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教師は孤立して長時間労働に耐えている
2017/05/09(Tue)
 5月9日 (火)

 4月28日、文部科学省は2016年度の 「公立小中学校教員の勤務実態調査」 の集計速報値を公表しました。
 調査は、昨年10月と11月に分けて、全国の小学校400校、中学校400校を確率比例抽出により抽出し、そこに勤務するフルタイム勤務職員全員 (校長、副校長、教頭、主幹教諭、指導教 諭、教諭、講師、養護教諭、栄養教諭) を対象に実施しました。
 回収率は、小学校397校8.951人、中学校399校10.687人と100%にちかいです。おそらく学校ごとの回収だったと思われますが、そうすると回答者が記載内容に何らかの “判断” を利かせたということもありえます。
 学校調査票は学校に1票、教員調査票は大きく個人調査と教員ストレスチェック調査に分かれていて教員1人に1票配布されます。ストレスチェック調査結果については後日に発表されます。さらに教員業務記録を記載する票が教員1人に1日につき1票、1週間分として7票が配布されました。
 同じような調査は、16年にもおこなわれていて、その比較もおこなわれています。

 平日の1日あたりの職種別平均勤務時間です。(持ち帰り残業時間は含みません)
 小学校は、校長10.37時間 (16年は10.11時間)、副校長・教頭12.12時間 (11.23時間)、教諭11.15時間 (10.32時間)、講師10.54時間 (10.29時間)、養護教諭10.07時間 (9.38時間)です。10年前も長時間労働でしたが、副校長・教頭、教諭は16年と比べると40分以上長くなっています。
 中学校は、校長10.37時間 (10.19時間)、副校長・教頭12.06時間 (11.45時間)、教諭11.32時間 (11.00時間)、講師11.17時間 (10.04時間)、養護教諭10.18時間 (10.01時間)です。教諭は16年と比べると30分以上長くなっています。
 小学校、中学校とも副校長の勤務時間が最も長くなっています。
 土・日については、かつては土曜日が勤務日でなかったり、すべての学校が出勤日とはなっていませんので比較できません。

 1週間当たりの平均勤務時間です。
 小学校は、校長54.59時間 (16年は52.19時間)、副校長・教頭63.34時間 (59.05時間)、教諭57.25時間 (53.16時間)、講師55.18時間 (52.59時間)、養護教諭51.03時間 (48.24時間)です。教諭は16年と比べると4時間以上長くなっています。
 中学校は、校長55.57時間 (53.23時間)、副校長・教頭63.36時間 (61.09時間)、教諭63.18時間 (58.06時間)、講師61.43時間 (58.10時間)、養護教諭52.42時間 (50.43時間)です。教諭は16年と比べると5時間以上長くなっています。
 どちらも副校長・教頭が最も長くなっています。


 1週間の総勤務時間の小学校教諭 (主幹教諭・指導教諭を含む) の分布です。
 55時間~60時間未満24.3%、50時間~55時間未満24.1%、60時間~65時間未満16.4%、45時間~50時間未満13.4%です。80時間~85時間未満0.7%、85時間~90時間未満0.2%、90時間~95時間未満0.1%が存在しました。
 中学校です。60時間~65時間未満17.0%、55時間~60時間未満16.5%、50時間~55時間未満14.8%、65時間~70時間未満14.0%、70時間~75時間未満10.8%です。80時間~85時間未満4.6%、85時間~90時間未満2.2%、90時間~95時間未満1.1%、100時間以上0.2%存在しました。
 小学校と比べると分布の山は長時間のほうに向かっていっています。

 持ち帰り勤務です。
 小学校は、平日平均0.29時間 (16年0.38時間)、土日1.08時間 (1.07時間)です。
 中学校は平日0.20時間 (0.22時間)、土日1.10時間 (1.39時間)です。

