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非正規公務員は三重苦の労働条件
2013/11/29(Fri)
 11月29日(金)

 本 『非正規公務員』 が今、売れているのだそうです。昨年出版されましたが現在3刷です。誰が読んでいるのかというと自治体の管理職らしいです。
 非正規公務員からの労働相談は正直混乱します。公務員法が適用されない、かといって労働基準法も適用されない、労働基本権が保障されているのかいないのか。採用ではなく任用とは?。なおかつ各自治体、職種で違いがあります。

 『本』 の著者、地方自治総合研究所の上林陽治さんの話を聞く機会がありました。
 内容を紹介します。
 まず、非正規労働者が抱えている問題とそのことが生み出している問題が簡単に指摘されました。
 各地を回っていると、こんなことをやっていたら自治体が持たない、公共サービスの劣化を招いていると感じるといいます。「限界労働」 に至っています。
 福祉関連の窓口では、生活保護申請者を生活保護給付水準以下の非正規ケースワーカーが対応していることもあります。経済的に自立していない者が自立を提案します。ある自治体では 「申請を受け付けるな」 と言われています。その結果、自分よりも収入が多い住民から不満や文句をぶつけられます。
 非正規労働者は女性労働者が占める割合が高いです。非正規労働者には育休法やパート法は適用されません。保育園職員の半分は女性です。職場には妊娠して職場復帰を約束された労働者と職場から去ることを強制される労働者がいます。「女女格差」 というのだそうです。
 同じ職名で正規労働者と非正規労働者が一緒に働いていながら労働条件に大きな格差があるという分断は怨嗟を生み、コミュニケーションがうまくいきません。それは結局公共サービスの低下に繋がります。今は業務に対する貢献の意識で何とか持たせています。
 

 自治労の2012年6月1日現在の調査では、警察や消防、教員などを除き、臨時・非常勤職員は30万5,896人、正規職員は61万9,542人です。全体に占める非正規率は33.1%です。未調査自治体を含めて換算すると全国の「非正規公務員」は約70万人と推計されます。
 自治労は2008年にも同様の調査をしています。推計では、4年間で非正規公務員は10万人増え、非正規率は4人に1人から3人に1人に拡大しています。
 非正規公務員の構成比は、学童指導員92.8%、消費生活相談員86.3%、図書館職員67.8%、学校給食調理員64.1%、保育士52.9%、学校用務員52.0%。生活保護業務を担うケースワーカーは1割に及んでいます。

 総務省は2012年4月1日現在で臨時・非常勤職員の調査をしています。地方公務員法による臨時・非常勤職員は任用期間が6か月以上または6か月以上になることが明らかな者で、1週間当りの勤務時間数19時間25分以上 (常勤職員の半分以上) が対象です。
 ここでは、例えば東京都知事部局の1,000人を超える雇用期間2カ月の臨時職員は報告ではゼロになっています。また教員については年度を越えない任用期間ということで、例えば4月5日から翌年3月25日までの場合は調査でゼロになります。
 総務省からは1日の空白を空けなくて再任用をしてもいいとの通達が出されていますが実行されていません。更新ではなく再任用との捉え方です。しかし各自治体は、更新と捉えられると退職金が請求されることを恐れているようです。更新されない、継続されないと捉えられているところに非正規公務員の不安定さの問題があります。
 そのような調査でも60万3,582人存在します。同時点での正規公務員数は276万8913人で、非正規公務員は約18%・6人に1人です。そのなかの448.072人・74.2%が女性です
 2008年の調査と比較して4年間で10万4280人・20%増加しています。増加率が高いのは教員・講師が38%、医療技術員27%、一般事務職員25%、技術職員20%の順です。
 2012年までの7年間で、非正規の警察官は14%増え、非正規の消防は8%増えています。そもそも絶対数が少ないです。

