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問題は現場で起きている 厚労省は現場の声を聞け
2016/08/30(Tue)
 8月30日(火)

 全国労働安全衛生センター連絡会議は、毎年厚労省と労働安全衛生問題に関してさまざまな交渉を行なっています。
 今年は3月30日に開催しましたが、その時に議論が不十分だったり再回答が必要だった事項などについて再度、事前に質問事項を提出して8月26日に交渉を行ないました。
 3月の交渉から今回までの間には、6月24日に2015年度 「過労死等の労災補償状況」 などの発表などもありましたのでそれをふまえたものになりました。
 その中の職場のいじめと精神障害の労災問題に関してだけ報告します。
 これらの項目について厚労省と交渉をしている団体は、おそらく全国労働安全衛生センターだけだと思われます。


 質問事項です。
「B.労働安全衛生
3.職場のいじめ・嫌がらせパワーハラスメント対策
 (1) 今年度実施が予定されているという職場のパワーハラスメントに関する実態調査において、取
  引先、利用者や顧客などからの暴力行為及び発言等について調査対象とすること。
 (2) 精神障害の労災認定において、「嫌がらせ、いじめ、または暴行をうけたこと」 や 「上司等とのトラ
  ブル」 が原因で業務上となった事例を分析して、どのような対策が必要であるのかを提言する報告書
  をまとめること。」

 厚労省からの回答です。
 (1) への回答。
 厚労省も同じ思いでいます。人格・尊厳は守られなければなりません。前回、今年度に実施すると回答した 「職場のパワーハラスメントに関する実態調査」 はすでに実施しています。そのなかでパワハラに該当する可能性があるものについては誰から受けたのかなどについても広く把握できると考えています。その結果を分析して今後対策を検討したいと考えています。実態調査は精神障害の労災認定の実態を含めたものになっています。

 回答を受けての討論と意見です。
センター 調査は始まっているのでしょうか。そこには取引先などからの被害の項目は入っているのでし
 ょうか。
厚労省 実態調査の調査項目はすでに作成され、調査は始まっています。基本的には職場におけるパ
 ワハラの調査ですので上司とか同僚・部下からのものです。第三者からということでは、誰から被害を
 受けたかということについても回答できるようになっています。その中から第三者のものについても掌
 握できると思います。
  調査は、基本的には今年度の事業として考えていますので年度内の取りまとめを考えています。具
 体的には、まとめは検討委員会がおこないますので公表はいつになるかはっきりとは言えません。
センター 検討委員会はどこになるのですか。
厚労省 調査は委託事業ですが、検討委員会は、「提言」 をまとめた円卓会議です。
センター 調査報告はパブコメの対象になるのでしょうか。報告に対してどのような提案ができるのでし
 ょうか。議論に参加できるのでしょうか。
厚労省 今の段階では決めていません。
センター 調査は前回のことを踏まえてということになると、「提言」 は外部の暴力については抜けてい
 るので今回も触れられていないのではないかと思われます。
  ILOでは 「内部暴力」 「外部暴力」 と使い分けをしていますが、外部暴力について対応していない
 のは日本だけです。なんで対応しないのか疑問です。先ほど、人格・尊厳と言われましたけど、内部
 だけに人格・尊厳があるわけではありません。しかし外部は無視され、人格・尊厳がダブルスランダ
 ードになってしまいます。そうすると解釈があいまいになってしまいます。
  もう1つは、前回、鉄道における暴力にたいする対応は国交相、地方公務員に対しては総務省など
 別々に対応していてもらちが明かないので、「外部暴力」 の問題全体に対して厚労省がイニシアティ
 ブをとって対応したらどうかと提案しました。同じように人格・尊厳のスタンダードが各省によって違う
 ということはないはずだからです。
  この問題は、個別職場の問題ではなく社会的な運動として取り組まれないと解決できませんので、
 そのような運動を提起して取り組んでいただきたいという要請です。
  センター 労災事例も調査の対象になりますということですが事例も検討されているということです
 か。
厚労省 調査は職場のパワーハラスメントということで狭い範囲での調査になります。広い範囲を対象
 にした問題については持ち帰らせてもらいます。
  労災認定事例について取り上げるということは、実は考えていません。先ほどの回答は実態調査の
 中から拾っていくと、労災認定された方も入っていると思われるということです。
センター コンビニの店員が客からハラスメントを受けるということもあります。事業者にとっても従業員
 を守るということで何らかの対応をしなければなりません。しかし対応能力がない、マニュアルがない
 という状況があり、そのことによって体調を崩す人も出てきます。だからこそ今回の実態調査にも加え
 るべきだったと思います。事業者にとっても必要なことです。医療現場でもそうです。
  パワハラは単に上司や同僚ということだけではないので、第三者からの行為や言動などについても
 提言をすべきだという趣旨です。この点の問題意識をもっていただかないと同じような調査をしても変
 わらない結果にしかならないと思います。
厚労省 今の提起はしっかりと持ち帰らせてもらいます。
センター 労災事例の調査・分析を今回の調査には含めてないのだったら、あらためてしてほしいと思
 います。
  今、「一億総活躍プラン」 に 「働き方」 とありますが、労働者の側からは 「働かされ方」 の問題です。
 そのなかで、職場でどういう問題が発生しているかというデータは労災認定の結果だと思います。労
 働者側からの問題提起が浮かび上がってきます。せっかくあるデータを使わないという手はないです。
 そのデータを一億総活躍プランの会議に提出してほしいと思います。
センター 顧客や利用者などから攻撃を受けやすい職場があります。それは厚労省としても認識してい
 ると思います。顧客や利用者などから攻撃は職場環境ということでは一緒ですから当然視野になけれ
 ばなりません。第三者委託するときの基本スタンスを教えていただきたい。
厚労省 「提言」 は 「同じ職場で働く」 ということですので第三者からのパワハラは原則的には外れて
 います。
  そうするとパワハラの定義が正しいのかという議論になってきます。今回は持ち帰らせてもらって考
 えていくということにさせていただきます。
センター 第三者からの問題に対応しないと、逆にパワハラを認めることになってしまいます。
 定義をどう変えるのかということになると、提言を再度提言することになりますが、そこに固執するの
 ではなく、現に起きている問題があり、そこには責任者・管理者の問題も出てきますので、そういうこ
 とに関連付けて対応を変えることは出来るはずです。


 質問事項です。
「4.過重労働による健康障害の防止対策
 (1) タイムカード等で職場にいる時間を客観的に記録させておきながら、それとは別に労働時間を自
  己申告させて確定することは残業時間の改ざんにつながることが多いので、法律で禁止すること。
 (2) 36協定において月80時間を超える時間外労働が可能な特別条項を設定している企業について、
  報告書を提出させているとのことだったが、過去5年間の年度ごとにその件数と業種別を明らかにす
  ること。報告書の書式があれば書式を、なければ報告を求めている内容、事項を明らかにすること。」

 厚労省からの回答です。
 (1) への回答。
 過重労働については、労働時間の現認は使用者の責務で、厚労省も重要であると考えています。そのための労働時間を把握するための基準を策定しています。監督指導においてもこの基準に基づいて適正に管理が行われるように指導を行っています。

 (2) への回答。
 長時間にわたる時間外労働を行なうための 「36協定」 を届け出ている事業場に対しては長時間労働抑制のための自主的取り組みを促進するための点検を指導しています。点検の対象、方法については局の判断で行なっていて一律ではありません。そのため件数については掌握していません。

