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生命も健康も大事。自分の働き方を考えよう、変えていこう
2013/12/26(Thu)
 12月26日(木)

 12月21日、日本教職員組合中央執行委員の向明戸静子さんをお招きして講演会 「震災の支援活動に従事する労働者への心のケアは」 を開催しました。向明戸さんは、2011年3月11日の震災時は岩手県久慈市の学校に勤務、12年4月から日教組本部に勤務しています。
 被災地から見えてきたこと、克服すべきこと、今後の教訓として生かすべきことなどを具体例を含めて話してもらいました。
 講演内容を紹介します。


 震災当時は久慈市内に住んでいて、市内の山側の小学校に教員として勤務していました。
 学校、教職員は世間から孤立しています。行政的にも隔離されています。ケアが行き届いていません。実態がわかりづらいです。このことは現場にいる時はわかりませんでした。
 震災後の自治体職員や教職員、地元にいて支援を続けている人たちの惨事ストレスについても、阪神淡路大震災の経験から課題はたくさんあって取り組まなければならないことはわかっていました。しかしどうしても手が届きません。
 どうしてそうなのかわからなかったのですが、日教組本部に来て構図が見えてきました。

 学校の教職員は、非正規教職員もそうですが実態をつかみづらいです。
 本部に来てすぐ、復興庁に、1年たっても教職員はまだ誰も相談を受けれられないでいる、一度も自分の心の内を語れていない者たちがいる、どうにかケアをしてもらいたい、一斉休暇を実施してほしいと要請しました。
 とにかくまず休ませなければなりません。どんなケアをしようと今まで手が及んでいません。普段も全国の教職員が労働安全衛生についてはまったく手つかずです。

 被災地を対象に特別休暇を取得させてほしいという要望もあります。
 教職員は授業がある限り交代で休めと言われてもできない状態です。年休の行使も少ないです。特別休暇の要求さえ我慢しています。通院が必要なのにしていないこともあります。だから一斉休暇しかないのです。
 各県教委にも一斉休暇を早期に実施して欲しいと要請したのですが理解されませんでした。
 組合も、教育委員会も子供の対策や学校再開などでオーバーワークで手が回らない状況にあることを知っていました。でも訴えるしかないのです。

 1年半経って、事故があってからのメンタルヘルスチェックではなく、今の状態から継続的にメンタルチェックを続けられる体制を提案しました。同じ地区で、同じ体験者同士でグループでお茶を飲みながら話し合いができる、自分は思いを吐けなくても誰かの話を聞いて自分もそうだったと思えるようなグルーピングのカウンセリングがいいのではないかということです。個人的なカウンセリングも必要ならばそこからピックアップしていけます。

 復興庁に、被災地の労働組合は構想を立てて要請に行きました。
 復興庁はいろいろな省庁の寄せ集めで、教職員団体が行くと文科省から出向している者が対応されました。
 出てきたのは緊急スクールカウンセラー等派遣事業です。緊急的にカウンセラーを派遣しましょうということでした。事業内容を見ますと、表向き子供のケアで、保護者・教職員の相談にも乗りますということです。実態としては教職員も相談できる体制がとれているところもあったようです。

 公務員全体の問題だから総務省に要請に行こうということになりました。
 総務省の出先機関である地方公務員災害補償基金による 「メンタルヘルス総合対策事業」 が昨年度からあります。立ち上げる前から労働組合も関わって話をしました。グループカウンセリングのようなものを入れてもらいました。継続的なメンヘルチェックも入れてもらいました。
 そのメニューが 「基本メニュー」 です。ストレスチェック、臨床心理士等のカウンセリング、メンタルヘルスセミナー事業、心の健康回復事業として交流、話し合いなど、メンタルヘルスマネージメント支援などです。教職員は、あらためて開催すると研修会のようになってしまうので、話し合いなどの場所は、会議室のようなところではなくて、ほっとできるところにしてほしいと提案しました。税金を使う事業なので難しいと言われました。

 いろいろな方と話をしても、教職員については今どうなっているかわからないと言われました。
 教職員は「子供を守ってくれる人」という目で見てくれます。保護者の生活が安定していない中では、子供も安定しません。そういったことで心を悩ませています。

 教職員はなんできついのかなと考えました。子ども・保護者、避難者と直接のやり取りがあるからだと思っていましたが、それだけじゃないなといろいろ思っていたことを整理してみました。その結果、だからきついんだとあらためて思いました。
 支援者としての自治体職員や教職員の立場は、当該と話をしていると自分たちはできて当たり前、一生懸命やって当たり前なんだよねと言われます。たとえば支援物資を配ったりしていて足りなくなるのも、回らないのも自分たちのせいです。避難所運営ではなく、被災者として勤務校とは別の学校にいる方も、周りからは教職員ということで支援物資は後回しになったりします。
 滞る、止まることは許されません。すべての要請を受ける窓口となります。
 住民の感情は苛立ち、怒りでその矛先なります。ストレートな怒りというよりも、言葉のきつさは先が見えないことに対するどうにもならない苛立ちや怒りです。はっきりしたものではありません。自治体職員のストレスはそのような中から発生します。