 正規公務員が減少しています。
 正規公務員から非正規公務員への置き換えは、どのような形、どのような職種で進んでいるのでしょうか。
代替型、補充型、専門職型があります。
 代替型とは、正規公務員を採用しないで非正規公務員に置き換えていく、保育士、図書館司書、教員など資格職タイプです。
 補充型とは、行政需要の高まりに際し、正規公務員ではなく、非正規公務員で補充するタイプ、生活保護ケースワーカーなどです。
 専門職型とは、はじめから非正規公務員で採用し、増加する行政需要を押し付けつつ人数もふやす女性 (婦人) 相談員、消費生活相談員、学校心理士などです。
 この他、技術職員、休職調理人と技能労務職員等の職種は民間委託が進んでいます。
 公務職場では、業者がいない内側のワーキングプアと、業者がいる外側のワーキングプアが併存しています。
 東京の図書館では、アウトソーシングとの割合は2対1になっています。


 平均週勤務時間が正規公務員の4分の3を超える職員を 「常勤職員」 と呼びます。それでも年収換算で200万円を超えるところはわずかです。交通費などの費用弁償を除けば報酬だけが支給されます。
 地方自治法では手当を支払わなくてもいいとなっています。手当を支払った自治体は、住民からの監査請求などにより、違法として訴訟が起こされ、敗訴しています。
 常勤の一般行政職地方公務員の平均給与 (給料と手当) は41万1270円 (2012年4月1日現在) です。これに2回の期末・勤勉手当として給料月額の3.95か月分162万4517円を加算すると624万3437円です。
 非正規公務員の年収は、正規公務員の4分の1から3分の1です

 非正規公務員問題はジェンダー問題でもあります。
 2012年調査では、74.2%が女性です。ちなみに民間で非正規労働者が占める割合は68.8%です。
 正規公務員で最も女性の構成割合が高いのは看護師等の96.3%、次が保育士等で92.9%、休職調理員81.2%です。
 非正規公務員で最も女性の構成割合が高い職種は看護師等で97.8%、次が給食調理員97.7%、保育士等で95.7%と正規公務員と同様の傾向を示しています。
 一般事務職・技術職員に占める女性正規公務員の割合は25.6%です。しかし非正規公務員に占める職種別ではもっとも多く80.8%を占めます。窓口業務は非正規公務員が多くいます。
 結局は、住民に接する出先の仕事 (相談業務、保育士、休職調理) など、家事的公務ともいえるケア的部分は公務員の仕事としては軽くいられ、非正規でもできるともなされています。本来の公務員の仕事は 「処分・決定」 と位置付けられているようです


 非正規公務員は雇止めしやすくするための制度です。
 しかし公務員法は、一時的でも臨時的デモない恒常的な業務には、本来であれば常勤で任期の定めのない正規職員をつけることを予定しています
 その中でも行われた一方的雇止めに判決が出ています。
 有期雇用について、任期付き任用が許される特段の事由とは、①業務繁閑などへの対応=担当業務の非恒常性、②担当業務が、特殊の習熟、知識、技術又は経験を必要としない代替的事務=補助的業務に限られます。
 任期がある任用でも、補助的なもの、臨時的なもの、代替的なものでないとしたら公務員法の趣旨を逸脱して違法です
 地方公務員法は任用しても期待権を否定します。
 しかし長期間任用されたにもかかわらず雇止めされた労働者が起こした裁判では、民間の労働契約のように有期が無期に転換することはないとしながら、雇用継続に代替する損害賠償法理で、期待権を侵害したということで慰謝料の支払いを認める判決が出されています

 有期任用ということについては、改正労働契約法で無期転換申込権が法定されたこととの比較では不満が起きています。そのことを回避するために地方自治体では期待権を発生させないために更新回数を制限するようなことが起きています。雇用継続に代替する損害賠償法理による保護の対象になることを回避している実情があります。


 正規・非正規間には3つの格差があります。
 1つは、賃金格差です。
 2つ目は、雇用格差です。
 3つ目は、労使コミュニケーション格差です
 とりわけコミュニケーション格差は、労使間の対話から排除されることにより、抱えている問題が労使のテーブルにのらず、解決しなければならない課題として認識されないでいつまでも放置されます。問題が放置される結果、職場における正規・非正規間の意思疎通がはかれなくなり、結果として生産性を低下させます。そのことは公共サービスの質の低下に直結します。

