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安倍政権の働きかた改革は、戦中の産報の手法
2017/05/12(Fri)
 5月12日 (金)

 今年は、日本国憲法が施行され70年を迎えます。5月3日の憲法記念の日は各地でさまざまな集会が開催されました。
 「守り抜こう! 憲法9条 不戦の誓い・・・戦争を許さない! みんなの声と力をあつめて」 集会に参加して毎日新聞特別編集委員の岸井成格さんの講演を聞きました。
 岸井さんは、メディアにたずさわる者として、そして戦中生まれの肌感覚で現在の安倍政権について大きな危機感をおぼえると具体例をあげながら訴えました。
 
 集団的自衛権は事実上の改憲ですが手続きが閣議決定だけでおこなわれました。歴代内閣ができなかったことです。憲法が 「壊憲」 されています。機密保護法は説明が秘密です。
 メディアが安保法制のなかで記事のなかで 「武器」 という言葉を使用しなくなっています。代わって 「防衛装備」 です。
 日本の基本路線は、憲法ではなく日米同盟です。抑止力の強化と説明しますが、不遜の事態はそこから出てきたのが歴史です。全体から見えてくるのは戦時体制です。

 安倍政権は4つの政策を転換しようとしています。
 1つは憲法です。
 2つ目は日教組対策です。
 3つ目は労働組合対策です。
 4つ目はメディア対策です。

 今、日本のメディアはバラバラです。権力を監視していません。外国人特派員は日本のメディアの姿勢に驚いています。ワシントンポストの社説は 「安倍政権にひれ伏すメディア」 と書きました。「忖度」 は自粛しているということです。
 揺さぶられて分断させられています。それは野党の分断、世論の分断にもおよんでいます。ある新聞社は両論併記の気づかいをしています。株主は株主総会でスポンサーになっていることを攻撃します。
 各社が足並みをそろえて圧力を阻止するために動かないとだめです。

 政権とメディアが癒着しています。
 岸井さんは若いころ先輩から 「弱みをもってはいかん。借りをつくってはいかん。その代わり貸しはつくれ」 と教えられたといいます。権力側が記者を取り込むための手法は、カネ、異性関係、不正など記者の弱みを握ることです。
 毎日新聞は、71年の沖縄返還協定の核疑惑をスクープしますが、情報をえた手法だけがスキャンダルだけが話題になりました。
 貸しをつくれというのは、知識です。政治家から聞かれた時に教えてあげることです。
 多くの報道関係社の社長が首相と食事をしていますが、TBSの社長はしていません。
 岸井さんに何らかの圧力があったということはないといいます。あったら番組で暴露されるのでできません。

 今の内閣は600人の官僚の人事権を握っています。官僚は上しか見ない 「ひらめ」 になっています。国会議員についてもスキャンダルを探して握られています。


 岸井さんから、全体から見えてくる戦時体制への政策転換のなかに労働組合対策という指摘がありました。安倍政権がすすめる 「働きかた改革」 は、「政」 ・ 「労」 ・ 「使」 の政からの一方的改革です。
 「改革」 はあまりにも労がだらしがないということがありますが、使に対する統制もあります。そうすると労働者にとっては政がありがたく見え取り込まれていきます。ますます労働組合離れは進みます。
 しかし、政は改革を労働者のことを考えて行っているのではなく、労働組合のさらなる弱体化攻撃であることもきちんとおさえておくことが必要です。


 戦前の戦時体制への流れを、アンドルー・ゴートン著 『日本の200年 徳川時代から現代まで』 (みすず書房) からみてみます。

 日本は満州事変をへて、15年戦争に突入していきます。侵略を推し進めて植民地を拡大し、支配を強化するためには国内外において新しい体制・秩序が必要という意見が官僚、軍人、政治活動家、知識人たちから登場します。「八紘一宇」 などのスローガンが登場します。産業においても統制が必要と主張します。
 新体制建設のスローガンは、第一次近衛内閣時代の1938年には広く流布するようになります。そして軍の主導に移っていきます。

「新経済体制は、商工省と企画院を中心とする『経済官僚』および軍人たちのアイデアがもとになってつくられた。……指導的な役割を担った官僚の1人は、当時は商工省の官僚で、戦時中は東条内閣の商工相をつとめた (そして商工省が軍需省に改組されてからは軍需次官をつとめ、戦後の1950年代後半には首相をつとめることになる) 岸信介だった。
 経済体制を構想した者たちは、乱雑な競争や利潤追求の代わりに、『合理的な』 産業統制を実施すべきだと考えた。産業は資本の私的な目標に仕えるのではなく、国家の 『公の』 目標に仕えるべきだ、というのがその理由だ。かれらは、自由市場経済では恐怖や社会紛争が起こり、国力の低下を招くのは避けられないのにたいし、国家統制型の資本主義においてのみ、慢性的な紛争や危機は解決可能だと主張した。」
 岸信介はいわずもがな安倍晋三の祖父です。
 ドイツ、イタリアがとった手法とにています。

