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問題は現場で起きている 厚労省は現場の声を聞け
2016/08/30(Tue)
 8月30日(火)

 全国労働安全衛生センター連絡会議は、毎年厚労省と労働安全衛生問題に関してさまざまな交渉を行なっています。
 今年は3月30日に開催しましたが、その時に議論が不十分だったり再回答が必要だった事項などについて再度、事前に質問事項を提出して8月26日に交渉を行ないました。
 3月の交渉から今回までの間には、6月24日に2015年度 「過労死等の労災補償状況」 などの発表などもありましたのでそれをふまえたものになりました。
 その中の職場のいじめと精神障害の労災問題に関してだけ報告します。
 これらの項目について厚労省と交渉をしている団体は、おそらく全国労働安全衛生センターだけだと思われます。


 質問事項です。
「B.労働安全衛生
3.職場のいじめ・嫌がらせパワーハラスメント対策
 (1) 今年度実施が予定されているという職場のパワーハラスメントに関する実態調査において、取
  引先、利用者や顧客などからの暴力行為及び発言等について調査対象とすること。
 (2) 精神障害の労災認定において、「嫌がらせ、いじめ、または暴行をうけたこと」 や 「上司等とのトラ
  ブル」 が原因で業務上となった事例を分析して、どのような対策が必要であるのかを提言する報告書
  をまとめること。」

 厚労省からの回答です。
 (1) への回答。
 厚労省も同じ思いでいます。人格・尊厳は守られなければなりません。前回、今年度に実施すると回答した 「職場のパワーハラスメントに関する実態調査」 はすでに実施しています。そのなかでパワハラに該当する可能性があるものについては誰から受けたのかなどについても広く把握できると考えています。その結果を分析して今後対策を検討したいと考えています。実態調査は精神障害の労災認定の実態を含めたものになっています。

