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沖縄問題  他人に対する不寛容が政府の政策を支えている
2017/02/28(Tue)
 2月28日 (火)

 沖縄から写真雑誌 「ぬじゅん (NUJUN)」 創刊号が郵送されてきました。編集は沖縄で活躍する写真家たちの集まり 「まぶいぐみ」 実行委員会です。実行委員会は2015年に発足し、昨年は東京でも 「コザ暴動プロジェクト」 で当時の写真展とシンポジウムを開催しました。(2016年5月10日の 「活動報告」 参照) ぬじゅんとは、沖縄の言葉で 「抜く」 「撮る」 という意味なのだそうです。
 発刊のあいさつ文です。
「2017年、『まぶいぐみ』 は、ギャラリーからもう一歩外に出て、沖縄をとりまく現状、現場そのものに身を投じ、写真の力を発揮していこうと思います。
 辺野古基地、高江ヘリパットの建設強行に代表されるように、沖縄の軍事基地化は、民意を無視する形で進んでいます。墜落したオスプレイも原因究明のなされぬままに沖縄住民の頭上に飛行を再開しました。1972年日本復帰前後の激動の沖縄と、現状はまったく変わらないどころか、ますます悪化しているとも言えるでしょう。……
 沖縄が続けてきた平和を求める 『闘争』 の現場に、いま、写真が何かの力を与えることができないか。東京や大阪で開催した 『コザ暴動プロジェクト』 の会場でも、もっと沖縄の 『現場』 を写真で伝えてほしいという声がありました。
 『まぶみぐみ』 は、沖縄の 『いまここ』 で起こっていることを記録し発信し、写真の力を沖縄の力に変えていくアクションとして 『ドキュメント ぬじゅん (NUJUN) -沖縄写真・まぶいぐみ』 を刊行します。」

 創刊号には2カ所の現場写真が載っています。
 1つは、昨年12月13日に名護市安部ギミ崎に墜落したオスプレイの残骸です。地上に近いところでの事故は、一歩間違ったら住民が生活している頭上に落ちたかもしれないという思いにかられました。
 テレビや新聞などでは海上にただよう破壊されたパーツが映し出されていましたが、写真は海中からのものです。無残に散在しています。あらためてこれが地上で起きた事故だったらと想定すると戦慄します。
 沖縄の海中は澄み切ってきれいです。軍事に占領されるのはもったいないです。
 もうひとつは東村高江のドキュメントです。オスプレイパット建設現場で住民が 「やんばるの森を壊すな!」 「ヘリパット工事を中止せよ!」 のプラカードを掲げて抗議をしています。排除する機動隊の制服の肩に 「8」 とありますので本土・警視庁の機動隊だと思われます。
 やんばるは沖縄の人たちにとっては水瓶です。そこが壊されています。住民は日々爆音に晒されることになります。(2016年5月20日の 「活動報告」 参照)

 撮った方たちも身体をはって闘っています。写真には迫力があります。
 沖縄はいつまで生命が脅かされ続けるのでしょうか。そこに新たな施設が作られようとしています。


 沖縄の現実が黙殺されています。
 その一方、告発、問題提起もつづいています。
 2月15日の朝日新聞の文化・文芸欄は、沖縄の風俗業界で働く女性たちの生き方をインタビュー調査した上間陽子著 『裸足で逃げる』 を紹介しています。
「女性の多くに共通しるのは 『社会に対する信頼感の低さ』 だという。
 『手を差し伸べてもらえないことを悟っているから助けも求めない。同じ境遇の他者に対しても、「自己責任だ」 という冷たい視線を向けるし、他人に対しても不寛容。(上が下に強いるのではなく) 下からの自己責任とでもいうべきことが、社会の一番厳しい層で起きていることを、私たちは黙殺し続けている』
 こうした厳しい現実は、けっして日常とかけ離れたところにあるわけではない。沖縄の外の人たちが思い描く、美しい自然と穏やかな人たちに象徴される 『のんきな沖縄』 の内部に入り込んでいるという。……
 こうした黙殺という 『暴力』 が分断を生み出す構造は、そのまま本土と沖縄の関係にも重なる。米軍による女性への事件が相次いでなお、沖縄から基地をなくす動きは本土では本格化せず、被害者側の 『落ち度』 を非難する声があとを絶たない。」
「基地がらみで痛ましい事件が起これば、メディアも世論も一定の同情を示す。しかし、ひとたび沖縄が 『基地受け入れは嫌だ』 と反発を強めようものなら、困り顔をし、時に厳しい攻撃を表出する。……
 与えられた境遇を黙って引き受けていればいいが、拒絶した瞬間に攻撃される。いやしているうちだけ可愛がられる。上間さんは 『沖縄は言ってみれば、日本社会における女性のポジションに置かれている。』 いつまでも一人前ではない他者扱いだ、と。
 見たい沖縄だけを見る、その視線の中に日本社会の無自覚な暴力が含まれている。」

 「社会に対する信頼感の低さ」 の状況におかれた人たちは、同じ境遇の他者に対しても不寛容になっています。その他の困難に追いやられている人たちに対しても 「自己責任」 をの眼差しを向けます。
 自己の生活防衛にあくせくしている人たちは政治に積極的に関心を示すゆとりがありません。政府の政策に抵抗する人たちの姿も、自分に期待感がないだけ共感しません。そのような関係性は人びとに無力化・無関心をあおります。
 政治との距離が生まれます。そして政府の強引な政策を間接的に容認している状況を作り出し、積極的に抵抗するもの以外は 「味方」 にしてしまいます。沖縄に基地を押し付けているのは政府や政治家だけではありません。
 沖縄の基地問題は沖縄の内でも外でもそのような状況におかれています。