 日本軍は中国大陸でのはげしい抵抗にあい、予定していた資源を獲得できなくなります。さらに多くの兵士にも多くの犠牲が出ました。
「近衛内閣は1941年に国家総動員法をもちいて、経済体制の総仕上げをおこなった。すなわち、重要産業団体令を公布することによって、統制会というシステムを導入した。重要産業団体令は、各産業ごとに 『統制会』 と呼ばれる巨大カルテルをつくる権限を商工省に付与するものだった。
 統制会は、それぞれの産業内で、原料と資本の分配を決定し、価格を設定し、各企業に生産シェアと市場シェアを割り当てる権限をもった。実際には、各統制会の理事に名を連ねたのは、財閥系企業の社長たちと官僚たちだった。国家と協力することによって大企業は、これらのカルテルと統制会の運営について大きな影響力をもちゃっかりと保持した。」

 政府は戦争に反対する潮流、とりわけ労働組合の抵抗をおそれました。そのためにさまざまな懐柔をすすめながら一方で徹底した弾圧を行ないます。
「経済効率を高めて社会秩序を確立するにはトップダウンの動員にかぎる、と主張する者たちは、こうした経済面の改革と平行して労働新体制の整備も推進した。1930年代のなかば以降、内務官僚と警察官僚たちは、労働者側と経営者側の代表で構成する懇談会の設置を工場ごとに義務づけ、個々の懇談会を地域連合、さらに全国連合へとピラミッド方式で組み入れる、という構想を練っていた。
 1938年7月、内務省と厚生省は、産業報国連盟 (略称産報) という表向きは独立した自主的な労働組織だが、実態としては官製の労働組織を発足させた。残っていたごく少数の労働組合の大半は、すでに戦争を支持し、経営者に協力的な態度をとっていたが、これらの組合は産報とひっそりと共存した。多くの大企業は、1920年代に組合に代わるものとして発足させていた既存の職場懇談会の名称を変更して、単位産報組織へと再編した。……
 1940年、第二次近衛内閣は産報を再編し、政府直轄の大日本産業報国会を創設した。政府は、まだ存続していた500の組合 (組合員36万人) を解散させ、新たな産業組織に参加させたほか、全国のすべての向上に産報懇談会の設置を義務づけた。1942年には、工場レベルの産報組織は約8万7000人を数え、合計約600万人の労働者を擁するまでになった。
 産報運動の推進者たちは、産報の末端組織として工場ごとの懇談会が経営者と従業員の士気を高め、双方の連帯感を育むと同時に、アジアにおける『聖戦』のための生産拡大に寄与するものと期待していた。……
 しかしながら、産報が、ホワイトカラーとブルーカラーの従業員がともに加入する職場組織の先例を打ち立てた、ということは少なからぬ意味をもった。産報は、あらゆる従業員が国にとっても、企業にとっても重要なメンバーだとする見方に、公式に、しかも明確なかたちでお墨つきをあたえたのである。やがて戦後の労働組合運動は、この戦時中の先例を基礎として出発し、先例を転換しながら展開していくことになる。」

 産報は、労働者にとっては自分らも参加している組織です。そこでの処遇は、ホワイトカラーとブルーカラーは同じです。そして聖戦の勝利を訴えて我慢を強い、不満を 「貧しさの平等」 で解消していきます。

 実際の体制はどうだったでしょうか。
「全体としてみれば、国家の動員計画は、計画が掲げていた国家の 『改造』 というもっと野心的で、全体主義的とさえいえる目標には到達しなかった。限定されていたとはいえ、かなりの多元主義が存続しつづけた。経済体制も、産業報国連盟も、大政翼賛会も、日本の臣民を国家の全面的な支配下に置いたわけではなかった。しかし、社会を戦争に向けて動員し、その過程で社会を変革する、というこの運動が、国家と、社会と、個人のあいだの関係を変えたことは確かである。国会は周縁的な機関に成り下がった。」
 多くの人びとに犠牲を強いながら財閥の資本家はさらに大きな富を築いていました。


 安倍政権は戦時体制に向けて、憲法改正と同時に国家機密法と攻撃をかけてきています。今国会で争点になっている共謀罪は、監視社会を強め、まさしく 「国家と、社会と、個人のあいだの関係を変える」 ことを狙っています。
 官製春闘がいわれても労働組合団体ははずかしいという意識も失っています。つづけて政府は 「同一労働・同一賃金」 を登場させました。
 労働組合団体のだらしなさは、非正規労働者の不満を政府や社会からそらして、会社と労働組合に向かわせ、正規労働者と対峙させます。

 政府の掲げる 「働きかた改革」 は政府の統制による 「働かせかた改革」 です。
 労働者と労働組合は目先のことだけでなく、「生きかた改革」 の視野から自分たちの 「働きかた改革」 を主張し、監視しながら進めていくことが必要です。

   「活動報告」 2017.4.11
  当センター「いじめメンタルヘルス労働者支援センター」ホームページ・ご相談はこちらから
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