2017/01 ≪  2017/02 12345678910111213141516171819202122232425262728  ≫ 2017/03
資生堂労組 「自分も仲間も幸せである」
2017/02/17(Fri)
 2月17日 (金)

 毎日新聞は2月から 「変革」 のシリーズのなかで 「資生堂」 の連載を続けています。まだ途中ですが会社中心の取材で労働組合が登場しません。しかし資生堂の 「変革」 は “資生堂ショック” にしても労働組合抜きには進められませんでした。というよりも労働組合が進めてきました。
 2016年10月28日と7月12日の 「活動報告」 で資生堂労組委員長と中央執行委員の方の講演を紹介しました。そこで紹介しきれなかった部分をあらためて紹介します。


 資生堂労組は本社、研究所、工場の労働者で組織され、販売の先端にいる美容職は排除されていました。販売会社の労働環境はひどいものでした。人件費とは扱われていませんでした。みな就業規則は見たことがなかったといいます。
 1997年当時の委員長は販売会社から本社にきて組合役員になっていった方でした。委員長が執行部に美容職の働く環境を説明し、販売会社に組織拡大をしたいと伝えます。「自分は販売会社から本社にきて組合という組織がいいところだと知った。是非販売会社も組織化して美容職の環境を良くしたい、自分も美容職にお世話になってここまでこれた」
 現委員長は美容職の環境のことを知った時、同じ会社にこういう仲間がいるんだと思いました。多くの執行部も知りませんでした。本・研・工の支部長たちと話をして中央執行委員会で議論を重ねていきます。みんなでやろうという話になりました。
 しかし本・研・工の組合員にしてみたら組合の形が変わってしまい、既得権を手放すことになりますので大反発をうけます。
 現委員長は久喜工場の支部長でした。他の支部は全部同意を取り付けましたが、久喜工場支部はものすごく抵抗します。支部長として支部大会を開いて提案しますが反対意見が切れないから採決に持ち込めません。1日終わると、「今日たくさんの意見をいただきましたので採決を明日にさせてください」 といってまた翌日開きます。7日目に意見が切れました。支部長が集約の話をします。
「わたしを育ててくれた代々の先輩方から7日間活発なご意見をいただきましてありがとうございます。先輩方は私に何といってきましたか。困った人がいたら手を差し伸べるのが組合だといって私を育てたのではないですか。いっている意見はそのことと違う。吹雪の中で仲間が入れてくれとノックをしているのにドアを開けたら吹雪が差し込むから入れるな。そんなことで私を育てたのですか。今日は採決をさせていただきます。でもたとえこの支部が否決でも全体としては可決になります。それでいいのですか。この久喜工場は東京工場の時から組合の本流だと思ってきました。こんな禍根を残していいんですか。私はこの組織拡大が、皆さんにやってよかったといっていただけるまで組合の役員をやり続けます。」
 そして採決です。かろうじてですけども可決されました。それで今に至っています。

 支部長は専従になって10年間、寝袋を持って美容職の中にいって組合に組織化していきます。本社・工場・研究所の3.800人規模の組合でした。それが販売会社をあわせて1万7000人の規模に拡大します。

 美容職は会社にじゃけにされてもお客様に向き合う中で誰よりも喜びを知っています。お客様を美しくしたいという思いで凛としています。厳しいお客様にも資生堂の看板を背負って1人で向き合います。
 現委員長は営業と一緒に地方の得意先をまわった時に歩き方が変な美容職に気づきました。高卒で入社して3か月くらいのトレーニングを受けて働いています。「どうしたの、足痛いの」 と聞いたら足の後ろ側に物差しを入れています。「何で」 「1日中立って仕事をするのは大変です。座りたくなるから座れないように入れてます。先輩に教わりました」。その店は特に厳しくお昼を食べる時間も与えられません。ロッカーの隅で立って弁当を食べます。

 9割を超える社員が資生堂が大好きです。美容職に限ってはもっとです。美容職は会社からも組合からも一番遠いところにいました。得意先の条件で働いていて、休みもろくに取れないし、大変な仕事です。会社も一番じゃけにしています。言葉では宝とかいいますが実態は違います。その人たちが実は資生堂を支えてくれています。

 その一方で営業本部から一方的に商品が届く 「押し込み販売」 が続いていました。店には商品がいっぱいで悲鳴を上げていました。
 1998年の春闘にむけて中央執行委員会で販売の第一線の女性代議員は 「この問題を何とかしてほしい、そのためなら賃上げはなくてもいい」 と発言しました。会場は一変しました。討論を経て労働組合が会社に改善を要求したのが 「ベースアップゼロ」 の2年続けた要求です。そして 「涙の労使交渉」 を経て 「押し込み販売」 問題を解決させていきます。経営改革運動が始まります。(2012年2月3日の 「活動報告」 参照)


