2015/06 ≪  2015/07 12345678910111213141516171819202122232425262728293031  ≫ 2015/08
韓国の “感情労働” “職場の暴力” 「販売職労働者が尊重を受けて働ける環境を作ろ」
2015/07/23(Thu)
 7月23日 (木)

 サービス業の労働者が顧客からさまざまな暴言、脅し、時には暴力に襲われて被害を受けていることがニュースになっています。社会が生み出すさまざまなストレスが、反論しない労働者を対象に、人格・人権を否定する行為で発散させています。
 この中で、韓国では、労働者が改善の声を上げるのに合わせて、市民や利用者が労働者の人権を守る運動を開始しました。韓国では顧客などから受ける暴力を 「感情労働」 と呼んでいます。

 4月23日の 「ハンギョレ新聞」 に 「韓国で 『感情労働』 に対する労災認定が大幅に増加」 の見出し記事が載りました。
 クレーマー客やセクハラなどでうつ病に罹患する労働者が増えています。
 具体的出来事です。
「ソウル市内デパートの免税店で店舗管理者として働いていた40代前半のパク・インジャ氏 (仮名) は、ある顧客とのトラブルを経験した。顧客が化粧品を買っては返品することを繰り返しているうち、再購入ができなくなると、ひどい言葉づかいや罵声を浴びせ、販売台の広告板を蹴って売り場の物品が壊れたこともあった。その顧客は、数日間ずっと店を訪れたり電話をかけたりしてパク氏を呼び出してきたが、上司はパク氏にその顧客の応対を任せ続けた。ついにパク氏は、他の人に会うと深刻な不安を感じるなど、パニック障害を経験した。勤労福祉公団は 『業務上のストレスによる一時的な不安障害』 という医師の診断書をもとに、パク氏が申請した労働災害 (労災) を認め、2カ月間の療養を承認した。」

 シム・サンジョン正義党議員が勤労福祉公団から提出された 「精神疾患労災申請と判定件数」 資料によると、様々な精神疾患を理由に労災を申請した労働者は2010年89人で承認率23.6% (21人)、11年は102人と25.5%、12年は127人と37.0%、13年は137人と38.7%、14年は137人と34.3% (47人) と増えています。
 産業構造の高度化とサービス業の比重が徐々に高まる傾向と関連して、物理的な被害だけでなく精神疾患が生じる可能性があるという認識が広がったことによります。最近は、職場内のセクハラ被害者やお客様の暴言・暴行被害を受けた労働者に対して使用者の不適切な対応によってうつ病が発症した場合なども、労災として認められる傾向にあります。
 精神疾患の予防対策を強化する一方、労災と認められるのが困難な制度を改善しなければならないという声も高まっています。シム・サンジョン議員は 「まだ仕事上の精神疾患を事前に予防し、発症した場合に加害者を処罰する方法が用意されていない」 とし 「業務上の精神的なストレスが原因となって発生した病気も労災として認められるように、具体的法律改正案を真剣に検討しなければならない」 と語っています。

 精神疾患労災がここまでにいたる経緯です。
 昨年10月22日の 「毎日労働ニュース」 は 「政府は感情労働・精神疾患を労災と認定せよ」 の見出し記事を載せました。
 今年の1月27日の 「活動法告」 で報告した、ソウルの江南 (カンナム) のあるアパートで発生した警備労働者の焼身事件と関連して、国会・環境労働委員会の野党議員は 「感情労働の被害を減らすために、精神疾患を積極的に労災に含ませなければならない」 と声を揃えました。
 ハン・ジョンエ新政治民主連合議員は勤労福祉公団の国政監査で、『最近5年間の精神疾患による労災申請承認現況』 を公開させました。そして申請、承認が少ない理由を 「精神疾患に関連した労災審査に対する制度的な規定が不備なため」 と指摘し、「精神疾患の労災処理に関する社会的な議論を疎かにした雇用労働部に責任がある」 と批判しました。
 実際に公団は、昨年 「精神疾病の業務関連性の判断と療養方案研究」 で、「うつ病や不安障害などは業務関連性を証明しにくく、外傷後ストレス障害以外の精神疾患は労災認定基準に含ませにくい」 という消極的な結論を出していました。
 公団は最近、精神疾患に対して別途の災害調査シートを作るように調査指針を改正したが、根本的な対策にはなっていないというのがハン議員の指摘です。「調査指針の改正でなく、労災の審査対象と承認基準を拡げるような制度改善が必要」 と強調しました。
 同党のチャン・ハナ議員は 「安全保健公団は2011年から 『感情労働による職務ストレス予防指針』 を作って対策を立てているが、労災との関連性を判定する勤労福祉公団は消極的な対処しかしていない」 「労働者の感情労働を含む業務上のストレスを、労災として受け容れる必要がある」 と主張しました。
 これに対してイ・ジェガプ公団理事長は 「精神疾患の労災認定基準を拡げるより、調査指針の改正に力を入れている」 「精神疾患の労災認定可否を統合的に審理するソウル疾病判定委員会に、精神疾患専門医を増やす」 と回答しました。

