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賃金ランキング 2014年は20国中19位
2016/06/28(Tue)
 6月28日 (火)

 6月24日の朝日新聞の 「表裏の歴史学」 は 「古代の勤務評定」 がテーマでした。
 古代の官僚の場合、基本的な給与 (季禄) は官職に相当する位に応じて額が決められ、年に2回、春・夏の分が2月上旬に、秋・冬の分が8月上旬に支給されました。半年に120日 (年に240日) 以上出勤していることが必須条件でした。大宝令には、前年の勤務評定が 「中下」 以下の者には2月の給与は支給しないとの規定がありました。つまりいくら所定の日数以上出勤していても、九等評価で 「中下」 以下をとると、給与が半年分まるごとカットされてしまいます。
 古代の勤務評定のポイントは、「善」 と 「最」 です。「善」 は4種。徳があること、清廉であること、公平であること、まじめに勤めていること (恪勤) の4つで、この 「善」 を1つ以上得る必要があります。「最」 は職種に応じた42種類の評価基準です。「最」 を得て、「善」 を1つ得ていれば、その年の勤務評定は 「中上」 です。
 勤務評定は毎年行なわれ、6年で総合評価を受けます。6年間 「中中」 であれば位が1階上がります。

 「善」 は今でいうなら行動評価、「最」 は業績評価です。古代においても評価項目は分かれていました。勤勉さは古代から必須でした。また、評価が生活を脅かすという事態もあったと推測されます。


 「朝日新聞グローブ」 6月5日号の特集は、「『給料の話』 おいてけぼりのニッポン」 です。
 経済協力開発機構 (OECD) の統計で先進国などの賃金を、実際にどれだけのモノやサービスを買えるのかを基準に比較したら、日本の賃金ランキングは1991年に20国中9位 (36,152米ドル) だったのが、2014年には19位 (35,672ドル) まで落ち込んでいます。グローバル化やIT化などはあるにせよ、あくせく働いても暮らし向きが良くならない現実があります。
 
 フルタイムで働く人の平均賃金は1997年の459万円をピークに下がり続け、2014年には400万円を割り込みました。主要国でこれだけ長く賃金が上がらないのは珍しいです。00年以降ほぼ横ばいです。
 ただGDPや企業の利益は平均賃金のように減っていません。生産性が上がってもその分け前が働き手に配分されていません。

 フルタイムということは、その間増え続けた非正規労働者を含めたら平均値はかなり下がります。

 日本総合研究所の山田久調査部長は、「市場の力も、組合の力も、どちらも中途半端になっている」 と指摘しています。
 転職市場が発達した米国なら、賃金カットすれば働き手がにげていくので賃金は下がりにくいです。市場の力で、伸びる産業や賃金が高い産業に人が移ります。欧州では、産業別に労資が職種ごとの賃金を決めて労働組合が賃金を守ります。
 日本は職を失うと再就職が難しいです。組合も企業別で弱いです。そのため賃金よりも雇用が優先されます。その結果、「失業率は上がりにくいけれど、賃金は下がりやすい」 ことになっています。

 日本でのこの構造、とくに職を失うと再就職が難しいという状況は、体調不良に陥っても我慢して隠して雇用を維持することを余儀なくします。住宅問題、教育問題がまたそうさせます。そうすると、休職に至るときは深刻な状況になっていて、問題の解決や復職がさらに難しくなります。


 カリフォルニア大学バークリー校のスティーブン・ボーゲル教授は「品質と安さで戦う日本モデルの強さが揺らいでいると言います。
 長い停滞の中で、日本企業は正社員の長期雇用を維持してきました。それが、賃金が下がってきた大きな理由です。正社員をリストラする前に、グループ企業への配置転換や賃金抑制をするため、正社員の賃金は上がりにくくなります。
 さらに、長期雇用の仕組みを守るために、正社員の数を絞り、賃金が低く雇用を調整しやすい非正規社員の割合がましました。これが平均賃金を下げたのです。
 米国では経営が厳しくなると人の数を減らして人件費を調整します。失業した人の生活は一気に厳しくなります。ボーナスや給料のカットは確かに不運ですが、失業よりはましでしょう。
 正社員の長期雇用を維持するのは、会社にとっても利益になります。日本の競争力の源となってきた製造業では、働き手と企業が長期的な関係を築くことが品質管理やコスト競争での強みになってきました。簡単にクビを切るような会社に、働き手は協力的にはなりません。
 もちろん、問題もあります。1つは、正社員と非正規労働者の二極化です。20~30代の若い人や女性に非正規労働者が偏り、労働市場が分裂してしまっています。また、賃金を下げても長期雇用を守るのは、それぞれの会社にとっては合理的でも、経済全体では消費者の購買力が下がってデフレになる悪影響があります。
 より大きな問題は、世界で富を生み出す産業が、日本が得意とする製造業からサービスや情報技術 (IT) にシフトしていることです。雇用を守って品質と安さで競争するこれまでの日本モデルの優位性から揺らいでいるのです。製造業の強みを維持しながら、どう新しい分野に打って出るか。

 正社員の長期雇用は、労働組合も労使協調と非正規労働者の排除の構造を作り上げてきました。その結果、同じ職場でも正規労働者と非正規労働者は賃金だけでなくさまざまな格差を生み出し、深刻な社会状況を生み出してきました。


 米ニューヨーク市立大学の経済学者ブランコ・ミラノビッチ教授は、ベルリンの壁崩壊から20年間で、世界の人びとの所得がどれだけ増えたかを調べました。すると 「超リッチ層」 (世界の所得上位1%) と、「振興国の中間層」 (上位30~60%) はともに所得が6割以上増えています。
 これに対し、先進国の中間層にあたる人々 (上位10%~20%) の所得は1割以下しか増えていませんでした。
 ミラノビッチは 「産業革命以来となる、賃金のガラガラポンが起きている」 と語っています。中間層がやせ細っているのは先進国に共通の現象だが、賃金が下がり続ける日本に、打つ手はあるのかと指摘します。


 2013年、米シアトルの市長選挙で 「最低賃金15ドル」 が争点になりました。
 14年、シアトルがあるワシントン州では全米に先駆けて 「時給15ドル」 の最低賃金が条例になりました。天保レベルの最低賃金は日本とほぼ同じで時給7.25ドル (約800円) です。
 時給15ドルを求める動きは、12年にニューヨークでファーストフードの従業員がストライキを起こしたのが始まりです。ストやデモが全米に広がり、シアトルに続いてニューヨークとカリフォルニア州でこの春、最低賃金を時給15ドルに段階的に引き上げることを決めました。
 なぜ15ドルなのでしょうか。サービス従業員国際労働組合 (SEIU) の現地トップのデービット・ロルフは 「働き手を鼓舞できる数字なのだ」 といいます。大胆な上げ幅だからこそ、メッセージがはっきりして世論の支持を得ました。
 