 回答を受けて (1) (2) あわせた討論と意見です。
センター 36協定については労使が協定を結べば、青天井でできてしまうということが問題だと重々言
 われています。
  自主点検はちゃんと指導していますということですが、実際は過重労働対策、過労死防止対策の中
 でだれもが何とかならないのか、法改正を含めて対応できないのかといっています。その点について
 聞かせてください。
厚労省 自主点検の点については確認を行っている労働局もあり、かつ月80時間超の36協定を提出
 した事業場に対して行政として誠実に自主点検をしているところもあります。局の判断でしています。
  現状の取り組みについては、今年も4月1日から月80時間超の可能性がある事業所については臨
 検監督をするということで対応しています。
センター 4月1日から全47の労働局に1人ずつ長時間労働を監視し、改善を指導する特別監督監理
 官を配置しましたが監督官の数は増えたのでしょうか。
  (厚労省からの回答ではないですが、担当の臨検等の監督官は増えましたが、他の部署から異動し
  てきて対応していますが、監督官の総数は増えていないということでした)


 質問事項です。
「C.労災補償
3.精神障害の労災認定について
 (1) 毎年厚労省が発表している精神障害の労災請求ないし支給件数の統計において、「業種」 (中分
  類) と 「出来事別」 のデータをリンク集計して、どのような業種でどのような出来事が原因で労災認
  定されている事案が多いのか明らかにすること。
 (2) 精神障害の労災補償の認定率が低い愛知労働局や大阪労働局等について 「指導している」 と
  回答したが、どこにどのように指導したのか明らかにすること。
 (3) 労災補償状況について次の点を公表すること。
  【精神障害の労災補償】
   ① 特別な出来事の出来事別の件数
   ② 決定件数のうち、専門部会で判断したもの、専門医の意見で判断したもの、主治医の意見で判
    断したもの各件数と支給、不支給件数。
   ③ 平均処理機関、最長及び最短の決定期間を明らかにすること。
   ④ 長時間労働の最長時間を明らかにすること。
  【脳・心臓疾患の労災補償】
   ① 平均処理期間、最長及び最短の決定期間を明らかにすること。
   ② 長時間労働の最長時間を明らかにすること。
   ③ 認定基準の 「長時間の過重労働」、「異常な出来事への遭遇」、「短時間の過重業務」 それぞ
    れの請求件数、決定件数、支給件数について明らかにすること。」

 厚労省からの回答です。
 (1) について。
 H27年度より 「過労死防止対策法」 に基づき作成された 「過労死等の防止のための対策の大綱」 に根拠をもつ労働安全衛生総合研究所過労死等調査研究センターにおきまして、労災疾病有償研究事業として、過労死等の実態解明と防止対策に関する総合的な労働安全衛生研究を実施しています。
 H27年度のこの調査においては、労働災害として認定された精神障害事案のデータベースを構築しました。本年度は、クロス集計等による分析を実施することになっています。分類が細かくなって、分類ごとの母数が少なくなってしまうがために特徴が得られにくいという可能性もありますが、まずは業種の大分類別と出来事別の集計を行って業巣別の特徴を掴もうとしているところです。調査研究の報告書は毎年9月に公表を予定しています。

 (2) (3) について。
 労災認定につきましては個々の事案で内容が異なりますので、認定率が低いことをもって直ちに当該局に問題があるということにはならないと考えています。ただ日頃から精神障害事案にかかる認定基準に基づく懇切丁寧な調査がなされるように都道府県労働局にたいして必要に応じて全国会議や個別の業務指導などあらゆる機会をとらえて指導しています。
 精神障害の労災補償の状況につきましては報告します。 (後日、別紙で)

 回答を受けて (1) (2) (3) 合わせた討論と意見です。
センター データ分析は、労災認定率が低い局の分析につなげられないかという思いがあります。過重
 労働の分析は、労災認定に活かすということを考えているのか質問します。
厚労省 認定率の問題についての質問だと思いますが、調査研究で行なっているデータベースはどの
 ような内容になるかは今後の話になります。
  現時点で言えることは愛知局、大阪局に限らず、厚労省としては個別に指導は行っていくということ
 です。実施の有無の考え方としては迅速な処理も当然ですが、認定基準に基づく適正な処理が出来
 ているかという視点から、対象を決めて適時に行なっていきたいと考えています。
センター データを認定に活かすものとはしない・・・ 調査の目的には認定基準に活かすことは考えて
 いない・・・
厚労省 出来上がったものをみて活かせる部分があったら活かしていきます。過労死の実態を解明す
 るということが目的ですので、アウトプットをどういう形にするかということについては関係各課と協議し
 ながら検討するということになります。

センター 大阪、愛知に関しましては低いということは分かっていますので、中味を確認していきたいと
 いうことでしたが、毎年低いということに対しては局に対処はしているのでしょうか。
厚労省 問題提起を受けたら厚労省としても確認することになります。しかし具体的にどういう形で行な
 ったかとか内容については回答できません。
センター 愛知は、労働人口の割合からとらえて申請数が少ないです。なおかつ今年の発表では認定
 率も低いです。そこのところには何らかの問題があるととらえざるを得ないです。
  何故そうとらえるのかというと、脳・心臓疾患の認定では、人口比からみてそれなりの申請数があっ
 て、認定率も少し高いです。そうすると愛知の場合には死なないと労災認定にならないという思いにな
 ってしまいます。
  精神疾患について申請しにくい雰囲気があるのかなと思ってしまいます。もう少し行政としての広報
 活動も必要かなと思います。
  もう一点は要請です。今の認定基準は5年前に作成されましたが少し古くなっているきがします。はっ
 きりしているのは、5年前と現在の状況で、非正規労働者の占める割合は圧倒的に増えています。し
 かし認定基準は非正規労働者にとっての人間関係、差別、職場雰囲気、雇用不安の問題などを考慮
 する、検討する出来事の項目がありません。その点を時代に合わせて認定基準に補足してもらえるよ
 う検討してもらえないかなと思います。
厚労省 労働人口に比べて申請件数が少ないということについては、全般的な傾向としては、申請件数
 は年々増加しています。周知は進んでいるととらえています。
  認定基準の非正規雇用の雇用不安については 「嫌がらせ」 の項目の類推・あてはめもできるととら
 えています。意見としては承ります。

センター データベースに労働局別はいれるんですか。局別の出来事のデータも入れてほしいのですが。
厚労省 可能です。ただデータベースを公表するのではなくてそこから得られた結果を公表するというこ
 とです。労働局ごとの公表については研究所に伝えておきます。
センター 今でも東京労働局では、出来事別のデータは要請して出してもらっています。補償課から要請
 があったら出すように全国に周知してもらいたい。
センター 補償課としても、大事な情報をもっているわけだから、もう一歩踏み込んで公表内容を増やした
 方がいい。
厚労省 毎年公表内容は検討しています。引き続きどのような内容を公表するかについて検討していき
 たいと思います。
センター 現在の脳心臓疾患の認定においては、認定の基準が圧倒的に長時間労働に偏っていて、業
 務内容の過重についての認定があまりされなくなっています。長時間労働の認定基準が出来てからそ
 こに偏ってきています。それまでは不規則勤務や夜勤を考慮していたと思われますがだんだんなくなっ
 てきた。公表された数字からも偏っていることがはっきりしています。
厚労省 不規則勤務や夜勤は考慮していますので、まったく加味していないということではないと思いま
 す。現状でも長時間の過重負荷の基準がありますが、そこに達しない場合でも時間以外の付加要因が
 多ければ認定しています。
センター 負荷要因は検討するのだと思いますが、そこに着目して何とか救済・救済につなげるというケ
 ースが少ないです。全体に長時間労働がどれくらいあったのか重視されています。不規則な勤務は考
 慮されません。不規則勤務が増えていますので、その点も付加的要因として加味されるよう、出来るだ
 け救済・保障につなげることが必要だと思いますので要請します。


   「活動報告」 2016.7.8
  当センター「いじめメンタルヘルス労働者支援センター」ホームページ・ご相談はこちらから
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インターバル制度で労働時間の自主規制を
2016/08/26(Fri)
 8月26日 (金)

