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客室乗務員の感情労働  いわれたこと、いわれ方で傷つけられる  
2017/02/07(Tue)
 2月7日 (火)

 第17回 ワンコイン講座は 「お客様は神様ではない!」 のテーマでJALの客室乗務員の方から話をうかがいました。

 呼びかけのチラシです。

  個人的なこととして受け取る必要はない
 鎌田慧著の 『空港 〈25時間〉』 には客室乗務員からの聞き取りが載っています。「社長や会長らしい客は客室乗務員に多少ミスがあってもクレームを言わない、一方、ビジネスクラスに乗る日本人のビジネスマンはミスを探してクレームをつけてくるし、しつこい。」
 感情労働の問題は、日本では2000年にアーリー・ホックシールド著 『管理される心―感情が商品になるとき』 (世界思想社刊)が翻訳・発刊されてから取り上げられ始めました。定義とともに、客室乗務員がどう対応しているか具体的に紹介しています。

「問題が乗客の側にあると思われたとき、彼らの人生に何かトラウマがあったのだ、というふうに考えるように努めます。」
「予防策にもかかわらず怒りが吹き出してしまったら、『彼といっしょに家に帰る必要はないのだから』 と自分に言い聞かせる。」
「あなたが何も悪いことをしていないのに、お客様があなたにがみがみ言うことがあったら、その人が責めているのはあなた自身ではない、と思いなさい。」
「乗務員同士で抵抗力をつけ緩衝役になります。自分自身が正常な精神状態にとどまっていられるように、冷やかし合う。」
「『何が起こっても、お気持ちはわかりますと言う』共感の表現は、乗客に、自分たちは非難するべきところを間違え、怒りをぶつける相手を間違えたということを納得させる。」


 講座には12人が参加しました。その報告です。

 JALの客室乗務員のサービス・感情労働についての話をします。
 最近は情勢を受けてクレームをつける乗客がすごく増えています。乗客もいじめられていてそのストレスを弱い者、いい返せない人にあたるということなんだと思います。内容もひどくなっています。
 以前のミーティングでの話です。客室乗務員はいろいろなクレームを受けてストレスを感じていますが、そのストレスをやはり他者にあたってしまっていたと話していた人がいました。彼女は、自分はストレスを解消していたと思っていましたが、引っ越しをする時、業者がミスをしたことに電話で話をしていたらだんだん激高してきて考えられないような言葉遣いでクレームをつけていたことにはたと気づいてショックだったといっていました。
 社会の矛盾のなかで追いやられ、押し込められている状況にあるなかで弱い者にあたっていくというのは客室乗務員もしているし、乗客もいい返せない客室乗務員にあたってくるのがクレームの発端になっているのかなと思います。

 だからといって 「お客様は神様」 ではありません。特に客室乗務員には安全業務があります。何かあったとき、脱出してもらったりするときは乗客に個人の感情を押し殺して従ってもらわなければなりません。だから乗客の要求を受け入れるだけではなく、ある程度はちゃんとしていないとダメなんだよと昔から先輩からいわれていますし、私たちも後輩に伝えています。
 今、サービス業の競争が激しくて、客はいい方にと流れていくなかで、どうしても従業員に無理を強いるような経営体質になりつつあります。そこをどうやって自分たちは乗り超えていくか、改善させるかが大きな課題となっています。

 JALの客室乗務員は全体で5.000人います。労働組合が分裂していて、会社が作った組合はどんどん大きくなり、私たちの方は300人くらいです。ものをいえる環境が悪くなっていますし、解雇問題はものをいう労働者を切ったということがあります。
 

