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国鉄分割民営化から30年  国鉄の赤字はどこに隠された?
2017/02/14(Tue)
 2月14日 (火)

 8日の衆院予算委員会で、麻生太郎副総理はJR北海道の経営危機について、「この話は商売のわかっていない 『学校秀才』 が考えるとこういうことになるという典型ですよ。国鉄を7分割 (・民営化) して 『黒字になるのは三つで他のところはならない』 と当時から鉄道関係者は例外なく思っていましたよ。『分割は反対』 と。経営の分かっていない人がやるとこういうことになるんだなと思ったが、僕は当時力がなかった。今だったら止められたかもしれないとつくづく思う。JR北海道をどうするという話は、なかなか根本的なところを触らずしてやるのは無理だろう。」 と答弁したという報道がありました。

 この発言に対して元国労組合員がレーバーネットに投稿しました。
「30数年前、私の所属していた国鉄労働組合は国鉄の分割・民営化に反対し、組織をかけて闘っていました。それに対して、自民党政権と国鉄当局は、法と道理を無視したあらん限りの組織攻撃によって国労を弱体化し、反対運動を解体しながら分割・民営化を強行しました。この過程では7000名を超す労働者が新会社への採用を拒否され、最終的に1047名の労働者が解雇されましたが、そのほとんどは分割・民営化に反対した国労・全動労の組合員でした。そして、不当解雇された1047名とその家族は、その後20年にわたる解雇撤回闘争を闘わねばならなかったのです。
 国鉄の分割・民営化が北海道・四国・九州三島会社の切り捨てにつながるという主張は、国労が分割・民営化に反対した大きな理由の一つでした。麻生副総理の言葉によれば、鉄道関係者は例外なく (少なくとも) 『分割は反対』 だと思っていたにも関わらず、国鉄の分割・民営化は 『商売のわかっていない 「学校秀才」』 たちの手によって強行され、それに反対して闘った国鉄労働者は 『商売のわかっていない 「学校秀才」』 たちの手によって解雇されたわけです。
 麻生氏は、分割・民営化反対闘争の過程で、100名とも200名とも言われる労働者が自殺したことを知っているのでしょうか? たぶん、知らないのでしょう。そうでなければ、副総理としての国会答弁の中で、こんなにも軽々とした言葉を吐くことはできない。麻生氏は、『僕は当時力がなかった』 から責任がない、自分とは関係がないとでも思っているのでしょうか? 政府が法と道理を無視して強行した分割・民営化の責任は、政府がとらねばならない。
 麻生氏はたぶん、もうあの日々のことを、とやかく言う連中などいないと思っているのでしょう。しかし、弱体化したとはいえ、国労はJRの中で闘い続けています。そして何より、分割・民営化の過程で人生を破壊された多くの国労・全動労組合員とその家族、自死を遂げた国労・全動労組合員の家族は今も生きているのです。われわれはいまだ、歴史から抹殺された訳ではない。
 政府自身が国会の場で、国鉄分割・民営化の過ちを認めた今、私は、無謀な国鉄分割・民営化によって人生を破壊された国鉄労働者とその家族に、そして命を奪われた仲間たちに、今こそ自民党政権が謝罪することを要求します。」

 投稿した彼は、15年11月10日の 「活動報告」 で紹介したJRの東京駅で新幹線の乗車券発売や出改札業務、車いす補助、在来線改札などの業務を担っているJR東日本の協力会社・株式会社JR東日本ステーションサービス (JESS) 東京駅営業所における従業員代表者選挙の闘いを中心で担った方です。分割民営化後も国労の旗を守って頑張り抜きました。


 麻生の発言は本当に軽すぎます。では分割民営化から派生して現在起きている問題は誰がどう責任を取らなければならないというのでしょうか。今北海道で起きていることは自民党政治の連続性の中での結果であり、今の政府に突き付けられている問題です。
 そして投稿にあるように1047人の闘争団は最後まで闘いましたが実際は7000人の労働者を路頭に迷わせました。解雇前には人材活用センターという “リストラ部屋” に収容され、人格、人権が蹂躙されました。その屈辱は死ぬまで忘れられません。そして200人の労働者が自殺に追い込まれましたが、多くがJRが発足する少しまえで、職場で発見されました。国鉄に愛着があった労働者たちでした。麻生はこのようなことにはまったく関心がありません。