 7月10日の日経新聞に、業務の終業時から次の始業時間までに、休息や睡眠時間を確保する 「勤務間インターバル制」 を導入している2社の事例が載りました。
 リコーは2014年から全部門で午後8時以降の残業禁止の制度を導入しました。午後8時まで残業しても、翌日午前9時の始業までに13時間のインターバルが自動的に得られます。午前9時から午後3時半をコアタイムとしています。午前7時から出勤可能なフレックスタイム制も導入されています。これらを活用してビジネススクールに通学したり、友人と交流、ジムに通うなどでリフレッシュすることが可能だといいます。
 実は、以前からフレックスタイム制を導入していましたが、「当時、社員の出社時間がどんどん遅くなり、非効率な残業が増えた。そこで午後8時以後の残業禁止を核とした新制度にした」 ということです。導入効果は大きく、以前は年間約1,900時間だった社員の平均労働時間は14年度に1,876時間、15年度に1,849時間に減ったといいます。

 もう1社は、前橋市に本社がある群馬県などで約50店を展開するスーパーマーケット・フレッセイです。今年の春季労使交渉でインターバル時間11時間の導入を獲得しました。店の営業時間は午前9時から午後11時までですので部門ごとに勤務スケジュールを組んでいます。労組委員長は 「残業圧縮ばかり考えていたが、インターバル制は休息時間を確保して健康と生活を大切にする考え方。社員にとっても発想の転換で、導入の意義は大きい」 と話しています。
 会社は 「インターバル制には、労使とも残業に頼らない環境をつくる上での “歯止め” の意味がある」 と話し、同時に 「導入によるイメージアップで社員の採用に効果が出るかも」 と期待しています。


 国際基準であるEU労働時間指令は、インターバルを11時間以上としています。EUにもイレギュラーに長時間労働はあります。そのなかでも睡眠時間8時間、通勤時間2時間、生活時間1時間の最低時間の確保を保障されます。
 しかし日本にはインターバル制について労働法上の定義はありません。そのため制度設計は各企業の労使に任されています。
 最初の導入例は、1972年の情報通信設備建設労働組合連合会 (通建連合) 傘下の東北情報インフラユニオンが、当時の電話工事ラッシュに対応するため結んだ、実質インターバル制の労使協定とみられます。
 通建連合には 「夜中工事などでインターバル時間が翌朝の始業時間に重なった場合、重なった時間は非就労でも働いたものとみなす」 という独自性をもっています。(2014/04/18の「活動報告」参照)

 厚生労働省は今年3月に、「過労死等に関する実態把握のための社会面の調査研究報告書」 を発表しました。目的は 「企業における従業員の勤務実態や企業の労務管理の現状を把握し、企業における有効な健康管理やメンタルヘルス対策等を明らかにすること」 です。企業 (団体を含む) 10,154 社を無作為抽出し、企業を対象としたアンケート調査を実施しました。回収数は1,743件でした (回収率17.2%)。回収率が低いということは質問項目にあるようなことに取り組めていないということで回答を回避したり、関心が薄いということだと思われますので回答から導き出される数字を問題掌握のための平均値とみることはできません。

 そのうえで勤務間インターバル制度導入状況について検討してみます。
 回答数1,743社で、そのうち勤務間インターバル制度を導入している企業は39社2.2%、無回答2.9%でした。
 勤務間インターバル制度を導入している企業における (1社が2.56%に相当) 確実にインターバル時間を確保しなければならない時間は、最も多いのが 「7時間超8時間以下」 28.2% (11社)、次いで 「11時間超12時間以下」 12.8% (5社)、「10時間超12時間以下」 7.7% (3社)、「5時間以下」 7.7% (3社)、「無回答」 20.5% (8社) です。
 「5時間以下」 は連続勤務を禁止して仮眠を保障するということでしょうか。「12時間超」 が15.4% (6社) ありますが、リコーのような残業禁止が実質インターバル制度導入という解釈になっていると思われます。
 導入していない場合の今後の導入意向については、回答数1.654社中、「導入する予定である」 が0.4%、「導入の是非を検討したい」 が8.2%、「導入の是非を検討する予定はない」 が60.5%でした。


 通建連合を傘下に持つ情報産業労働組合連合会は、2015年1月にパンフレット 『「勤務間インターバル制度」 の導入に向けて』 を作成しました。
 その中の 「勤務間インターバル制度」 の必要性についてです。
 「勤務間インターバル制度導入の第1の目的は、休息時間を確保することによる労働者の健康の確保です。長時間労働は、労働者の疾病 (脳・心臓疾患ならびに精神疾患など) をもたらす危険性を高めます。毎日の労働の後に、休息を取り、必要な睡眠時間を確保することは、労働者の心身の健康を守る上で非常に重要なことであり、当然求めるべきものです。
 しかし、日本の労働時間規制には、「休息の確保」 という観点は無いため、労使の自主的な取り組みによって、直接的にその確保を保障するのが 「勤務間インターバル制度」 導入の目的です。
 最近の研究では、睡眠による心身の疲労回復の働きがより明確になってきています。睡眠が不足すると、心身の健康上の問題などにつながります。睡眠不足は結果的に仕事の能率を低下させ、さらには、眠気による事故につながることも明らかになっています。また、 睡眠不足が蓄積すると、休日にまとめて睡眠を取っても、すぐには疲労回復しないことも分かってきました。したがって、疲労をためないためには、毎日十分な睡眠を取ることが大切なのです。必要な睡眠時間は個人によって異なるとはいっても、1日の睡眠時間が6時間未満になると、循環器疾患のリスクが高まることが分かっているほか、居眠り運転や交通事故の割合が高くなるという調査結果も明らかになっています。」

 情報産業労働組合連合会参加の通建連合の導入事例を紹介します。
「<導入の背景と経緯>
 従来から建設産業特有の職場実態として、長時間労働が発生しやすい状況だった。ICTの高度化・多様化に伴い、一般企業や店舗等の工事が増加し、顧客が事業で使用しない夜間・休日の工事が増えており、現場の負荷が高くなっていた。情報労連が2009春闘でインターバル規制導入に向けた労使協議の促進の方針を掲げたこと を受け、春闘方針で 「ワーク・ライフ・バランスの実現に向けた取り組み」 として、「時間外労働を含めた長時間労働の一定の歯止め、さらには疲労の回復」 を目的に、勤務間インターバ ル制度を要求し、協定化に至った。
 <制度の内容>
 労組の協定では、以下に示すように、①1日の時間外労働の最長時間の定め、②休息時間の定め、③休息時間が勤務時間に及んだ場合のみなし勤務の定め――の3点が含まれていることが特徴である。
 【協定内容】
 1) 会社は、「時間外労働及び休日労働に関する協定」 (三六協定) に定める内容により時間外労働
  を命ずる場合、従業員の疲労回復及び健康維持を図るため、以下により実施するものとする。
 2) 1日の所定労働時間 (7.5時間) を超えて、引き続き時間外労働をする場合の最長時間は、7時
  間以内とする。
 3) 時間外労働の終了時から翌日の勤務開始時まで、8時間の休息時間を付与した後でなければ勤
  務させてはならない。なお、この場合に勤務時間が当該勤務日の勤務時間に満たない時間につい
  ては、勤務したものとみなすこととする。
 <導入効果>
 なお、「勤務間インターバル制度」 を導入した場合の効果として、実際に寄せられている職場の声は以下のとおり。
 1) 工事等の予定線表を組む際に、作業時間が長時間とならないよう、効率的に組む等、休息時間確保を念頭
  に入れた工事計画が立案されるようになった。深夜の時間帯 (22時以降) の勤務については、従来は連続して
  働いていたが、ローテーションを組んで働くようになった。
 2) 労働時間や作業時間に対する組織全体の認識が高まり、仕事に対するメリハリが出て、オンと
  オフ (ワーク・ライフ・バランス) の意識が高まり、ダラダラと残業しなくなった。
 3) 勤務間インターバル制度が浸透して、休息時間が翌日の勤務時間に及んでも、気兼ねなく出勤
  できるようになった。