 回答を受けての討論と意見です。
センター 調査は始まっているのでしょうか。そこには取引先などからの被害の項目は入っているのでし
 ょうか。
厚労省 実態調査の調査項目はすでに作成され、調査は始まっています。基本的には職場におけるパ
 ワハラの調査ですので上司とか同僚・部下からのものです。第三者からということでは、誰から被害を
 受けたかということについても回答できるようになっています。その中から第三者のものについても掌
 握できると思います。
  調査は、基本的には今年度の事業として考えていますので年度内の取りまとめを考えています。具
 体的には、まとめは検討委員会がおこないますので公表はいつになるかはっきりとは言えません。
センター 検討委員会はどこになるのですか。
厚労省 調査は委託事業ですが、検討委員会は、「提言」 をまとめた円卓会議です。
センター 調査報告はパブコメの対象になるのでしょうか。報告に対してどのような提案ができるのでし
 ょうか。議論に参加できるのでしょうか。
厚労省 今の段階では決めていません。
センター 調査は前回のことを踏まえてということになると、「提言」 は外部の暴力については抜けてい
 るので今回も触れられていないのではないかと思われます。
  ILOでは 「内部暴力」 「外部暴力」 と使い分けをしていますが、外部暴力について対応していない
 のは日本だけです。なんで対応しないのか疑問です。先ほど、人格・尊厳と言われましたけど、内部
 だけに人格・尊厳があるわけではありません。しかし外部は無視され、人格・尊厳がダブルスランダ
 ードになってしまいます。そうすると解釈があいまいになってしまいます。
  もう1つは、前回、鉄道における暴力にたいする対応は国交相、地方公務員に対しては総務省など
 別々に対応していてもらちが明かないので、「外部暴力」 の問題全体に対して厚労省がイニシアティ
 ブをとって対応したらどうかと提案しました。同じように人格・尊厳のスタンダードが各省によって違う
 ということはないはずだからです。
  この問題は、個別職場の問題ではなく社会的な運動として取り組まれないと解決できませんので、
 そのような運動を提起して取り組んでいただきたいという要請です。
  センター 労災事例も調査の対象になりますということですが事例も検討されているということです
 か。
厚労省 調査は職場のパワーハラスメントということで狭い範囲での調査になります。広い範囲を対象
 にした問題については持ち帰らせてもらいます。
  労災認定事例について取り上げるということは、実は考えていません。先ほどの回答は実態調査の
 中から拾っていくと、労災認定された方も入っていると思われるということです。
センター コンビニの店員が客からハラスメントを受けるということもあります。事業者にとっても従業員
 を守るということで何らかの対応をしなければなりません。しかし対応能力がない、マニュアルがない
 という状況があり、そのことによって体調を崩す人も出てきます。だからこそ今回の実態調査にも加え
 るべきだったと思います。事業者にとっても必要なことです。医療現場でもそうです。
  パワハラは単に上司や同僚ということだけではないので、第三者からの行為や言動などについても
 提言をすべきだという趣旨です。この点の問題意識をもっていただかないと同じような調査をしても変
 わらない結果にしかならないと思います。
厚労省 今の提起はしっかりと持ち帰らせてもらいます。
センター 労災事例の調査・分析を今回の調査には含めてないのだったら、あらためてしてほしいと思
 います。
  今、「一億総活躍プラン」 に 「働き方」 とありますが、労働者の側からは 「働かされ方」 の問題です。
 そのなかで、職場でどういう問題が発生しているかというデータは労災認定の結果だと思います。労
 働者側からの問題提起が浮かび上がってきます。せっかくあるデータを使わないという手はないです。
 そのデータを一億総活躍プランの会議に提出してほしいと思います。
センター 顧客や利用者などから攻撃を受けやすい職場があります。それは厚労省としても認識してい
 ると思います。顧客や利用者などから攻撃は職場環境ということでは一緒ですから当然視野になけれ
 ばなりません。第三者委託するときの基本スタンスを教えていただきたい。
厚労省 「提言」 は 「同じ職場で働く」 ということですので第三者からのパワハラは原則的には外れて
 います。
  そうするとパワハラの定義が正しいのかという議論になってきます。今回は持ち帰らせてもらって考
 えていくということにさせていただきます。
センター 第三者からの問題に対応しないと、逆にパワハラを認めることになってしまいます。
 定義をどう変えるのかということになると、提言を再度提言することになりますが、そこに固執するの
 ではなく、現に起きている問題があり、そこには責任者・管理者の問題も出てきますので、そういうこ
 とに関連付けて対応を変えることは出来るはずです。


 質問事項です。
「4.過重労働による健康障害の防止対策
 (1) タイムカード等で職場にいる時間を客観的に記録させておきながら、それとは別に労働時間を自
  己申告させて確定することは残業時間の改ざんにつながることが多いので、法律で禁止すること。
 (2) 36協定において月80時間を超える時間外労働が可能な特別条項を設定している企業について、
  報告書を提出させているとのことだったが、過去5年間の年度ごとにその件数と業種別を明らかにす
  ること。報告書の書式があれば書式を、なければ報告を求めている内容、事項を明らかにすること。」

 厚労省からの回答です。
 (1) への回答。
 過重労働については、労働時間の現認は使用者の責務で、厚労省も重要であると考えています。そのための労働時間を把握するための基準を策定しています。監督指導においてもこの基準に基づいて適正に管理が行われるように指導を行っています。

 (2) への回答。
 長時間にわたる時間外労働を行なうための 「36協定」 を届け出ている事業場に対しては長時間労働抑制のための自主的取り組みを促進するための点検を指導しています。点検の対象、方法については局の判断で行なっていて一律ではありません。そのため件数については掌握していません。