 会社が7年前に経営破たんをした後は賃金も他のいろいろな労働環境も7割くらいに下がり、それからほとんど回復していません。
 解雇問題が発生した後、3000名近い客室乗務員を採用していますが採用しても辞めていくので慢性的な人員不足になっています。職場の半分が3年未満の新人です。先輩があまりにもいないので仕事を教えてもらえないし覚えられません。客から怒られてもどうしたらいいかわかりません。先輩の経験も伝承しにくい状況にあります。しかし解雇者は戻しません。
 解雇問題が発生した後はパワハラやセクハラがひどくなり蔓延しています。みなイライラしているので他の人にあたります。昔は管理職がパワハラをするとみんなが騒ぎましたが、今はおかしいことにおかしという人がいなくなりました。いわれたらそのまま受け入れてしまうもののいえない職場になっています。そうするとそういうことをやってもいいと思ってしまうので一般職も下の社員にパワハラします。
 職場としても厳しくなっています。労働組合を中心にして働きやすい職場をつくっていかないと働き続けることができなくなっています。

 具体的な話です。
 モンスター乗客がすごく増えています。わけの分からない理不尽な要求が結構あります。
 例えば、国際線はファーストクラス、ビジネスクラス、エコノミークラスに分かれていていますがファーストクラスのフライ数が多い乗客はステータスがあり、名前をよんで挨拶をしなければならないことになっています。エコノミークラスはしませんが、何でおれに挨拶をしないんだとクレームをいう乗客がいます。
 座席が狭いとか、今は長距離路線だと通路側が人気ですが希望通りに取れなかったとか座席の問題は多いです。何とかアレンジしろといわれても1人ひとりに聞くわけにはいきません。「今はできません」 といわないとサービスが始められません。
 隣の席が空いている方がいいです。地上職のスタッフに自分の席の隣を空けておけとごり押しする人がいます。
 それぞれのクラスで提供する特有のサービスがちがいます。エコノミーはほとんどないですが、国内クラスではファーストクラスで新聞、ビジネスクラスには機内で使うマスクとかをサービスします。そのクラスに座っていないのに以前座った時のサービスを持ってこいという人がいます。
 機内に持ち込める荷物の量は決まっていますが、それを超えて持ちこんで、自分ではしないで客室乗務員に上の棚に入れろと命令する人がいます。安全上置いてはいけない場所に手荷物を置かせろと要求する人がいます、
 肉とか魚とか食事の選択があります。どちらにしますかと聞くと両方食べて見ないとわからないから両方食べさせろと要求する人がいます。休んでいたので飲み物を渡さなかったら、もらえなかったと会社の方にクレームをあげた人がいました。その後に会社から事情聴取をされたりしたことがあります。

 このような時にどうするかです。
 隣の席を空けておけといわれてもできないので断るしかないです。安全上問題があるところに荷物を置かれてもだめですと断るしかありません。
 毅然として断ったときに会社にクレームがいく場合があります。乗客に非があるのですけれど、乗客はいい方が悪い、乗客に対してのいい方ではなかったといいます。
 そうすると会社はどういうことだったのか話を聞かせろといってきますので客室乗務員としては不快な思いをします。こういうことだったと説明して管理職がわかりましたといえばいいです。それを、あなたのいい方が悪かったんじゃないのとねちねちいわれたり、最悪の場合に日勤教育を受けさせられたりするからだんだん断らなくなります。断らない方が楽です。いいや目をつぶっていればということになったら安全上の問題が出てきます。
 毅然とした対応をしていくことが必要です。会社がそうさせる労働環境にしていかないとみな断らなくなります。

 魚と肉がありますといっても全員分を間に合うように乗せていませんので最後の乗客は選択できないです。何で自分は選択できないんだと怒る人はすごく多いです。ビジネスクラスは文句をいう人が多いです。申し訳ないですけどこちらにしてくださいといって受け入れてもらえるしかないです。じゃ俺はいらないと食べない人もいます。ほっとくしかないです。食べ物のうらみは非常に多いです。
 遠距離だと2食あるので、2食目はその人には先に選択してもらったりします。ビジネスクラスの場合は、ラーメンなどがありますのでそれを出して機嫌を直してもらいます。私はなんで食事のことでここまでいわれなければいけないのかとそれが一番嫌でした。

