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「ルーズヴェルト・ゲーム」 を身近な問題として観戦
2014/06/10(Tue)
 6月10日(火)

 日曜日の連続テレビドラマ 「ルーズヴェルト・ゲーム」 を欠かさず観ています。
労働相談を受けていると出くわすいろいろな紛争やその背景が盛り込まれていて、ドラマというより現在進行形の実話と捉えてしまい、はらはらしたり、いらいらしたり、むかついたりです。 
 ドラマのストーリーを紹介するのではなく、出来事を労働相談の案件内容として検討してみます。

 中堅精密機器メーカー 「青島製作所」 は取引先から値下げを要求され、呑まなければ他社に乗り換えると宣告されます。また銀行から来期の融資はリストラが条件と回答されます。さらに別の取引先から生産調整の話が持ち込まれます。役員会は方針を巡って対立が続きます。
 役員の一部は自己保身に走り、お互いに責任転嫁し合います。幹部社員の中にも合併先に自分だけは受け入れてもらおうと開発技術情報を流したり、こっそりと合併を受け入れ、その条件として自分の役職を保障させる体制づくりの話を進めたりいます。今の会社をどう維持するか、生き残らせるかなどは考えようとしません。しかしよく聞く話です。

 大手企業は、取引先や下請、請負を犠牲にして経営を維持していますが、それらの会社や労働者のことはまったく省みません。
 下請け企業などでは、経営者の努力ではどうにもならないことが日々起きているのが現実です。

 6月8日放送の回には、合併に向けて臨時株主総会が開かれることになり、3分の1を所有する株主が登場します。役員との話し合いの中で株主は 「リストラはあなたたち問題で株主にはな~んも関係ないことでしょう」 と配当のことしか関心がない趣旨の発言をします。5月20日の 「活動報告」 で取り上げた株主の姿勢そのままです。むかついてむかついてむかついてしまいました。

 バブルが崩壊し、ファンドが飛び交うようになった頃から、会社は誰のものかという議論があります。
 「ストックホルダー」 (株主) という主張がはびこっています。安倍政権のいう景気とはストックホルダーだけを対象にしたものです。
 そうではなく 「ステークホルダー」 (利害関係者) のものだという主張もずっと出ています。利害関係者は拡大して捉えられ、事業主だけでなく、労働者、顧客・消費者、そして事業所が存在する地域の人たちも含めるまでになっています。法人としても会社の社会的責任の問題です。

 松下電器の創業者・松下幸之助は従業員を大事にし、解雇をしなかったと言われます。しかし労働者だけを大事にしたのではありません。彼にとっては、「事業経営とは本質的には私の事ではなく、公事であり、企業は社会の公器である」 (『実践経営哲学』) です。企業は社会に必要な、社会に期待され、貢献する経営体でした。その結果が労働者の福利厚生を充実させ、雇用不安をなくしたのです。逆に解雇は社会的負担を増やし、不安定にすると捉えました。まさしく会社はステークホルダーのものだったのです。
 しかし彼がそのような人材を育成しようと創設した松下政経塾の門下生は、ほとんどステークホルダーの擁護者として政治にかかわっています。
 労働者や労働組合が松下電器に終身雇用のノスタルジーを感じていても問題が解決しない時代に入っています。


 銀行は融資の条件として大幅なリストラを条件にします。
 リストラは、瞬間的に人件費を膨らませますが、その後にそれ以上の削減を目指します。しかし銀行の取引はそこまでで、融資を回収したら撤退します。銀行は企業のために活動するのではありません。銀行のためです。だから銀行から政策を強制された企業はなかなか再建できません。(13年9月27日の 「活動報告」)
 リストラは人材という財産を失う行為です。自らの経営戦略を持たないリストラは失敗します。経営が継続できても収益を大きく縮小させた状態が続きます。


 ドラマの会社に労働組合は存在しません。
 ドラマを観ていて、労働組合が定期的に馴れ合いではなく経営チェックをする必要性をつくづく思い知らされました。問題点を指摘して解決案を提起するのは労働組合の任務です。そのことをしないで、再起が不可能になってから経営の失敗を追及しても遅すぎるという状況が生まれます。
 ドラマは、経営者は会社が危機に陥ってもきちんと社員に状況を伝えません。そしてリストラがささやかれはじめても社員からは危機感がまったく感じられません。この鈍感さにイライラがつのりました。
 会社は経営状況を常に全社員に報告・説明し、赤字が生じてもどう立ち直ったらいいか、踏ん張るかの問題提起をした方がうまくいきます。その方が、結果として上手く行かなくても労働者は納得できます。