 2月25日の毎日新聞の 「北田暁大が聞く 危機の20年」 は、井上寿一学習院大学学長と対談しています。抜粋です。
「井上 『安倍政権を倒せ』 だけでは有権者が付いて行くのは無理です。多くの有権者にとって、安保法制や憲法改正は優先順位が低い。有権者は、日米安保と憲法の両輪で戦後の平和と安定が維持されてきたと考えていて、『どちらも改正の必要なし』 が多数派だと思います。
北田 安保と9条のセットという矛盾した 『護憲』 ですね。左派は、この矛盾がいかに強固な安心感を人々に与えているかを軽視しすぎ。かつ、この両輪の下に、米軍基地での沖縄の犠牲がある。有権者の漠然としつつも複雑な安保、憲法観に向き合わないと、野党は、沖縄の問題でも説得力のある提起はできないはず。逆に、自民党はこの有権者意識をうまくコントロールしすぎている。
井上 沖縄に対する本土の保守は主権概念に強くこだわるので、他国軍隊の自国領土駐留はもっとも怒るべき事態のはずです。他方で本土の平均的な国民意識からすれば、中国の軍事的膨張が怖いので 『米軍基地をなくす』 と言われても不安です。……」

 日米安保と憲法の両輪で戦後の平和と安定が維持されてきたと考えていている 「護憲」 は自己の生活の現状維持が目的になり、沖縄に関心が向きません。日米安保と憲法が相反するものであるという主張を受け入れません。
 「戦争は絶対ダメ」 と訴える人たちの中には憲法9条が変節してきたという実態を認めようとしない人たちがいます。まだ憲法9条は金科玉条です。そのなかでも沖縄の基地の存在は見捨てられています。沖縄そのものが見捨てられているのです。


 2月24日、米軍嘉手納爆音訴訟の地裁判決がありました。原告住民の訴えは騒音ではなく爆音です。騒音は我慢できる限界をこえて違法だと国が敗訴しました。賠償金はどこが負担するかはわかりません。
 しかし将来分の賠償請求と飛行差し止め請求は退けられました。理由は、日本政府には米軍の行動を制約する権限はないとするまたしても 「第三者行為論」 です。「第三者行為論」 とは何でしょうか。日本政府から当事者意識を奪い、司法は政府に免罪符を与えているということです。いい換えるなら、司法が政府に屈服し、政府はアメリカに屈服しているということです。その中で住民の訴えは無駄ですよという通告です。「復帰」 後、沖縄に米軍基地が集中して移転がすすめられたという理由が浮かび上がってきます。犠牲が集中されたのです。


 これの問題提起に共通点があります。
 沖縄の現実を憂い、ちゃんと捉え返そうとしている人たちも少なくいるということがあります。議論がもっともっと進むことを期待します。
 人びとと沖縄問題の距離の開きは、同時に政府と人びとの距離でもあるという指摘です。格差社会の別な姿でもあります。そして人々にも、政府の姿勢には沖縄の歴史、沖縄とヤマトの関係が捨象されているということです。
 
 
 それぞれのおかれている分断させられている構造、自分も他者にも 「自己責任」 と抑制している意識からの脱出し、自己を見直して大切にしたり、他者の痛みに共感し、思いをよせるゆとりを獲得したいものです。自己責任への埋没から他者への思いやりに転化したなら、その意識を大きく発展させていったら 「壁」 も軍事力なども必要なくなります。
 それを期待するように 「ぬじゅん (NUJUN)」 が発刊されました。

   「活動報告」 2016.5.20
   「活動報告」 2016.5.10
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ヤマト運輸  ただのサービスなどない
2017/02/24(Fri)
 2月24日 (金)

 ヤマト運輸労働組合は2017年の春季労使交渉で、18年3月期の宅配個数が17年3月期を上回らない水準に抑えることを要求したという報道がありました。人手不足とインターネット通販の市場拡大などにより長時間労働が常態化しているなかで 「現在の人員体制では限界」 という主張です。会社側も応じる意向です。
 要求はこの他に、ネット通販会社など割引料金を適用する大口顧客に対して値上げを求め、交渉が折り合わなければ荷受けの停止を検討する、ドライバーの労働負荷を高めている再配達や夜間の時間帯指定サービスなども見直しの対象とするなどもあります。長時間労働の抑制では10時間以上の 「勤務間インターバル制度」 の導入もあげています。ベースアップについては前年と同じ組合員平均1万1000円 (前年の妥結額は5024円) の要求です。
 切実さが垣間見られますが、労働組合が長時間労働の抑制をめぐって経営の改善までふくめて具体的要求をおこなうことはめずらしいことです。

 ヤマト運輸は宅配便最大手で46%のシェアをもっています。荷物の伸びには人員の増強で対応してきました。
 16年12月にヤマト運輸が扱った 「宅急便」 の個数は前年比6%増、11年と比べると20%増えています。一方人員は17年3月期末見通しが20万500人と、2012年3月期実績17万7301人の13%増にとどまっています。今期はパートやアルバイトなど非正規従業員を含む売上高人件費比率は51.0%となっています。
 人手不足は深刻化し、思うように人員を確保できない状況にあります。そのため宅配便は基本的に午前8時から午後9時までの配達で、ドライバーや荷物の仕分け担当者は交代制勤務になっていますが処理が追いつかず、早番の勤務者が夜まで残って作業することがあるという実態が生まれています。
 自社での人手確保が追いつかず、外部業者への配送委託が増えて、ヤマトHDの売上高に占める委託費の比率は今期15.5%と5年前に比べて1ポイント近く上昇する見通しです。