 米の平均賃金は上がり続け、世界2位につけています。しかしけん引役はハイテクや金融業界に努める人たちで働き手の中では少数派です。
 一方、中間層が細っています。背景には製造業の没落があります。自動車最大手ゼネラル・モーターズ (GM) 発祥の問い、ミシガン州フリントでは、40年前に約8万あったGM関連の職は、業績不振などで約1万まで減少しました。住民の4割は貧困ラインを下回る年収しか得ていません。
 全労働者の42%が時給15ドル未満という調査もあります。


 特集の締めくくりのタイトルは 「安月給で、もつのかニッポン」 です。
 1998年日本の平均賃金が下落に転じ、転換点でした。アジア市場は通貨危機で失速しました。
 前年に山一証券が自主廃業に追い込まれ政府は 「日本版ビッグバン」 と呼ばれる金融改革に乗り出します。
 慶応大学の樋口美雄教授は 「株主や投資家の影響が強まり、企業は利益を上げても賃金で還元しない傾向が強まった」 と話します。このころから、非正規労働者の割合が高まります。
 雇用を優先した日本の失業率は、他国と比べると低いです。ただ、雇用を守るために、事業の継続そのものがしばしば目的化します。もうけを度外視した安売り競争になり、賃下げ圧力が生じます。賃金低下で消費者の購買力が伸びないことも、安売り競争に拍車をかけます。
 社会保障負担がのしかかる日本。主な担い手である中間層の賃金が減り続ければ、社会の維持可能性は大きく揺らぎます。


 かつて、中間層がそれなりの数を占めていた時、かれらが支払う税や社会保険料が福利厚生を拡充させてきました。中間層の下の層をカバーしてきました。しかし中間層が減少し、さらに痩せていくと不可能になります。格差拡大が進む中でどの層に対しても「自己責任論」まで登場します。しかし自助努力のためにはベースが必要です。
 その一方、ミラノビッチ教授がいう 「超リッチ層」 と先進国の中間層にあたる人々は社会的責任を果たさないで個人的に肥え太り続け、保護もうけています。新たな階級社会が登場しています。
 賃金問題を解決するには、この 「階級」 のためだけの政治を止めなければなりません。そして社会的責任を課たさせることを含めた分配の再構築が必要です。


  「活動報告」 2016.17
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オバマさん。私たちは奴隷ではない
2016/06/24(Fri)
 6月24日(金)

 4月24日夜、うるま市に住む20歳の女性がウオーキング中に行方不明になり、5月19日になって元米海兵隊の男に襲われたことが判明し、遺体で発見されました。
 6月19日、沖縄・那覇市で女性の虐殺事件に抗議する 「米元海兵隊員による残虐な蛮行を糾弾! 被害者を追悼し海兵隊の撤退を求める県民大会」 が6万5千人を集めて開かれました。参加者は黒など哀悼の意を表す色を身につけて参加しました。
 集会は、はじめに古謝美佐子さんが 『童神』、続いて海勢頭豊さんが 『月桃』 (2016年5月20日の 「活動報告」 参照) を歌って被害者を追悼しました。

  天からの恵み 受けてこの地球 (ほし) に
  生まれたる我が子 祈り込め育て
  イラヨーヘイ イラヨーホイ
  イラヨー 愛 (かな) し 思産子 (うみなしぐわ)
  泣くなよーや ヘイヨー ヘイヨー
  太陽 (ていだ) の光受けて
  ゆーいりよーや ヘイヨー ヘイヨー
  健 (すこ) やかに 育て

 この日、20歳でなくなった女性の自宅では49日の法要がいとなまれました。

 この後、被害者の女性を悼んで参加者による黙祷が捧げられました。
 オール沖縄会議共同代表で名桜大4年の玉城愛さんがあいさつをしました。

 被害に遭われた女性へ。絶対に忘れないでください。あなたのことを思い、多くの県民が涙し、怒り、悲しみ、言葉にならない重くのしかかるものを抱いていることを絶対に忘れないでください。
 あなたと面識のない私が発言することによって、あなたやあなたがこれまで大切にされてきた人々を傷つけていないかと日々葛藤しながら、しかし黙りたくない。そういう思いを持っています。どうぞお許しください。あなたとあなたのご家族、あなたの大切な人々に平安と慰めが永遠にありますように、私も祈り続けます。
 安倍晋三さん。日本本土にお住まいのみなさん。今回の事件の 「第二の加害者」 は、あなたたちです。しっかり、沖縄に向き合っていただけませんか。いつまで私たち沖縄県民は、ばかにされるのでしょうか。パトカーを増やして護身術を学べば、私たちの命は安全になるのか。ばかにしないでください。
 軍隊の本質は人間の命を奪うことだと、大学で学びました。再発防止や綱紀粛正などという使い古された幼稚で安易な提案は意味を持たず、軍隊の本質から目をそらす貧相なもので、何の意味もありません。
 バラク・オバマさん。アメリカから日本を解放してください。そうでなければ、沖縄に自由とか民主主義が存在しないのです。私たちは奴隷ではない。あなたや米国市民と同じ人間です。オバマさん、米国に住む市民のみなさん、被害者とウチナーンチュ (沖縄の人) に真剣に向き合い、謝ってください。
 自分の国が一番と誇るということは結構なのですが、人間の命の価値が分からない国、人殺しの国と言われていることを、ご存じですか。軍隊や戦争に対する本質的な部分を、アメリカが自らアメリカに住む市民の一人として問い直すべきだと、私は思います。
 会場にお集まりのみなさん。幸せに生きるって何なのでしょうか。一人一人が大切にされる社会とは、どんな形をしているのでしょうか。大切な人が隣にいる幸せ、人間の命こそ宝なのだという沖縄の精神、私はウチナーンチュであることに誇りを持っています。
 私自身は、どんな沖縄で生きていきたいのか、私が守るべき、私が生きる意味を考えるということは何なのか、日々重くのしかかるものを抱えながら現在生きています。
 私の幸せな生活は、県民一人一人の幸せにつながる、県民みんなの幸せが私の幸せである沖縄の社会。私は、家族や私のことを大切にしてくれる方たちと一緒に今生きてはいるのですが、全く幸せではありません。
 同じ世代の女性の命が奪われる。もしかしたら、私だったかもしれない。私の友人だったかもしれない。信頼している社会に裏切られる。何かわからないものが私をつぶそうとしている感覚は、絶対に忘れません。
 生きる尊厳と生きる時間が、軍隊によって否定される。命を奪うことが正当化される。こんなばかばかしい社会を、誰が作ったの。このような問いをもって日々を過ごし、深く考えれば考えるほど、私に責任がある、私が当事者だという思いが、日に日に増していきます。
 彼女が奪われた生きる時間の分、私たちはウチナーンチュとして、一人の市民として、誇り高く責任を持って生きていきませんか。もう絶対に繰り返さない。沖縄から人間の生きる時間、人間の生きる時間の価値、命には深くて誇るべき価値があるのだという沖縄の精神を、声高々と上げていきましょう。