 山田町や宮古市の高校の現業職員は、地震が起き、津波が来て被災者が避難して来た時から、必要な物に対する司令塔として対応しました。すべて緊急対応ですが準備していたものは何もないなかで24時間対応です。いつ寝たっけという話も聞きました。ボイラー室の狭いところに教職員は交替で横になっていました。
 男子生徒は避難者が車で押し寄せるので交通整理に従事しました。全部入れきったのは夜遅くです。女子教職員と生徒は調理室で、集めてきてもらった米で炊き出しのおにぎりを作って避難者に渡しました。最後に、作っていた高校生に渡ったおにぎりはピンポン玉くらいでした。教職員は、まだ食べていない方はいませんかと声を出して確認した後に受け取ったのはもっと小さいものでした。でもあったかいご飯を食べれたんだからよかったんだよねと言っていました。
 その後は、トイレ用、飲料水用の水汲みです。切らしてはいけないということで、教職員全員で避難者が起き出す前に始動します。山から汲んだり、川の近くの鮭のふ化場からきれいな飲み水をもらい、ポリタンクで運びました。それが長期戦の中で疲労していきます。
 一番つらかったのは風呂に入れなかったことだそうです。ほっとしたいという思いもありますが寒いです。
 教職員は避難者と一緒の場所で寝起きします。緊急事態にも24時間対応します。しかも長期間です。
 常に周囲の目があります。
 
 国・行政と地方自治体、住民や教職員が板挟みになることがあります。これは今も続いています。
 教職員は、授業が再開すると、今後は学習しながら子供たちのケアをして行きたいと思っていました。
 そこに文科省から復興教育、放射能教育などがおろされてきました。各教育委員会主催で行っていた陸上競技会や合唱コンクールなどを、みなが元気出るから必ずすぐに復活しろと言われました。3月前に翌年度の予定が組まれていた公開研究授業を9月に予定通り行わされた学校もありました。普段の授業以上に準備をします。本当はそんな状態ではありません。
 そんな負荷をかけてまで元気でない者を元気であるようにアピールするようにと言われます。

 全国の支援団体が子どもたちや被災者を元気にしたいと訪れます。有名人もきます。子どもたちは音楽が聞けたりしますので今日は何かなと楽しみにします。いまだに来ています。児童生徒は元気をアピールするための練習もします。
 しかし確かに子供たちは楽しんでいますが、普通の誰も来ない日に戻った時の感情の落差は大きいです。1年目はそれが心配だったと言っていました。

 文科省の奨励事業として復興教育がおろされました。
 子どもたちにこれからどういう未来を作っていきたいかを考えさせましょうというのが主な狙いです。
 被災地の教職員は、子供たちの心の状態を見ながら、やれることとやれないことがあるというなかで手探りですが自分たちでやっていかなければならないと思っています。子たちが将来ここで生きて行くために、先輩たちも乗り越えてきた中で、今は無理かもしれないけれど、ゆくゆくは自分が体験したことや怖かったことを今後に活かして行かなければなりません。
 そのなかでどう生き抜いていくか。教職員は何も授けられないです。子供たちが自分で考えて、何かを生み出していかなければなりません。
 教え与えるものではないなと捉えています。

 しかし文科省は一方的に押し付けてきます。授けるものになっていきます。教職員は文科省が言ういいだろうが本当にいいのだろうかと悩んでいます。管理職は板挟みです。無下に断れません。
 子供たちを目の前にした時、行政から言われたことと本当に必要なことの間で板挟みになっています。
 自治体労働者とはちがう板挟みです。

 日常と初めて経験する非日常の業務の板挟みになり、いつ切れ目なのかわからない過重労働が続きました。いまだに切れ目がわからないという人がいます。
 少し前、ある青年が 「全国のみなさんとの交流で話をしなければならないのですが本当は話したくないんですよね」 とぽろっと言いました。でも翌日の交流会では自ら進んで話をしていました。使命感だと思います。
 彼は、自分の中で3.11がいつ終わったのかわからない。そのとおりで終わっていないし、メリハリがなかったんです。ここで休もう、切り替えようという場面がなかったのです。

 学校には震災過配教職員がいますがほとんど非常勤です。臨時教員だとフルタイムですが非常勤です。カウンセラーも非常勤で複数校かけ持ちです。
 今回の震災過配教職員はハローワークに募集をかけました。何を手伝ってもらうかというのは学校任せです。人が多いのは本当に助かります。しかし教育免許がない方もきますが指導はできないことになっています。教職員の仕事を回せません。学校が必要な派遣になっていません。派遣され人も何をしたらいいかわからないでつらいです。そういうところでも疲弊をしています。

 自宅を被災した教職員は遠距離通勤になりました。学校が避難所になった教職員は唯一安らげる家庭も失って多忙を極めました。疲労も、気持ち的にも回復できないなかで家族にさえつらさを言うことはできませんでした。
 同僚にも自分の身内が行方不明だったことを言えずに休みなく勤務を続けていた者がいました。見つかった時、明日休みますとだけ言って休暇を取りました。葬儀でした。
 まだ見つかっていない人もいますので、自分の身内は見つかったと言えないのです。
 職場でも、身内でも話せませんでした。いまはだいぶ話せるようになりました。


 これからの課題ですが、日常的にしなければならないことは当たり前に行いましょうということです。
 私たちの働き方とか子供の環境整備です。学習活動での苦悩が一番つらいです。そこをクリアすることを重点的に進めていきたいと思っています。それが教職員の負担解消になりますし、楽になる体制です。自分のことは二の次に人が多いので。
 労働安全衛生は予防的な取り組みをしなければならないとはわかっています。そのためには教職員自身が自分の働き方を考えよう、変えていこう、生命も健康も考えて行こうと呼びかけています。子どもたちも教職員も、誰にとっての命と健康も大事という視点から働き方を考えていきませんかと提起していきたいと思っています。
 疲労をためない働き方に変えていかなければなりません。
 現職死亡が結構あります。
 知っている身内の方の話では 「これが終わったら病院に行くから」 と言っていました。しかし終わってほっとしたら亡くなってしまいました。
 ため込まないで切れ細かな休憩をとるようにしなければなりません。
 休憩はちゃんと取る、通院はちゃんとする、サービス出勤はしないようにしなければなりません。
 時間管理がありませんが、労務管理の要求とともに自分たちも意識を変えていかなければなりません。