 非正規公務員の労働組合への組織率の状況はどの程度でしょうか。
 1997年は、臨時・非常勤職員数は270,690人、そのうち組合員数は21,384人で組織率は7.9%でした。
 その後も組織率は一貫して低落傾向にあります。その要因は、臨時・非常勤職員の急増です。
 2012年の調査では、回答があった845自治体のうち、臨時・非常勤の労働組合があるのは157自治体です。
 賃金平均は、組織化自治体は時給1,012.3円、月給16.1万円です。未組織の自治体では936.2円、月給15.9万円です。昇給があるのは、組織化自治体の16.7%、未組織自治体の11.9%です。雇入れ時の賃金 (時給) は組織化自治体861円、未組織化自治体815円です。通勤費が支給されているのは、組織化自治体86.1%、未組織自治体70.1%です。一時金が組織されているのは、組織化自治体38.9%、未組織自治体36.1%です。
 労働組合が組織化されている自治体は労使交渉のテーブルに載せることにより改善が進んでいます


 参加者からどうして組織化が進まないのかと質問が出されました。
 回答は、自治労が本工主義から脱していないということでした。抱え込みたくない、組織化しなくてもいつか職場からいなくなってくれるはずと捉えているといいます。触れないことで自分たちを守っています。
解決としては、「労労問題」 として捉える必要があるといいます。公務労働の捉え方、考え直しが必要だといいます。
 そして、非正規公務員の組織化に成功することで労働者全体の意欲も向上した自治体を紹介しました。


 話を聞いた感想です。
 ワーキングプアは政府・自治体が作っている現実があります。これは民間のワーキングプアとセットで正当化しています。非正規公務員の労働条件を引き上げることをしないで民間だけに改善を求めても実効性がありません。
 民間や住民の公務員バッシングは、内在する問題を解決する方向ではなく、逆にお互いの労働条件を悪化させていきます

 住民と直接接している中に劣悪な労働条件で働いている非正規公務員が多くいます。日常的に行政の窓口で住民の要望や不満を受ける職員には権限がありません。その構造が住民と “役所” の距離を作り出しています。それは “役所” としては “歓迎” することでもあります。非正規公務員は “お役所仕事” の 「盾」 の役割を担わせられています。
 非正規公務員は、低い労働条件で、住民から不満をぶつけられ、“役所” の 「盾」 にされているという三重苦の労働条件を強制されています。(“感情労働” については11月22日の 「活動報告」)

 自治労の本工主義は政府の掲げる 「小さな政府」 への屈服です。
 民間企業労組の本工主義と同じです。格差の容認の自己保身は “自己” も守れません。最近の民間大企業の労働組合の “無抵抗” が証明しています。非正規公務員の労働条件の見直しと改善要求は正規公務員の労働条件の改善、職場環境改善に繋がります。
 自治体も、民間企業も労働者の格差の容認は、生産性、モチベーションの低下というリスクを招いているという認識に気が付く必要があります。
 そうしないといつまでも民間、住民と “役所” と自治体労働者の対立が続きます。
 

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牢獄を 怖るる者は ペンを執れ                          弱き者こそ 阻むべし 「機密法」
2013/11/26(Tue)
 11月26日(火)

 11月21日夜6時半から、日比谷野音で平和フォーラムなどの実行委員会主催の 「STOP! 『秘密保護法』 大集会 『何が秘密? それは秘密!』 それはイヤだ!」 が開催されました。
 開始時刻前に公園に到着。野音に入ろうとするとハンドマイクで 「満員ですので入れません。外でも集会の内容はわかるようなっていますので外でお願いします」 と呼びかけています。そうは言われてもと近づきましたがピケットラインを張った人たちに阻止されて突破できません。仕方なく外にいることになりましたが、暗闇のなかで集会の状況は聞こえてきません。中に入れないという不満はありましたが、それほどまでに人びとが集まったことに嬉しさもありました。本当に悪いのは実行委ではなく政府・与党だからです。
 野音は立見席を含めて3800人が定員ですがそれをもオーバーしているようです。取り巻くように人、人、人です。主催者発表は1万人でしたが実数だと思われます。