 翁長雄志沖縄県知事は、被害者に対して 「守ってあげられなくてごめんなさいというお詫びの気持ちが浮かんできた。21年前の県民大会で二度と起こさないと誓った事件を再び起こしたこと、責任を感じている。政治の仕組みを変えられず、政治家として、知事として痛恨の極みだ」 とあいさつをしました。
 参加者は 「海兵隊は撤退を」 のプラカードを何度も高く掲げました。


 古謝美佐子さんは、かつてねーねーずで活躍していた時 『黄金の花』 をヒットさせました。

  黄金の花が咲くという 噂で夢を描いたの
  家族を故郷、故郷に置いて泣き泣き、出てきたの
  素朴で純情な人達よ きれいな目をした人たちよ
  黄金でその目を汚さないで  黄金の花はいつか散る

  楽しく仕事をしてますか 寿司や納豆食べてますか
  病気のお金はありますか 悪い人には気をつけて
  素朴で純情な人達よ ことばの違う人たちよ
  黄金で心を汚さないで  黄金の花はいつか散る

  あなたの生まれたその国に どんな花が咲きますか
  神が与えた宝物 それはお金じゃないはずよ
  素朴で純情な人達よ 本当の花を咲かせてね
  黄金で心を捨てないで  黄金の花はいつか散る

  素朴で純情な人達よ 体だけはお大事に
  黄金で心を捨てないで  黄金の花はいつか散る
  黄金で心を捨てないで 本当の花を咲かせてね

 基地や基地建設資金で人びとに黄金の花を咲かせ続けることはできません。逆に人の命を奪っていきます。

 全国各地でも沖縄での県民大会に呼応した集会が開かれました。国会前では市民団体メンバーら約1万人が 「許さん! 女性殺害」 「出て行け海兵隊!」 などと書かれたプラカードを掲げて抗議しました。


 6月23日 「沖縄慰霊の日」、南部・摩文仁の平和祈念公園で追悼式が開催されました。
 金武町立金武小学校6年の仲間里咲さんが 「平和の詩」 ・ 「平和の世界が大切」 を朗読しました。

 平和 (ふぃーわ) ぬ世界 (しけー) どぅ大切 (てーしち) (平和の世界が大切)

  「ミーンミーン」
  今年も蝉 (せみ) の鳴く季節が来た
  夏の蝉の鳴き声は
  戦没者たちの魂のように
  悲しみを訴えているということを
  耳にしたような気がする
  戦争で帰らぬ人となった人の魂が
  蝉にやどりついているのだろうか
  「ミーンミーン」
  今年も鳴き続けることだろう

  「おじぃどうしたの?」
  左うでをおさえる祖父に問う
  祖父の視線を追う私
  テレビでは、戦争の映像が流れている
  しばらくの沈黙のあと
  祖父が重たい口を開いた
  「おじぃは海軍にいたんだよ」
  おどろく私をよそに
  「空からの弾が左うでに当たってしまったんだよ」
  ひとりごとのようにつぶやく祖父の姿を
  今でも覚えている
  戦争のことを思い出すと痛むらしい
  ズキンズキンと・・・
  祖父の心の中では
  戦争がまだ続いているのか

  今は亡き祖父
  この蝉の鳴き声を
  空のかなたで聞いているのか
  死者の魂のように思っているのだろうか
  しかし私は思う
  戦没者の悲しみを鳴き叫ぶ蝉の声ではないと
  平和 (ふぃーわ) を願い鳴き続けている蝉の声だと
  大きな空に向かって飛び
  平和 (ふぃーわ) の素晴らしさ尊さを
  私達に知らせているのだと

  人は空に手をのばし
  希望を込めて平和 (ふぃーわ) の願いを蝉とともに叫ぼう
  「ミーンミーン」
  「平和 (ふぃーわ) ぬ世界 (しけー) どぅ大切 (てーしち)」

 翁長知事が 「平和宣言」 を読み上げました。

 太平洋戦争最後の地上戦の行われた沖縄に、71年目の夏が巡ってまいりました。
 沖縄を襲った史上まれにみる熾烈な戦火は、島々の穏やかで緑豊かな風景を一変させ、貴重な文化遺産のほとんどを破壊し、二十数万人余りの尊い命を奪い去りました。
 私たち県民が身をもって体験した想像を絶する戦争の不条理と残酷さは、時を経た今でも忘れられるものではありません。
 この悲惨な戦争の体験こそが、平和を希求する沖縄の心の原点であります。……
 しかしながら、戦後71年が経過しても、依然として広大な米軍基地が横たわり、国土面積の0.6%にすぎない本県に、米軍専用施設の約74%が集中しています。
 広大な米軍基地があるがゆえに、長年にわたり事件・事故が繰り返されてまいりました。今回の非人間的で凶悪な事件に対し、県民は大きな衝撃を受け、不安と強い憤りを感じています。……
 日米安全保障体制と日米地位協定の狭間 (はざま) で生活せざるを得ない沖縄県民に、日本国憲法が国民に保障する自由、平等、人権、そして民主主義が等しく保障されているのでしょうか。
 真の意味での平和の礎を築くためにも、日米両政府に対し、日米地位協定の抜本的な見直しとともに、海兵隊の削減を含む米軍基地の整理縮小など、過重な基地負担の軽減を先送りすることなく、直ちに実現するよう強く求めます。……


 6月23日は、沖縄戦を指揮した第32軍牛島満司令官が自決したとされる日です。沖縄戦において日本軍の組織的戦闘が終わった日です。

 2011年、蓮見圭一の小説 『八月一五日の夜会』 が刊行されました。
 東京に住む、祖父が沖縄戦の兵士だった学生が、祖父の遺骨を沖縄の海に播くために名護市を訪れます。そこで120分のカセットテープ4本を受け取ります。吹き込んでいたのは、祖父と行動を共にしていた陸軍中野学校出身の中尉でした。
 そのテープ起こしから本島北部に浮かぶ伊是名島の沖縄戦が再現されます。
 
 1945年6月23日の伊是名島には牛島司令官の自決や日本軍の組織的戦闘の終了の情報は伝わってきません。
 本島から逃げてきた日本軍の一部の命令に島民は従わされます。日本軍内部で抗争がおき、島民を巻き込みます。お互いを監視しあいます。米軍が上陸すると戦闘を展開します。奄美から人身売買されてきた子供たちはスパイ扱いされて虐殺されます。
 このような中で旧暦の8月15日 (新暦9月20日) を迎えます。この日は夜会が開かれ、そのあとはそれぞれ散って (逃亡して) いきます。
 9月20日は、日本軍がミズーリー号で連合国に降伏文書を交わした後です。日本軍の兵士はまだ自分の命を守るためにあがいていました。
 これが沖縄戦の実態です。まだまだ隠されている沖縄戦、住民虐殺の事実があります。