 被災地現場の状況と訴えがじっくりと伝わってくる講演でした。
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「ブラック企業」 の実態ではなく、厚労省の怠慢が明らかにされた
2013/12/20(Fri)
 12月20日(金)

 12月17日、厚労省は今年9月1日に全国の労働基準監督署が行った電話相談への情報や若者の 「使い捨て」 が疑われる企業など計5,111事業所を重点的に抜き出して9月に実施した過重労働などの監督結果を公表しました。
 電話相談は、労働者が一方的に違法だと主張して通告しているなどと言われました。しかし実際に全体の82%にあたる4,189事業所で長時間労働や残業代不払いなどの労働基準法違反がありました。違反があった事業所の業種別内訳は、製造業 1,222、商業821、運輸交通業491、保健衛生業423、接客娯楽業335です。


 監督結果の労働時間についてだけ検討してみます。

 12月3日の 「活動報告」 で報告した、10月に厚労省労働基準局が発表した 「平成25年度労働時間等総合実態調査結果」 を確認しながら比較してみます。
 「総合実態調査結果」 は事業場への調査・使用者からの情報です。一般労働者全体の平均年間時間外労働は343.56時間です。事業規模が大きいほど増え、301人規模以上の事業場では352.10時間です。
 労使協定の内容です。
 時間外労働・休日労働に関する労使協定は55.2%の事業場が締結。していない事業場については (複数回答)、時間外・休日出勤がない43.0%、労使協定の存在を知らなかった35.2%、締結・届け出を失念した14.0%となっています。これらは残業代の不払いに繋がります。
 また無制限の長時間労働を強制する 「特定条項付き時間外労働に関する労使協定」 の調査結果について、厚労省は 「延長時間数は、『最長の者』 の実労働時間数と比べても相当長めに設定している」 と注意書きを加えています。
 
 しかし今回の監督結果とは、いくら労働者から違法行為があると訴えがあった事業所を対象にしたものだとしてもあまりにもかけ離れていて連関性を探すのは難しいです。
 2つの調査・監督で重なった事業場はなかったのでしょうか。あった場合、その結果は同一内容だったのでしょうか。
 「総合実態調査結果」 は、やはり信用できません。労働者も調査の対象に入れてやり直す必要があります。


 監督結果についてです。
 是正勧告書を交付した4,189事業場のうち、労働時間の違反については2,241事業場です。今回の監督は、過重労働の問題があるところ、より深刻・詳細な情報のあった事業場を優先して対象としたので労働時間の違反についての比率が高いです。労働時間違反の内容は、36協定がなくて時間外労働を行っているもの、36協定で定める限度時間を超えて時間外労働を行っているなどです。

 1,208 事業場に対して、労働時間の管理が不適正であるため、厚生労働省で定める 「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」 に適合するよう、労働時間を適正に把握することなどを指導しました。具体的には、始業・終業時刻の確認・記録735、自己申告制による場合の実態調査の実施361、自己申告制の説明183、適正な申告の阻害要因の排除96などです。
 これらは 「総合実態調査結果」 における時間外労働・休日労働に関する労使協定を締結していない理由の事業場の、時間外・休日出勤がない43.0%、労使協定の存在を知らなかった35.2%、締結・届け出を失念した14.0%と連関しているように思われます。
 時間外・休日出勤がないは事実と違う、労使協定の存在を知らなかったは使用者としてはあるまじき行為、締結・届け出を失念したは労働者を騙していたということです。
 使用者が、単独で違法行為を行うことはあまりありません。同じ業界や地域で横並びの労務政策をとります。「みんなで渡れば怖くない」です。つまりは、この実態は氷山の一角でしかありません。法律がまったく守られていいない実態が浮かび上がってきます。


 1,120事業場に対して、長時間労働を行った労働者に対し、医師による面接指導等を実施することなどの過重労働による健康障害防止措置を講じるよう指導しました。内訳は、面接指導等の実施648、衛生委員会等における調査審議の実施590、面接指導等が実施出来る仕組みの整備等362です。
 時間外・休日労働時間が最長の者を確認したところ、1,230事業場で1か月80時間を超えており、そのうち730事業場で1か月100時間を超えていました。
 ここでも 「総合実態調査結果」 の 「延長時間数は、『最長の者』 の実労働時間数と比べても相当長めに設定している」 の注意書きは事実ではなく、労使協定を逸脱した実態が蔓延している実態が浮かび上がってきます。

 しかし健康障害防止は長時間労働をなくすことが一番の措置です。「特定条項付き時間外労働に関する労使協定」 は早急に廃止すべきです。
 現在は、厚労省は長時間労働の存在を前提に通達などを出し、使用者はそのことをクリアすれば安全配慮義務は満たしていることになります。通達は労働者がどこまで耐えられるかのチェックになっています。


 事例が紹介されています。相談活動でも似たような事例がたくさんあります。特異なものではなく、特徴的なものだと思われます。

 【概要】
 30歳代前半の労働者から、長時間労働やパワーハラスメントが原因で精神障害になったとして労災請求があったことを契機に監督指導を実施したところ、以下の事実を確認した。
 ① 監督署がIDカード等の労働関係に関する書類を調査したところ、36協定の上限時間を超え、最も長い者で月80時間を超える時間外労働が行われていたこと
 ② 時間外労働に係る割増賃金を定額の手当 (最高3万円) で支払うこととし、労働時間の把握を行っていなかったが、労働時間を確認したところ、法定支給額に不足していたこと
 ③ 時間外・休日労働が月80時間を超える労働者に係る医師の面接指導等について、実績がなく、より積極的な運用が求められると判断されたこと

