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長時間労働を労働基準法だけで語るのは危険
2016/12/02(Fri)
 12月2日 (金)

 長時間労働は、過大な労働量の強制と監視のもとで行なわれ労働者に裁量権はありません。休息時間も満足にとれていません。長時間労働を労働基準法だけで語るのは危険です。労働者にもたらされる影響を疲労やストレスを考慮されるまでにはなっていますが、それ以上の健康被害が生じる危険性があることや社会生活についてももっと問題にされなければなりません。
 ストレスや過労以外にも、厚労省も心筋梗塞、脳出血、くも膜下出血、急性心不全、虚血性心疾患などの脳や心臓の疾患を引き起こし、過労はストレスからうつ病を引き起こし、自殺にいたった場合もあると発表しています。しかし死亡原因の分析はしても遡った予防対策には繋がっていません。
 使用者は倒れる直前まで長時間労働を強制し、事故が発生すると本当の原因から問題をずらして犯人捜しをして済ませます。その対処方法は福島原発事故への対応にそっくりです。

 時間外労働100時間は日勤と夜勤を連続する 「通し夜勤」 をしかも交代制ではなく連日行なっていることになります。そこでは休息時間も満足にとれていません。
 1988年に西ドイツのルーテンフランツは夜勤の悪影響を予防する9原則・ 「ルーテンフランツ原則」 を提唱し、世界的な対策基準となっています。日本でも看護師協会や航空労連などではきちんと運動方針に盛り込まれています。
 ルーテンフランツの9原則
  1.夜勤は連続3晩まで
  2.夜勤と日勤の交代時刻は早朝を避ける
  3.勤務交代時刻は弾力化を
  4.夜勤の勤務時間は短めに
  5.次の勤務まで10時間以上あける
  6.少なくとも週末を含む2連休をとる
  7.日勤→夜勤より、日勤→夕勤の循環がよい
  8.勤務が一巡する周期を長くしない
  9.夜勤、休日など勤務の配置はなるべく規則的に

 航空労連の政策資料からです。
「2007年WHOの国際がん研究機関は、『交代勤務はおそらく発がん性がある』 と認定しました。発がん性因子の5段階の基準の2番目です。1番目は、人間でも動物でも発がん性が確認されたアスベストなどなどで、夜勤交替制労働は2番目に発がん性が高く、動物実験では発がん性の根拠があると指摘されました。
 夜勤交替制労働者ががんになるリスクが高い原因は、乳がんは夜勤中の人工照明にさらされることによって夜間時間帯に分泌される抗酸化作用や坑腫瘍作用のあるメラトニンが抑制され、エストロゲンが分泌されることによると推測されています。デンマークでは元夜勤交替制労働者の乳がん患者が労災認定されました。男性の場合は、メラトニンが抑制されて、男性ホルモンであるテストロゲンの分泌が上昇して全立腺がんになるリスクが高いと言われています。」

 航空労連の航空機の整備などに従事する地上職職場では、在職中の職員の死亡が少なくありませんがその原因はほとんどがんということです。さらに退職して間もなく亡くなる方もたくさんいますが、原因は同じです。
 労働組合と労働者は、この視点からも警鐘を鳴らす必要があります。


 10月18日付の韓国の毎日労働ニュースに 「22年間夜間交代勤務をして罹った乳癌は労災」 の見出し記事が載りました。(『関西安全センター』 16.10号から引用)
「国内で初めて、夜間交代勤労が乳癌を起こす要因と認定された。長期間の夜間交代勤務を独自の要因と認定して、乳癌の業務上災害の幅を広げたと評価されている。
 金属労組法律院によれば、最近、勤労福祉公団・ソウル業務上疾病判定委員会は、半導体パッケージの組立て業者で22年間夜間交代勤務をし、昨年11月に乳癌で亡くなったL某 (死亡当時46才) さんに、産業災害を認めた。
 ソウル疾判委は 『交代勤務は乳癌の危険を高める要因として知られており、乳癌の発病時まで、Lさんの交代勤務期間が合計22年で、3組3交代をしながら相当な頻度で夜間勤務をした』 とし、『外国の研究事例よりはるかに多くの夜間交代勤務を行い、疾病と災害との相当因果関係が認められる』 と明らかにした。
 国際保険機構傘下の国際癌研究所 (IARC) は、乳癌に関する職業的要因として、X線、ガンマ線、エチレン・オキサイド、交代勤務などを指定している。デンマーク職業病委員会は、20~30年を超えて平均週1回以上の夜間勤務 (23:00~06:00) をした場合、職業病と認定するように勧告している。こうした勤務が乳癌発病の危険を非常に高めると見ているからだ。21年間、病院で毎週3回の夜間勤務をして乳癌に罹った看護師が、職業病と認定された事例もある。
 L氏の場合、1987年にアナム半導体に入社し、乳癌が発症した2009年7月までの22年間、3組3交代で勤務をした。全勤労期間の3分の1以上を夜間に働いた。
 ソウル疾判委は有害物質の暴露については確認が難しいという理由で、夜間交代勤労以外の他の職業的な有害要因については認めなかった。パク・ヒョンヒ公認労務士 (金属労組法律院) は 『半導体の事業場で働く労働者の場合、交代勤務の他にもはるかに多くの有害要因があって、明確な資料によって立証されないという理由だけで残りの有害要因を認めなかったという点は残念』 としながら、『長期間の夜間交代勤務を独自の乳癌の職業的な原因と認定したことは、電子製品製造業だけでなく、病院や航空会社など、夜間交代勤務をする多くの事業場にまで、職業性疾病と業務の関連性を拡大する意味のある判定』 と話した。」