 6月23日、安倍首相は沖縄の追悼式に参列しました。それだけの4時間の沖縄訪問でした。もしかしたら牛島満司令官の追悼が目的だったのでしょうか。

   月桃

  6月23日待たず
  月桃の花 散りました
  長い長い 煙たなびく
  ふるさとの夏

  香れよ香れ 月桃の花
  永久 (とわ) に咲く身の 花心
  変わらぬ命 変わらぬ心
  ふるさとの夏

 6月23日の 「慰霊の日」 は、「魂魄の塔」の前は線香の煙が絶えません。沖縄戦と同じような悲劇はくりかえさせないことを誓い、「ぬちどぅ宝」 (命こそ宝) であると確認する日です。
 そのためにはすべての基地はいりません。


   「活動報告」 2016.5.27
   「活動報告」 2016.5.20
   「活動報告」 2016.5.10
   「活動報告」 2015.1.30
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勤務評価から見たドイツと日本の公務員制度のちがい
2016/06/21(Tue)
 6月21日 (火)

  「季刊労働法」 16年春季号は、研究論文 「ドイツ・官吏の勤務評価」 を載せています。
 ドイツでの官吏は、日本での上級公務員や監獄、警察署、消防署および守衛などのスタッフのことを言います。公法上の任用関係にあり重要労働条件は議会で決定され、公法上の任用関係にあります。ストライキ権は認められていません。
 それ以外の職員や現業労働者などの公務被用者は自治体と司法上の労働契約関係にあります。

 日本では、1885年 (明治18年) に伊藤博文が内閣制度を定めて内閣総理大臣に就任するときにドイツ・フランスを真似た官吏制度をつくります。1886年 (明治19年) に帝国大学令を定めて東京大学を帝国大学とし、官吏養成機関とします。
 旧憲法下では、天皇の大権に基づき任官され公務の担任を命ぜられた公法上の関係にあ高等官と判任官を指しました。民法上の契約により国務に就いた雇員・傭人とは区別されていました。
 地方公共団体において公務に従事し官吏に相当する者は公吏と呼ばれていました。
 戦後は、国家公務員全体を官吏と呼んでいます。
 日本国憲法は、公務員を 「全体の奉仕者」 と位置付けています。

 日本では、2009年に国家公務員に対して新たな人事評価制度が開始されました。
 地方公務員についても14年に地方公務員法が改正され、16年度からはすべての自治体で義務付けられました。その内容は国家公務員の制度を踏襲するものと思われます。(2016年5月17日の 「活動報告」 参照)


 ドイツの官吏の勤務評価についてです。
 成績主義は伝統的官吏の人事運用原則の1つでもっぱら採用と昇進で利用されてきましたが給与制度でも適用可能です。1997年に初めて成績給と業績給が導入され、導入されました。
 業績給は、卓越した特別な個人の業績対して支給されます。最長1年の手当です。

 人事制度は、使用者と公務員代位評が協議して合意します。合意不成立時には使用者側が単独で決めます。昇進での判断材料や人材育成、適正な配置、動機付け等に利用されます。評価時期は、遅くても3年ごとに、または勤務上ないし個人的事情が評価を必要とする時は行なわれます。最多は3年ごとです。
 評価指標は、適正、能力および専門的な業績です。相対評価か絶対評価については、定期評価では各人ごとに絶対評価です。ただし、臨時評価では、たとえば昇進では1人の募集に対する応募者ごとに選抜する相対評価です。専門的業績は、とくに作業結果、実際の作業方法、作業行動について、上司である場合にはさらに指導方法について評価されます。
 勤務評価は、統一的な評価基準にもとづいて、通常2人以上から行なわれます。詳細は上級勤務官庁が評価指針で定めます
 評価される俸給グループおよび役職レベルの官吏の比率は、最上級得点10%、次に高い得点で20%を超えないものとします。
 本人への開示、評価懇談は開示されます。人材育成目的を達成するためには、本人に改善すべき点を認識してもらう必要があるからです。人材育成措置には、例えば、1、勤務上の資格向上、2、官吏職の人材育成、3、協力懇談、4、勤務評価、5、目標協定、などです。
 勤務評価は、官吏に言葉の完全な意味で開示され告げられます。開示は文書によって行われ、評価は人事記録に残されます。
 評価ラウンドの結果は被評価者に点数リストの形式を含む適切な方法で知らされます。
 

 勤務評価の目的は、1、人選、職業的昇進、3、最適の配置の保障 (配置目的)、4、動機付け目的、5、喚起目的、が挙げられています。
 業績給支給の目的は、1、行政における近代化過程の支援、2、生産性ないし行政サービスの質の改善、3、人事指導の改善、4、顧客指向および市民指向の改善、を誘導し動機づけることです。
 評価手続きについてです。評価懇談の目的は評価の説明、とくに価値評価とその根拠の説明です。評価内容全体をカバーし、被評価者の本人評価は確定にとって影響をもちません。評価結果は公開が原則です。
 評価に対して異議申し立てする方法としては、異議申し立て、苦情処理、そして行政裁判所への再審査請求の3段階があります。


 課題記述と要件プロフィルは業績評価の基礎です。それによって被評価者の職務に必要な用件が明らかになります。
 課題記述は職務で具体的に認識される課題および職務 (例、計画、実施、実施の振り返り) を定めるのに対し、要件プロファイルは、人がその課題を遂行するうえで必要になる能力 (例、計画能力、組織的能力) を定めます。両社が評価者からできるだけ統一的に使用されることにより、近代的な評価制度として整えられます。
 専門的業績は、とくに作業結果、実際の作業方法、作業行動について、上司である場合にはさらに指導方法について評価されます。
 課題記述を前提に業績を測定する指標として、コミュニケーション・人との対応、作業方法・課題遂行、専門的知識・認識上の要件、動機付け・忍耐力、作業結果、管理職の指導指標が挙げられています。


 能力評価をする目的は、個々人の能力を把握することにより、人員配置および人事選考の判断材料にすることです。本人の発展可能性およびキャリア展開を検討する手がかりになります。それは本人の特定の能力開発のための後押しをあたえ、継続訓練の基礎となります。この評価はランク付けの方法で行なわれます。