 似たような事例の相談があり、団体交渉をしました。
 月間時間外労働は45時間と設定されて手当が支払われていました。水曜日はノー残業デーとなっています。それに合うように週ごとに書面で業務報告をします。しかし社員はほとんど最終電車に合わせて走って退社していきます。業務が終了しないので泊まり込むこともしばしばありました。
 体調を崩した相談者は、頑張りきれなくなって倒れてしまいました。しかし会社に迷惑をかけてしまって申し訳ないという思いを払拭しきれず、そのことが回復を遅くしました。かなり経ってから相談にきました。
 団交で会社は設定以上の残業はない、仕事はなくても勝手に残っている社員がいるなどという主張を繰り返しました。団交に出席している管理職も一緒に残業をしているにもかかわらず否定します。
 残業を証明できたのは、顧客との受信メールの時刻からでした。

 【概要】
 会社の労働者の平均年齢は、20歳代後半。
 監督指導時に確認した事実は以下のとおり。
 ① 監督署が静脈認証システムの労働時間記録等の関係書類を調査したところ、36協定の特別条項の上限時間を超え、最も長い者で月100時間を超える時間外労働が行われていたこと
 ② 時間外労働に係る割増賃金は定額で支払われているが、把握した労働時間と突き合わせをしておらず、支給額に不足が生じていたこと
 ③ 衛生委員会が設置されておらず、長時間労働者の健康障害の防止を図るための対策の樹立について、調査審議されていなかったこと。また、時間外・休日労働が月80時間を超える労働者に係る医師の面接指導等について、実績がなく、より積極的な運用が求められると判断されたこと

 似たような事例を聞きました。
 長時間労働で過労死も発生させている飲食店の学生アルバイトの話です。
 慢性的人不足の中で、お金を稼ぎたい学生にとって空いている時間の長時間労働はありがたかったといいます。学生は授業との両立のスケジュールをたてて働きます。未払い賃金はありません。いい職場だったので長期間続けられたといいます。
 しかし、社員は学生の希望スケジュールをそのまま受け入れてシフト表を作成し、人員体制の濃淡は自分が受け入れます。学生には辞められたくないからです。
 もちろん開店していなくても下準備や運営業務があります。その結果、裁量がまったくない長時間労働が強制されることになります。さらに売り上げ高管理の責任を負わされます。会社は、深夜から明け方は、空いていて自由に使える時間帯という解釈です。睡眠時間が確保できません。
 学生は社員に対して感謝をしていました。事件を知って振り返ってみて、はじめて過重労働だったことを確信したといいます。


 今回の監督結果からは 「ブラック企業」 の実態が浮かんだのではありません。これまでの厚生労働省の怠慢が明らかにされたのです。
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「職場の暴力」は会社や社会のひずみの現象
2013/12/17(Tue)
 12月17日(火)

 12月11日、国土交通省は2012年度の 「鉄道係員に対する暴力行為の実態調査結果及びその対策について」 を発表しました。国交省による全鉄軌道事業者を対象とした調査ははじめてだといいます。(これまでは日本民営鉄道協会など全国26社のデータが発表されていました)
 調査結果は、全国で暴力事件が932件発生しています。都道府県別では、東京都302件、神奈川県93件、愛知県72件、埼玉県71件、大阪府58件、千葉県53件などです。
 調査結果は具体例10を紹介していますがそれ以上詳しいことはわかりません。
 暴力行為の抑止に関する取組みとして、警察官・ガードマンによる巡回の実施、所轄の警察署に依頼し、教習等で護身術訓練に参加、暴力行為防止ポスターの掲出等の啓発活動、などがあげられています。

 JR東日本八王子支社は毎年 「社員に対する暴力行為」 を発表しています。
 2012年度は32件発生しています。2010年の45件、11年の46件からは減っています。
 発生場所別ではホーム11件と改札11件で全体の約7割を占めています。加害者の年齢はばらばらです。6割近くが19時以降の夜間に発生し、加害者の約半数が飲酒をしていました。
 具体例が紹介されています。
 対策としては、社員に対する暴力行為を防止するためにガードマンの配置や防犯カメラなどを設置するとともに、トラブルが発生した際には早めに警察官を要請することとしています。また、暴力行為が発生した際には被害届を提出するなど、毅然とした対応をしているといいます。

 国交省、JR東日本八王子支社とも暴力事件とは被害者が治療を要した事件数です。それ以外の暴言や嫌がらせ、暴行は日常的に発生していてその何倍の数になるかわかりません。大きな社会問題です。


 国交省発表の具体例の1つです。
 6月の水曜日24時、加害者は40代で酒を飲んでいます。駅務機器に異常があり、駅係員が処置終了後、待たせられたことに腹の立った旅客が暴言を吐きながら謝罪を求めてきたところ、駅務係が両肘をついて謝罪したとき、当該旅客に後頭部を強く踏みつけられた。(全治10日間)
 どのような状況だったかはわかりませんが、駅務係は両肘をついて謝罪しています。