 業務内容別の勤務時間です。
 平日の小学校は、授業、授業準備のほかには、生徒指導 (集団) 1.00時間、朝の業務0.33時間、成績処理0.33時間、学校行事0.26時間、学年・学級経営0.24時間、学校経営0.22時間、職員会議などの会議0.22時間などの順です。
 中学校は、授業、授業準備のほかには、生徒指導 (集団) 1.02時間、部活動・クラブ活動0.41時間、成績処理0.38時間、学年・学級経営0.38時間、朝の業務0.37時間、学校行事0.27時間、学校経営0.21時間、職員会議などの会議0.19時間などの順です。
 小中とも、学校行事、学年・学級経営、学校経営、職員会議などの会議に1時間半以上が当てられています。
 土日については、中学校で部活動・クラブ活動が2.10時間です。

 部活について詳しくみると、部活動の活動日数が多いほど、学内勤務時間全体が長くなっています。また、土日の部活動については、部 活動の種類により差が見られます。運動部や吹奏楽部などです。


 基礎調査です。
 「1週間に何コマの授業を担当していますか」 の質問に、中学校では、21コマ~25コマ49.9%、26コマ以上が20.8%、です。70%以上の教師が1日4コマ以上を担当しています。
 「昨年にあなたが取得した有給休暇は何日程度でしたか」 の質問です。
 小学校は6~10日30.2%、11~15日22.7%、16~20日15.6%、無回答15.2%です。
 中学校は、6~10日33.4%、3~5日20.8%、11~15日13.6、%、16~20日7.5%、無回答13.6%です。
 中学校の方が有給休暇を取りにくくなっています。


 いつも送られてくるミニコミ誌の最新号は 「教育の 『貧困』 を考える」 の特集です。そこへの教師の投稿です。
  「多忙という労働強化は学びの機会を奪う」
 「先生方は忙しいのよね」 とお母さん同士の会話。先生も 「学校って1年中忙しいのよ」 と言う。先生の忙しさはもう世間の常識になっています。まず、ある女性教師 (小学校) の1日を紹介します。
  教師の学校での1日
 勤務開始は午前8時15分ですが、学校には7時頃にきています。もう何人かきています。出勤簿に押印し、1日の予定を確認し教室に行きます。早朝練習が始まります。練習終了、職員の 「朝の打ち合わせ」 で職員室にいきます。子どもたちは教室で 「朝自習」 です。打ち合わせが終わり教室へ、ここから子どもたちとの1日が始まります。
 「朝の会」 では子どもたちの健康状態を観察し、今日の予定や注意事項を伝えます。そして 「授業」 開始です。授業は1時間目から5時間目まで切れ目なく続きます。間に 「5分休み」 と 「ロング休み20分」 と 「昼休み」 が入ります。担任は次の準備をしたり、子どもの相談を聞いたりして休み時間にはなりません。「給食指導」 や 「清掃指導」 もあります。「帰りの会」 では、1日の反省と明日の連絡、そして連絡帳の確認です。
 ここまでは昔も今も変わりません。変わったのはこれ以外です。
  増えた授業以外の活動
 放課後には職員会議や研究会議、学年会議等が次々に入ってきます。子ども同士のトラブルがあった場合には臨時の生徒指導部会も開かれます。学校対抗の 「サッカー」 「ミニバスケット」 「水泳」 「陸上競技」 等の大会、「合唱」 や 「吹奏楽」 の発表会の練習もあります。放課後の練習は午後4時半から5時位まで続きます。クラスの子どもたちのことに取りかかれるのはそれからです。出張して1日研修会に参加した場合は 「研修報告書」 の提出が必要となります。文書作成は時間がかかるものです。
 以上のような事を次々とこなしたとしても、仕事量が多すぎて退勤が午後9時や10時になってしまうのです。
  学びの機会が奪われる
 先生方が一番欲しているのは 「明日の授業の準備をする時間」 です。授業は料理と同じです。手をかけないと美味しい料理は出せません。子どもたちが食いついてくれる授業をするには準備が不可欠です。「教材研究」 といいますが、この教材研究の時間が 「多忙」 という労働強化で奪われてしまっています。自分で調べたり、先輩の先生方に聞いたりして学んでいくことによって先生として成長していきます。また子どもたちに関わることによって気づかされ、親が子育てをしていくのと同じです。
 多忙という労働強化は 「自分で考え、判断する」 という主体性を弱体化させてしまっています。自分で教材研究する時間がないので、出来合いの 「指導書」 に頼って授業をしてしまいます。指導書は文部省の検定を合格した教科書の内容を教えるために作られたものです。これを使えば一応授業は出来ます。料理ではなくインスタント食品を食べさせているような授業になります。これでは学びがないから先生は成長しません。子どもたちも成長出来ません。多忙化は、子どもの現実に近づく機械も奪ってしまいます。多忙化解消のためには、保護者の声が必要です。子どものために先生とのつながりを深めていきましょう。