 勤務評価の特徴としては、方法は体系的業績評価であり、昇進の判断材料には目標協定はありません。評価指標にはチーム力が必ず含まれています。


 人事評価における日本の上級国家公務員にあたる官吏と、公務員にあたる公務被用者の違いです。
 官吏は、業績給支給のためではなく、人事決定、人材育成が目的です。公務被用者は協約上の業績給支給のためです。
 官吏は、評価方法で目標協定の利用がごく一部です。
 評価指標は、「公共へのサービス」 は共通しますが比重は官吏の方が高いです。


 ドイツと日本の公務員の比較です。
 利用目的がまったく違います。ドイツでは人事決定、人材育成なので勤務評価に対する関心は高くありません。日本では賞与や昇給等のためです。
 業績評価の方法は、ドイツは指標が仕事の質、仕事量、社会的関係の3本柱で体系的業績評価ですが、日本は知識・技術、コミュニケーション、業務遂行に対する能力評価と目標管理の組み合わせです。


 日本がドイツ・フランスの官吏制度を取り入れてから100年以上が過ぎました。人事評価制度から見てもあまりにも大きな違いが生じています。ドイツは政府機構を推進するスタッフの組織ですが、日本は官僚制度の維持と人脈につながる制度に変えられました。評価の基準はお上への “迎合”、気に入られる傾向が強くなっています。
 ドイツでは公務被用者は自治体と司法上の労働契約関係にありますが、日本では地方公務員も任用です。地方公務員を含めて官吏の意識をもって官僚制度を維持するシステムに組させられて人びとを管理・支配側に位置し、その思考になってしまっています。「全体の奉仕者」 ではありません。そしてそこに“心地よさ”と安住を感じて積極的に受け入れています。

 日本の国家公務員の人事評価マニュアルは180ページに及ぶものが作成されています。分量が多く手続きが複雑なのは目くらましです。基準がはっきりしません。労働者が理解できない状況が一方的評価を許しています。
 地方公務員についてもこの4月から義務付けられました。
 大災害が続く中で、行政のあり方がするどく問われました。これを機会に公務員労働者は評価制度だけでなくどのような労働をすべきかを捉えかす時期に来ています。


  「活動報告」 2016.5.17
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正規労働者と非正規雇用労働者の対立をあおる                  「同一労働同一賃金」 論反対
2016/06/17(Fri)
6月17日 (金)

 6月2日、政府は 「ニッポン一億総活躍プラン」 を閣議決定しました。2021年度までに国内総生産 (GDP) を600兆円に増やす目標の実現に向け、働き方改革による生産性の向上や少子高齢化の克服に力を入れ、成長路線による経済再生の道を引き続き模索するといいます。プランは数字のばらつき、いわゆる 「格差」 を抜きにし、総和の増加を経済成長ととらえる思考に基づいています。評価の基準が数字です。しかし、人びとの生きがい、やりがい、幸福感受度は経済の数字ではありません。全体として人間がモノとして扱われています。

 プランの 「2.一億総活躍社会の実現に向けた横断的課題である働き方改革の方向」 です。
「(同一労働同一賃金の実現など非正規雇用の待遇改善)
 女性や若者などの多様で柔軟な働き方の選択を広げるためには、我が国の 労働者の約4割を占める非正規雇用労働者の待遇改善は、待ったなしの重要課題である。……30代半ば以降、自ら非正規雇用を選択している人が多いことが労働力調査から確認できるほか、パートタイム労働者の賃金水準は、欧州諸においては正規労働者に比べ2割低い状況であるが、我が国では4割低くなっている。 再チャレンジ可能な社会をつくるためにも、正規か、非正規かといった雇用の形態にかかわらない均等・均衡待遇を確保する。そして、同一労働同一 賃金の実現に踏み込む。」

 労働者の約4割を占める非正規雇用労働者の構造を積極的に作ってきたのは誰なのか、放置してきたのは誰なのかが明らかにされていません。だから、非正規労働者を減らすという方向性も提起されません。働き方における身分差別は残ります。そのこと抜きにしての改善は期待薄になります。ましてや 「30代半ば以降、自ら非正規雇用を選択している人が多い」 などという発言は労働者が置かれている実態を理解していないことを暴露しています。

「同一労働同一賃金の実現に向けて、我が国の雇用慣行には十分に留意しつつ、躊躇なく法改正の準備を進める。労働契約法、パートタイム労働法、労働者派遣法の的確な運用を図るため、どのような待遇差が合理的であるかまたは不合理であるかを事例等で示すガイドラインを策定する。……非正規という言葉を無くす決意で臨む。
 プロセスとしては、ガイドラインの策定等を通じ、不合理な待遇差として是正すべきものを明らかにする。その是正が円滑に行われるよう、欧州の制度も参考にしつつ、不合理な待遇差に関する司法判断の根拠規定の整備、非正規雇用労働者と正規労働者との待遇差に関する事業者の説明義務の整備などを含め、労働契約法、パートタイム労働法及び労働者派遣法の一括改正等を検討し、関連法案を国会に提出する。
 これらにより、正規労働者と非正規雇用労働者の賃金差について、欧州諸国に遜色のない水準を目指す。
 最低賃金については、年率3%程度を目途として、名目 GDP成長率にも配慮しつつ引き上げていく。これにより、全国加重平均が1000 円となることを目指す。」

 基本的問題は、非正規労働者が常態化しているということです。働き方改革ではありません。欧州諸国と比較するというのならそのこの点をまず解決し、長期雇用なら正規労働者への無条件の転換と、その上での格差の是正が必要です。 
 「どのような待遇差が合理的であるかまたは不合理であるかを事例等で示すガイドラインを策定……等を通じ、不合理な待遇差として是正すべきものを明らかにする」 とあります。これまで通りの非正規労働者の維持と待遇差を前提としたうえでの合理的か否かの判断になります。おそらく合理的か否かは目先の数字で示される生産性の向上を指すと思われます。

「(長時間労働の是正)
 長時間労働は、仕事と子育てなどの家庭生活の両立を困難にし、少子化の原因や、女性のキャリア形成を阻む原因、男性の家庭参画を阻む原因となっている。……長時間労働の是正は、労働の質を高めることにより、多様なライフスタイルを可能にし、ひいては生産性の向上につながる。今こそ、長時間労働の是正に向けて背中を押していくことが重要である。 週49時間以上働いている労働者の割合は、欧州諸国では1割であるが、 我が国では2割となっている。このため、法規制の執行を強化する。……さらに、労働基準法については、労使で合意すれば上限なく時間外労働が認められる、いわゆる36協定における時間外労働規制の在り方について、再検討を開始する。時間外労働時間について、欧州諸国に遜色のない水準を目指す。」