 ヤマト運輸における36協定は、年末年始などの繁忙期と閑散期の仕事量に波がある業務内容を踏まえ、17年度は残業時間を月単位ではなく年間456時間とすることで労働組合と合意しました。
 実態はどうでしょうか。15年11月17日の 「活動報告」 を抜粋します。
 横田増生著 『仁義なき宅配 ヤマト vs 佐川 vs 日本郵便 vs アマゾン』 (小学館 15年9月刊) にヤマト運輸の1人の配達員の労働実態が報告されています。
 労働時間の事態は朝6時から積み込み作業をはじめ、終了は午後10時までになるといいます。しかし業務開始を記録する携帯の専用端末 〈PP (ポータブル・ポス) 端末〉 を立ち上げるのは8時以降と決められています。午後9時20分前後に再配達を終了したら締めます。しかしその後の作業が残っています。昼食は、車を停めてとる時間がないのが現状で、運転したままでとることもあります。
 端末を立ち上げる前と締めた後、お昼の1時間はサービス残業です。サービス残業だけで月60時間以上に及びます。これらは、会社が厚労省などの調査で報告する記録上の残業時間の計算には含まれません。運輸業界の長時間労働の実態は隠されています。
 サービス残業ではない通常の残業は1日4時間以上で、月80時間です。実際の残業時間は月140時間です。これで残業代や諸手当を含めた賃金は額面で約30万円です。
 07年から労働者の残業時間の上限を決めた 〈計画労働時間制度〉 を導入しました。初年度の08年3月期の総労働時間は2.550時間でした。15年3月期は2.464時間です。16年度は2456時間、17年度は2.448時間にする計画だといいます。この設定自体が異常です。
 賃金体系は、基本給と残業代、それにどれくらい荷物を集荷配達したかによって支払われる業務インセンティブの3本柱になっています。業務インセンティブは賃金全体の60%から80%を占めます。総労働時間に近づくと期末には仕事ができません。業務インセンティブの手当が期待できなくなります。このことがサービス残業を温存する原因にもなっています。
 国土交通省が2013年に発表した資料では、全産業平均の月収が31万円であるのに対し、トラック事業の平均は29万円台でした。年収は416万円で50万円以上の開きとなっています。賃金が低いから残業に走ります。

 著者は、ヤマト運輸で3か月ごとに契約更新が行われる下請けの軽トラに1日同乗する体験を試みます。3か月ごとの更新は、繁忙期と端境期があるのでその調整のためです。
 午前8時過ぎ、配送センターで70個の荷物を積み込んで出発します。受け持ちエリアを午前中、昼過ぎから夕方まで、夕刻から夜9時までの3回配達に回ります。不在の場合には2回、3回と回ります。3回の配達で合計100個の荷物を配り終えたのは午後9時前。拘束時間は14時間近くで、日当1万5千円です。換算すると時給は1000円強ですがそこから車輌代、ガソリン代、車検代を支払います。
 夏の繁忙期にもう一度同乗をお願いして了承を得ましたが、運転手は前日頸動脈からのくも膜下出血で病院に搬送されていました。
 厚労省の2014年度に労災と認定された過労死が一番多かったのが 〈運輸業・郵便業〉 で92件です。


 ヤマト運輸は17年3月期の宅配便取扱個数は前期比7%増の18億5000万個と過去最高が見込まれています。一方、親会社のヤマトホールディングス (HD) は1月末、人手不足による人件費の高騰や外部委託費の増加などを理由に、17年3月期の連結営業利益の予想を前期比15%減の580億円 (従来予想は650億円) に引き下げました。取扱個数は増えたが利益は上がらないという構造になっていました。
 荷物の急増の背景はいうまでもなく、インターネット通販の拡大です。消費者向け電子商取引 (EC) の市場規模は15年度実績で13兆円を超えました。10年前と比べたら10数倍になっています。
 ネット通販は2000年代以降、「配送料無料」 などを武器に急速に拡大し、個人宅への配達が急増しました。その結果は受取人の不在件数も大幅に増えました。14年12月の国土交通省の全国調査では、1回目で配達が済むのは約80%で再配達が2回以上のケースも約3.5%あり、現場のドライバーたちへの負担が大きくなります。代金引き換えサービスやクール便利用者も増えています。ドライバーは現金やクレジットカードを取り扱わなければならず、利用者対応の手数が増えています。
 その一方で、顧客は自分の宅配便がどこにあるのか自宅のパソコンやスマートフォンで確認できるので配達が遅れたり、どこかで荷物が止まっていたりするとすぐに宅配業者側にクレームをつけることがでるようになりました。


 宅配業界では、1個当たりの運賃が250円以下になると、どのように工夫しても利益がでない構造になっています。
 以前、佐川急便が最大手の荷主であるアマゾンとの契約で合意したのは全国一律で250円をわずかに上回る金額だったといわれます。しかしアマゾンの配送を扱うことで、収支だけでなくサービスレベルも悪くなったといいます。13年春、宅配便単価の低下問題で契約を打ち切りました。経営の舵をシェア至上主義から “運賃適正化” を掲げて利益重視へと切り替えました。
 アマゾンの配送を運ぶことになったのはヤマト運輸です。

 ヤマト運輸は13年10月に稼ぎ頭のクール宅急便が常温で仕分けが行われていたことが新聞ですっぱ抜かれました。対策として、クール宅急便を取り扱える個数の上限を決め、それを上回った場合は荷物を引き受けることを断る総量管理制度を導入した再発防止と法人向けの運賃の適正化に取り組みます。運賃上昇→利潤率上昇→設備投資の増額→労働環境の改善をすすめ “豊作貧乏” から抜け出すことに挑戦します。
「本来はサービス内容で競争するべきなのでしょうが、運賃 (の値引きをするの) もサービスの一環だという考え方もありました。特にネット通販事業者から荷物をいただくには、運賃が大きな要因になります。けれど、そうした通販業者さんからも採算の合う運賃をいただかないと、輸送サービスの品質が担保できないと考えて、運賃の適正化に踏み切ったのです」
 14年3月末、コストに見合わない個人向けメール便の取り扱いを中止します。佐川急便はメール便については日本郵便に委託しています。
 