 国際線の場合は、テレビ映像が観れるのですが数カ所はしょっちゅう壊れて直らないことがあります。そうすると乗客は10数時間も観れないことになりますので怒ります。代替の席があればいいのですがなかった場合は謝るしかないです。クーポン券を渡してなだめるくらいしかないです。
 カップルの1人の方が壊れたことがありました。直らないので申し訳ありませんといっても彼の方が納得しません。申し訳ないじゃ済まないんだよとずっとそこに留め置かれることになりました。私はこれ以上何もできないので、すみませんこれ以上はできませんといいました。チーフパーサーに説明したらシートチャートを見てくれて他の乗客と席を替わってもらう交渉をして納得してもらいました。そのことだけに関わっていると時間もかかってしまいますので助かりました。
 自分だけではできないことを上位職の知識を借りて解決することもありました。 通常の接客対応についてマニュアルはありませんので先輩から教わりました。

 クレームに遭遇することがあると、帰ってきても何日も引きずってしまいます。たとえクレームをちゃんと抑えられたとしてもいわれたこと、いわれ方とで客室乗務員は傷つけられます。なるべく経験しない方がいいですが多いです。
 食事やテレビの問題は機内では解決できませんが、改善策はありますのでそれはちゃんと会社にさせることが必要です。食事は乗る前に選択させることは可能です。小さく 「ご希望に添えないことがあります」 と書いてありますが大きく書くとか。

 断るのはかまわないのですが、断られた客は会社に連絡します。断ってからの会社のバックアップ、事情聴取などの体制が問題です。
 会社のクレーム処理の部署が申し訳ありませんでした今後気をつけますといいえばいいものを、管理職が客室乗務員に事情聴取し、どうしてあんなことをやったんだと客室乗務員のせいにします。みな一生懸命やっていて相手が悪かったのにそういうことになると地雷を踏んでしまったということになります。それが一番嫌なことです。
 クレーム処理の部署で押さえてしまって事情聴取をさせないことが必要で、また上司がそういうクレームが来ても彼女はきちんとやっていますといって断る体制を作っていくことが必要です。そうさせないように会社に要請していくことが大切です。


 乗客同士のトラブルが多いです。エコノミークラスの席は狭いです。席を倒すと後ろの人が狭いのでトラブルになります。最近はアナウンスの時に 「お座席を倒す時は後ろのお客様にご配慮ください」 といいますがそこまでしなければならないくらいトラブルが多いです。
 「前の席を戻させろ」 といわれました。しかし席は倒せることになっています。「難しいです」 というと 「狭いんだよ」。「お客様も倒したらどうですか。そうすると少しお楽になると思いますよ」 といったらそれ以上文句はいわれませんでした。双方に権利があるのでどうやって調整するかは工夫が必要です。
 どういうふうにいうのかは先輩から教わっています。「お客様が納得していないんですけども」 というと 「こういうふうにいってみたら」。そのようにして覚えていきます。先輩ができてきた経験を教えてもらうということがないとトラブル処理ができなくなっています。

 今新人が増えているなかでは厳しい状況にあります。処理をできないからどんどん上の方に持ってきます。最終的には上の人が謝りに行くのですが、そこではすでに怒りが爆発していてどうしようもなくなっている状況があります。抑えることができる客室乗務員が少なくなっているのでトラブルがどんどんクレーム処理の部署にあがっていきます。担当者は一気にしなければならないのでメンタルで休むケースが増えているといいます。

 あまりひどいことをいってくる乗客に対しては搭乗拒否をしています。以前は、そういう人で有名だとわかっていてもでも受け入れて対応しなければいけませんでした。担当になった客室乗務員はたいへんな思いをしていました。
 その後、それぞれの航空会社が搭乗拒否をするようになりました。全日空はきちんと拒否、外国の会社もそうしています。しかし競争が激しくなるなかでJALは断らないのでモンスター天国になっています。わがままをいう乗客に1人だけならうまくなだめてと思うのですが、周りにはいろいろな人がいるので1人だけはということではすまなくなりますので公平なことしかできませんからすごく難しいです。