 ある研究会で、国鉄労働組合の書記長から 「JR発足30年 『国鉄分割・民営化』 は何をもたらしたか」 のテーマで、北海道の状況を中心にお話をうかがいました。

 国鉄分割民営化が登場したのは赤字解消ということでした。分割民営化された1987年当時は累積37兆円の赤字で財政的に危機に陥っていました。赤字を作った原因は新幹線建設です。商売のわかっていないどころか、商売を知っている者たちが国に赤字を背負わせて自分たちが潤ってきていたのです。そして98年、国鉄清算事業団が解散すると、資産売却などで一部は返済できたがそれでも残った24兆円は国が継承し、一般会計に組み込まれて60年間かけての返済することになります。つまり商売がわかった人たちが作った負債を今も税金で支払いつづけているのです。
 分割民営化の議論がすすめられている最中においても北海道や四国、九州は赤字経営になることははっきりしていました。そのため経営安定基金が与えられました。その運用益で営業損失を補てんするということでした。しかしバブル崩壊で低金利になると基金は減り続けました。基金は 「手切れ金」 と揶揄されていました。底をついたら自助努力です。
 そこでは海外への工場移転などによる地方の切り捨ての判断がすでにおこなわれていました。
 一方、黒字の3社、IR東日本、東海、西日本の株の3割を海外投資家が占めています。儲かるからです。公共交通が投資先になっています。

 今、北海道や、四国、九州では線路の廃止、駅の無人化・自販機、賃金抑制が進んでいます。
 線路別収支で赤字となる路線を除外していくと、2030年には北海道の東側から線路が消えます。東北や中国地方の日本海側からも消えます。九州の東側も消えます。四国では局部的にしか残りません。
 北海道はすでのその状況になろうといています。
 九州が何とか黒字なのは不動産事業によるものです。

 本当にこれでいいのでしょうか。東日本大震災の時、コンビナート火災なども発生し、被災地では石油が不足しました。各地の線路はずたずたになっていました。その時、JR貨物は、横浜・根岸駅から都心・高崎線を経由して日本海側に、そこから会津若松を通って福島・宮城へ、山形・秋田を通って青森から岩手へと線路をつなぎいで無事届けました。鉄道が繋がっていたからこそできました。(14年8月22日の 「活動報告」 参照)
 しかし東日本大震災で被害にあったことを契機に廃止された線もあります。今後災害などが発生した時、被災者は非常時にも自己責任を強いられることになります。これがこの国の政府の姿勢です。

 かつては国鉄の駅を中心に街が作られました。そこからバスが発着していました。駅が消えたら街が消えます。だからこそ鉄道インフラは公的、政策的支援が必要で政治・政府の責任が大きいのです。社会的有用性があるからこそ世界のほとんどの鉄道は赤字です。黒字でなければならないという発想は日本だけです。分割しなかったら赤字にはなりません。


 北海道では、2011年頃から事故が連続しています。労働者に責任が転化されていますが違います。新しい車輌、線路への切り替えは行われていなくて劣化が進んで事故が発生するのはいわば“必然”になっています。安全対策費用が膨大に必要ですがありません。技術力の継承が出来ていません。外注化が進んで現場では判断できないことも増えていて意思の伝達が難しくなっています。しかし列車を止めることは厳しい状況におかれています。このような中で安全文化が崩れています。

 今、北海道では「全道路線を維持すれば5年で破たん」 「単独維持困難路線1237Kの路線廃止・上下分離」 が発表されています。上下分離とは、列車の運行者 (上) とレールなどの鉄道施設の所有者 (下) を分ける事業形態です。不採算路線を残すためには自治体が施設を保有して責任を持ってくれということです。地方を潰していながらその一方での地方自治体の共同責任論は矛盾しています。自治体はすでに疲弊しきっています。


 国鉄分割民営化から30年が経ちますが、現在改めて問い直される政治的課題です。

   「活動報告」 2015.11.10

   「活動報告」 2014.8.22
   「活動報告」 2013.10.4
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