 佐川急便ホールディングの会長は14年の 「会長訓示」 で打ち切りについて触れました。
「昨年、ライバルに 『通信販売の100億円のエサを提供した』 と私は思っている。これは (佐川) 急便の収入の1.5%である/結果としてライバルは、集配品質の低下と固定費が増加した/必ずこれまでの体制を見直すはずである/事実クール便を40%UPで交渉を始めたとも聞く」 (『仁義なき宅配』)
 アマゾンジャパンや楽天などでは配送料無料、さらに返品無料もあります。そのために費やされる労働への対価はどうなっているのでしょうか。また配送料無料は往々にして運賃のダンピングにつながっていきます。運賃適正化は成功しませんでした。
 今回のヤマトの動きは、この時すでに想定されていました。しわ寄せは労働者にのしかかっていきます。
 佐川急便では、多忙のなかでの駐車違反に身代わり出頭が各地で摘発されています。


 ではヤマト運輸をふくめてトラック労働者の労働条件を向上させるためにはどうしたらいいでしょうか。
 今は時間指定の荷物とそれ以外は同額ですが、時間指定の場合は追加料金を徴収すべきです。特に夜間の指定に対しては当然です。
 多口顧客が配送会社にダンピングを強制するとそのしわ寄せは労働者にきます。労働の価値を認めず、労働者を愚弄するものです。誰かを犠牲にした経済活動はまともとはいえず、社会正義に反します。運賃適正化は厳格にすすめられなければなりません。
 アマゾンなどのネット通販事業者は配送料無料をうたって販売促進をしていますが、利用者は送料はどこに含まれているかを見極める必要があります。ネット通販事業者負担というのなら送料は商品に含まれているということです。消費者は騙されています。
 配送料無料などのサービス過多は労働の価値を低め、労働者同士の思いやりを奪います。社会秩序を破壊しています。国交相は、配送無料の広告を禁止し、運賃適正化を監視する必要があります。
 無理なサービスはまた事故を発生させる危険性があります。配送労働者の生活がネット通販事業者の犠牲になる必要はありません。
 ヤマト運輸労働組合の要求を、運輸業のサービスのあり方を社会問題として捉え返す契機にしていかなければなりません。
 このようなことが長時間労働を削減し、労働条件を改善し、労働力不足を解消する早道です。
 労働者がお互いの労働の価値を認め合い、尊重し合う関係性、あたりまえの社会秩序を作り上げていくことが必要です。

 本物の “働き方改革” は、働く者が現場から生の声をあげ、要求していくなかから “働きやすさ” “安心” を獲得するものです。

   「長時間労働問題」
   「活動報告」 2015.11.17
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職場復帰には 「5つのレベル」 がある
2017/02/21(Tue)
 2月21日 (火)

 1月8日の毎日新聞は、「<うつ病休暇> 半数が再取得 『企業は配慮を』 厚労省研究班」 の見出し記事を載せました。
 厚生労働省の研究班 (代表者、横山和仁・順天堂大教授) は、社員1000人以上の大企業など35社を対象に、2002年4月からの6年間にうつ病と診断され、病気休暇を取得した後に復帰した社員540人の経過を調査しました。その結果、うつ病を再発して病気休暇を再取得した人の割合は、復帰から1年で全体の28.3%、2年で37.7%と高く、5年以内で47.1%に達していました
 うつ病になって病気休暇を取った大企業の社員の約半数が、復帰後に再発し、病気休暇を再取得していました。特に復帰後2年間は、再取得する人が多く、仕事の負担が大きな職場ほど再取得のリスクが高いことも裏付けられたといいます。
 休暇期間では、1回目の平均107日に対し、2回目は同157日と1.47倍に長くなっていました。1回目の休暇期間が長い場合や、入社年齢が高くなるほど、2回目の休暇が長くなる傾向もみられました。
 調査した東京女子医大の遠藤源樹助教 (公衆衛生学) は 「うつ病は元々再発しやすい。企業は、病気休暇の再取得が多い復帰後2年間は、特に注意を払い、時短勤務などを取り入れながら、再発防止に努めてほしい」 と指摘しています。

 調査は比較的制度等が整備されている大企業が対象です。また、休職・復職という選択ではなく退職した労働者は数字には含まれていません。


 あるユニオンで 「ユニオンの労働相談とその心構え 特にメンタルヘルスの場合」 のテーマで話をする機会がありました。
 メンタルヘルスの問題は、体調不良になってからではなく、ならないための職場環境づくりが大切です。
 「使用者の安全配慮義務」 を履行させることが必要です。
 では 「使用者の安全配慮義務」 とは何でしょうか。2012年2月10日の 「活動報告」 で紹介した 「千代田丸事件」 について部分的に再録します。
 56年2月下旬、電電公社所有の長崎港を母港とする海底ケーブル布設船 「千代田丸」 に、朝鮮海峡の海底ケーブル故障個所の修理命令が出されます。全電通労組本社支部千代田丸分会は、安全保障や外国旅費等の労働条件について交渉を続けたが前進しません。
 そもそも朝鮮海峡の海底ケーブルは公社の所有ではありません。さらに修理場所は 「李承晩ライン」 の内側であり、攻撃を受ける危険性は大きくありました。本部支部は、公社の労働者と公社の間には朝鮮海峡の海底ケーブル作業の労働契約はない、契約を結ばないかぎり就労の義務はないと主張して交渉を続けました。
 しかし3月5日、公社は団体交渉の途中、警告文を読み上げて席を立ちます。
 5月4日、公社は本社支部役員3人に出向拒否指令責任者として公労法 (争議行為) 違反により解雇を発令します。解雇撤回闘争は裁判闘争に持ち込まれます。
 59年4月11日、「雇用関係が存在する」 の判決がでます。判決理由は、公労法違反の事実は証拠がないこと、朝鮮海峡工事にいく労働契約上の義務について証拠がないので千代田丸乗組員は行く義務がないという内容です。根拠として、「労働者が生命身体の危険を犯してまでも自己の労働力を売っていると見るべきではない」 と明確にしました。
 しかし公社は控訴。六三年六月、控訴審は三人の解雇を有効とする判決を出します。
 3人は上告しました。
 原告は最高裁の弁論要旨で主張します。
労働者が働かなくてはならないのは、使用者と労働契約を結んでいるからで、その契約にないことは新しい契約をしない限り働かなくてもよい。この点が労働者と奴隷の違いです。契約にないことを無理に働かせ、まして、米軍の権威や日米安保条約を持ち出して危険な海域にひきずり出すのは、労働者に奴隷的拘束を課し、その意に反する苦役を強制することになるのではないか。その意味で、この事件では労働者の憲法上の基本的人権が争われているのです。」
 68年12月24日、最高裁は原告勝利の判決が言い渡されました。
かような危険は、労使の双方がいかに万全の配慮をしたとしても、なお避け難い軍事上のものであって、海底線布設船たる千代田丸乗組員のほんらいの予想すべき海上作戦に伴う危険の類ではなく、また、その危険の度合いが必ずしも大でないとしても、なお、労働契約の当事者たる千代田丸上組員において、その意に反して義務の強制を余儀なくされるものとは断じ難いところである」「使用者は、労働者が労働組合の正当な行為をしたことの故をもって、その労働者を解雇し、その他これに対して不利益取扱をする行為をしてはならない」 (『千代田丸事件』 今崎暁巳著)
 千代田丸事件の闘いで労働者は危険な作業を拒否できるという基本的人権と生存権が確立していきます。このような闘いを経て“使用者の安全配慮義務”は認識が固められていきます。