 以前と比べて授業以外の活動、特に報告書作成業務が増えたということをよく聞きます。いわれるところの管理教育、文部省―教育委員会―校長―教師の管理支配体制と評価に繋がっています。その結果、時間的ゆとりもありませんので横の繋がりもなかなか生まれません。

   孤独には慣れているが
    人は孤立には耐えられないと知る 職員室
        (3月20日 「朝日歌壇」)

 全国で学校のいじめが社会問題となっています。
 13年9月から施行されたいじめ防止対策推進法は、いじめの防止や早期発見、対処の理念などを定め、重大事態の発生時は調査組織による事実関係解明と被害者側への適切な情報提供を求めています。重大事態とは 「いじめにより当該学校に在籍する児童等の生命、心身又は財産に重大な被害が生じた……児童等が相当の期間学校を欠席することを余儀なくされている疑いがあると認めるとき」 と定義されています。
 しかし推進法どおりに進めたら対応や調査に時間がかかり過ぎ、さらに業務過重になるという不満が起きています。そのためその場しのぎの対処になり、それぞれの立場で 「いじめはなかった」 への期待となって処理されたり、責任転嫁が進みます。重大事態の認定には学校あげて隠ぺい思考に向かいます。
 児童・生徒の生命に影響しかねない問題は何にもまして優先して対処されなければならないのは当然のことですが、“見過ごし” “放置” の批判と一緒に教師の労働環境も検討される必要があります。

 今、政府は自殺総合対策大綱の見直しを進めていますが、その中の若者対策には、教師による自殺しそうな場所や駅のホームなどでの監視も盛り込まれようとしています。さらなる過重労働がおこなわれようとしています。

 日本では子どもの教育だけでなく生活指導まで学校の責任になります。そのため日常的問題も含めてさまざまな問題が学校には寄せられオールマイティーが要求され、教師の資質が問われます。まさしく 「聖職」 です。その一方で保護者には “お任せ教育” と学校の私物化・「モンスターペアレント」 が同居しています。学校はその防御としてますます孤立と同時に排除を進めます。その結果、外部から教師の労働環境には意識が向きません。
 海外では子どもは市民として存在し、学校は社会のなかで共存しています。学校で起きた問題は社会で起きたことととらえ、教師と保護者、市民は共同で対応します。
 日本の教師は、世界の中で孤立しています。深刻な職場環境の犠牲者は子どもたちです。教師はもっと声をあげ、無理なことについてははっきりと 「できません」 と主張することが解決に向かわせます。保護者と市民はもっと学校と教師が抱えている問題に、国とは違う方向から監視・干渉をして協同していく必要があります。

   「公立小中学校教員の勤務実態調査」
   「活動報告」 2017.2.3
   「活動報告」 2016.12.13
  当センター「いじめメンタルヘルス労働者支援センター」ホームページ・ご相談はこちらから
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