 今年1月14日の 「毎日労働ニュース」 は 「『出勤途上災害・感情労働に労災認定』 労働界の念願達成か」 の見出し記事を載せました。 
 労働界は、感情労働者の職務ストレスを業務上疾病と認定するよう法律改正することを要求してきました。まれに勤労福祉公団が労災と認定するケースはありましたが、法的な根拠はありませんでした。
 雇用労働部が朴槿恵大統領に業務報告を行った内容に、感情労働従事者の職務ストレスを業務上疾病と認定するように関連法を改正するという内容も含まれていました。
 労働部は 「産業安全保健法に、顧客と応対する労働者に対する事業主の職務ストレス予防措置を規定する」 こと明らかにしました。予防措置をしなかった事業主に対する罰則条項は除くものと思われます。労働部は労災保険法と施行令に、顧客応対労働に伴う疾患を業務上災害と認定し、補償基準を作る作業を今年下半期に終える計画です。


 制度改正以外の動きです。
 今年1月17日の 「活動報告」 の再録です。
 昨年10月14日の 「ハンギョレ新聞」 に 「『感情労働』 から社員を守る企業が増える兆し」 の見出し記事が載りました。
「顧客に応対した社員が悪口や暴言を浴びせられた時、会社はどのように対処しなければならないか? 『お客様は神様』 だから我慢しろと命じるか、あるいは、たとえ顧客を失うことになってもまず職員を保護しなければならないか? 今後、イーマート (訳注:韓国の代表的大型マート) の顧客応対社員はそんなことが起こった場合 『相談が困難です』 と了解を求めた上で、通話を切った後に部署長に報告すればすむようになる。
 心に傷を受けた職員に対しては、休息が必要と判断されれば部署長は早退などの勤務調整措置を取り、最高の先任者や自分自身が代わりに顧客と通話することになる。
 イーマートの職員たちが顧客に応対する時に受けるストレスによる “感情労働” を認めてほしいと要求してきたことに対して、会社が代案プログラムを用意したと14日明らかにした。 顧客に応対する時に発生しうるストレスを予防し、社員を保護するための 『イーケア (E-Care)』 プログラムだ。
 まずイーマート150全店舗に店長らが参加する内部苦情処理委員会の力量を強化するために相談教育を実施し、業務関連ストレス相談だけでなく家庭、子供の問題など個人的な問題についても心理相談を行う予定だ。
 感情労働により職員に心理的安静が必要だと判断されれば、早退させ休憩室も改善する予定だ。状態が深刻な職員のためには心理相談の専門機関である韓国EAP (Employee Assistance Program) 協会の協約機関との相談と連係することにした。 極端な悪口などを言う顧客に対しては、顧客の了解を求めて電話を切れという初期対応マニュアルを製作し配布した。
 また、各店舗ごとに顧客応対が優秀な職員を選抜し、消費者専門相談士資格証の取得を支援する計画だ。
 顧客対面が多い流通業界を中心に、職員の感情労働に対する代案準備が進んでいる。“お客様は神様” という風土の下に職員に全面的責任を転嫁するのが以前の文化だとすれば、職員のうつ病、自殺など深刻な後遺症が社会的に台頭して “悪質な顧客” を選び出して職員を保護しようという動きが広がっているわけだ。
 イーマートの場合、職員が労働組合を中心に昨年から感情労働の価値を認めてほしいと訴えてきた。 イーマート労組は昨年4月から今年4月まで 『感情労働の価値認定と顧客応対マニュアル作成』 を団体協約に反映させることを要求した。チョン・スチャン イーマート労組委員長は 『感情労働は顧客応対の内部原則が守られないために発生する場合が多い。例えば、領収書持参、期間基準などの払い戻し規定があるが、顧客が規定を拒否した場合、末端職員が原則通り対応しても管理者が現れ顧客の希望通りの措置を取るケースが多い。マニュアルも重要だが、そのような状況を源泉から遮断できる環境造成も重要だ』 と話した。
 イーマートに先立つ今年1月にはホームプラスが、『‘労使は組合員の感情労働の価値を認める』 という条項を団体協約に含めた。 釜山のロッテ百貨店は 『感情労働者自己保護マニュアル』 を用意し “感情労働者ヒーリング・プログラム” も運営中だ。
 感情労働に対して別途の手当てを支給する企業も増えている。ロレアル・コリアは全国のデパートで化粧品を販売する職員に月10万ウォンの感情労働手当てを支給している。 年間1日の休暇も別途与えられる。 資生堂は月額4万ウォンの手当てを、釜山新世界免税店は月額3万ウォンの手当てを支給している。 大型マートの中では手当てを支給する所はまだない。
 流通企業ではないが顧客対面が多いサムスン・エバーランドも感情労働に従事する職員のための心健康管理専門プログラム “ビタミン キャンプ” を開発し、今年6月から運用している。」

