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福島・自治体職員 16年度9人自殺
2017/03/10(Fri)
 3月10日 (金)

 3月8日の各新聞は、福島県の市町村で職員の自殺が相次いでいるという記事を載せました。自治労福島県本部が発表したものです。
 そのなかの福島民友新聞の 「福島県と市町村職員、自殺相次ぐ 自治労まとめ、長時間労働要因か」 の見出し記事です。
     
 自治労福島県本部は7日、福島市で会見を開き、県と市町村職員の本年度の自殺者数が2月末現在、9人となったと発表した。
 今野泰中央執行委員長は、自殺の要因の一つに長時間労働があると推測し、「地方公務員のおかれている過酷な状況は変わっていない」 として対策を強化する考えを示した。
 同県本部による自殺者数の公表は初めて。9人の内訳は市町村職員が7人、県職員が2人で、自殺した職員が所属していた自治体の方部に偏りはないという。
 このうち県職員を含む5人が1、2の両月に相次いで自殺した。年齢は18~34歳が4人、35~49歳が2人、50歳以上が3人。これまでは50代の職員の自殺が目立ったが、本年度は若手の自殺が多いとしている。
 同県本部によると、市町村職員の自殺者数は、県内85組合 (組合員数約2万1千人) が加盟する県市町村職員共済組合の集計で判明した。市町村職員の自殺者数が7人となったのは2004 (平成16) 年度以来。県職員の自殺者数は県の報告を基にした。
 同県本部は医療機関などと連携した心の健康のサポート事業などを展開する計画。自治体職員の悩みを受け付ける電話相談 「自治労ほっとダイヤル」 (フリーダイヤル0120・556・283) の活用も呼び掛けている。

 他の新聞から補足すると、長時間労働は、東日本大震災と東京電力福島第1原発の複合災害への対応に伴う自治体の業務量の増加が要因の一つになっていることなどが背景にあるとみています。
 震災後、自治体職員の自殺は、市町村職員では13年度の5人が最多でしたが、ここ10年間でも高水準なので危機感を持ち初めて発表したといいます。自殺者が出た市町村名は、公表していません。

 これまでも自治労県本部は長時間労働の問題、ストレス症状、休職者数増などの問題について発表しています。


 14年7月27日の 『毎日新聞』 朝刊一面に 「被災42市町村 震災理由に106人退職」 の見出し記事が載りました。
 毎日新聞は14年5月から7月にかけて、東日本大震災で被災した42市町村 (岩手12、宮城15、福島15) にアンケート調査をおこないました。その結果、11年3月11日から14年3月までの早期退職者が1.843人いました。
 退職理由を複数選択で尋ねたら、3県で 「震災・原発事故による移住」 35人、「業務増による過労」 19人、「被災した住民の対応の疲れ」 9人、「心の病気」 8人でした。その他は 「被災した自宅の整理」 「家族などの避難」 「業務対応の変化」 などです。
 震災や原発事故が理由とみられるのは12市町村で106人に上りました (理由を明らかにしていない自治体もあります)。福島県は91人で、自治体別では、双葉町21人、大熊町17人、いわき市15人、浪江町14人、広野町10人、富岡町7人の順です。
 早期退職者は震災直後の11年度が最も多く、13年度でも岩手64人 (09年度は44人)、宮城254人 (同191人)、福島186人 (同176人) です。年代別では50代が多いといいます。11年度に福島県においては公立病院の閉鎖による退職もありました。それでも多すぎます。
 
 職員自身が移住を迫られたり、家族が別々の生活を余儀なくされたりしています。復興予算が膨大になって業務量が増大するに伴い、これまで経験したことのない業務をこなさなければなりません。住民の不満や不安が職員に向けられることもあります。福島においては健康不安や恐怖と隣り合わせです。家族と離れて生活する職員もたくさんいます。「職員が良い未来を想像できず、無気力や自信喪失につながると何とかしなければいけない、だが、業務に忙殺され自分のカラーを出せる状況になく、やる気があるがゆえにがっくりきている若手がいる」 という自治体もありました。


 16年3月3日の共同通信は、2月の最新値で東日本大震災と東京電力福島第1原発事故で被災した岩手、宮城、福島3県の39市町村で、うつ病などの精神疾患を理由に休職した職員は15年度に147人と、震災が起きた10年度の1・6倍に増加したことが各自治体への取材でわかったと報道しました。39市町村とは、津波被害に遭って10年度の資料を流失した岩手県大槌町と宮城県女川町、南三陸町の3町は集計から外れています。
 39市町村の15年度の休職者数は216人で、うち147人が精神疾患でした。10年度は171人中88人です。精神疾患による休職者数は震災直後の11年度に112人に増え、12~14年度は120人台で推移していました。
 市町村別に見ると、宮城県山元町など21市町村で増加しています。精神疾患の原因を把握していない自治体も多いが、原発事故や震災からの避難や負担増を直接の理由に挙げた自治体もありました。本格化する復興事業の負担増や原発事故対応のストレスがあるとみられ、慢性的な人手不足も追い打ちをかけました。
 自治労が14年に公表した調査では、被災3県の沿岸に住む組合員のうち、強い絶望感に襲われるなど重度のストレス症状を示す割合は13%でした。福島県は15%と他の2県より高い結果でした。
 14年に、福島県立医科大などが実施した調査では全職員のうち21%がうつ病とみられる自治体もあったといいます。