 『パンフレット』 は他の産業についても紹介しています。
 スーパーマーケット・フレッセイなどが加盟しているゼンセン同盟の流通部門の労組の事例です。
「シフト作成時に、勤務と勤務の間に12時間の休息時間の確保を義務付けている。その上で、時間外労働を含めた実際の終業時刻から次の始業時刻までの休息時間確保についても、努力義務としている。
 また、12時間のインターバルが確保できなかった場合は、その間の勤務を 「時間外労働」 として扱うことを定めているのが特徴となっている。
 【協定内容】
 【協定締結にあたっての考え方】
 1) 勤務予定設定にあたっては、当日の勤務日の予定終業時刻と翌日勤務日の予定始業時刻の間隔を
  12時間以上とすることとする。
 2) 上記に則り、12時間以上の間隔が確保できない組み合わせでの勤務予定は設定しないこととする。
 【協定締結にあたっての考え方】
 1) 目的
  当日退勤時間と翌日出勤時間との間隔 (インターバル) を規制することにより、従業員の生活時間の
  確保、および長時間労働の抑止につなげる。
 2) 休息時間数
  確保する休息時間数は12時間とする。
 3) インターバルの対象となる終業・始業時間について
  所定労働時間における予定始終業時刻を対象とする。
  ※ただし、事前に予定された時間外労働も含めて休息時間を確保することに努める。
  4) 休息時間が確保できなかった場合の対応について
  所定労働時間におけるインターバルが12時間に満たない時間分を時間外労働として扱う。


 日本の労働時間規制にはさまざまな困難な問題がありますが、労使の自主的な取り組みで保障させることは可能です。その1つが 「勤務間インターバル制度」 です。

 8時間労働は、中世の職人が8時間働いていたとか (日本の中世は8時間も働らかなかった)、イギリスの諺によるといわれています。実際にこれらは労働科学的に労働力の再生産という 「休息の確保」 の観点からも根拠づけられます。
 しかし機械化や技術が進み、労働密度が濃くなるとかえって労働時間が増大をつづけ、8時間労働を越えた労働時間になっていきました。
 労働時間に、労働者の側から歯止めをかけなければなりません。そのなかで8時間の労働、8時間の睡眠、8時間の生活時間という分配が主張され始めました。労働時間と生活時間がイーブンです。8時間の生活時間は 「休息の確保」 だけでなく、豊かな文化生活を送るためのものでもあります。

 労働時間の短縮に向けてさらなるさまざなな創意工夫による取り組みが必要です。

  「活動報告」 2014.4.18
 『「勤務間インターバル制度」 の導入に向けて』
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「申し訳ありません」 には責任も連帯感もない
2016/08/23(Tue)
 8月23日(火)

 うるさかったオリンピックがやっと終わりました。
 夏目漱石は、「五月蠅」 と書いてうるさいと読ませましたが、「オリンピックアナウンサー」 と書いてもうるさいと読みたくなります。
 関心がないというよりは嫌いな者たちにとってはかなり行動が制限される期間でした。
 テレビ中継は観なければいいのですが、ニュース番組も占領します。新聞もそうです。チャンネルを回しても同じ場面が映ります。結局は消してしまいます。
 グローバル化が進んだと言われ、さまざまな国籍を所有する人たちが生活する社会で、1つの国籍の選手を応援しなければならない理由はありません。ナショナリズムをあおるアナウンサーの偏った絶叫には逆に恐怖を感じてしまいます。

 平和の祭典? この言い方を一番白々しいと思って聞いているのは、現在オリンピック関係の組織・運営に携わっている人たちです。1980年のモスクワオリンピックに参加できなかった選手たちは、今も政治の駆け引きに利用されて引き回される式典で、平和の祭典などとは思っていません。周囲がそう煽っているだけです。
 平和の式典なら、オリンピック委員会は中東など各地の紛争地域に対して開催期間だけでも停戦しよう、人びとに恐怖を忘れて過ごせる日常を一緒に噛みしめようと呼びかけることは出来なかったのでしょうか。
 日本政府は、沖縄・高江でのヘリパット基地建設をやめることができなかったのでしょうか。住民は、工事用車輌の通行を阻止するため、排除されても排除されても戻って座り込みを続けました。日本では 「8月は 6日9日 15日」 (永六輔の俳句) です。そしてお盆でした。


 平和の祭典ではなくても日本にはやるべきことがありました。
 2012年8月31日の 「活動報告」 のコピーです。
 (12年)7月29日、オリンピックが開催されているロンドンで、元サッカー選手の中田英寿や元陸上選手の為末大らが実行委員となって、世界の人たちに東日本大震災の支援に感謝の気持ちを伝えるイベント 「ARIGATO in London」 が開催されました。日本の文化を紹介するコーナーも設けられました。そして 「ありがとう」 の文字が83か国の言葉で次々と現れる映像も流されました。
 テレビ、新聞などが連日、これでもかこれでもかとナショナリズムを煽り続ける陰での目立たないイベントでした。
 中田選手、為末選手、本当に 「ARIGATO」 「ありがとう」 ございます。

 本当は、個人やグループではなく、日本政府の役割でした。今回こそ世界の人たちに 「ARIGATO」 と伝えるチャンスではなかったでしょうか。

 アナウンサーのナショナリズムの煽りと選手のインタビューでの発言、特に勝てなかったことに対する謝罪は同根です。
 8月20日の日刊スポーツに元陸上競技選手の為末大氏が 「日本選手はなぜ謝るのか」 を寄稿しています。全文です。

 現役時代にはあまり気がつかなかったが、引退してからミックスゾーンにメディア側として立って、あらためて感じたのは日本選手のインタビューの特異さだ。成績が悪かった時のアメリカ選手が、自分なりの敗戦理由と次の目標を語るのに比べ、涙を流しながら 「期待に応えられずに申し訳なかった」 と謝罪し続ける選手を見ていて胸が苦しかった。
 日本の選手のインタビューは似通っていると言われるが、私はその一端に、この謝罪の要求というのがあるのではないかと思う。負けた原因を分析したら言い訳と批判され、純粋な感覚を表現すれば負けたのにヘラヘラしていると言われる。選手にとっては競技をすることが一番大事だから、変なことで社会から反感を買いたくない。結局、一番問題が起きにくい謝罪一辺倒の受け答えになっていく。
 選手に謝罪を要求することの弊害が2つある、と私は考えている。1つは、五輪という舞台で選手が一体どう感じたのかという、その瞬間にその人しか語れない言葉にふたをしてしまう可能性があるということだ。勝ち負けを超えて、世界の頂点の舞台で感じたことや、やろうとしたことを聞けるのは、社会にとって大きな学びになるはずだ。
 もう1つは、この国から挑戦心がなくなってしまうことだ。彼らは長い間トレーニングをしてきて、挑戦をし、勝ち抜いて代表になった選手たちだ。その選手たちの挑戦の部分を評価しないで、最後の結果だけで批判をする。そうなれば子供たちも社会も、挑戦をすること自体をやめていく。
 一体どの程度の割合で批判をしている人がいるかというと、私はごく少数ではないかと考えている。私も含め多くの人は挑戦自体が素晴らしいし、一生懸命やってきたのは自分なんだから、自分の気持ちを素直に出せばいいと感じていると思う。
 日本はこれから厳しい局面を迎える。超高齢社会を迎える中で、挑戦できる人たちが自分らしく挑戦をしていかないと生産性も高まらず、国が衰退していく。結果は運だが、挑戦は意思だ。挑戦をするという意思を持って厳しいトレーニングをし、その場に立った。結果の前にそのことをまず尊敬し、そこから姿勢を学ぼうとする社会であってほしいと私は思う。