 昨年10月23日の 「毎日労働ニュース」 は 「イーマート・CJ第一製糖など、ソウル市と 『感情労働者人権保護協約』 締結 サービス連盟 『協約履行を見守る』」 の見出し記事を載せました。
「ソウル市が7月から主導している感情労働者人権保護協約に、イーマートなど3企業が追加で参加した。協約締結式にはイーマート・CJ第一製糖・アジア洲キャピタルが参加し、緑色消費者連帯・企業消費者専門家協会も同席した。ソウル市は韓国ヤクルト・LG電子・愛景産業など6企業と1次協約を結んでいる。
 ソウル市は 『1・2次に参加した9企業は、業務の特性上、顧客を直接相手にしたり電話応対が多い大型流通業者やショッピングモールで、感情労働者が多く働く企業』 であり、『感情労働者の人権保護の観点から、他の企業の実践を誘導できると期待する』 とした。
 協約を締結した企業は 『企業の10大実践約束』 を基に、感情労働者の勤務環境改善のために努力することになる。10大実践約束は、△感情労働者の基本的人権の保障・支持、△安全な勤務環境の造成、△適正な休憩時間・休日の保障、などが内容。
 イ・ソンジョン・サービス連盟政策室長は 『イーマートが最近『社員保護応対マニュアル』 を作って全職員に配布したが、その趣旨と内容は悪くない』 ので、『このような感情労働者保護のための試みがキチンと作動するかどうか、もう少し見守らなければならないだろう』 と話した。」


 労働者以外からの動きです。
 昨年11月12日の 「ハンギョレ新聞」 に 「デパート従業員も売場で水を飲めるようにしよう」 の見出し記事が載りました。
「デパートのサービス・販売職労働者が尊重を受けて働ける環境を作ろうというキャンペーンが開かれる。
 光州 (クァンジュ) 女性民友会は13日、光州市東区大仁 (テイン) 洞のロッテ百貨店光州店付近で 『デパートには人がいます』 という主題で 『尊重の帯つなぎキャンペーン』 を実施する。デパートの女性労働者が人権を尊重されて仕事が出来る労働環境を作ることを促すためだ。
 同団体は女性労働者を尊重するデパートの仕事場を作るために、6つの事項を要求している。『デパート労働者は仕事の特性上、話をよくするので喉が渇くが、売場で水を飲めないケースが多い』 として 『デパート労働者が売場で自由に水を飲めるようにすべきだ』 と促す方針だ。また、デパート労働者が顧客用トイレと移動手段を一緒に使えるようにし、売場にお客さんがいない時は椅子に座れるようにしてほしいと要求する計画だ。
 この日、光州市北区の北東信用協同組合付近で開かれる市民実践キャンペーンも注目を集めている。この団体は市民に△デパート労働者に丁寧語を使い△返品・払い戻し規定をよく熟知して不合理な要求をせず△会計をする時にはカードや紙幣を放り投げず△不必要なスキンシップや言語セクハラをしない、などを守ろうと知らせる計画だ。また、この団体は 『売場に商品がない時、デパート労働者たちは顧客を待たせないよう倉庫まで走って取りに行くよう努めているので余裕ある心でゆっくり待とう、と市民に知らせる』 と明らかにした。」