 「週49時間以上働いている労働者の割合は、我が国では2割」 などという資料を根拠に議論を進めること自体が誰も期待をもつことができません。長時間労働の見直しがおこなわれても、業務やノルマなどの見直しに結びついている例は多くありません。その結果、労働密度の強化がすすんでストレスが増し、職場からゆとりがうばわれています。
 時間外労働の問題は、まず裁量労働制、管理職の無規制、サービス残業の強制などの実態を管理職を含めて明らかにすることが必要です。そして長時間労働を労働者が受け入れている最大の原因は低賃金です。
 また 「36協定における時間外労働規制の在り方について、再検討を開始する」 なら、労働時間規制をはずし、時間ではなく成果に賃金を支払うホワイトカラーエグゼンプションを導入するための労働基準法改訂作業や経済特区は直ちに中止することを宣言すべきです。


 「プラン」 に向けた議論がマスコミでも取り上げられて、問題が指摘されています。
 実施すべき同一労働同一賃金は正社員の処遇を引き下げることなく、非正規雇用の賃金引上げを目標とすると指摘しています。さらに企業横断的ではなく、同一企業内の同一労働同一賃金が基本としています。つまりは、企業の事情が優先します。
 労働契約法など労働関係の改正案を18年度までに国会提出します。
 働き方改革では、労働基準監督署の立ち入り基準を残業時間月100時間以上から80時間以上に引き下げ、長時間労働を是正するといいます。

 5月19日の日経新聞です。
「長時間労働の悪影響は深刻だ。第1子出産を機に女性の6割が離職する現実がある。管理職への昇進をためらう人も少なくない。男性が子育てや家族の介護に積極的に参加するうえでも、長時間の残業は障害になる。時間外労働を根本から抑える手立てが要る。
 気になるのは企業への資金支援が目に付くことだ。高齢者の就労支援として、65歳以降の継続雇用制度を導入した企業などへの助成を拡充する。だが予算を確保できなくなったとき、雇用を打ち切る企業が出てくる心配はないか。
 今回のプランに総じて足りないのは、生産性を上げることによって賃金上昇や雇用拡大が実現するという市場メカニズムの活用だ。正規、非正規や年齢などの違いを問わない。そこを政策の軸に据えなければ、『一億総活躍』 は看板倒れになりかねない。」
 この指摘は、そのとおりで、すでに長時間労働の縮小が実現できなかったかった時の言い訳が準備されています。

「柱となる働き方改革の目玉が 『同一労働同一賃金』 の実現だ。正規社員と非正規社員との賃金差を欧州諸国並みに縮めることを目指す。長時間労働の削減や保育所の整備を通じ、子育てと仕事の両立をしやすくする。
 過去15年間で減った労働力は170万人。今や有効求人倍率は1.30倍と約24年ぶりの高水準で人手不足は深刻だ。
 正規と非正規の賃金格差を縮めることによって生じる総人件費の膨張を企業が受け入れる仕組みなど、意欲的な目標をどう実現するかは見えない。成長産業に労働移動を促すような制度改革は盛り込まれなかった。」

 「一億総活躍プランでは 『同一労働同一賃金』 の実現に一歩踏み込んだ。同じ仕事をしている人は同じ賃金をもらえるようにすべきだとの考え方で、約2千万人に及ぶ非正規社員の待遇を底上げする狙いがある。
 まず取り組むのが、どのような待遇差を不合理と認めるかの判断基準作りだ。実例をもとに不合理とされる待遇差を特定する。この基準に沿って不合理とした待遇差は企業に是正を求め、説明責任も負わせる。今までは何が不当な待遇差かはっきりしなかったが、不当かどうかを判断する基準ができれば、労働者も泣き寝入りせず、裁判に訴えやすくなる。
 政府は当面、日本の非正規社員の賃金水準をフルタイム労働者の8割程度に引き上げることを目指す。ただいくら政府が旗を振っても、実際に賃上げするかどうかは各企業の判断。どこまで対応するかは見通しにくい。
 非正規の賃金を上げれば、企業の総人件費は増えてしまう。仮に正社員の賃金抑制で財源を捻出すれば、正社員の反発を招くのは必至だ。非正規の処遇改善ばかりが進むようだと、正規と非正規の労働者の対立を引き起こしかねない。雇用慣行の是正には副作用もつきまとう。」
 政府はこのだれもが素直に起きる疑問にどう答えるのでしょうか。

 「プラン」 が東京オリンピックを見据えたうえでの実態を隠して表面を糊塗するものにすることは許されません。ましてや間近に迫る参議院選挙目当てのリップサービスで終わらせてはなりません。
 労働契約法の改正は行なわれることになるでしょうが、その時に労働基準法の形骸化に対する警戒が必要です。


 6月3日の 『プレジデント』 オンラインは 「『同一労働・同一賃金は実現できない!』 本当の理由」 の記事を載せています。
 経営者側の本音です。

「■欧米諸国では当たり前の考え方だが
 同一労働・同一賃金に対する議論が活発になってきました。安倍内閣の方針を受け、厚生労働省も大学教授などを中心メンバーとした 『同一労働同一賃金の実現に向けた検討会』 を発足させ、年内には実現のための具体的な方策案が出てきそうです。
 同一労働・同一賃金とは、『同じ価値の仕事内容であれば、同じ賃金にしなさい』 という考え方です。
 主要先進国では当然の考え方として認識されていて、欧米ではこの原則に沿うかたちで、職種別賃金や職務給という考え方が定着しています。
 日本でも、男女雇用機会均等法に加え、パートタイム労働法改正で (1) 職務内容が正社員と同一、(2) 人材活用の仕組み (人事異動等の有無や範囲) が正社員と同一であれば、正社員との差別的取り扱いが禁止されることになりました。徐々にではあるものの、確実に動き出しているといえるでしょう。
 しかし、政府が現在このテーマで解決しようとしているのは、あくまで正社員と非正規社員の待遇格差是正に絞られているように見えます。……
 しかし、本来の同一労働・同一賃金を実現しようとするのであれば、正社員と非正規社員の格差是正だけでは不十分です。それ以外にも、この考え方を阻む、日本の長年にわたる雇用習慣が横たわっているからです。

 ■日本の雇用習慣に横たわる給料格差
 1.中高年社員と若年社員
 ある工場で、同じ製造ラインの作業者として25歳と50歳の社員が、働いているとしましょう。しかも、モノを造るのは機械ですので、両者の間に生産性の違いはありません。(略)
 2.家族持ちと独身者
 家族手当のように、仕事内容とは関係ない要素によって決定される給与項目は、どうでしょう。結婚しない人が増える世の中、独身者から見れば、明らかな不公平です。(略)
 3.定年前社員と定年再雇用者
 ほとんどの会社では、60歳が定年で、その後に再雇用されると、賃金水準が大幅にダウンします。(略)
 4.全国社員と勤務地限定社員
 もう1つ、政府が進めようとしている雇用政策に 「非正規社員の正社員化」 がありますが、この切り札として 「限定正社員」 が位置づけられています。(略)
 5.出向者とプロパー社員
 大企業では、多くの子会社・関連会社に、社員を出向させています。通常、子会社・関連会社の賃金水準は、親会社よりも低く、出向者には親会社の賃金制度が適用されるため、同じ仕事内容であっても、出向者とプロパー社員の処遇差は厳然と存在します。」

