苦情、トラブルなどについて相談にのってくれたり、解決に向けた支援をしてくれますか。(単数回答)」 の質問です。(回答者2.231人)
 「相談に乗ったり、解決に向けた支援をしてくれる」 48.3%、「相談にのったり、解決に向けた支援はしてくれない」 8.5%、「支援をしてくれるかどうかわからない」 43.2%です。前回の回答とほぼ同じです。

「あなたは過去3年間にパワーハラスメントを受けたり、見たり、逆にパワーハラスメントをしたり、していると指摘されたことはありますか。(各単数回答)」 の質問です。
 「パワラスを受けた経験」 は、「何度も繰り返し経験した」 7.8%、「時々経験した」 17.8%、「一度だけ経験した」 6.9%を合わせると32.5%です。「経験しなかった」 は67.5%です。前回 「受けたことがある」 は25.3%でした。

「(対象者:パワーハラスメントを受けた後、勤務先に相談したと回答した者) あなたの勤務先は、あなたがパワーハラスメントを受けている (または可能性がある)ことを知った後で、どのような対応をしましたか。(複数回答可)」 の質問です。(回答者328人)
 「あなたに事実確認のためのヒアリングを行った」 48.5%、「パワーハラスメントをした相手に事実確認を行った」 34.5%、「あなたの上司や同僚に事実確認を行った」 25.3%、「あなたの要望を聞いたり、問題を解決するために相談にのってくれた」 25.3%、「特に何もしなかった」 18.3%です。

「(対象者:パワーハラスメントをしたと感じたり、パワーハラスメントをしたと指摘されたことがある者)あなたご自身や勤務先はあなたの行為をパワーハラスメントと考えていますか。(単数回答)」への質問です。(回答者1.173人)
 「自分ではパワーハラスメントをしたと感じておらず、勤務先はパワーハラスメントかどうかの判断をしなかった (勤務先がその行為を認識していない場合を含む)」 34.9%、「自分ではパワーハラスメントをしたと感じていないし、勤務先もパワーハラスメントと認めなかった」 13.0%、「自分ではパワーハラスメントをしたと感じていないが、勤務先はパワーハラスメントと認めた」 6.1%、「自分ではパワーハラスメントをしたと感じているものの、勤務先はパワーハラスメントかどうかの判断をしなかった (勤務先がその行為を認識していない場合を含む)」 20.5%、「自分ではパワーハラスメントをしたと感じているものの、勤務先はパワーハラスメントと認めなかった」 13.3%、「自分でもパワーハラスメントをしたと感じており、 勤務先もパワーハラスメントと認めた」 7.8%です。
 「自分ではパワーハラスメントをしたと感じていない」 が合わせて54%です。パワハラに関する認識に大きな違いがあります。またお互いの受け止め方は、職場の雰囲気・コミュニケーションによっても違いがあります

「・最近3年間にあなたの直属の上司があなたに対してしたことのあるもの
 ・最近3年間にあなたの直属の上司があなたと同じ職場の人に対してしたことのあるものを全てお教えください。(複数回答可)」 の質問です。
 「自分がされた」 は多い順に、「部下のミスについて 『何をやっている!』 と強い調子で叱責する」 14.8%、「業務の相談をしている時、パソコンに向かったままで視線を合わさない」 6.7%、「仕事を進める上で必要な情報を故意に与えない」 5.6%、「『そんな態度でよく仕事ができるな』 と嫌みを言う」 5.6%です。いずれも前回の調査からは減少しています。
 これらはパワハラというより精神的暴力・人権侵害です。

「パワーハラスメントを受けて、心身にどのような影響がありましたか。当てはまるものをすべてお教えください。(複数回答可)」 の質問です。
 「怒りや不満、不安などを感じた」 75.6%、「仕事に対する意欲が減退した」 68.0%、「職場でのコミュニケーションが減った」 35.0%、「眠れなくなった」 23.3%などです。
 行為類型別に心身に与えた影響をみると、平均との差が高くて大きいのは、「人間関係からの切り離し」 において 「仕事に対する意欲が減退した」 77.1%、「職場でのコミュニケーションが減った」 57.0%、「眠れなくなった」 36.4%、「休むことが増えた」 18.0%、「通院したり服薬をした」 20.8%です。
 パワハラがおよぼす影響は決して小さくありません。

「パワーハラスメントを受けてどのような行動をしましたか。(複数回答可)」 の質問です。
 「何もしなかった」 40.9%、「家族や社外の友人に相談した」 20.3%、「社内の同僚に相談した」 16.0%、「会社を退職した」 12.9%、「社内の上司に相談した」 12.7%、「労働組合に相談した」 2.3%などです。
 「何もしなかった」 は前回より5.8%減っています。特徴的には年齢があがるほど高くなります。また 「管理職」 58.2%、「男子正社員」 48.4%です。「会社とは関係のないところに相談した」 は 「女性正社員」 35.7%、「女性正社員以外」 34.2%、「会社を休んだり退職した」 は 「女性正社員以外」 26.6%、「男性正社員以外」 23.7%と高くなっています。「社内の同僚に相談した」 は、女性が男性の2倍近くに、「家族や社外の友人に相談した」 は2倍以上になっています。女性は男性より積極的行動をとっています。「社外の者に相談した」 が 「社内の者に相談した」 よりも高くなっています。


 職場のパワハラ防止に取り組んでいる企業とそうでない企業には大きな 「格差」 が生まれています。取り組んだ効果も職場全体で共有されています。従業員調査においても同じです。
 その一方、企業と従業員の意識・認識には大きな違いがあります。
 「パワハラを受けた」 「パワハラではない」 と争うことがよくありますが、パワハラのとらえ方が違っています。
 トラブルは、初期に取り組むと解決も早くなります。パワハラをなくすことは難しいですが、会社全体での 「再発防止取り組み」 が予防・防止に繋がります。

  「職場のパワーハラスメントに関する実態調査」 報告書
  「活動報告」 2012.12.21
  当センター「いじめメンタルヘルス労働者支援センター」ホームページ・ご相談はこちらから
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