 今年5月1日の 「ハンイギョレ新聞」 に 「感情労働者の苦衷、ちょっとだけ考えて見てください」 の見出し記事が載りました。
「『さあ、もう少し頑張りましょう。すぐに手伝いが入ります』。マイクを握った通仁 (トンイン) 洞コーヒー工房のパク・チョルウ代表が元気な声でバリスタを励ました。昼食を終えて出てきた市民たちが受け取ったコーヒーカップには 『私の仕事は世の中で最も美しい労働です』 と書かれたピンク色のステッカーが付いていた。ステッカーにはサービス業に従事する “感情労働者” のパク代表とここで働くバリスタ30人余りが感じている苦悩が書かれていた。
 メーデーを翌日に控えた30日、ソウル鍾路 (チョンノ) 区通仁洞のコーヒー工房は 『メーデーコーヒー・フリーデー』 というイベントを行った。 この日だけはアメリカンもカフェラテも全て無料だ。5年前からメーデーの前日に行っているコーヒー工房のコーヒーフリーデーでは、無料コーヒーと一緒に 『考えるテーマ』 が与えられる。 今年のテーマは “感情労働” だ。
 パク代表は 『『ありがとう』 とか 『コーヒーが美味い』 というお客さんの一言を聞くためにこの仕事をしている。互いに少しだけ配慮すれば、人から力をもらうことができるのに、感情労働のせいで傷つく若者の話を聞くたびに心が痛む』 と語った。
 この日、店の前では青年ユニオンとソウル青年政策ネットワークの青年団体会員たちがピンクのバラの花とバンドエイド、ステッカーを配った。パク・ウヨン青年ユニオン労働相談局長は 『今日出会う感情労働者たちに花とバンドエイドを渡して暖かい気持ちを交わそうという意味』 と説明した。クレジットカードに貼れる小さなステッカーには 『あなたの労働にありがとう』 『お金やカードを投げたりしません』 と書かれていた。
 コーヒーを受け取った市民は 『消費者の役割』を考えてみたと話した。キム・ヒョジョンさん (34) は 『私も感情労働者だけど、同時に消費者でもある。今日コーヒーを飲んで、私が辛かっただけに消費者として誰かには確かな慰労をしなければと考えた』 と話した。」
 ストレスを誰かにぶつけることで解消する行為は連鎖を呼びます。それをお互いが理解し合うことで解消し合おうという呼びかけです。
 みな消費者であって労働者です。

 5月15日の 「毎日労働ニュース」 に 「ソウル市、女性労働者を訪ねてストレス管理」 の見出し記事が載りました。
「ソウル市中部女性発展センターが15日から来月26日までの7週間、『訪ねて行く女性労働者ストレス管理サービス』 を実施する。毎週金曜日にロッテマートの支店を巡回して行う。
 センターは 『多数の女性の感情労働者が働く企業を直接訪ねて、ストレス管理サービスをするプログラム』 で、『今年上半期はロッテマートで試験運営をし、満足度を評価した後に規模を拡大していく』 と説明した。サービス対象事業場と期間を拡大することを検討している。
 センターで教育を受けて就職できた結婚移民女性と、40~50代の脆弱階層の女性で構成されたピュティー・テラピストがストレス管理を担当する。労働者のストレスも減らし、雇用も創出する、一石二鳥効果を期待している。
 ソウル市の関係者は 『コールセンターやデパート、マートなど、女性労働者が多いところや、感情労働の強度が高い事業場を対象に、ストレス管理サービスの必要性が提起された』 と話した。」


 消費者と労働者がお互いの立場を理解しあえばストレスは減らすことが出来ます。そうすると労災申請者・承認者も減らすことが出来ます。一石何鳥になるでしょうか。


   「海外のメンタルヘルスケア 韓国」
   「感情労働」
   「職場の暴力」
   「活動報告」 2015.1.27
   「活動報告」 2014.2.4
  当センター「いじめメンタルヘルス労働者支援センター」ホームページ・ご相談はこちらから
この記事のURL | 感情労働 | ▲ top
| メイン |