 外国の研究事例を日本には適用できないという理由はありません。厚労省はこのような問題について啓蒙し、労働時間短縮、“働き方・働かせ方” の指導に取り組む必要があります。


 海外で長時間労働と過重労働と健康被害についての研究が進み、対策がとられる同じ時期に、日本では 「24時間働けますか」 と呼びかけるテレビコマーシャルが流され、1998年には労基法が改正されて女性の深夜労働が解禁されました。それに合わせて男性の労働時間もさらに伸びます。
 98年の労基法改正反対運動は全国的な運動が展開されました。総評が解散して以降初めて、瞬間的でしたが厚労省前で連合、全労連、全労協の共闘も実現しました。しかしそこに集まっていたのは、“小さな労働組合” が中心でした。
 いま思うには、本当はこの時に対案として 「男性労働者の深夜労働禁止」 のスローガンが掲げられる必要がありました。
 日本では労働組合においても健康被害についてはほとんど問題にされてきませんでした。そして経済成長、競争力強化のかけ声に合流していきました。その状況が今も続いています。
 長時間労働の問題の根は深いです。


 『メンタルヘルスの労働相談』 (緑風出版) からの引用です。
「労働者の健康問題を労働者の生命、健康が奪われたという観点からではなく、生産性における経済的リスク管理の観点から捉えるのは本質が見えなくなる危険性があり、本末転倒です。……
 2009年9月7日、初めて厚生労働省から自殺やうつ病での失業などによる2009年の経済的損失額の調査結果が発表されました。約2.7兆円です。現在押し進められている行政改革の “無駄” をなくすという視点では長期的 “無駄” そのものです。
 その内訳は、自殺による障害所得の損失額1兆9028億円、うつ病による生活保護の支給額3046億円、うつ病の医療費2971億円、うつ病で休業したことによる賃金所得の損失額1094億円、うつ病での自殺や休業で支給された労災補償給付額456億円、うつ病による求職者給付187億円となっています。
 実際にはもっと大きいと思われます。うつ病で休業したことによる賃金所得の損失額1094億円は少なすぎるように思われます。
これをきっかけとして政府と会社の、積極的取り組みを期待したいと思います。」
 現在、それぞれの数字はかなり増大しています。

 8時間労働を法定化せよという労働者の要求を国際規模で最初に示したのは1864年9月の 「第一インターナショナル」 ・ 「国際労働者協会創立宣言」 です。
 「労働時間の制限こそ、それなしには労働者階級の改善と解放のためのその他一切の企てがむだに終わるような予備的条件である」 ばかりでなく、「あらゆる国民の基幹をなす多数者の体力と健康を回復させるために必要であり」、「知識的発達や社会的交際や社会的・政治的活動の可能性を労働者に返還させるためにも、それにおとらず必要」 のためです。
 労働者がおかれている状況を見つめ直し、心身を “労働者の解放” に向かわせるためです。

 長時間労働禁止を労働基準法で語ると根本的問題が抜け落ちます。


   「長時間労働問題」
   「活動報告」 2016.11.29
   「活動報告」 2016.10.25
   「活動報告」 2016.10.07
  当センター「いじめメンタルヘルス労働者支援センター」ホームページ・ご相談はこちらから
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