 役員会で社長はリストラ策として 「野球部を廃部する」 と言います。野球部は都市対抗野球の名門でしたが低迷していました。有能な選手は企業としてもライバルの会社に引き抜かれていきます。
 派遣社員の中に剛速球を投げる元高校野球選手がいました。彼は安定した生活を送るために、真面目に働いて評価をえて正社員になりたいと仕事に専念しています。野球部員はその派遣社員に入部を誘います。最初は拒否されましたが入部にこぎつけます。派遣社員は正社員になって東京地方大会に出場します。野球がうまいということで正社員になれました。他の派遣社員にとっては羨ましい話です。
 青島製作所の野球部員は会社の危機を捉えられずに野球を続けます。
 視聴者としては、こんな時にのうのうと野球をしている部員に怒りの矛先が向いてきました。
 しかしすぐ廃部にしたらドラマはつまらなくなります。

 
 行政改革・構造改革の中で公的福利厚生施設も縮小されたり廃止されたりしていきました。世論は無駄、もったいないと同調しました。その結果、社外の行事を催す時や、たまの休日に旅行する時などには高い使用料、宿泊料金を支払わなければならなくなりました。
 他人事として承認したり、見て見ぬふりをしたことの結果は自分に回ってきます。自己責任です。
 同じことが企業においてもいえます。
 野球部など社員のクラブ活動は福利厚生の一環であり広告塔です。
 しかしバブル崩壊、そしてリーマンショック後廃部になった会社の運動クラブはたくさんあります。同時に福利厚生施設が売却されます。例えば、最近ではエスビー食品の陸上部などです。
  労働者が気を付けておかなければならないのは、同時にその他のさまざまな見えにくい福利厚生政策が縮小されて働きづらくされていくということです。福利厚生施設の売却は労働条件の悪化に繋がっていることを見過ごしてはいけません。

 ドラマでは、たくさんの社員が野球部の試合会場に駆けつけます。青島製作所の社員は愛社精神に溢れているとは思われません。しかし、野球部への応援をとおして社員どうし横の繋がりが作れていたということは事実です。企業のクラブ活動にはそのような効果があるということも実感しました。かつても労働組合はクラブ活動が盛んでした。今後の労働組合運動の活性化のためにヒントが隠されていると受け取りました。


 ドラマでは技術力が劣るライバル会社が、表向き企業合併という吸収を行なって開発技術を手に入れようと工作します。
開発部員が開発した技術がライバル会社に流れます。

 さて、開発部員が開発した技術は誰のものでしょうか。
 労働者は雇用主と、技能と労働力提供の労働契約を締結します。では個人が持っている知識をもとにして湧いてきたアイディア、インスピレーションは誰のものでしょうか。それも労働時間外に職場外で湧いてきたとしたら。
 営業社員によくある話ですが、営業社員が開拓した顧客は誰のものでしょうか。労働時間内に通常の活動で開拓したのなら会社のものでしょう。では営業社員個人の人格が気に入られて契約にこぎつけることができた顧客は誰のものでしょうか。
 有能な営業社員は個人的にこのようなたくさんの顧客とルートを持っていて業績を上げます。それらは会社のものでしょうか、個人のものでしょうか。区別をつけにくいです。
 ただ労働者個人が持っている技術者の能力、営業社員の顧客とルートを会社にすべて提供したら、その段階でその労働者は不要になってしまいます。
 社員が集めた名詞を会社で共有したらチャンスを有効に活かすことができるというテレビコマーシャルが流れています。しかし労働者がその指示に正直に応じたとしたら、お人好しとしか言えません。


 会社は誰のものか。「ストックホルダー」 か 「ステークホルダー」 か。
 それを決めるのは株主ではなく社員、労働者・労働組合であるということを確認しながらまた観つづけます。


 「ルーズヴェルト・ゲーム」 には奇跡の逆転劇と副題がついています。
 第32代アメリカ合衆国大統領フランクリン・ルーズベルトの手紙に由来するのだそうです。
 しかし、ドラマにルーズヴェルトの挑戦と業績に対する評価も含まれるとしたなら、彼が不況を乗り越えたのは第二次世界大戦に向かう過程、戦争に加担していくことによってのものであったということをしっかりと押さえておく必要があります。
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