 「使用者の安全配慮義務」 はその後判例法理となりました。
「雇傭契約は、労働者の労務提供と使用者の報酬支払いをその基本内容とする双務有償契約であるが、通常の場合、労働者は、使用者の指定した場所に配置され、使用者の供給する設備、器具等を用いて労務の提供を行うものであるから、使用者は、右の報酬支払い義務にとどまらず、労働者が労務提供のため設置する場所、設備もしくは器具等を使用し又は使用者の指示のもとに労務を提供する過程において、労働者の生命及び身体等を危険から保護するよう配慮すべき義務 (以下 「安全配慮義務」 という) を負っているものと解するのが相当である。」
 そして労働契約法で法律となりました。

 この地平を切り開いたのは労働組合の闘いではなく、遺族の闘いです。
 1991年の電通過労自殺事、過労死家族会結成と「過労死防止法」制定の闘い、そして16年の電通過労死事件などなどです。
厚労省は2002年に 「過重労働による健康障害 防止のための総合対策について」 を通知したのは1991年の電通過労自殺事の裁判の影響です。通知は 「時間外労働が2~6か月で平均80時間を超えると健康被のリスクが高くなる」 ・いわゆる“過労死ライン”を発表しました。しかしこの指導が強制力を持つようになるのは現在政府が法制化を進めている 「働き方改革」 によってです。15年後にやっと法律になりますが長時間労働の規制としては不充分です。


 「使用者の安全配慮義務」 の具体例については現在名古屋ふれあいユニオン・一心商事分会の闘いを紹介しました。
 一心商事分会は組合を結成したら会社から連続した攻撃をかけています。
 数年前には組合員が社長室に呼びつけられて日本刀で脅迫され、急性ストレス障害にり患してしまいました。
 昨年末には製造現場の組合員を街頭での商品宣伝やノルマを課したとびこみ個別訪問販売の営業に配置転換しました。組合員は 「適正配置義務」 を無視した嫌がらせで体調を崩してしまいましたがその後、業務命令を拒否して原職に就労し、裁判所への仮処分申請と労働委員会への実効性確保申立をしました。
 「適正配置義務」 とは、使用者が労働者を得意な分野・業種に配置をした時に労働者にとってはより大きな成果を達成し、会社の利益にもつながるという当たり前のとらえ方です。逆に労働者の不得手な部署に配置し、会社の利益にもつながらない人事は嫌がらせとしかとらえられません。
 分会長に対しては暖房のない部屋に隔離しました。

 2015年5月22日の 「活動報告」 に書きましたが、消費者庁は消費者の訪問勧誘・電話勧誘・FAX勧誘に関する意識調査を行いました。その結果、訪問勧誘を 「全く受けたくない」 が96.2%を占めました。自治体の中には条例で禁止しているところもあります。
 組合員にとっては不得手の、しかも相手から嫌がられる業務は精神的に追い詰めて体調不良に落とし込めることが予測でき、 「使用者の安全配慮義務」 に違反し絶対に許されません。


 職場復帰をスムースにはかるための課題についてです。復職問題については2015年9月28日の 「活動報告」 で触れました。
 実際は本当に難しいです。
 よくある労使のトラブルに 「復帰できる」 「治っていない」 の主張のぶつかり合いがあります。
 夏目誠大阪樟蔭女子大学・大学院教授は 「職場復帰には 『5つのレベル』 がある」 と説明します。「症状軽快レベル (日常生活はできる)」、「出勤可能レベル」、「定型業務レベル」、「通常業務レベル」、「残業可能レベル」です。
 主治医が 「出勤可能レベル」 と診断しても、休職前の 「通常業務レベル」 ではありません。そこに至るためにはリハビリ勤務・試し出勤による慣らしが必要です。
 また使用者は復職に際しては即戦力としての 「定型業務レベル」 や 「通常業務レベル」 を要求します。しかし即戦力という主張は、プロ野球でいうならば、シーズンオフからキャンプ抜きでシリーズに突入するようなものです。身体が対応しないし怪我が続発するのがはっきりしています。やはりリハビリ勤務・試し出勤による慣らしが必要です。

 使用者が悪意はなくても “腫れ物に触れるような” 対応をしていると復職者は不安だけではなく不信感を持ち、嫌がられていると受け止めてしまうことがあります。使用者はお互いにとって新たな挑戦なので職場全体で成功させようと宣言した上で、要望・希望があったら遠慮なくいってほしいと伝えると復職者は安心します。
 逆に、復職者がさまざまな要求を主張することがあります。なかには無理なこともあります。それは休職前から職場で孤立していたことにたいする不安・恐怖の別の表現だったりします。解消のためには孤立させないためにフォローする人格をきめてケアすることを伝えて了承を得る必要があります。