 日本では 「申し訳ありません」 が乱発されます。語源は申し訳・言い訳することはいっさいありませんという、自分を一方的に全否定する対応です。
 労働者が営業先の顧客対応や接客などのときに発せられます。ノルマを達成できない時の上司への報告もそうです。謝罪することが解決の近道、免罪される手段だととらえられています。
 しかしそこに至るプロセスが問題とされないと解決に向かう一体感は作られません。関係性は壊れたままで、実態は何も解決しません。受け入れる上司は何も指導・教育しません。
 一番戸惑って出口を見つけられないでいるのは当該です。結局は発する側も、聞く側も無責任がはびこり、本当の連帯感はありません。労働者を孤立に陥らせる言葉です。
 オリンピックを観戦し、応援していると言いながらナショナリズムを煽っているファンはアウトプットというノルマだけを問題にする上司と同じです。
 

 東京オリンピックにむけてまた 「お・も・て・な・し」 が言われ始めました。
 東京への決定には裏金が動いていたことが明らかになりました。しかし別の事件が大げさに取り上げられてかき消されてしまっています。「お・も・て・な・し」 (表なし) には 「裏があり」 でした。
 また、その裏で、東日本大震災の復興事業をないがしろにされ、オリンピック工事に金も人材も資材も集中しています。仮設住宅にはまだまだ大勢の人が残っています。
 ここでも 「お・も・て・な・し」 (表なし)ではなく 「裏があり」 です。忘れてはいけません。


 スポーツとは負かすことなのでしょうか。選手は、他者のことなど考えず、自分のために頑張り、成長した、強くなったという結果を自分でジャッジできればそれでいいです。誰のためにも頑張る必要などありません。
 指導してもらった方がたや、応援してくれた人たちには 「ARIGATO」 「ありがとう」 で充分です。もっと自己を大切にしてほしいと思います。

 オリンピックの最中にスマップの解散が報じられました。経過はどうだったのかがさまざま推測されていますが、放映の都度、バックでは 「世界に一つだけの花」 が流されていました。

   花屋の店先に並んだ
   いろんな花をみていた
   ひとそれぞれ好みはあるけど
   どれもみんなきれいだね
   この中で誰が一番だなんて
   争う事もしないで
   バケツの中誇らしげに
   しゃんと胸を張っている

   それなのに僕ら人間は
   どうしてこうも比べたがる?
   一人一人違うのにその中で
   一番になりたがる?

   そうさ 僕らは
   世界に一つだけの花
   一人一人違う種を持つ
   その花を咲かせることだけに
   一生懸命になればいい
    ……
   そうさ 僕らも
   世界に一つだけの花
   一人一人違う種を持つ
   その花を咲かせることだけに
   一生懸命になればいい

   小さい花や大きな花
   一つとして同じものはないから
   No.1にならなくてもいい
   もともと特別な Only one

 これこそが本当のオリンピック精神ではないでしょうか。オリンピックへの警鐘でした。
 スマップには本当に魅せられます。


   「活動報告」 2016.1.22
   「活動報告」 2014.2.21
   「活動報告」 2012.8.31
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ウルトラマンは “かいじゅう”
2016/08/05(Fri)
 8月5日 (金)

 7月24日のTBSテレビ 「林先生が驚く初耳学!」 で林先生は、1966年から放映が開始された 「ウルトラマン」 は米軍を比喩していると回答しました。
 国語の予備校講師である林先生は、2014年の早稲田大学の入試に中沢新一の 『雪片曲線論』 が取り上げられていたのをチェックしていました。その中に、サンフランシスコ体制のなかで、怪獣はソ連といった東側の脅威、特捜隊は日本、ウルトラマンは米軍を比喩的に表現しているとあったといいます。
 1966年は中国の文化大革命が始まり、ベトナム戦争が激化していきます。それに対応して米軍の韓・日・台・フィリピンを結ぶ防衛ラインが強化されます。日本では沖縄に本土の米軍基地を移動させて強化していきます。「平和を守る」 強い 「正義の味方」 のウルトラマンは対中ソの防衛ラインです。非武装の日本・本土の多くの人びとはウルトラマンを頼もしく思って受け入れます。カラーテレビの普及が進むなかでの放映は、子どもたちを感化するにはもってこいの手法でした。


 今年1月から、〈ヒロシマ・2016 連続講座〉 が開催されています。第9回は、元朝日新聞記者の岩垂弘さんが 「広島の8・6を取材して半世紀」 のタイトルで講演しました。
 岩垂さんは被爆後の71年間をかえりみて7期に分けました。
 第1期は、45年 (原爆投下) から54年 (ビキニ被災事件) までです。米ソの核開発に対し、世界各地で核兵器反対署名運動が展開されました。しかし日本では、広島・長崎はローカルな事件としてあつかわれ、被爆者はほっとかれました。
 第2期は、54年から63年 (原水爆禁止運動の分裂) までです。54年のビキニ被災事件を契機に水爆反対運動が展開されますが、当初はヒロシマ・ナガサキの悲劇と切り離されていました。その後、日本の平和運動は “海外の影響をうけて” 高揚します。翌年8月、第1回原水爆禁止世界大会が広島市と長崎で開かれました。(14年2月28日の 「活動報告」 参照)
 第3期は、63年から77年 (原水禁運動の統一) までです。原水禁だけでなくあらゆる運動団体が分裂していましたが、原水禁運動だけは統一に向かいました。市民が統一を望んでいたのが要因です。
 第4期は、77年から86年 (原水禁運動の再分裂) までです。世界的に反核運動が盛り上がりました。国連軍縮会議にむけた署名運動なども展開され8.000万筆集まりました。しかし日本では労働運動における総評の解散と労戦再編が進む影響をうけて運動に亀裂が生まれました。
 第5期は、86年から91年 (ソ連の消滅=東西対立の終息) までです。新聞の原爆に関する報道は原水禁大会ではなく、平和祈念式典での市長の発言を取り上げるようになります。おもしろいのは、広島市長は 「である」 口調、長崎市長は 「であります」 の違いがありました。
 第6期は、91年から2011年 (福島第一原発の事故) までです。原爆は悪いけど原発はいいの風潮、潮流がありましたが、福島原発以降は原発も悪に転換します。
 そして第7期は、11年以降です。


 それぞれの期をもう少し検討してみます。
 53年8月、ソ連は水爆実験に成功します。(13年9月25日の 「活動報告」)
 12月8日、アメリカ・アイゼンハワー大統領は国連総会で、核技術を独占できなくなった状況をうけて核政策の転換を提案する 「平和のための原子力」 (Atoms for Peace) の演説をおこないました。
「先進4か国による核開発競争が世界平和にとって脅威になっている。この状況を変えるために……アメリカはこの線に沿って原子力の平和利用に関する共同研究と開発を各国とともに進めるため必要な援助を提供する用意がある。そしてこれにはアメリカの民間企業も参加させることにする。さらにこのような提案を実現するために国際機関 (のちの国際原子力機構:IAEA) を設立することも提案する」
 このアメリカの方針に沿って日本で原子力の平和利用を進めようとしたのが、読売新聞社主で日本テレビ放送網社長だった正力松太郎や中曽根康弘です。正力は、“アメリカ的平和政策” 推進のため奔走します。反共主義を煽り、テレビのプロレス中継で力道山がアメリカの選手を降伏するのに熱狂させるのは、原水爆禁止運動から目をそらさせ、高揚するのを抑える手段の1つだったといわれています。その姿勢は今も読売新聞と日本テレビでは引き継がれています。
 57年12月5日、 日本原子力発電株式会社が茨城県東海村を発電所敷地候補地に決定、66年7月25日、東海発電所が営業運転を開始します。日本における原子力の 「平和利用」 の開始です。鉄腕アトムはなんの疑問も持たれずに受け入れられていきます。
 いわゆる革新勢力とよばれた中にも産業復興、技術革新のために原子力は必要、原爆と原子力は違うと主張する者が大勢存在しました。それが平和運動内部においてもアメリカと中ソの核実験の評価の違いとなって表れ、64年の原水爆禁止運動の分裂にいたります。