 回答を受けて (1) (2) あわせた討論と意見です。
センター 36協定については労使が協定を結べば、青天井でできてしまうということが問題だと重々言
 われています。
  自主点検はちゃんと指導していますということですが、実際は過重労働対策、過労死防止対策の中
 でだれもが何とかならないのか、法改正を含めて対応できないのかといっています。その点について
 聞かせてください。
厚労省 自主点検の点については確認を行っている労働局もあり、かつ月80時間超の36協定を提出
 した事業場に対して行政として誠実に自主点検をしているところもあります。局の判断でしています。
  現状の取り組みについては、今年も4月1日から月80時間超の可能性がある事業所については臨
 検監督をするということで対応しています。
センター 4月1日から全47の労働局に1人ずつ長時間労働を監視し、改善を指導する特別監督監理
 官を配置しましたが監督官の数は増えたのでしょうか。
  (厚労省からの回答ではないですが、担当の臨検等の監督官は増えましたが、他の部署から異動し
  てきて対応していますが、監督官の総数は増えていないということでした)


 質問事項です。
「C.労災補償
3.精神障害の労災認定について
 (1) 毎年厚労省が発表している精神障害の労災請求ないし支給件数の統計において、「業種」 (中分
  類) と 「出来事別」 のデータをリンク集計して、どのような業種でどのような出来事が原因で労災認
  定されている事案が多いのか明らかにすること。
 (2) 精神障害の労災補償の認定率が低い愛知労働局や大阪労働局等について 「指導している」 と
  回答したが、どこにどのように指導したのか明らかにすること。
 (3) 労災補償状況について次の点を公表すること。
  【精神障害の労災補償】
   ① 特別な出来事の出来事別の件数
   ② 決定件数のうち、専門部会で判断したもの、専門医の意見で判断したもの、主治医の意見で判
    断したもの各件数と支給、不支給件数。
   ③ 平均処理機関、最長及び最短の決定期間を明らかにすること。
   ④ 長時間労働の最長時間を明らかにすること。
  【脳・心臓疾患の労災補償】
   ① 平均処理期間、最長及び最短の決定期間を明らかにすること。
   ② 長時間労働の最長時間を明らかにすること。
   ③ 認定基準の 「長時間の過重労働」、「異常な出来事への遭遇」、「短時間の過重業務」 それぞ
    れの請求件数、決定件数、支給件数について明らかにすること。」

 厚労省からの回答です。
 (1) について。
 H27年度より 「過労死防止対策法」 に基づき作成された 「過労死等の防止のための対策の大綱」 に根拠をもつ労働安全衛生総合研究所過労死等調査研究センターにおきまして、労災疾病有償研究事業として、過労死等の実態解明と防止対策に関する総合的な労働安全衛生研究を実施しています。
 H27年度のこの調査においては、労働災害として認定された精神障害事案のデータベースを構築しました。本年度は、クロス集計等による分析を実施することになっています。分類が細かくなって、分類ごとの母数が少なくなってしまうがために特徴が得られにくいという可能性もありますが、まずは業種の大分類別と出来事別の集計を行って業巣別の特徴を掴もうとしているところです。調査研究の報告書は毎年9月に公表を予定しています。

 (2) (3) について。
 労災認定につきましては個々の事案で内容が異なりますので、認定率が低いことをもって直ちに当該局に問題があるということにはならないと考えています。ただ日頃から精神障害事案にかかる認定基準に基づく懇切丁寧な調査がなされるように都道府県労働局にたいして必要に応じて全国会議や個別の業務指導などあらゆる機会をとらえて指導しています。
 精神障害の労災補償の状況につきましては報告します。 (後日、別紙で)