 県本部は16年7月20日、原発事故で避難区域となった県内10市町村の職員に対する意識調査結果を発表しました。調査は3月から5月、双葉郡8町村と南相馬市、飯舘村の組合員1,461人を対象に実施し、752人から回答を得ました。
 時間外勤務が月平均31時間以上と答えたのは38.0%、200時間以上も2人いました。「時間外勤務なし」 は震災前の31.2%から8.0%に減っています。
 健康状態は、震災前の健康診断で異常がなかった職員の46.7%が新たに 「要注意・要精密検査」 と判定されました。糖尿病などの生活習慣病、不眠症を含む精神障害などが多く、56.1%が通院や薬の服用を行っています。
 今後の居住先は 「家族と震災前の場所」 「自分のみ震災前の場所」 が50.1%、「家族と他の自治体」 「自分のみ他自治体」 は24.3%で、「判断不可」 は25.7%でした。
 
 1年前で、かなりの自治体職員自身が今後の居住地について決めかねています。また家族単位での生活が壊されています。福島県の被災者がおかれている状況は原発事故直後からあまり変わっていません。放射能への不安は1人ひとり違います。基準が違います。「戻りたいけど、戻れない事情があります」
 しかし県はこの3月末で、自主避難者への住宅の無償支援は打ち切ることを決定します。14年に避難指示が解除された田村市や川内村の避難者で未帰還の人も同様です。この3月末で4町村約3.2万人が解除になります。戻らなくても固定資産税は徴収されます。その後に解除された町でもそうなっていきます。
 このような問題に対して各自治体で自治体職員は住民から不満、不安が寄せられ、怒りがぶつけられる状況に遭遇していることが想定できます。これらは被災者である自治体職員のものであったりもしますが、立場から共感する思いを抑えて自治体の決定を伝え、説得しなければなりません。自分が納得していないことを他者に説得する行為は “乖離” を引き起こす要因になり、自己を維持するのが困難になり体調を崩します。
 自治体職員の責任感はそこからは逃げられません。このような業務のなかで、長時間労働、ストレス、体調不良、先が見えない状況が悪循環になっていたと思われます。


 ではどのような対策が必要なのでしょうか。
 放射能に対する不安や恐怖の感覚は個人で違います。行政が示すような数値で表わせるものではありません。さらに福島原発事故はまだまだ安定したといいきれません。事故の恐怖の体験者は忘れることがでません。
 行政は避難指示を解除しても、不安を感じる被災者に対しては帰還以外の選択肢も補償すべきです。選択は被災者である自治体労働者に対しても同様です。

 東日本大震災による被災地方公共団体への全国の自治体から派遣された職員数は16年10月1日時点での2,047人 (15年度2,202人) です。この間は熊本、鳥取でも地震が発生し、そこにも各自治体は職員を派遣していています。行政改革が推し進められて恒常的にゆとりがないなかで無理をしています。
 派遣を受けた自治体ごとの人数は、岩手県内613人 (655人)、宮城県内1,062人 (1,145人)、福島県内372人 (398人)などです。それでも各自治体は不足しています。
 阪神大震災を経験した兵庫県は東日本大震災の被災地に毎年100人規模の職員を派遣してきました。しかし17年1月に仙台市を訪れた副知事は 「他に頼り切りでは被災地が自らの足で立てなくなる。おんぶに抱っこから、自分たちの手による再建へとソフトランディングする時期ではないか」 と指摘し、縮小を提案しました。
 人員不足の問題は深刻でまだまだ続きます。全国にはいまだ8万人の避難者が日常性を取り戻せていません。総務省と復興相は派遣に頼るのではなく、被災地自治体の職員定数を増やし、長期に備えた採用を支援する必要があります。地元採用としても期限付きの不安定なものからの切り替えが必要です。

 政府は口先だけで復興を叫び、急かせます。しかし嵩上げした更地面積や防潮堤の長さの進捗度が復興のバロメーターではありません。実際に復興事業に従事している側からしたら金も人も資材も不足しています。それらを奪っているのは東京オリンピック事業です。そのしわ寄せや負担が自治体職員にのしかかっています。
 その一方で政府や行政は復興を吹聴し、被災者がおかれている実態から目を背けさせ、震災からの関心を奪い、風化をすすめようとしています。もはや原発事故も過去のことに追いやられようとしています。被災者は棄民です。

 本当の復興とは何でしょうか。被災者1人ひとりが安心して生活できる住居の確保とコミニティーの復活です。
 そのためには被災者に寄り添った自治体職員が不可欠です。自治体職員は政府や自治体に “寄り添う” のではなく本当の復興業務である被災者に寄りそうことが必要です。そうすると自治体職員としての役割ややりがいも再確認できます。
 労働組合は独自の要求を被災者と一緒にかかげて自治体や政府に要請・要求をおこなう必要があります。もっと声をあげことが仲間を守ることにもなります。自治体労働者を犠牲にした復興は復興とは呼べません。


 東日本大震災では岩手県で3人の自治体職員が自殺をし、その都度ニュースになりました。熊本地震でも1人自殺をしています。
 しかし福島では以前から自殺者が出ていることが初めて明らかになりました。福島だけでなく職員を派遣している全国の自治体にとっての問題でもあります。自治労と県本部はもっと早くに深刻な事態を公表して警鐘を鳴らして社会問題として提起する必要があったのではないでしょうか。発表が不安を煽るという危惧よりも、それに優先して経験や対策を集めて検討し、取り組みをすすめる必要があったのではないでしょうか。


   「自治体職員の惨事ストレス対策」
   「活動報告」 2016.4.12
   「活動報告」 2016.3.9
   「活動報告」 2014.2.18
  当センター「いじめメンタルヘルス労働者支援センター」ホームページ・ご相談はこちらから
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