 復職は一度失敗すると自信を失い繰り返してしまいます。一度目の復職を慎重に対応し成功させることが大切です。成功した体験は労使の財産となり他の労働者も安心をえられます。
 復職を成功させるためには使用者も労働者も変わらなければ (成長しなければ) なりません。

   「訪問販売意識調査」
   「活動報告」 2015.9.28
   「活動報告」 2012.2.10
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資生堂労組 「自分も仲間も幸せである」
2017/02/17(Fri)
 2月17日 (金)

 毎日新聞は2月から 「変革」 のシリーズのなかで 「資生堂」 の連載を続けています。まだ途中ですが会社中心の取材で労働組合が登場しません。しかし資生堂の 「変革」 は “資生堂ショック” にしても労働組合抜きには進められませんでした。というよりも労働組合が進めてきました。
 2016年10月28日と7月12日の 「活動報告」 で資生堂労組委員長と中央執行委員の方の講演を紹介しました。そこで紹介しきれなかった部分をあらためて紹介します。


 資生堂労組は本社、研究所、工場の労働者で組織され、販売の先端にいる美容職は排除されていました。販売会社の労働環境はひどいものでした。人件費とは扱われていませんでした。みな就業規則は見たことがなかったといいます。
 1997年当時の委員長は販売会社から本社にきて組合役員になっていった方でした。委員長が執行部に美容職の働く環境を説明し、販売会社に組織拡大をしたいと伝えます。「自分は販売会社から本社にきて組合という組織がいいところだと知った。是非販売会社も組織化して美容職の環境を良くしたい、自分も美容職にお世話になってここまでこれた」
 現委員長は美容職の環境のことを知った時、同じ会社にこういう仲間がいるんだと思いました。多くの執行部も知りませんでした。本・研・工の支部長たちと話をして中央執行委員会で議論を重ねていきます。みんなでやろうという話になりました。
 しかし本・研・工の組合員にしてみたら組合の形が変わってしまい、既得権を手放すことになりますので大反発をうけます。
 現委員長は久喜工場の支部長でした。他の支部は全部同意を取り付けましたが、久喜工場支部はものすごく抵抗します。支部長として支部大会を開いて提案しますが反対意見が切れないから採決に持ち込めません。1日終わると、「今日たくさんの意見をいただきましたので採決を明日にさせてください」 といってまた翌日開きます。7日目に意見が切れました。支部長が集約の話をします。
「わたしを育ててくれた代々の先輩方から7日間活発なご意見をいただきましてありがとうございます。先輩方は私に何といってきましたか。困った人がいたら手を差し伸べるのが組合だといって私を育てたのではないですか。いっている意見はそのことと違う。吹雪の中で仲間が入れてくれとノックをしているのにドアを開けたら吹雪が差し込むから入れるな。そんなことで私を育てたのですか。今日は採決をさせていただきます。でもたとえこの支部が否決でも全体としては可決になります。それでいいのですか。この久喜工場は東京工場の時から組合の本流だと思ってきました。こんな禍根を残していいんですか。私はこの組織拡大が、皆さんにやってよかったといっていただけるまで組合の役員をやり続けます。」
 そして採決です。かろうじてですけども可決されました。それで今に至っています。

 支部長は専従になって10年間、寝袋を持って美容職の中にいって組合に組織化していきます。本社・工場・研究所の3.800人規模の組合でした。それが販売会社をあわせて1万7000人の規模に拡大します。

 美容職は会社にじゃけにされてもお客様に向き合う中で誰よりも喜びを知っています。お客様を美しくしたいという思いで凛としています。厳しいお客様にも資生堂の看板を背負って1人で向き合います。
 現委員長は営業と一緒に地方の得意先をまわった時に歩き方が変な美容職に気づきました。高卒で入社して3か月くらいのトレーニングを受けて働いています。「どうしたの、足痛いの」 と聞いたら足の後ろ側に物差しを入れています。「何で」 「1日中立って仕事をするのは大変です。座りたくなるから座れないように入れてます。先輩に教わりました」。その店は特に厳しくお昼を食べる時間も与えられません。ロッカーの隅で立って弁当を食べます。

 9割を超える社員が資生堂が大好きです。美容職に限ってはもっとです。美容職は会社からも組合からも一番遠いところにいました。得意先の条件で働いていて、休みもろくに取れないし、大変な仕事です。会社も一番じゃけにしています。言葉では宝とかいいますが実態は違います。その人たちが実は資生堂を支えてくれています。

 その一方で営業本部から一方的に商品が届く 「押し込み販売」 が続いていました。店には商品がいっぱいで悲鳴を上げていました。
 1998年の春闘にむけて中央執行委員会で販売の第一線の女性代議員は 「この問題を何とかしてほしい、そのためなら賃上げはなくてもいい」 と発言しました。会場は一変しました。討論を経て労働組合が会社に改善を要求したのが 「ベースアップゼロ」 の2年続けた要求です。そして 「涙の労使交渉」 を経て 「押し込み販売」 問題を解決させていきます。経営改革運動が始まります。(2012年2月3日の 「活動報告」 参照)