 乗客同士のトラブルがあります。
 エコノミー席での肘掛が1人に1つではありませんので小競り合いが起きます。日よけがありますが、後ろの人がまぶしいから閉めてくれといいますが前の人は外を見たいから開けていますので小競り合いがおきます。そういう場合、移動できる人にはしてもらうのですが、難しいです。1時間交代にしてもらったりします。席の上に荷物入れは共有ですが、なんで俺の席の上に他の人の荷物があるんだという人がいて先にいれた人とトラブルになったりします。 
 持ち込める荷物は規制があるのですが守らせていない問題があります。最近は自動チェックインになっているのでどんな荷物でも入ってきます。セキュリティーチェックの第一関門はエアラインのスタッフではないです。自分たちのところでトラブルが起きてほしくないのでどんどん通します。チェックインするゲートのところもほとんど契約社員や派遣社員で正社員がいません。注意をすると怒鳴られたり、もめていると離陸が遅れてしまいますのでしょうがないから通してしまいます。1回通すと次の回に、前はよくてなんで今日はダメなんだと文句をいいます。トラブルを避けるためにはセキュリティやゲートのところで断らなければいけないのですが、地上職の人もみんな弱い立場にいるのできていません。
 荷物の問題は安全上の問題なので、何とかしろといってきているのですがなかなか改善されません。

 クレームが多いのは60代のビジネスマンと40代、50代のキャリアウーマンです。いろいろ工夫はするのですが最終的に納得してもらえないことについては会社にこういうことがありましたと報告します。
 タバコを吸う、携帯電話を使用する、ベルトを締めないなどの機内迷惑行為が8項目あり、飛行機に乗った時にビデオで流されています。禁止命令に従わない場合には50万円以下の罰金になりますとアナウンスされています。
文句だけですめばいいのですがねちねち続けたり、暴力を振るったりしたら安全阻害行為になりますので乗務員の業務を妨げる行為ということで迷惑行為になります。この場合には警告書を出し、次にキャプテンに報告して禁止命令書を出してもらい、それでもだめだったら、着陸したら警察を呼んで引き渡します。以前は大変だったので労働組合が要求して2004年に法律を作らせました。これを盾にひどいお客さんについては何とかできています。
 酔ってくだまく乗客には、他の乗客に聞こえるようにやめてくださいと禁止命令を出し、命令書をだすようになっています。現認体制は乗客です。これは有効で客室乗務員は救われています。
 暴力行為などの迷惑行為については拘束権限もあります。安全阻害行為に対するマニュアルがあり、1年に1回訓練もしますがこれは難しいです。ほとんどが女性ですので乗客に頼んでしてもらうこともあります。客室乗務員のなかのチーフパーサーがきちんとできるかどうかにかかっています。最終的にキャプテンが判断です。

 知識をきちんと持って乗客に毅然と対応する姿勢を示す必要がありますがなかなかできません。そこには教育の問題、経験の問題があり、一番の問題は会社の対応の問題です。きちんとしたことに対してはよくやったと褒めることが必要です。本人がよかれと思ってしたことは評価をする、責めない、事情聴取をして卑しめることをさせないというふうにしないとなかなか客室乗務員は救われません。
 先輩の中にはクレーム対応で休職した人もいます。一旦休職するとほとんど戻れません。

 このようなことがあった時にどのようにして解消するかというと、ある後輩は酒で解消するといっていました。あとは同僚とこんなことがあったといい合って慰め合います。先輩にそのような場合はこのようにしたらどうなのとアドバイスをもらったりします。ひどい時には労働組合に相談してこういう労働環境は改善して貰わなければ困ると交渉項目の1つにあげてもらうことにしています。

 なかなか乗務員のいいようにはなりません。会社は競争があるのでお客様は神様とサービスを過剰にします。それを安全上の問題の視点から乗務員が主張し、させないようにしないと結局はお客様のためになりません。
 そのためにも長年勤めて経験のある先輩たちがいて新人がいるというバランスのある層で構成されていなければなりません。今は歪んだ環境になっています。


   「感情労働」
   「活動報告」 2016.12.21
   「活動報告」 2016.9.27
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