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非正規公務員は三重苦の労働条件
2013/11/29(Fri)
 11月29日(金)

 本 『非正規公務員』 が今、売れているのだそうです。昨年出版されましたが現在3刷です。誰が読んでいるのかというと自治体の管理職らしいです。
 非正規公務員からの労働相談は正直混乱します。公務員法が適用されない、かといって労働基準法も適用されない、労働基本権が保障されているのかいないのか。採用ではなく任用とは?。なおかつ各自治体、職種で違いがあります。

 『本』 の著者、地方自治総合研究所の上林陽治さんの話を聞く機会がありました。
 内容を紹介します。
 まず、非正規労働者が抱えている問題とそのことが生み出している問題が簡単に指摘されました。
 各地を回っていると、こんなことをやっていたら自治体が持たない、公共サービスの劣化を招いていると感じるといいます。「限界労働」 に至っています。
 福祉関連の窓口では、生活保護申請者を生活保護給付水準以下の非正規ケースワーカーが対応していることもあります。経済的に自立していない者が自立を提案します。ある自治体では 「申請を受け付けるな」 と言われています。その結果、自分よりも収入が多い住民から不満や文句をぶつけられます。
 非正規労働者は女性労働者が占める割合が高いです。非正規労働者には育休法やパート法は適用されません。保育園職員の半分は女性です。職場には妊娠して職場復帰を約束された労働者と職場から去ることを強制される労働者がいます。「女女格差」 というのだそうです。
 同じ職名で正規労働者と非正規労働者が一緒に働いていながら労働条件に大きな格差があるという分断は怨嗟を生み、コミュニケーションがうまくいきません。それは結局公共サービスの低下に繋がります。今は業務に対する貢献の意識で何とか持たせています。
 

 自治労の2012年6月1日現在の調査では、警察や消防、教員などを除き、臨時・非常勤職員は30万5,896人、正規職員は61万9,542人です。全体に占める非正規率は33.1%です。未調査自治体を含めて換算すると全国の「非正規公務員」は約70万人と推計されます。
 自治労は2008年にも同様の調査をしています。推計では、4年間で非正規公務員は10万人増え、非正規率は4人に1人から3人に1人に拡大しています。
 非正規公務員の構成比は、学童指導員92.8%、消費生活相談員86.3%、図書館職員67.8%、学校給食調理員64.1%、保育士52.9%、学校用務員52.0%。生活保護業務を担うケースワーカーは1割に及んでいます。

 総務省は2012年4月1日現在で臨時・非常勤職員の調査をしています。地方公務員法による臨時・非常勤職員は任用期間が6か月以上または6か月以上になることが明らかな者で、1週間当りの勤務時間数19時間25分以上 (常勤職員の半分以上) が対象です。
 ここでは、例えば東京都知事部局の1,000人を超える雇用期間2カ月の臨時職員は報告ではゼロになっています。また教員については年度を越えない任用期間ということで、例えば4月5日から翌年3月25日までの場合は調査でゼロになります。
 総務省からは1日の空白を空けなくて再任用をしてもいいとの通達が出されていますが実行されていません。更新ではなく再任用との捉え方です。しかし各自治体は、更新と捉えられると退職金が請求されることを恐れているようです。更新されない、継続されないと捉えられているところに非正規公務員の不安定さの問題があります。
 そのような調査でも60万3,582人存在します。同時点での正規公務員数は276万8913人で、非正規公務員は約18%・6人に1人です。そのなかの448.072人・74.2%が女性です
 2008年の調査と比較して4年間で10万4280人・20%増加しています。増加率が高いのは教員・講師が38%、医療技術員27%、一般事務職員25%、技術職員20%の順です。
 2012年までの7年間で、非正規の警察官は14%増え、非正規の消防は8%増えています。そもそも絶対数が少ないです。

 正規公務員が減少しています。
 正規公務員から非正規公務員への置き換えは、どのような形、どのような職種で進んでいるのでしょうか。
代替型、補充型、専門職型があります。
 代替型とは、正規公務員を採用しないで非正規公務員に置き換えていく、保育士、図書館司書、教員など資格職タイプです。
 補充型とは、行政需要の高まりに際し、正規公務員ではなく、非正規公務員で補充するタイプ、生活保護ケースワーカーなどです。
 専門職型とは、はじめから非正規公務員で採用し、増加する行政需要を押し付けつつ人数もふやす女性 (婦人) 相談員、消費生活相談員、学校心理士などです。
 この他、技術職員、休職調理人と技能労務職員等の職種は民間委託が進んでいます。
 公務職場では、業者がいない内側のワーキングプアと、業者がいる外側のワーキングプアが併存しています。
 東京の図書館では、アウトソーシングとの割合は2対1になっています。


 平均週勤務時間が正規公務員の4分の3を超える職員を 「常勤職員」 と呼びます。それでも年収換算で200万円を超えるところはわずかです。交通費などの費用弁償を除けば報酬だけが支給されます。
 地方自治法では手当を支払わなくてもいいとなっています。手当を支払った自治体は、住民からの監査請求などにより、違法として訴訟が起こされ、敗訴しています。
 常勤の一般行政職地方公務員の平均給与 (給料と手当) は41万1270円 (2012年4月1日現在) です。これに2回の期末・勤勉手当として給料月額の3.95か月分162万4517円を加算すると624万3437円です。
 非正規公務員の年収は、正規公務員の4分の1から3分の1です