 双方の具体的例からは、世相が見えてきます。
 酔っ払いが多くいます。酒を飲むと平常心を失い、強がりをいいながら乗り越しなど自分の失敗の憂さ晴らし方法を探します。
 失敗に遭遇した時、回復、脱出方法を探るのではなく、「立ち往生」 している姿です。支援者や解決策を探す行為に向かうことを思いつかない(つけない)、日常的に孤立して追い詰められ、脱出できない状況におかれている姿そのものです。
 酔った勢いでしか自己主張できないのです。日頃の鬱積した気持ちを抵抗しない他者への攻撃的行動で爆発させます。
 お金を払って不味い酒を飲んでいます。

 酒を飲んでいなくても、ささいな出来事に因縁をつけ、職場や社会で発生したストレスの解消をする者がいます。憤懣をぶつけても無視をしない、そして反論しないと思われる対象者を探して逃がしません。対象はサービス業従事者です。
 利用者が鉄道職員より偉いと思いています。社会の私物化です。
 人を相手にするということは、人が恋しいということです。このような行為は、自分の言い分を聞いてほしい、自分を認めてほしいという叫びです。
 だから自分の要求が通ったからといって攻撃を終了するわけではありません。次から次へと要求が続きます。

 会社や社会の競争主義、分断政策、孤立化政策のひずみの現象です。
 しかし、鉄道職員が一方的にそのような対象にされるとしたらたまったものではありません。


 11月22日の 「活動報告」 で紹介しましたが、10月31日、東京都千代田区役所でも職員が土下座を強要されて、頭を踏みつけられました。
 戸籍謄本の発行を申請した住民に対応した男性職員が身分証明書がないと発行できないと説明すると 「目ん玉くりぬくぞ。表に出ろ。土下座しろ」 などと怒り、「俺の時間をどうしてくれるんだ」 と詰め寄ったといいます。

 労働相談でも土下座が “流行って” います。
 職場のチーム業績が芳しくなかったとき、足を引っ張った者がいたと言って1人を攻撃しはじめました。そして上司や他のチームが見ている前で正座して謝罪させました。誰も止める者はいませんでした。自分たちのチームはこれほど厳しくやっているということを示すためでもあります。
 昔はよかったとは言いませんが、「足を引っ張る」 者が出たらみんなでカバーし合って底上げをしました。そしてチームとして達成できた時は喜びあいました。


 テレビドラマ 「半沢直樹」 について9月27日の活動報告でふれました。
 「『やられたらやり返す』 『倍がえし』 が流行語になっています。しかしあまり歓迎はできません。ドラマでは土下座のシーンがありましたが、観ていて気持ちのいいものではありませんでした。心から詫びさせるということは自尊心を傷つけることではありません。恨みを遺します。
 いつの頃からか日本社会は 『仇討ちの思想』 が蘇っています。
 事件が発生して訴訟に至ると、被害者の関係者は加害者に重罰化を要求し、裁判所はそれを酌量して量刑を決定します。
 『罪を憎んで人を憎まず』 は過去のことになってしまいました。『罪を憎んで人を憎まず』 は、加害者の更生を期待するとともに、罪を発生させた社会状況、事件の背景をみんなで捉え返しました。
 最近は社会状況や背景は問題になりません。『社会的敗者』 の排除だけがまかり通ります。自分の思い通りにしたいという社会の私物化が進んでいます。結果は、発言力のある者が勝ち続けます。
 加害者・被害者それぞれに関係者がいます。仇討ちは、新たな仇討ちを生み出し解決の終着には至りません。」

 ドラマが土下座を流行らせてしまいました。残念なことです。


 国鉄分割民営化にむけて、政府と財界は国鉄労働者を親方日の丸感覚に染まった働かない連中と攻撃しました。その攻撃は労働者同士が足の引っ張り合いをすることを奨励しました。労働者全体を攻撃する世論が生み出されました。労働運動全体が孤立させられていきます。
 分割民営化が強行された後、JR各社はサービスが向上したと自賛しました。
 人員を減らしてサービスが向上するというのは矛盾する理論です。鉄道労働者は長時間労働を強いられても会社に不満を言わない、乗客にへりくだって作り笑顔で業務遂行することを強いられました。
 駅員がへりくだると乗客は図に乗ります。分割民営化は職員と乗客におかしな関係性を作り出しました。労働者はストレスと不満、諦めの気持ちを募らせています。
 サービスが向上したかどうかはさておき、労働者の地位を低下させました。
 そして逆に鉄道会社として最高のサービスである安全は無視されて事故が多発しています。
 「職場の暴力」 が多発しています。深刻な問題です。
 
 しかし対策機関、対応方法はばらばらで、労働者が分断されている姿そのものです。お互いへの思いやりがありません。たとえば、行政機関の窓口は総務相と各自治体、学校でのモンスターペアレント問題は文科省と教育委員会、医療機関での患者からの暴力は医療経営者、そして鉄道係員については国交省。それぞれまず経営・運営主体を防衛する視点から対策がとられています。労働者の尊厳が破壊されたままです。

 各鉄道会社は暴力事件に対する防止策を打ち出しています。顧客とのトラブルをなくすことは出来なくても減らすことはできます。
 しかし、その場におけるトラブルが治まったからといって解決したということではありません。対応した職員へのいわれのない攻撃、正義感、価値観、自尊心が傷つけられた場合は放置したら傷は癒えません。労働者としての誇り、労働の誇り、喜びを奪われます。身体的打撃を受けた場合は逆にトラウマに襲われて労働が恐怖になることもあります。
 人格の回復のための心のケア、同僚等の支援が必要です。労働者の言い分を聞き直し、その対応の正当性を共有しあって回復に向かわせる必要があります。そして休養を保障する必要があります。そうしないと有能な労働者を失うことにもなります。


