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コミュニティ・ユニオンの団交 (自主解決) での紛争解決率は       どの機関よりも高く件数も多い
2014/06/17(Tue)
 6月17日 (火)

 労働政策研究 研修機構の主任研究員呉学殊さんの講演会を聞きました。テーマは 「調査から見えるコミュニティ・ユニオンの可能性――非正規雇用労働運動の現状と課題」 です。
 呉さんは、コミュニティ・ユニオン全国ネットワークの運営委員会や全国交流会には欠かさず出席し、また傘下の労働組合・ユニオンに直接足を運んで聴き取り調査を続けています。2011年にはその成果を著書 『労使関係のフロンティア』 (
JILPT刊) に発表しました。現在4版を重ねています。
 そこからの引用です。
「日本では、労働組合と会社との間で発生する集団的労働紛争件数は、1997年を境にほぼ一貫して減少している。2007年の636件は、ピークだった1974年の1万462件に比べると6.1%に過ぎず、相対的に集団的労働紛争はないに等しいといえる。……
 一方、会社と労働者個人との間で発生する個別労働紛争の件数は、1990年代以降増加傾向にある。」

 講演は、「本」 を含めたさまざまなデータを紹介しながら進められました。
 講演内容です。

 1991年のバブル経済崩壊以降、深刻な経済・社会問題が発生しています。それは非正規労働者の増加と深くかかわっています。その関係性をデータから見てみます。
 1つは、20年間の低い経済成長です。日本の経済構造は、貿易依存度は高くなく内需中心です。
 2つ目は、少子高齢化問題です。出生率は1991年が1.53でしたが2013年は1.43です。最低は2006年で1.26でした。高齢化 (65歳以上) は、1991年が14.2%でしたが2012年は24.1%です。
 過去3年間の結婚率 (男性) は、正規労働者が15.2%、非正規労働者は6.3です。出生率 (女性) は、正規労働者33.1%、非正規労働者16.3%です。

 3つ目は、財政赤字の膨張の問題です。日本全体の債務残高 (借入金、政府短期証券を含む) は、2012年10月が1,218兆円でしたが2013年12月5日現在で1,265兆円です。国民1人当たりは992万円です。約1分15秒で1億円上昇しています。
 4つ目は、社会保険システムの危機の問題です。年金積立額は、2002年度末は147.6兆円でしたが、2012年度末112.3兆円です。あと15年で底をつきます。
 しかし2012年の年金保険料完納率は38.4%です。その他は、一部納付者10.1%、未納者26.2%、申請全額免除者13.2%、学生特別9.9%、若年者猶予2.2%です。未納者の分布は、自営12.5%、家事従事4.9%、常用労働者10.3%、臨時・パート労働者31.1%、無職37.9%です。

 5つ目は、雇用・労働条件の下降平準化の問題です。全労働者のなかで非正規労働者の占める割合は、1990年は約20%でしたが2013年は36%、2014年1月から3月期は37.9%です。
 2012年に、転職前が正規労働者だった者の再就職は正規労働者が59.7%、非正規労働者が40.3%です。転職前が非正規労働者だった者の再就職は正規労働者が24.2%、非正規労働者が75.8%です。2009年は、正規労働者が63.4%と36.6%、非正規労働者が26.5%と73.8%でした。
 具体的な143単組本部への調査結果です。人員増の祭に正社員を採用しないでパート労働者を採用するが全体で82.1%、製造業では53.3%です。異動などで正社員転出後その仕事をパート労働者に割り振るが81.3%、製造業では53.4%です。正社員を減らす一方パート労働者採用は67.5%、製造業では60.0%です。
 賃金についてです。労働者1人当たりの月平均賃金総額は、1997年が37万1,70円でしたが、2011年は31万6,792円です。従業員5人以上の一般労働者ではそれぞれ42万2,678円と40万3,563円です。従業員500人以上では55万7,010円と53万1,423円です。
 労働者全体の労働条件が悪化する中で非正規労働者は増えています。