 2005年、新たにはえぬきの前田社長が就任します。前田社長は入社して美容担当をしましたができの悪い営業担当で売り上げ数字があげられなくて苦戦したが美容職から支援をもらったという話を日頃からしていました。
 前田社長と執行部は意見交換の場を持ちました。
「前田さん、美容職にどう向き合うつもりですか」。前田社長は自分の営業時代の話をして 「資生堂の宝だ、カウンセリングをしてお客様の支持をいただけるのは美容職のおかげだ」 と答えました。
 「それは美容職には通用しませんよ。歴代の社長が6代にわたって美容職にしてきたことをご存じないですか。時にはカウンセラーだ、時には売り子だ、ひどい時には販促費になっていたんですよ。人件費ではない扱いをやってきたんですよ」 「どうしたらいい」 「過去に経営がやってきたことに対して一度美容職に謝罪してきちんと清算してください。そのうえで自分の美容職に対する思いを伝え、赤ちゃんができても会社を辞めなくて済む環境、子どもを育てながら働き続けられる環境などを達成し、さらに美容職が望んでいることを実現すると約束してください。これを全国の美容職8000人に直接語りかけてください」
 前田社長は直接自分の思いを伝えていくと約束しました。
 全国10数カ所の会場に美容職を集めました。すべての会場に組合役員も出席しました。ある会場では美容職の多くが泣いていました。

 1990年に育児休暇、91年に育児時間制度を導入しましたが当時は育児休暇も取れませんでした。販売会社の美容職は結婚したり、子どもができたら辞めるのが当たり前でした。お腹が大きくなったら店頭に立つなです。だからマタニティーの制服がありません。
 組合はその象徴的マタニティー制服を導入してくれと要求しながら具体的な制度改定、環境づくりを打ち出します。前田社長はわかったといいますが販売責任者の専務は絶対にのみません。

 マタニティーの制服が導入され、育児休職制度、育児時間がとりやすくなります。この時の取り組みを組合は第一ステージと捉えています。2006年10月、育児時間を取れるように “カンガルースタッフ制度” を導入しました。
 しかし “ほころび” が生じるようになりました。組合から人事に、よかれと思ってやったことでモラルが下がってきた現状を伝え、このまま続けると美容職の位置づけがまた下がってしまうと訴えました。これに対する労使の取り組みが 「資生堂ショック」 です。社員も一緒に意識を変えていくことに挑戦しました。第二ステージと捉えています。第三ステージは介護休暇制度になると捉えています。


 現在も問題はまだあります。
 不合理な格差が、特に工場の中に起きています。総合職と特定職といわれる人たちとパートの三層に分かれていて、使う側と使われる側のような誤解が起きてしまっています。正社員が2割です。嫌な仕事を押し付けられる側は処遇が低いです。いい製品を作ろうと思ったらその人たちの協力といい環境なくしてあり得ません。でも人間のエゴ、優位に立った人間がそういうふうにします。制度がそれを支えているところがあります。
 今、3工場で何回も労使協を開催しています。ありたい姿を描いて、そこに向けて会社を変え、入社のいきさつに関係なくだれもが生き生きと働けるようにする、いいものを作るという役割を持ってそこに見合った処遇にするという議論をしています。
 組合も、総合職が既得権化しているがパートが工場長になったっていいじゃないか、特定職の賃金をあげる、みな仲間だといい合えるように組合も作り変えて温かい組合にしていく、全員を組合員化していけるよう働きかけるということにチャレンジしています。そういうふうに今変わってきています。

 組合の合言葉の1つは 「自分も仲間も幸せである」。自分だけということに対して、組合って違うよというのを残したかった思いがあります。2つめは 「会社の発展は社員の幸せとともにある」。これは組合員に向けたものではなくて経営に向かっての監視です。


 職場の差別は正規・非正規だけではありません。正規労働者の中にも差別があり受け入れている構造があります。そうすると非正規への差別は必然になります。 「自分も仲間も幸せである」 ではありません。
 資生堂労組はその構造を変えていく闘いを経営を監視しながら挑戦しています。 

   「活動報告」 2016.10.28
   「活動報告」 2016.7.12
   「活動報告」 2012.2.3
  当センター「いじめメンタルヘルス労働者支援センター」ホームページ・ご相談はこちらから
この記事のURL | 仲間・連帯・団結 | ▲ top
| メイン |