 2005年、新たにはえぬきの前田社長が就任します。前田社長は入社して美容担当をしましたができの悪い営業担当で売り上げ数字があげられなくて苦戦したが美容職から支援をもらったという話を日頃からしていました。
 前田社長と執行部は意見交換の場を持ちました。
「前田さん、美容職にどう向き合うつもりですか」。前田社長は自分の営業時代の話をして 「資生堂の宝だ、カウンセリングをしてお客様の支持をいただけるのは美容職のおかげだ」 と答えました。
 「それは美容職には通用しませんよ。歴代の社長が6代にわたって美容職にしてきたことをご存じないですか。時にはカウンセラーだ、時には売り子だ、ひどい時には販促費になっていたんですよ。人件費ではない扱いをやってきたんですよ」 「どうしたらいい」 「過去に経営がやってきたことに対して一度美容職に謝罪してきちんと清算してください。そのうえで自分の美容職に対する思いを伝え、赤ちゃんができても会社を辞めなくて済む環境、子どもを育てながら働き続けられる環境などを達成し、さらに美容職が望んでいることを実現すると約束してください。これを全国の美容職8000人に直接語りかけてください」
 前田社長は直接自分の思いを伝えていくと約束しました。
 全国10数カ所の会場に美容職を集めました。すべての会場に組合役員も出席しました。ある会場では美容職の多くが泣いていました。

 1990年に育児休暇、91年に育児時間制度を導入しましたが当時は育児休暇も取れませんでした。販売会社の美容職は結婚したり、子どもができたら辞めるのが当たり前でした。お腹が大きくなったら店頭に立つなです。だからマタニティーの制服がありません。
 組合はその象徴的マタニティー制服を導入してくれと要求しながら具体的な制度改定、環境づくりを打ち出します。前田社長はわかったといいますが販売責任者の専務は絶対にのみません。

 マタニティーの制服が導入され、育児休職制度、育児時間がとりやすくなります。この時の取り組みを組合は第一ステージと捉えています。2006年10月、育児時間を取れるように “カンガルースタッフ制度” を導入しました。
 しかし “ほころび” が生じるようになりました。組合から人事に、よかれと思ってやったことでモラルが下がってきた現状を伝え、このまま続けると美容職の位置づけがまた下がってしまうと訴えました。これに対する労使の取り組みが 「資生堂ショック」 です。社員も一緒に意識を変えていくことに挑戦しました。第二ステージと捉えています。第三ステージは介護休暇制度になると捉えています。


 現在も問題はまだあります。
 不合理な格差が、特に工場の中に起きています。総合職と特定職といわれる人たちとパートの三層に分かれていて、使う側と使われる側のような誤解が起きてしまっています。正社員が2割です。嫌な仕事を押し付けられる側は処遇が低いです。いい製品を作ろうと思ったらその人たちの協力といい環境なくしてあり得ません。でも人間のエゴ、優位に立った人間がそういうふうにします。制度がそれを支えているところがあります。
 今、3工場で何回も労使協を開催しています。ありたい姿を描いて、そこに向けて会社を変え、入社のいきさつに関係なくだれもが生き生きと働けるようにする、いいものを作るという役割を持ってそこに見合った処遇にするという議論をしています。
 組合も、総合職が既得権化しているがパートが工場長になったっていいじゃないか、特定職の賃金をあげる、みな仲間だといい合えるように組合も作り変えて温かい組合にしていく、全員を組合員化していけるよう働きかけるということにチャレンジしています。そういうふうに今変わってきています。

 組合の合言葉の1つは 「自分も仲間も幸せである」。自分だけということに対して、組合って違うよというのを残したかった思いがあります。2つめは 「会社の発展は社員の幸せとともにある」。これは組合員に向けたものではなくて経営に向かっての監視です。


 職場の差別は正規・非正規だけではありません。正規労働者の中にも差別があり受け入れている構造があります。そうすると非正規への差別は必然になります。 「自分も仲間も幸せである」 ではありません。
 資生堂労組はその構造を変えていく闘いを経営を監視しながら挑戦しています。 

   「活動報告」 2016.10.28
   「活動報告」 2016.7.12
   「活動報告」 2012.2.3
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国鉄分割民営化から30年  国鉄の赤字はどこに隠された?
2017/02/14(Tue)
 2月14日 (火)

 8日の衆院予算委員会で、麻生太郎副総理はJR北海道の経営危機について、「この話は商売のわかっていない 『学校秀才』 が考えるとこういうことになるという典型ですよ。国鉄を7分割 (・民営化) して 『黒字になるのは三つで他のところはならない』 と当時から鉄道関係者は例外なく思っていましたよ。『分割は反対』 と。経営の分かっていない人がやるとこういうことになるんだなと思ったが、僕は当時力がなかった。今だったら止められたかもしれないとつくづく思う。JR北海道をどうするという話は、なかなか根本的なところを触らずしてやるのは無理だろう。」 と答弁したという報道がありました。

 この発言に対して元国労組合員がレーバーネットに投稿しました。
「30数年前、私の所属していた国鉄労働組合は国鉄の分割・民営化に反対し、組織をかけて闘っていました。それに対して、自民党政権と国鉄当局は、法と道理を無視したあらん限りの組織攻撃によって国労を弱体化し、反対運動を解体しながら分割・民営化を強行しました。この過程では7000名を超す労働者が新会社への採用を拒否され、最終的に1047名の労働者が解雇されましたが、そのほとんどは分割・民営化に反対した国労・全動労の組合員でした。そして、不当解雇された1047名とその家族は、その後20年にわたる解雇撤回闘争を闘わねばならなかったのです。
 国鉄の分割・民営化が北海道・四国・九州三島会社の切り捨てにつながるという主張は、国労が分割・民営化に反対した大きな理由の一つでした。麻生副総理の言葉によれば、鉄道関係者は例外なく (少なくとも) 『分割は反対』 だと思っていたにも関わらず、国鉄の分割・民営化は 『商売のわかっていない 「学校秀才」』 たちの手によって強行され、それに反対して闘った国鉄労働者は 『商売のわかっていない 「学校秀才」』 たちの手によって解雇されたわけです。
 麻生氏は、分割・民営化反対闘争の過程で、100名とも200名とも言われる労働者が自殺したことを知っているのでしょうか? たぶん、知らないのでしょう。そうでなければ、副総理としての国会答弁の中で、こんなにも軽々とした言葉を吐くことはできない。麻生氏は、『僕は当時力がなかった』 から責任がない、自分とは関係がないとでも思っているのでしょうか? 政府が法と道理を無視して強行した分割・民営化の責任は、政府がとらねばならない。
 麻生氏はたぶん、もうあの日々のことを、とやかく言う連中などいないと思っているのでしょう。しかし、弱体化したとはいえ、国労はJRの中で闘い続けています。そして何より、分割・民営化の過程で人生を破壊された多くの国労・全動労組合員とその家族、自死を遂げた国労・全動労組合員の家族は今も生きているのです。われわれはいまだ、歴史から抹殺された訳ではない。
 政府自身が国会の場で、国鉄分割・民営化の過ちを認めた今、私は、無謀な国鉄分割・民営化によって人生を破壊された国鉄労働者とその家族に、そして命を奪われた仲間たちに、今こそ自民党政権が謝罪することを要求します。」