 いずれも、低い方の賃金を高い方に引き上げろという主張ではありません。以下のように、高い方の賃金を低くしろということです。

「■オジサンの給与を下げるしか方法はない
 このように、真に 『同一労働同一賃金』 を実現しようとすれば、非正規社員の待遇改善だけに留まらず、正社員内に存在している問題に手を付けなければなりません。
 まずは、非正規社員の待遇改善だけに着手するにしても、賃金水準を正社員に近づけるには、大幅な人件費増を伴います。国際的に比較して利益率の劣る日本企業が、更に利益を削って人件費を増やすことは、事業の存続にもかかわるため困難です。
 ところで、今回採り上げた、これまで優遇されてきた人たちの共通項は何でしょう? 
 『正社員』 『中高年社員』 『家族持ち』 『定年前社員』 『全国社員』 『出向者』。いずれも、その多くは中高年の男性社員、すなわちオジサンです。
 もし政府が、本気で同一労働・同一賃金を実現しようとするのではあれば、『これを実現するためなら、既得権者の賃金は引き下げてもよろしい』 という法律をつくるしかないと思います。
 しかしながら、冒頭の 『同一労働同一賃金の実現に向けた検討会』 に提出されている資料の中でも、『有利な取り扱いを受けている人の処遇を引き下げて対処することは許されない』 旨の記述があります。すなわち、既得権は守りながら改善しましょう、というスタンスです。
 国がこのスタンスを変えない限り、『結果は見えた』 といえるのではないでしょうか。」

 この間、産経新聞などでも 「働かないオジサンたち」 という言葉が使用され中高年労働者の賃金が若年労働者の賃金を犠牲にしているようなキャンペーンが張られています。
 この 『プレジデント』 の主張は、現在の正規労働者と非正規労働者の対立をあおるものです。低賃金の方向での平等で賃金格差を是正するというものです。
 しかし隠されている問題があります。経営者の報酬、株主の配当、そして 「勝ち組」 の賃金です。労働分配率は確実に下降していると同時に、賃金の格差は拡大しています。経営者等の既得権を温存したままで、中高年の賃金を下げて再チャレンジに挑戦させるなどという提案は許されません。
 分配について、全体であり方をもう一度検討される必要があります。それは単に賃金問題に限ったものではなくなります。住宅問題、教育問題をはじめとしてさまざまな社会変革へと一体のものになります。

 同一賃金同一労働は、正規労働者と非正規労働者の共同の挑戦で社会に要求し実現していく問題です。労働者はもっともっと要求と監視をしていく必要があります。

   「活動報告」 2016.3.29
   「活動報告」 2016.3.24
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「国家権力の前に沈黙せざるを得なかった民衆」 の歴史の掘り起こし
2016/06/14(Tue)
 6月14日 (火)

 記録作家・林えいだい氏の活動をまとめた110分のドキュメンタリー映画 『坑の記 (Aragai no Ki)』 の試写会がありました。チラシのタイトルの下には 「権力の前に沈黙を強いられた、名もなき民へのまなざし」 とあります。グループ現代の制作で監督は西嶋真司です。
 この後全国で公開になりますので内容を詳細に紹介するのは入場者を減らしてしまいかねませんのでやめます。チラシに載っている宣伝文だけを紹介します。

「敗戦から70年、今や日本人の8割が戦争を知らない。日本では310万人、アジア全体では2000万人を超える人々が犠牲となったにもかかわらず、これらの記憶を、戦争を知る世代から引き継ぎ、日本とアジア諸国の人々の過去、現在、未来の関係を考えることができる時間はあまりに残り少ない。国家権力の前に沈黙せざるを得なかった民衆の声は、いま忘却の彼方に追いやられようとしているのだ。」

 「国家権力の前に沈黙せざるを得なかった民衆」 はどのようにして生み出されたのでしょうか。日本と朝鮮、筑豊と強制連行について、林氏の写真と文からなる 『清算されない昭和―朝鮮人強制連行の記録―』 からの抜粋です。
「福岡県田川郡の私が住んでいる町には、屋号のような形で 『北海道』 とか 『朝鮮』 と呼ばれる家が何軒かある。それは明治以後、北海道や朝鮮へ移民した人々のことである。ひなびた山村のため、一握りの大地主が土地を占めると、後は、小作人ばかりとなる。長男が家を継ぐと2、3男の食い口はなくなり、他国へと出ていかなければならない。
 明治維新後の日本政府にとって、移民政策を遂行する上で、隣国の朝鮮は絶好の標的となった。
 日韓併合以前の1908年 (明41)、すでに朝鮮侵略の尖兵として、国策会社である東洋拓殖会社を発足させ、日本から移民を送り込む準備を始めた。
 古老たちの話によると、『朝鮮に渡って大地主になろう!』 と、福岡県が県内にポスターを貼って移民を募集したという。いままで小作人として貧乏にあえいできた農民にとって、大地主にならないかという誘いは大きな希望となり、どっと移民に応募して村を出て行った。村で 『朝鮮』 というのはその名残りなのである。
 日本人が1人移民すると、5人の朝鮮人が流民となったといわれる。一攫千金の夢を抱いた移民には、泣く泣く追い出される朝鮮人の心情は分かるはずがない。植民地支配とは、その国を奪いつくすことが目的であり、土地も資源も労働力も支配が思いのままにすることである。
 ……
 日本人移民は、土地を失った朝鮮人からは侵略者と見なされた。韓国併合した1910年から19年までは憲兵政治で、憲兵が朝鮮半島の治安にあたった。栄山浦には憲兵が駐留して、事件が発生すると光州や大邱から軍隊が派遣された。
 全羅南道は朝鮮の中では穀倉地帯で、1年収穫があれば地主は後2年寝て暮らせたという。
 全羅南道は “三白一黒一青” の特産物がある。三白は米と綿、それと絹、一黒はノリ、一青は竹である。それらの特産品は、木浦港から日本へと積み出された。
 日本人地主たちが甘い汁を吸って私腹を肥やしている時に、農民は税金にあえぎ、借金苦で痩せ細っていた。朝鮮人の小作人たちは、かつて自分たちが所得していた田畑を、今度は日本人地主から借りて農作物を作らなければならなくなった。」


 チラシに戻ります。
「重い病と闘いながら記憶の風化に抗う記録作家林えいだい氏 (82歳)。福岡県筑豊を拠点に、朝鮮人強制連行や戦争と平和の問題など、抑圧された民衆の声を世に送り出してきた。
徹底した聞き取り調査によって執筆したルポルタージュは50冊以上にのぼる。その姿を追うことは、あらためて命の重さを考える契機となるに違いない。」