 もう一度労働と労働者の尊厳を捉え返し、社会の共通認識にする必要があります。人間らしい働き方の獲得です。
 競争主義、分断政策、孤立化政策に対抗する組織を構築しなければなりません。
 そのためには土下座などすることなく、土下座をする労働者がいたら止めさせる人間関係から始める必要があります。 労働者の尊厳を正面に掲げて対決することが必要です。
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精神疾患の労災認定状況について労働局交渉
2013/12/13(Fri)
 12月13日(金)

 10月5日と6日、全国労働安全センター連絡会議総会が開催されました。
 「メンタルヘルス・パワハラ」 の分科会では、精神疾患の労災申請者数・認定者数・認定率が都道府県ごとにばらつきがあるという分析結果が報告され、問題があると思われる府県労働局に対して統一の要請書を提出して要請行動を行なうことを確認しました。 (10月8日の 「活動報告」)

 10月から12月中旬まで、大阪、愛知、三重、埼玉、千葉の各労働局に要請行動を行ないました。 (東京については、定例の要請行動で問題を取りあげました)
 統一の要請書です。

            要 請 書
 厚生労働省は、毎年前年度の精神障害の労災認定状況を公表している。公表されたデータには都道府県別の請求件数、決定件数、支給決定件数がある。(2011年12月26日付の) 労災認定基準の改定により昨年度の全国平均の認定率は上がり39%となった。全国的にも支給決定件数が増加した都道府県が多い。
 しかしこういった状況に関わりなく、認定率が極めて低いところが見られる。決定件数が少ない県を除いて特に認定率が低いのは、埼玉県 (認定率13%、支給決定件数6件/決定件数45件)、千葉県 (22%、9件/41件)、愛知県 (23%、19件/83件)、三重県 (0%、0件/14件)、大阪府 (26%、36件/138件)、熊本県 (19%、3件/16件) である。
 埼玉県は平成23年度も15%の認定率 (4件/27件) で決定件数が増えたにも関わらず認定率が下がり、三重県は2年連続で支給決定件数が0件である。
 これらの差は、地域差ととらえるには大きな違いであり、請求・決定件数の少ない県はともかく、ある程度の件数を扱う局で認定率の低迷があるのは、判断する側に何らかの問題があるのではないかと考える。
 精神障害事案の多くは精神科医3名による専門部会の協議にかけられ判断されるため、協議した専門医の意見がこの結果を招いている大きな要因でもある。
 それを踏まえ、労働災害に被災した労働者の支援を行い、職場での健康と安全を推進する立場から以下のことを要請する。

              記
 1.全ての実地調査復命書、専門部会の意見書を精査し、出来事ごとに 「弱」 「中」 「強」 と判断した条件を分析すること。
 2.局の管轄区域について、厚生労働省が毎年発表する項目に準じて、業種別、職種別、年齢別、時間外労働時間数別、就労形態別、出来事別、労働基準監督署別の請求・決定・支給決定件数を公表すること。
 3.上記の結果を含め、認定率が極めて低い状況の原因を分析し公表すること。

                                         以 上


 2009年に、全国労働安全センター メンタルヘルス・ハラスメント対策局で 「2008年度都道府県別請求・決定及び支給決定件数」 を分析しているとで、埼玉の支給決定件数の欄は空白でした。「0」 ならすぐに気が付くのですが見過ごしていました。気が付くと他の府県についても疑問が膨らんできました。

 日本の総就業者約は約6,000万人です。(2013年10月、総務省調査)
 埼玉348万人 (5.8%)、千葉290万人 (4.8%)、東京601万人 (10.0%)、神奈川415万人 (6.9%)、愛知368万人 (6.1%)、三重89万人 (1.5%)、大阪381万人 (6.3%)、兵庫250万人 (4.2%)です。
 2012年度は全国の申請件数1,257件、決定件数1,217件、支給決定件数473件、平均認定率39%です。
これら数字をふまえながら都道府県別決定状況を検討するとばらつきがはっきりします。

 埼玉県をより詳しく見てみます。
 2012年度の申請件数43件 (全国申請件数の3.4%)、決定件数45件 (全国決定件数の3.7%)、支給決定件数6件 (全国支給決定件数の1.3%)、認定率13%です。
 確実に総就業者数と比較した申請件数は2%以上低いです。その結果決定件数も低くなっています。それに加えて認定率が平均の3分の1になっています。
 労働者は認定率が低いということが期待できないと捉えて諦め、申請者数が少なくなっていると思われます。
 これまでの状況も、2008年度決定件数36件、そのうちの支給決定件数0件 (全国平均認定率29%)、2009年度は25件、5件、認定率20% (27.6%)、2010年度は25件、5件、20% (29%)、2011年度は27件、4件、15% (25.6%)です。
 やはり埼玉労働局として問題があるといわざるを得ません。
 同じようなことが、要請行動をした府県でも言えます。


 12月3日、埼玉労働局に要請行動を行ないました。
 回答は、1.について、それぞれの事案についてきちんと把握しているということでした。
 「出来事」 の評価に問題があると思われるので、分析はしていないのかと質問すると、していないということでした。

 2.について、数字は把握しているが特別の傾向は出てきていないということでした。また、数字について公表は考えていないということでした。
 認定基準の「出来事」が複数の場合には判断が必要です。どのような区分で判断をしているかと質問すると、区分まではしていいないということでした。業務外決定の案件について、どの業種が多い・少ないなどの分析もしていないということです。
 つまりは、局として、決定内容、基準について分析をまったくしていないということです。
 参加者からは、決定の詳細数字を公表するように、しないから、判断する情報がないから申請が増えないと要請しました。検討しますとの回答でした。