 「平和のための原子力」 の演説が行なわれた53年、アメリカはUSIA (アメリカ広報・文化交流庁) を設立します。活動目的は 「米国の政策を妨害する敵対的な動きを暴露し、米国政府の政策に対する理解を促進するようなアメリカ人の生活や文化的側面を説明すること」 です。たとえば、「アメリカンセンター」 のような関連する機関を設立してさまざまな工作を進めます。教育者や労働者、メディア関係者、学生たちに接触し、日本の若いリーダーたちを渡米させる役割を担っていきます。
 心理戦略評議会 (PSB) という組織のもとで作られた 「対日心理戦略計画」 は 「日本の中にあった中立主義、共産主義、反米主義を無力化すること」 が目的でした。
 1950年代から80年代まで、アメリカから招待を受けたのは総評系で2000人、同盟系は1500人を上回るといいます。今まで、労働組合以外で招待されて訪米した数は2000人に及ぶといわれています。訪問者は、アメリカ社会の発展と市民の生活にあこがれを持って帰国したといいます。アメリカの戦略は成功しました。
 総評は原水爆禁止、基地撤去などの平和運動を担っていました。しかし距離を置く単産が増えていきます。


 54年3月1日に、アメリカがビキニ珊礁で初めて水爆実験をおこない、第五福竜丸など800隻の漁船が死の灰をあびました。9月23日、無線長だった久保山愛吉さんが 「原水爆の犠牲者は、わたしを最後にしてほしい」 と言い残して急性放射線障害で亡くなります。
 第五福竜丸の被爆が報じられると 「水爆実験反対」 の署名運動が開始され全国に拡大します。特に第五福竜丸と同じマグロ漁船が寄港する港では 「次は自分かもしれない」 と身近な問題として取り組み、1年間で3千万人を超す署名が集まりました。(14年2月28日の 「活動報告」)
 11月、映画 「ゴジラ」 が公開されます。ゴジラは、水爆実験の衝撃により長い眠りから覚めて、ビキニ環礁の海底から姿を現した太古の怪獣で東京を襲います。水爆実験の恐ろしさをアナロジーさせました。
 この後、日本の平和運動は “海外の影響をうけて” て合流し、高揚します。翌年8月、第1回原水爆禁止世界大会が広島市と長崎で開かれました。

 この時の状況です。
「昭和29年 (1954年) 3月1日米国がビキニ珊礁で初めて水爆実験をおこなったが、それに対してはその前から平和運動者や婦人民主クラブなどによって反対運動がおこなわれていました。4月14日第五福竜丸が焼津に帰港して、死の灰をあびた乗務員たちが重体になり、その水揚げマグロから強度の放射能が検出されたことが新聞に報道されて、大さわぎになりました。死の灰が雨にまじって降るというので、子どもを持つ母親はふるえあがりました。雨にあたれば髪の毛が脱けるとか、皮膚にケロイドが出るとかいう話でもちきりで、仕事も手につかないほどでした。
 杉並では、偶然にも、その直前の1月に、当時杉並公民館長兼図書館長であった安井郁氏 (法政大学教授、国際法学者) の提唱で、杉並区内、自民党系や社会党系や共産党系までの多数の婦人団体をみんないっしょに結集した杉並婦人団体協議会が、新しく生まれたばかりのときでした。その婦団協の3月例会でも、水爆問題が大きく取り上げられて、なんとかしなければと話し合われました。その翌月の婦団協4月例会で、参加者の一主婦が発言して 「他の討論より、この放射能をどうするのか、どうしたら防げるかを先にやって下さい」 と切実に訴えました。後のほうにすわっていた魚屋のおばさんは 「私たち魚屋では放射能のため魚を買いにくる人がなくなりました。私の店だけではない、魚屋はどこでもそうです。昨日魚屋の組合が大会を開いて、水爆反対の署名を取ることにしました。杉並の婦人団体も署名運動をしてください」 と訴えました。中央あたりの席にいた私も発言を求めて 「私も署名運動に賛成ですからみんなでやりましょう」 と述べました。列席していた安井氏も積極的に賛成を述べて、婦人団体が率先して原水爆禁止署名運動にとりくむことになりました。
 4月17日には杉並区議会が水爆実験の禁止を要求する決議をしました。5月9日に杉並黄門館に杉並区民のあらゆる階層や団体を代表する人たちが3、40人集まって原水爆禁止署名運動杉並協議会が発足しました。」 (山内みな著 『山内みな自伝 12歳の紡績女工からの生涯』)

 気をつけて読むと気付きますが、最初は 「水爆反対の署名」 でしたが後になって 「原水爆禁止署名運動」 とあります。これが、第1期の 「日本では広島・長崎はローカルな事件としてあつかわれ、被爆者はほっとかれました」 の状況でした。その後もよく原水禁運動と広島・長崎の被爆者のあいだには温度差があるといわれました。


 55年10月に、2歳の時に被爆したが元気でしたが10歳で白血病が発症し、千羽鶴を折りながら亡くなった佐々木貞子ちゃんが亡くなります。思いを受け継いだ学友たちの呼びかけで像建設運動が開始され、全国から支援を受けて58年5月5日に 「原爆の子の像」 を建立します。(13年9月25日の 「活動報告」) 原水禁運動が燃え上がり、原爆ドーム保存を求める声が高まる中、66年7月11日、広島市議会は原爆ドームの保存を要望する決議を行い、67年から保存工事か始まります。

 では長崎の原爆遺跡はどうするか。広島の状況を見てUSIAから “変化球” が投げられます。
 49年9月、長崎市に市長の諮問機関として 「原爆資料保存委員会」 が発足します。散在していた原爆関係資料をまとめて保存するのが目的でした。浦上天主堂の廃墟も含まれていました。委員会は 「保存すべし」 の答申を出し続けます。
しかし55年、長崎市にアメリカからセントポール市と姉妹都市提携の申し入れがあり懐柔が始まります。市長が招待されて訪米し、1か月間滞在して帰国すると保存に消極的な姿勢を見せ始めます。
 58年3月14日、浦上天主堂は解体が始まります。原爆被害のシンボルが消されました。
 アメリカは原水禁運動の弱体化と原爆被害の実像を消去するのに必死でした。


 64年、原水爆禁止運動が分裂します。
 中国新聞の基本的な論調は 「広島の復興」 でした。(12年2月28日の 「活動報告」) 報道統制が解除になっても原爆被害の実態や悲惨さを伝える記事は多くありませんでした。この状況を変えさせたのが第5福竜丸が死の灰を浴びた事件です。
 金井利博論説委員は、原爆を落とされた側の広島が人類に与えることができるのは、落とされた現実の報告とそれに基づく忠告であるという視点から紙面づくりを始めます。金井論説委員の指導を受けた後輩記者も様々な視点から原爆被害の記事を書き続けます。
 64年に開催された分裂ぶくみの第10回原水爆禁止世界大会で金井論説委員は呼びかけを行います。対立は、ソビエト・中国の核兵器への評価です。絶対悪の主張と、アメリカ帝国主義の核所有に対する抑止力として必要という主張です。
「原爆は威力として知られたか。人間的悲惨として知られたか。……
 世界に知られているヒロシマ、ナガサキは、原爆の威力についてであり、原爆の被害の人間的悲惨についてではない。……
 平和の敵を明らかにする論争のなかで、まず被爆の原体験を国際的に告知する基礎的な努力がなおざりにされてはいないか……
 今、広島、長崎の被爆者が、その死亡者と生存者とを含めて心から願うことは、その原爆の威力についてではなく、その被災の人間的悲惨について、世界中の人に周知徹底させることである」
 悲痛な訴えは聞き入れられませんでした。しかし中国新聞は今もこの路線を踏襲しています。