 投稿した彼は、15年11月10日の 「活動報告」 で紹介したJRの東京駅で新幹線の乗車券発売や出改札業務、車いす補助、在来線改札などの業務を担っているJR東日本の協力会社・株式会社JR東日本ステーションサービス (JESS) 東京駅営業所における従業員代表者選挙の闘いを中心で担った方です。分割民営化後も国労の旗を守って頑張り抜きました。


 麻生の発言は本当に軽すぎます。では分割民営化から派生して現在起きている問題は誰がどう責任を取らなければならないというのでしょうか。今北海道で起きていることは自民党政治の連続性の中での結果であり、今の政府に突き付けられている問題です。
 そして投稿にあるように1047人の闘争団は最後まで闘いましたが実際は7000人の労働者を路頭に迷わせました。解雇前には人材活用センターという “リストラ部屋” に収容され、人格、人権が蹂躙されました。その屈辱は死ぬまで忘れられません。そして200人の労働者が自殺に追い込まれましたが、多くがJRが発足する少しまえで、職場で発見されました。国鉄に愛着があった労働者たちでした。麻生はこのようなことにはまったく関心がありません。


 ある研究会で、国鉄労働組合の書記長から 「JR発足30年 『国鉄分割・民営化』 は何をもたらしたか」 のテーマで、北海道の状況を中心にお話をうかがいました。

 国鉄分割民営化が登場したのは赤字解消ということでした。分割民営化された1987年当時は累積37兆円の赤字で財政的に危機に陥っていました。赤字を作った原因は新幹線建設です。商売のわかっていないどころか、商売を知っている者たちが国に赤字を背負わせて自分たちが潤ってきていたのです。そして98年、国鉄清算事業団が解散すると、資産売却などで一部は返済できたがそれでも残った24兆円は国が継承し、一般会計に組み込まれて60年間かけての返済することになります。つまり商売がわかった人たちが作った負債を今も税金で支払いつづけているのです。
 分割民営化の議論がすすめられている最中においても北海道や四国、九州は赤字経営になることははっきりしていました。そのため経営安定基金が与えられました。その運用益で営業損失を補てんするということでした。しかしバブル崩壊で低金利になると基金は減り続けました。基金は 「手切れ金」 と揶揄されていました。底をついたら自助努力です。
 そこでは海外への工場移転などによる地方の切り捨ての判断がすでにおこなわれていました。
 一方、黒字の3社、IR東日本、東海、西日本の株の3割を海外投資家が占めています。儲かるからです。公共交通が投資先になっています。

 今、北海道や、四国、九州では線路の廃止、駅の無人化・自販機、賃金抑制が進んでいます。
 線路別収支で赤字となる路線を除外していくと、2030年には北海道の東側から線路が消えます。東北や中国地方の日本海側からも消えます。九州の東側も消えます。四国では局部的にしか残りません。
 北海道はすでのその状況になろうといています。
 九州が何とか黒字なのは不動産事業によるものです。

 本当にこれでいいのでしょうか。東日本大震災の時、コンビナート火災なども発生し、被災地では石油が不足しました。各地の線路はずたずたになっていました。その時、JR貨物は、横浜・根岸駅から都心・高崎線を経由して日本海側に、そこから会津若松を通って福島・宮城へ、山形・秋田を通って青森から岩手へと線路をつなぎいで無事届けました。鉄道が繋がっていたからこそできました。(14年8月22日の 「活動報告」 参照)
 しかし東日本大震災で被害にあったことを契機に廃止された線もあります。今後災害などが発生した時、被災者は非常時にも自己責任を強いられることになります。これがこの国の政府の姿勢です。

 かつては国鉄の駅を中心に街が作られました。そこからバスが発着していました。駅が消えたら街が消えます。だからこそ鉄道インフラは公的、政策的支援が必要で政治・政府の責任が大きいのです。社会的有用性があるからこそ世界のほとんどの鉄道は赤字です。黒字でなければならないという発想は日本だけです。分割しなかったら赤字にはなりません。


 北海道では、2011年頃から事故が連続しています。労働者に責任が転化されていますが違います。新しい車輌、線路への切り替えは行われていなくて劣化が進んで事故が発生するのはいわば“必然”になっています。安全対策費用が膨大に必要ですがありません。技術力の継承が出来ていません。外注化が進んで現場では判断できないことも増えていて意思の伝達が難しくなっています。しかし列車を止めることは厳しい状況におかれています。このような中で安全文化が崩れています。

 今、北海道では「全道路線を維持すれば5年で破たん」 「単独維持困難路線1237Kの路線廃止・上下分離」 が発表されています。上下分離とは、列車の運行者 (上) とレールなどの鉄道施設の所有者 (下) を分ける事業形態です。不採算路線を残すためには自治体が施設を保有して責任を持ってくれということです。地方を潰していながらその一方での地方自治体の共同責任論は矛盾しています。自治体はすでに疲弊しきっています。


 国鉄分割民営化から30年が経ちますが、現在改めて問い直される政治的課題です。

   「活動報告」 2015.11.10

   「活動報告」 2014.8.22
   「活動報告」 2013.10.4
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