 3.については、個々の事案でさまざま、それぞれ適正に判断している、これまで以上のことは考えていないということでした。
 他県では主治医の診断と傷病名が違うことがある、発症時期も主治医と違う判断をされることがあるという状況を話すと、発症時期は充分に審査をしている、本人の主張と主治医の意見を中心に議論しているとのことでした。

 この他、2008年度に認定ゼロは埼玉だけ、何で支給決定件数が少ないのか、県の人口構成比から見て請求件数も少ないことを質問すると、東京に通勤している者が多くいるという回答でした。しかし就業者数の割合からみて少ないのです。
 他局と比べておかしいと思ったことはないのか、何か問題があるのではないかと内部で問題にしたことはないのかと質問すると、無言でした。他局の状況は気にしていないようです。
 ちなみに、埼玉県は個別紛争解決制度の活用状況において総合労働相談件数、民事上の個別労働紛争相談件数、助言・指導申出件数、あっせん申請件数とも就業者数と比較すると全国平均の半分になっています。
 県全体として労働行政が停滞していると言わざるを得ません。活用アピールが足りていません。

 具体的に、2012年度の判断方法の内訳件数について質問しました。
 45件中、専門部会判断 (3人の精神科医の合議による判断) は23件で、業務上 (支給決定) 3件、業務外20件の決定。専門医判断 (1人の精神科医の判断) は20件で、業務上1件、業務外19件の決定。監督署判断 (監督署だけでの判断) 2件で業務上2件の決定です。
 専門医判断20件は、グレーの案件が専門医判断にまわると業務外に、申請者に不利な決定になるということです。判断に “くせ” があるのではないかと主張しました。
 全体として専門医に頼りすぎています。せっかくの 「認定基準」 が活かされていません。

 業務外の判断が審査で覆された案件については、2012年度は2件が支給決定になったということです。2011年度は1件が支給決定になっています。20年以降、裁判で1件が決定になっています。

 後日、今年の上半期の決定状況について回答がありましたが、すでに2012年度と同数の6件が支給決定になっています。


 12月11日、千葉労働局に要請行動を行ないました。
 2012年度は申請件数46件、決定件数41件、支給決定件数9件です。
 1.2.3.とも埼玉労働局と似たような回答でした。
 最初に大阪が要請行動を行ないました。その時の状況が各局に報告されて、「統一」 の回答が準備されました。

 参加者からは、せっかく厚労省は毎年全国データを発表している。他の問題はここまでデータ公開をしていない。低い局は何とかしろというメッセージが含まれているのではないかと主張しました。
 難しかった案件や、上級の判断で覆されたりした案件などについて実務者判断の研修をしていないのかと質問すると、していないということでした。
 専門部会の精神科医の判断が偏っているのではないかと質問すると、担当者の判断と意見は述べていて、担当者の判断が通ったこともあるということでした。

 具体的に2012年度の判断方法の内訳は、すべて専門部会でおこなったということでした。結論は明かであっても、中間判断で専門部会の判断を仰ぐことになったということです。驚きです。ほぼ支給決定に繋がる 「特別な出来事」 2件についても専門部会を経て認定しているのです。
 局は最初の段階で判断が出来ていないのです。結果として業務量を増やし、審査に無駄な期間を要しています。
 
 今年度は、11月末 (3分の2経過) 段階で、決定件数30件で、業務外が24件、業務上6件で前年度並みです。

 今回の結果は、他の都府県の要請行動の状況を合わせて分析・検討し、厚労省への要請行動に活かしていきます。
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「国会前に集まっていた人たちはみんな輝いていた」
2013/12/10(Tue)
 12月10日(火)

  上を向いて 歩こう
  涙が こぼれないように
  思い出す 春の日
  一人ぽっちの夜

  上を向いて歩こう
  にじんだ 星をかぞえて
  思い出す 夏の日
  一人ぽっちの夜

  幸せは 雲の上に
  幸せは 空の上に

  上を向いて 歩こう
  涙が こぼれないように
  泣きながら 歩く
  一人ぽっちの夜

 作詞した永六輔は、60年安保闘争後の挫折感を歌詞にしたと最近のラジオで語っていました。
 当時はテレビ局で仕事をしていましたが毎日デモに参加していました。
 上司から出社するよう連絡が来ます。
 「デモをとるのか、仕事をとるのか」
 「デモをとります」 と返事をし、その後はそのテレビ局に行ったことがないのだそうです。


 12月6日深夜、「秘密保護法案」 が参議院で採決されました。
 本質的問題として、憲法9条を掲げる国に防衛の秘密などあるはずがないのです。あってはならないのです。これ以上既成事実を積み重ねることを止めなければなりません。

 7日午前、疲れて家でごろごろしながらラジオを聞いていました。秘密保護法について話されているのはわかりますが、頭の上を通り過ぎていきました。
 「テレビで観ていたけど、国会前に集まっていた人たちはみんな輝いていた」 というようなこと永六輔が話したのに耳を立てました。
 「輝いていた?」
 「そう、みんな輝いていた」
 真剣に自分の思いをぶつけていたということでしょうか。
 聞きながら、輝きをなくした時が本当の負なんだと思いました。
 起き上がると 「毎日新聞」 の1面見出しが目に入りました。
 「ひるまず役割果たす」
 主幹執筆の社の声明のような記事です。記事を紹介します。