 こような中でウルトラマンは怪獣ではなく 「正義の味方」 のふりをして “懐柔” のために入れ代わり立ち代わり登場します。代行主義で 「平和」 と安心を強制し、人びとの意識をアメリカナイズしていきます。日米軍事体制は強化されます。
 ウルトラマンは、ソ連といった東側の脅威だけでなく平和運動勢力とも闘っていました。そして、沖縄はウルトラマン一族に制圧されてつづけています。

 第7期は、原発がなくても電力は維持されることを証明しています。しかしながらまた台頭してきた原子力の平和利用などという論理が核兵器開発と一体のものであり、それで経済活動をする “死の商人” のものであることを明らかにしています。ウルトラマンや鉄腕アトムは “死の商人” のセールスマンです。人びとの敵です。
 核の被害を経験した被爆者と原発に反対する人たちはこの “かいじゅう” に対しても手を携えて対峙していかなければなりません。
 愛媛県の伊方原発再稼働反対の訴訟に、はじめて広島の被爆者団体が参加しました。

  「活動報告」 2014.2.28
  「活動報告」 2013.9.25
  「活動報告」 2012.2.28
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「長時間労働是正が民主主義磨く」
2016/08/02(Tue)
 8月2日 (火)

 7月18日の日本経済新聞に、08年の日比谷派遣村村長だった、現・法政大学教授の湯浅誠さんが投稿しています。タイトルは 「長時間労働是正が民主主義磨く」 です。

「欧州連合 (EU) 離脱を決めた英国の国民投票を受け、重要な問題を国民投票にかけて良いのかという意見が出ている。確かに国民投票は安易に使っていい手法だとは思わない。でも 「どうせ大衆は最善の結果を選べないのだから」 というニュアンスを含む批判には違和感を覚える。
 民主主義は本当に難しいものだ。結局、今回のような予想外の結果を含めて引き受けて、試行錯誤しながら進むしかないのではないか。そのとき私たちができることは、みんなが少しでも良い結果を考え抜く力を持てるような環境整備を進めていくことではないだろうか。
 今の日本人を見ていると生活が忙しく、沈思黙考ができなくなっている。スマートフォンの登場で便利になるどころかむしろ考える時間をどんどん失っているようだ。その結果、政策にも即効性があるものが求められるようになっている。例えば、子どもの貧困は長期的に見れば日本経済に打撃のはずだが、政策的な優先順位はあまり高くない。
 どうしたら考える力を高められるだろうか。私はワークライフバランスが鍵を握っていると思う。ワークライフバランスは企業から見ると生産効率があがるなどの効果があるが、それだけではなく私は民主主義の向上に寄与するものだと思っている。仕事でへとへとに疲れた人に社会のあり方を考える余裕がないのは当然だ。学生もアルバイトに時間を切り売りし、考える経験もなく大人になっていく。
 欧州では午後4時から労働者がデモをしている。別にデモをする必要はないが、少なくともワークショップなどに参加し、社会のことを考える時間は必要ではないだろうか。民主主義とは崇高な理念の問題というよりは、実は考える時間と空間をどれだけ用意できるかという即物的な問題だと思う。そのために長時間労働の規制は必要だろう。
 世界では中間層が崩れ落ち、極論が支持を集めている。私は日本で貧困の現場を歩いているが、幸いなことにまだ声高に極論を唱えるのはどうかという雰囲気がある。でもこれがずっと続くかはわからない。仕事や生活で 『なんとなくうまくいかない。どこに原因があるかわからない』 と感じている人は増えている。そういう不安と不満に一度火が付けば、すべてをひっくり返したいという 『がらがらぽん欲求』 が良識を押し流してしまう。そうならないよう、今できることを考えたい。」

 「民主主義とは考える時間と空間をどれだけ用意できるか」。為政者や経営者が人びとに考えるゆとりを与えないことが安泰を維持する手段になっています。


 長時間労働の実態はどうなっているでしょうか。
 「毎月勤労統計調査」 によると、2015年の年間総実労働時間は、事業所規模30人以上で1,784時間 (所定内労働時間は1,630時間、所定外労働時間は154時間) で前年に比べて4時間減少しています。事業所規模5人以上では、年間総実労働時間1,734時間 (所定内労働時間1,602時間、 所定外労働時間132時間) で前年比べて7時間減少しています。
 一般労働者 (常用労働者のうち、パートタイム労働者を除いた労働者) については、年間総実労働時間は事業所規模30人以上で2,009時間 (所定内労働時間は1,816時間、所定外労働時間は193時間) と前年に比べて11時間増加しています。事業所規模5人以上では、年間総実労働時間2,026時間 (所定内労働時間1,852時間、所定外労働時間174 時間) と前年に比べて5時間の増加しています。
 「毎月勤労統計調査」 事業場にたいする調査ですので、事業場の回答です。そこにはいろいろなトリックがあります。


 3月30日の 『プレジデント』 は 「5人の人事担当者が激白 『長時間労働のリアル』 座談会」 を掲載しました。残業の実態について本音で語っています。

【ゲーム】 うちは職種ごとに残業時間の上限が月17時間程度という数値目標があり、なんとかその範囲内に抑えようという意識が全社的にある。管理部門はその範囲内で回しているが、営業職など顧客対応の職種は繁忙期に40時間超の社員が多数出てくる。
【建設】 一定以上の残業は記録しないように指導するとか、社員自ら残業を記録しないケースが横行していると思う。つまり、実際の残業時間と申告された残業時間のギャップが大きい企業が多いのが実態ではないか。
【電機】 月60時間程度の隠れ残業をしている人が結構いる。申告した残業が月に40時間なら、実際には100時間近くの残業をしているのではないか。とくに管理職の長時間残業が常態化している。
【食品】 管理職には残業代は出ないが、すごく残業している。うちの製造部門では工場長が朝の5時に出勤し、課長も6時前には出勤し、6時から会議が始まる。これは流行の朝方勤務でもなんでもない。せめて早く退社するように言っているが、夜の8時、9時まで残業している。
【建設】 部門別の残業代の予算を設定し、その範囲内で収めるように要請している。もちろん残業をつけるなとは法的に言えないし、上司もそこまでは言えない。一方、社員の側も残業時間を多く記録すると、能力がないように思われるので少なくつけてしまう。結果的にサービス残業が増えることになる。
【IT】 ドンキの送検はカトク(過重労働撲滅特別対策班)の見せしめ的意味合いが強いね。ABCマート(15年、靴の販売店 「ABCマート」 運営するエービーシー・マートが書類送検された) 摘発など小売業や飲食業が続いているが、次はIT業界じゃないかと戦々恐々としている企業も少なくないよ。
【ゲーム】 そう。送検までされる企業はごく一部の企業にすぎない。実はうちも数年前に是正勧告を受けた。うちは裁量労働制だけど、社員の多くが月40時間以上残業するのが当たり前になっていた。勧告を受けてから部門ごとに残業時間を全管理職に公開し、部下の残業時間を全社ベースで厳密に管理するようにした。

 表には出ないが実は労働基準監督署から是正勧告を受けている企業が多くあります。見せしめ的意味合いの是正勧告の公表は、社会的に発言力が大きくない産業・業界と企業です。
 ではなぜ長時間労働はなくならないのか、その原因です。