 コミュニティ・ユニオンの現状についてです。
 コミュニティ・ユニオンは2014年6月現在で全国に73ユニオンあり、組合員は約2万人です。他にも多様な個人加盟ユニオンがあります。代表的なものに、連合の地域ユニオン、全労連のローカルユニオン、全労協の全国一般です。2010年では、組合員数の平均は221.2人で、男性比率63%、正社員比率は57.2%、個人加盟組合員数は61.1人で占める割合は27.6%です。
 1組合当りの組合員数は、多い順に地域ユニオン、コミュニティ・ユニオン、全国一般、ローカルユニオンの順です。
 組合員の中で個人加盟組合員の割合が高いのは、全国一般、ローカルユニオン、コミュニティ・ユニオン、地域ユニオンの順です。
 2006年からの全体の組合員数の推移では2008年がピークで、その後減少傾向にあります。コミュニティ・ユニオンとローカルユニオンのピークは2009年、地域ユニオンは2008年、全国一般は2007年です。
 最近3年間の組合員変動状況は、組合の加入者が脱退者を上回り増加が平均41.1%でコミュニティ・ユニオンの平均は48.8%です。組合の加入者も脱退者も少なくて横ばいが25.2%と17.1%。組合の加入者も脱退者も多くて横ばいが11.2%と7.3%。組合の加入者より脱退者が多くて減少が9.3%と14.6%です。


 労働相談件数の推移は2008年がピークです。コミュニティ・ユニオンの平均は138.0件です。
 新規団交申し入れ件数は2009年がピークです。コミュニティ・ユニオンの平均は23.9件です。
 2008年の紛争解決方法の割合です。
 使用者との団交で紛争を解決したが全体平均67.9%でコミュニティ・ユニオンの平均は74.5%です。労働委員会を介して紛争が解決したが6.9%と6.2%。労働審判を介して紛争が解決したが6.4%と5.0%。通常裁判を介して紛争が解決したが4.1%と3.9%。労働局・労働基準監督署を介して紛争が解決したが3.7%と3.1%。地方自治体を介して紛争が解決したが0.9%と0.4%。解決できずに終わったが10.1%と7.0%です。
 コミュニティ・ユニオンの解決能力の高さがあらわれています。
 労働紛争の発生背景・理由についてです。
 複数回答で、多い順に 「会社側の労働法違反」 65.4%、「経営者の労働法への無知」 45.8%、「経営者の酷いワンマン経営」 43%、「企業業績の低下」 40.2%、「労使のコミュニケーション欠如」 23.4%、「職場の人間関係の希薄化」 19.6%などです。


 ユニオン運動の成果と可能性・課題についてです。
 渡邊岳氏 (2008年) によると、和解・斡旋成立率は、裁判所の通常訴訟49.6%、仮処分手続41.5%、労働審判68.8%、労働局の紛争調整委員会38.4%、機会均等調停会議43.5%、労働委員会67.6%、東京都労働相談情報センター73.5%です。
 コミュニティ・ユニオンの使用者との団交での紛争解決は平均は74.5% (2008年) です。どこよりも高い、しかも自主解決をしています
 取り扱い件数においても、裁判所の労働関係通常訴訟1114件、労働審判1028件 (2007年、その後増加、08年2052件、09年3468件、10年3375件)、労働局の紛争調整委員会3234件 (あっせん成立2647件+取り下げ587件)、労働委員会271件 (解決212件+取り下げ59件) です。
 コミュニティ・ユニオンの使用者との団交での紛争解決件数は2387件(2008年)と推定できます。かなりの件数です。

 コミュニティ・ユニオンの解決の特徴は、
 1つとして、行政の解決できない紛争も解決しています。
 2つ目として、紛争解決労働者本人の満足度が高いです。
 3つ目として、使用者に紛争解決過程 (団体交渉) で労働法の学習会の提供をしています。再発防止の役割を果たし、労務管理を改善させています。
 4つ目として、協定書の中に再発防止策につながる内容を明記することも少なくない。
 5つ目として、雇用、労働条件の下降平準化阻止の一定の役割を果たしています。

 ユニオン運動は、企業別労働組合の非正規労働者組織化促進と企業内労使関係の健全化を促進しました。例えば、パートタイマーの組織化などです。パートタイマーを組織している割合はコミュニティ・ユニオンが圧倒的に高いです。
 そして労働問題を可視化しました。企業内組合の活動の停滞の中で社外のユニオンがある影響は小さくないです。

 ユニオン運動の可能性と今後の課題についてです。
 1つは、組織拡大です。ユニオンメンバーの定着度向上と支部・分会の結成です。
 2つ目は、人材と財政の確保です。公的支援を含めてどう確保するか。
 3つ目は、他組合との連携・交流や学習効果を活かす、“技” の交流です。
 ユニオン運動の強化とともに集団的労働運動を作っていく必要性があります。そのことを含めて従業員代表制の法制化が必要だと思います。

 呉さんは、「今、労働運動で砦を守っているのがコミュニティ・ユニオンです。」と講演を締めくくりました。
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