 非正規公務員問題はジェンダー問題でもあります。
 2012年調査では、74.2%が女性です。ちなみに民間で非正規労働者が占める割合は68.8%です。
 正規公務員で最も女性の構成割合が高いのは看護師等の96.3%、次が保育士等で92.9%、休職調理員81.2%です。
 非正規公務員で最も女性の構成割合が高い職種は看護師等で97.8%、次が給食調理員97.7%、保育士等で95.7%と正規公務員と同様の傾向を示しています。
 一般事務職・技術職員に占める女性正規公務員の割合は25.6%です。しかし非正規公務員に占める職種別ではもっとも多く80.8%を占めます。窓口業務は非正規公務員が多くいます。
 結局は、住民に接する出先の仕事 (相談業務、保育士、休職調理) など、家事的公務ともいえるケア的部分は公務員の仕事としては軽くいられ、非正規でもできるともなされています。本来の公務員の仕事は 「処分・決定」 と位置付けられているようです


 非正規公務員は雇止めしやすくするための制度です。
 しかし公務員法は、一時的でも臨時的デモない恒常的な業務には、本来であれば常勤で任期の定めのない正規職員をつけることを予定しています
 その中でも行われた一方的雇止めに判決が出ています。
 有期雇用について、任期付き任用が許される特段の事由とは、①業務繁閑などへの対応=担当業務の非恒常性、②担当業務が、特殊の習熟、知識、技術又は経験を必要としない代替的事務=補助的業務に限られます。
 任期がある任用でも、補助的なもの、臨時的なもの、代替的なものでないとしたら公務員法の趣旨を逸脱して違法です
 地方公務員法は任用しても期待権を否定します。
 しかし長期間任用されたにもかかわらず雇止めされた労働者が起こした裁判では、民間の労働契約のように有期が無期に転換することはないとしながら、雇用継続に代替する損害賠償法理で、期待権を侵害したということで慰謝料の支払いを認める判決が出されています

 有期任用ということについては、改正労働契約法で無期転換申込権が法定されたこととの比較では不満が起きています。そのことを回避するために地方自治体では期待権を発生させないために更新回数を制限するようなことが起きています。雇用継続に代替する損害賠償法理による保護の対象になることを回避している実情があります。


 正規・非正規間には3つの格差があります。
 1つは、賃金格差です。
 2つ目は、雇用格差です。
 3つ目は、労使コミュニケーション格差です
 とりわけコミュニケーション格差は、労使間の対話から排除されることにより、抱えている問題が労使のテーブルにのらず、解決しなければならない課題として認識されないでいつまでも放置されます。問題が放置される結果、職場における正規・非正規間の意思疎通がはかれなくなり、結果として生産性を低下させます。そのことは公共サービスの質の低下に直結します。

 非正規公務員の労働組合への組織率の状況はどの程度でしょうか。
 1997年は、臨時・非常勤職員数は270,690人、そのうち組合員数は21,384人で組織率は7.9%でした。
 その後も組織率は一貫して低落傾向にあります。その要因は、臨時・非常勤職員の急増です。
 2012年の調査では、回答があった845自治体のうち、臨時・非常勤の労働組合があるのは157自治体です。
 賃金平均は、組織化自治体は時給1,012.3円、月給16.1万円です。未組織の自治体では936.2円、月給15.9万円です。昇給があるのは、組織化自治体の16.7%、未組織自治体の11.9%です。雇入れ時の賃金 (時給) は組織化自治体861円、未組織化自治体815円です。通勤費が支給されているのは、組織化自治体86.1%、未組織自治体70.1%です。一時金が組織されているのは、組織化自治体38.9%、未組織自治体36.1%です。
 労働組合が組織化されている自治体は労使交渉のテーブルに載せることにより改善が進んでいます


 参加者からどうして組織化が進まないのかと質問が出されました。
 回答は、自治労が本工主義から脱していないということでした。抱え込みたくない、組織化しなくてもいつか職場からいなくなってくれるはずと捉えているといいます。触れないことで自分たちを守っています。
解決としては、「労労問題」 として捉える必要があるといいます。公務労働の捉え方、考え直しが必要だといいます。
 そして、非正規公務員の組織化に成功することで労働者全体の意欲も向上した自治体を紹介しました。


 話を聞いた感想です。
 ワーキングプアは政府・自治体が作っている現実があります。これは民間のワーキングプアとセットで正当化しています。非正規公務員の労働条件を引き上げることをしないで民間だけに改善を求めても実効性がありません。
 民間や住民の公務員バッシングは、内在する問題を解決する方向ではなく、逆にお互いの労働条件を悪化させていきます

 住民と直接接している中に劣悪な労働条件で働いている非正規公務員が多くいます。日常的に行政の窓口で住民の要望や不満を受ける職員には権限がありません。その構造が住民と “役所” の距離を作り出しています。それは “役所” としては “歓迎” することでもあります。非正規公務員は “お役所仕事” の 「盾」 の役割を担わせられています。
 非正規公務員は、低い労働条件で、住民から不満をぶつけられ、“役所” の 「盾」 にされているという三重苦の労働条件を強制されています。(“感情労働” については11月22日の 「活動報告」)

 自治労の本工主義は政府の掲げる 「小さな政府」 への屈服です。
 民間企業労組の本工主義と同じです。格差の容認の自己保身は “自己” も守れません。最近の民間大企業の労働組合の “無抵抗” が証明しています。非正規公務員の労働条件の見直しと改善要求は正規公務員の労働条件の改善、職場環境改善に繋がります。
 自治体も、民間企業も労働者の格差の容認は、生産性、モチベーションの低下というリスクを招いているという認識に気が付く必要があります。
 そうしないといつまでも民間、住民と “役所” と自治体労働者の対立が続きます。
 

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