 「ひるまず役割果たす  
           主筆・伊藤芳明

 米CBSイブニングニュースのアンカーマンで知られた故ウォルター・クロンカイト氏の追悼式典で、オバマ大統領が示唆に富む演説をした。2009年9月9日のことである。
 「『適切な情報を持った有権者がいて初めて民主主義は機能する』 とクロンカイト氏は言った。彼と同じ熱意を持って皆さんが遂行している誠実、客観的で細心の報道は、民主主義と我が社会にとってきわめて重要である。我々の未来はそれにかかっている」
 1980年代末から90年代にかけ、東西冷戦を終結させ、中・東欧諸国に民主化の波を及ぼしたことに、メディアは多少なりとも貢献した。セルビア人武装勢力に包囲された旧ユーゴスラビア連邦のサラエボで、老夫婦宅に下宿して砲撃下のイスラム教徒市民を取材したことがある。一緒に暮らしてみて、セルビア人側の流す 「サラエボこそイスラム教徒の軍事拠点」 という情報のまやかしを理解できた。国民の知る権利が無視されるか、大幅に制限されている国が、この地域にはまだ多く残っていた。クロンカイト氏のように著名ではないが、幾多の無名の記者が知る権利に応えようと、身を賭して真実に肉薄する努力を重ねる姿をさまざまな現場で目撃した。
 中・東欧諸国の市民は報道によって状況を客観的に把握し、進むべき選択肢を得た。国の指導者たちも報道で国民との距離を測り、時にはそれを力に変えて民主社会を進化させてきた。情報統制ではなく、情報公開と言論の自由こそが民主主義を支える基盤であると実感した。
 外交、防衛など我が国に守らねばならない秘密があるのは理解する。しかし何が秘密かも秘密にするシステムは、際限なく秘密が拡大していく危惧をぬぐえない。日本が民主主義の手本としてきた米国でも、オバマ大統領が言うように、健全な民主主義社会の大前提として適切な報道を位置づけている。
 正しい判断はまず知ることから始まる。国民のために知らせたいとする良心が公務員にあり、報道はそのお手伝いをしてきた。法律施行後の社会では公務員が萎縮し、本来公開されるべき情報まで秘匿される懸念がある。情報を提供してくれる取材源を守り抜くことが一層重要になる。我々はこの法律の前に立ちすくまない。萎縮するようなことがあれば、メディアは健全な民主主義社会に必要な存在たり得ないと思う。
 新聞、テレビ、雑誌、インターネットと手段は多様化しても、国民の知る権利に応え、権力を監視するジャーナリズムの基本的役割は変わらない。報道の原点を改めて確認し、同時代の記録者としての義務と責任をひるまずに果たしていく。」

 ひるんだ時が負なのです。
 こうしていられないと思って手帳を確認すると、午後には仕事のスケジュールが入っていました。忘れていました。


 6日夜、日比谷野外音楽堂とその周辺は秘密保護法案に反対する人・人・人でした。
 今度こそ野音のなかに入るぞと開始20分前に着いたのですが駄目でした。
 デモ隊が出発して路上に出ると、向かい側の歩道にも公園に入れなかった人たちがいました。
 国会までの路上では、原発に反対する金曜行動を行なっていた人たちも呼応してきました。
 国会の議員面会前に近づくと、野音の集会に参加しないで抗議行動を続けていた人たちが議員会館前から声をあげていました。旧型のシュプレヒコールではなく、ラップです。老若男女が唱和して休みなく続きます。
 衆議院議員面会所は、議員はから。何党かわかりませんが秘書の方たちが数名しました。
 参議院議員面会所は、共産党と社民党の議員が出迎え、エールの交換をしました。民主党はいません。
 予定のデモコースはここまでです。

 しかし参加者のほとんどは、残って国会を取り巻くために正門方向へと回りました。
 国会正面をデモ隊が通ったり、滞留することは久しくありませんでした。一昨年からの原発反対デモが解放させました。
 高齢の方との会話です。
 「60年安保の時も、家でじっとしていられなくなって出てきてこの辺にいたの。道路は学生のデモ隊でいっぱいだった」
 国会を取り巻いている人たちのなかでは若者が目立ちました。

 最終電車を気にして国会前を離れて地下鉄駅まで歩いていると 「有楽町はこの方向でいいんですか」 「東京駅はどういったらいいんですか」 という質問を何人からも受けました。その方がたは、霞が関界隈の地理に不慣れというよりは初めて集会に参加した、国会前に来たと語っていました。

 しかし国会の中まで反対の声は届きませんでした。
 いや、石破自民党幹事長がいみじくも言っていたように聞こえているのです。
 無視したのです。
 無視されたのです。


 10年ほど前の東京・新宿中央公園での越年闘争。炊き出しに合わせてコンサートも開催されました。
 バンド・寿 [KOTOBUKI] が歌いました。

  前を向いて 歩こう
  涙が こぼれちゃってもいいじゃないか
  泣きながら 歩く
  一人ぽっちじゃなかった夜

  幸せは 雲の上にはないよ
  幸せは 胸の中に 肝 (チム) の奥に

  
 秘密保護法案に反対して国会を取り巻く1人ひとりの大勢の人びとがいました。各地で集会・デモが開催されました。それぞれの思いがあります。
 それでも法案は採決されました。
 しかし、人びとが輝きをなくした時が本当の負です。ひるんだ時が負なのです。
 人びとは輝きつづけなければなりません。
 

  前を向いて 歩こう
  涙が こぼれちゃってもいいじゃないか
  泣きながら 歩く
  一人ぽっちじゃなかった夜
 
  
  当センター「いじめメンタルヘルス労働者支援センター」ホームページ・ご相談はこちらから
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