 調査活動と埋もれた歴史の掘り起こしは時間をかければ出来るというものではありません。下調べと対象者との人間関係の構築がなければ進みません。そしてさまざまな困難にぶつかったときに乗り超えるひらめきです。
 筑豊を調査した在日の歴史研究家金光烈氏の 『風よ、伝えよ 筑豊 朝鮮人鉱夫の記録』 (三一書房 2007年刊) からの抜粋です。
「どこかで同胞たちの確実な足跡をつかみたい。このままでは、同胞の歴史が全て消されてしまう。そんな危機感が日を追う毎に強くなっていた。どこで同胞の便りを聞けるだろうか?
 日本では葬式はお寺に頼むのが常識だ。だったらお寺に行ってみよう。そこには、同法の何らかの消息が残っているだろう。記録がなければ住職の記憶にでも残っているのがあるだろう。遺骨が残っているか、そうでなければ住職が葬式のことを記憶しているに違いない。この思い付きは資料を探しあぐねた結果のものだった。その後、お寺を調査していて、お寺には遺骨だけがおいてあるのではなく、先ずは葬式に関わった死者 (仏さん) のことを書いてある 「過去帳」 というのがあることを知った。過去帳は、お寺によっては詳細に記録してあるところもあるが、多くの場合はいたって簡単な記述であった。さらに遺骨を預かっている場合は 「遺骨預かり帳」 とか 「遺骨整理帳」 等があるところがあった。
 ところで、どのお寺に行けばいいのか。どのお寺で同胞の葬儀が行われたのだろうか? そんなことを1人で悶々としていてもどうにもならない。行動を起こす以外はなかった。
 そこで、筑豊地方の全ての寺院を虱潰しに訪ねて調べることにしたのである。
 1980年代から90年代は朝鮮人・中国人の強制連行・強制労働問題が大変大きく取り上げられ、日本社会だけでなく韓国や中国でも大きな問題となり今日にいたっている。その過程で、あちこちの寺院の過去帳が紹介され、寺院に保管されている遺骨のことが話題になったことがあった。過去帳では、朝鮮人に限っては法名がなかったり、俗名すらもなく 「朝鮮人」 「鮮人」 「半島人」 「半島」 「半島者」 となっているのものがある。これは筑豊地方でも非常に多い。この人たちの多くは、住所も本籍も名前もなく 「朝鮮人」 を表す様々な差別的表現だけで済まされている。これでは死者が誰であるのかを特定することは不可能である。
 いかに差別され虐げられた人でも、人間である以上は名前があり、親があり、故郷があるはずである。遺骨の扱いもまた同じで、骨壺が包みの表面に上記の表現と同じ 「朝鮮人」 「鮮人」 「半島人」 や、極端なのは 「鮮人」 の 「鮮」 の 「魚」 だけで終わっているのもある。多くの寺院は納骨堂の片隅に、あるいは縁の下などに放置し 「見せられる待遇をしていない」 と言って、調査を断ったりしている。「待遇が悪くてひとまずは次の機会に」 というのは良心的だからとも言える。
 強制連行でにわか炭坑夫にされ、強制労働で犠牲になり遺骨となった人々は 「黒十字戦士」 などとおだて上げられ、日本の侵略戦争勝利のために酷使されて犠牲になった人々である。」 (金光烈著 『風よ、伝えよ 筑豊 朝鮮人鉱夫の記録』 三一書房 2007年刊)


 「国家権力の前に沈黙せざるを得なかった民衆」がまた作り出されようとしています。
 戦後70年が過ぎると新たな歴史の偽造が進んでいます。
 その1つがヘイトスピーチです。在日韓国・朝鮮人の人たちは生存権にまで脅かされ70年間築き上げてきた生活と社会が壊されようとしています。

 元朝日新聞の記者が、強制連行や従軍慰安婦などを取り上げた記事がねつ造という世論が作りだされています。
 それに対する元朝日新聞の記者・植村隆氏の著書 『真実 私は 「捏造記者」 ではない』 での反論です。
「2014年夏以降の朝日バッシングでは、『産経新聞』だけではなく、『読売新聞』 が異常にハッスルしたこともまた日本のジャーナリズム史に特筆されるだろう。……
 1991年12月3日のベタ記事だ。……当時の 『読売』 記者は、金学順さんらを 『女性挺身隊として強制連行された』 ととらえていたのだ。」
 当時はマスコミ各社も市民も従軍慰安婦を挺身隊と表現していました。
 91年8月、韓国で金学順さんが従軍慰安婦だったと名乗り出ます。
 91年12月7日付けの産経新聞は 「金さんは17歳の時、日本軍に強制的に連行され、中国の前線で、軍人の相手をする慰安婦として働かされた」 の記事を載せています。
 このような書き方は朝日とほぼ同じです。
 93年8月、宮沢政権は 「河野談話」 を発表します。
 93年8月31日の 『産経新聞』 は 「従軍慰安婦問題で日本政府は今月4日、強制連行の事実を正式に認めて謝罪した。」 と書いています。さらに 「従軍慰安婦」 というメモでは 「戦時中、強制連行などで兵士の性欲処理のために従事させられた女性。当時の正確な総数を示す資料はなく、終戦時では約8万人以上とされている」 と説明しています。

「ちょうどこの90年代後半から、慰安婦問題をめぐる歴史的修正主義のバックラッシュ (反動) が始まった。私の記事を 『捏造』 といい始めた時期が重なるのだ。」
 しかし産経新聞と読売新聞にとって、朝日新聞を批判することは自らに返ってくるブーメランです。
 15年7月に植村氏は産経新聞の政治部編集委員にこのことを確認しました。
 編集委員は認めましたが訂正はしません。同じ内容の記事を載せながら産経新聞は居直り、朝日新聞の記事は捏造だったと攻撃を続けています。
 なぜこのようなことが許されるのでしょうか。現在の政権と同じ主張だからです。政権にとって目障りな新聞かどうかが判断基準です。


 もう一度チラシに戻ります。
「現在、林氏は作家人生の集大成として、旧日本軍の特攻作戦を掘り下げようとしている。
この国が若い兵士に死を強要した事実を通して、人命軽視と責任回避がまかり通った戦争の不条理を問うのである。
本作は、反戦と平和への気球を、そして権力へのあくなき抗いを、ペンとカメラで刻み続ける記録作家・林えいだい氏の魂の記録である。」
 林えいだい氏の活動は、埋もれた歴史を掘り起こし、まさしくこのような本物の捏造に対抗する検証です。この後さらなる活躍を期待しながら、ぜひ映画をされることをお勧めします。


  「活動報告」 2016.6.3
  「活動報告」 2016.2.5
  「活動報告」 2016.1.29
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