 回答を受けて (1) (2) (3) 合わせた討論と意見です。
センター データ分析は、労災認定率が低い局の分析につなげられないかという思いがあります。過重
 労働の分析は、労災認定に活かすということを考えているのか質問します。
厚労省 認定率の問題についての質問だと思いますが、調査研究で行なっているデータベースはどの
 ような内容になるかは今後の話になります。
  現時点で言えることは愛知局、大阪局に限らず、厚労省としては個別に指導は行っていくということ
 です。実施の有無の考え方としては迅速な処理も当然ですが、認定基準に基づく適正な処理が出来
 ているかという視点から、対象を決めて適時に行なっていきたいと考えています。
センター データを認定に活かすものとはしない・・・ 調査の目的には認定基準に活かすことは考えて
 いない・・・
厚労省 出来上がったものをみて活かせる部分があったら活かしていきます。過労死の実態を解明す
 るということが目的ですので、アウトプットをどういう形にするかということについては関係各課と協議し
 ながら検討するということになります。

センター 大阪、愛知に関しましては低いということは分かっていますので、中味を確認していきたいと
 いうことでしたが、毎年低いということに対しては局に対処はしているのでしょうか。
厚労省 問題提起を受けたら厚労省としても確認することになります。しかし具体的にどういう形で行な
 ったかとか内容については回答できません。
センター 愛知は、労働人口の割合からとらえて申請数が少ないです。なおかつ今年の発表では認定
 率も低いです。そこのところには何らかの問題があるととらえざるを得ないです。
  何故そうとらえるのかというと、脳・心臓疾患の認定では、人口比からみてそれなりの申請数があっ
 て、認定率も少し高いです。そうすると愛知の場合には死なないと労災認定にならないという思いにな
 ってしまいます。
  精神疾患について申請しにくい雰囲気があるのかなと思ってしまいます。もう少し行政としての広報
 活動も必要かなと思います。
  もう一点は要請です。今の認定基準は5年前に作成されましたが少し古くなっているきがします。はっ
 きりしているのは、5年前と現在の状況で、非正規労働者の占める割合は圧倒的に増えています。し
 かし認定基準は非正規労働者にとっての人間関係、差別、職場雰囲気、雇用不安の問題などを考慮
 する、検討する出来事の項目がありません。その点を時代に合わせて認定基準に補足してもらえるよ
 う検討してもらえないかなと思います。
厚労省 労働人口に比べて申請件数が少ないということについては、全般的な傾向としては、申請件数
 は年々増加しています。周知は進んでいるととらえています。
  認定基準の非正規雇用の雇用不安については 「嫌がらせ」 の項目の類推・あてはめもできるととら
 えています。意見としては承ります。

センター データベースに労働局別はいれるんですか。局別の出来事のデータも入れてほしいのですが。
厚労省 可能です。ただデータベースを公表するのではなくてそこから得られた結果を公表するというこ
 とです。労働局ごとの公表については研究所に伝えておきます。
センター 今でも東京労働局では、出来事別のデータは要請して出してもらっています。補償課から要請
 があったら出すように全国に周知してもらいたい。
センター 補償課としても、大事な情報をもっているわけだから、もう一歩踏み込んで公表内容を増やした
 方がいい。
厚労省 毎年公表内容は検討しています。引き続きどのような内容を公表するかについて検討していき
 たいと思います。
センター 現在の脳心臓疾患の認定においては、認定の基準が圧倒的に長時間労働に偏っていて、業
 務内容の過重についての認定があまりされなくなっています。長時間労働の認定基準が出来てからそ
 こに偏ってきています。それまでは不規則勤務や夜勤を考慮していたと思われますがだんだんなくなっ
 てきた。公表された数字からも偏っていることがはっきりしています。
厚労省 不規則勤務や夜勤は考慮していますので、まったく加味していないということではないと思いま
 す。現状でも長時間の過重負荷の基準がありますが、そこに達しない場合でも時間以外の付加要因が
 多ければ認定しています。
センター 負荷要因は検討するのだと思いますが、そこに着目して何とか救済・救済につなげるというケ
 ースが少ないです。全体に長時間労働がどれくらいあったのか重視されています。不規則な勤務は考
 慮されません。不規則勤務が増えていますので、その点も付加的要因として加味されるよう、出来るだ
 け救済・保障につなげることが必要だと思いますので要請します。


   「活動報告」 2016.7.8
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