【建設】 「成果を出すならば、時間をいくらかけてもいい」 いう考え方がなくならない限り、長時間労働はなくならないよ。経営トップ層は、「自ら若いときから猛烈に働いてきたからこそ会社が存在し、今の地位を築いた」 という思いが強い。少ない時間で成果を出す社員にいい人事評価を与えるようにしなければなくなることはない。
【IT】 根本的には日本人特有の生真面目さがあるんじゃないか。「同じ時間を共有しなければいけない」 という暗黙の価値観、「上司の目を気にするヒエラルキー意識」 が強い。先日の雪の日の出勤風景なんか象徴的だよ。なんであんなに無理して出社するんだろうと思ったよ。
【電機】 会議資料や提案資料もなんでもパワポにするなど、資料の品質にルールがないために時間をかけすぎている。加えて会議や打ち合わせに人数をかけすぎているという問題もある。
【食品】 IT化の弊害もあると思う。IDパスワードを使った仕事が増えて、何から何まで全部1人でこなさないといけない。交通費の精算や商品の引き当て、顧客データの入力などは忙しいときは事務の社員が見かねてやってくれたが、システムの権限設定を行わないと頼みたくても頼めないし、会社に戻って自分でやるしかない。
【電機】 働き方で言えば自分自身の仕事を選択収集し、優先順位をつけて仕事を行う能力がある人はOKだが、それがないと結局ダラダラやることになる。「仕事が終わらなければ残業してでもやる」 というタイプの人はダメだね。
【IT】 そう。ゴールに向けてタスクを洗い出し、プロセス・スケジュールを組んで仕事を進めることが不得手だと、漏れやムダ、根回し不足でやり直さなくてはいけなくなる。結局、業務量が増えて長時間労働につながっていく。
【建設】 残業理由の多くがじつは上司や役員の仕事に対する細かさやこだわりのためだったりする。指示された仕事は今日中にやらなければ許されないとか、資料の誤字脱字は許されない、事前説明がないと会議にかけてはいけないという暗黙のルールや長時間労働を助長する風土が、個人の問題よりも意外と残業の原因になっている。
【ゲーム】 そう。そもそも定時に帰ろうという気がない人や単に仕事が遅いといった個人に問題がある場合も多いが、上司のマネジメント力不足も原因として大きい。組織全体で長時間労働が当たり前だと諦めてしまっているパターンが非常に多く、なぜ定時に帰れないのかをとことん突き詰めて解決しようとする努力が圧倒的に足りないと思う。

 やはり長時間労働の改善は小手先ではできません。労使供の意識改革が必要です。


 3月24日の日本経済新聞に 「80時間で立ち入り調査 対象、300万人に拡大 政府、長時間労働の抑制狙う」 の見出し記事がのりました。
 政府は25日に開く一億総活躍国民会議で、「ニッポン一億総活躍プラン」 の働き方改革の柱の1つである長時間労働抑制の具体策として、1か月の残業が100時間に達した場合に行う労働基準監督署の立ち入り調査の基準を80時間まで引き下げる方向だといいます。調査の結果、違法な時間外労働や残業代の未払いなどの労働基準法違反が見つかった場合は是正勧告し、企業に違反行為を改めるよう求めます。違反がなくても勤務時間を極力短くするため労働時間の記録など対策を徹底するよう指導するといいます。
 実際は労基署の監督官の数が限られるため従業員による通報などを通じて悪質な企業を把握し、重点調査します。
 15年の労働力調査によると全国の常勤労働者の数は約5000万人。このうち100時間超の残業をしている労働者は少なくとも約110万人いましたが80時間以上は約300万人で、20万超の事業所が対象になる見通しです。
 全国の労基署による14年の定期的な立ち入り調査は12万9881件。このうち7割で何らかの法違反がみつかりましたが最も多かったのが違法残業など労働時間に関する違反です。
 厚生労働省は4月1日に労働基準監督署の立ち入り調査について 「80時間を超える残業のある事業所に対象を広げる」 と表明しました。
 昨年4月、厚労省は 「過重労働撲滅特別対策班 (通称:カトク)」 を東京と大阪に置きました。新たに本省に司令塔として6人体制のカトクをもうけ、全47の労働局に1人ずつ長時間労働を監視し、改善を指導する特別監督監理官を配置しました。

 では、立ち入り調査をする監督官の状態はどうなっているのでしょうか。増員されたでしょうか。
 諸外国と比較すると、日本は雇用者1万人あたりの労働基準監督官は0.53人。アメリカは0.28人、イギリスは0.93人、ドイツは1.89です。
 政府の政策が絵に描いた餅にならないことを期待します。


 3月25日の毎日新聞は 「労基法改正を検討 長時間労働を是正で 1億総活躍国民会議で表明」 の見出し記事を載せました。
 安倍首相は25日に開催された1億総活躍国民会議で、長時間労働を是正するため、労基法の改正に関し 「36協定の時間外労働規制のあり方について再検討を行う」 と表明したといいます。労働時間の上限値を設けることなどを検討し、来年の通常国会以降で法改正を目指し、経済界などと調整を進めるといいます。 また公正取引委員会や中小企業庁と連携し、親会社と取引先の取引慣行などで長時間労働を強いられていると疑われる独占禁止法違反事例などの取り締まりも強化する。
 国民会議では、民間議員からは 「一企業での取り組みでは難しい」 「総労働時間の規制を行うべきだ」 と国による規制を求める意見が出ました。榊原定征・経団連会長や三村明夫・日商会頭の経営者側は 「経営者の意識改革が必要だ」 と対策強化の必要性に理解を示したといいます。
 政府によると、現在、36協定を締結して月45時間まで時間外労働を可能にしている企業の割合は55.2%、さらに特別条項付きで月80時間以上の時間外労働が可能となる協定の締結企業の割合は4.8%です。


 6月2日、政府は 「ニッポン一億総活躍プラン」 を閣議決定しました。(6月17日の 「活動報告」 参照)
 (長時間労働の是正) については、「さらに、労働基準法については、労使で合意すれば上限なく時間外労働が認められる、いわゆる36協定における時間外労働規制の在り方について、再検討を開始する。時間外労働時間について、欧州諸国に遜色のない水準を目指す。」 とあります。

 7月15日の日本経済新聞に 「働き方改革で成長底上げ 残業時間に上限、雇用保険料下げ」 の見出し記事が載りました。12日に安倍首相が石原経済財政・再生相に示した働き方改革の原案が分かったといいます。残業時間は、厚労省が有識者による検討会を設け、一部業種に特別条項を付けた場合でも上限を設ける方向です。勤務時間が不規則だったり、公益性の高いサービスを手掛けたりする業種は外し、企業活動への影響を避けるといいます。例外、“経済特区” はこれまでの状況を維持することがベースにあります。
 そして個々の働き手の能力を引き出すには、労働時間ではなく成果に賃金を払う 「脱時間給」 制度の早期実現が不可欠で、導入されればより柔軟で効率的な働き方が期待できるといいます。

 政府内、1億総活躍国民会議内での駆け引きがつづいているようです。
 「一企業での取り組みでは難しい」 「総労働時間の規制を行うべきだ」 「経営者の意識改革が必要だ」 の意見は後退させられています。まだまだ経営陣の意見だけが重視され、労働者のおかれている生活の実態は考慮されていません。
 時間外労働改善の取り組みがトカゲのしっぽ切りやポーズで終わってしまう危険性があります。

 しかし、ここに至っても労働者の声が聞こえてきません。「考える時間と空間」 がないからだけではありません。まず労働組合が取り込まれています。
 労働者は進められている働き方の議論に、ワークライフバランスをこのような姿で実現したいというカウンターの声をあげて参加していく必要があります。


   「活動報告」 2016.6.17
   「活動報告」 2016.3.29
   「活動報告」 2016.3.24
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