 7時35分に国会と銀座の2コースに分かれてデモ行進スタートです。
 主催者は「野音内の方が先に出発します」 と案内しましたが、「冗談じゃないこれ以上待たされるのはいやだ」 と外にいた人たちから出発しました。野音内の人たちは待機です。
 デモ隊の先頭付近を行進していると、スーツ姿にコートを羽織った通行人の青年たちが誘い合ってデモ隊に入ってきました。そして最後まで貫徹しました。国会で行われていることは誰が見てもおかしいことなのです。
 途中で、TBS 「ニュース23」 が中継を始めました。キャスターが 「ただいま秘密保護法に反対するデモ隊が国会に向かっています」 と話し始めるとデモ隊から一斉に 「秘密保護法反対!」 と大合唱。キャスターはびっくりした様子で言葉を失い、取り直しになってしまいました。

 衆議院、参議院の議員面会所は、共産党の議員はほぼ全力動員です。社民党は全員参加です。(と言っても両院で5人) 民主党は各2人です。力の入れ方が違います。
 民主党をここまで落とし込めたのは民主党の政権能力・政策なのか、自民党に騙されて勝たせてしまった有権者なのか。デモ隊からは様々な愚痴がこぼれていました。
 先頭のデモ隊が行進を終えたのは8時半すぎです。夫婦で参加しながら野音の内と外に分かれた1人がつれあいに携帯で連絡を入れました。「今どの辺にいる?」 「まだ野音の中。まだまだ出れない」
 本当に大勢の人たちが参加し、国会にデモで怒りをぶっつけました。


 特定秘密保護法案は、多くの人たちが指摘するようにまともな文章になっていません。しかしこの方が為政者にとってはいろいろなところに網をかけられるので都合がいいのです。その逆に人びとにとっては危険極まりない代物です。法案の危険性は、報道の自由、言論の自由の統制などだけではなく細かい部分に隠されています。
 一番危険なのは社会と人びとに閉塞感が漂うことです。疑心暗鬼のなかでの人間関係を分断します。
 歴史的には、1910年5月25日に始まった大逆事件のでっち上げと死刑判決後の状況です。人びとは何かおかしなことが起きているという思いで、巻き込まれないような行動をとるようになります。(2011年10月17日の 「活動報告」)
 そして国家と民衆の分断です。国家が1人歩きし、その下で民衆は国家に統治される関係性を作り出します。憲法の精神を踏みにじり、民衆が国家を監視できなくなります。
 そのような国家の独走を生み出す危険性が、年配のへ人たちが肌で感じている 「いつか来た道」 です。


 国家が軍備を拡大する時、公的施設だけでなく民間の私有財産も動員する仕組みを作ります。
 今、土地収用法による公共用地取得のための私有財産の土地収用・使用の対象に自衛隊施設は含まれません。憲法9条に違反するからです。しかし1992年に制定されたPKO法では100条もある 「雑則」 の中に緊急時には軍施設として私有財産の土地を強制使用できるという条項が盛り込まれました。憲法9条の拡大解釈が進む中で、「雑則」 が憲法に勝る事態も起きかねません。このような関係性があちこちで生まれる危険性があります。

 「戦時中、田端町の高台から (田端) 駅構内を撮影したりスケッチすることは、法律で禁止されていた。軍隊を輸送する能力の関係だろうが、要塞地帯と同じように、軍事機密として保護されていたのである。この法律に違反した者は罰せられるということで大きな立札が、駅構内を見下ろす田端高台の線路っぷちの、至る所に立てられていた。」 (橋本克彦 その他著 『鉄道員物語』 宝島社刊)
 戦時中、軍事施設はほぼ公然と存在していました。
 現在は、通信施設、手段を含めて掌握できにくくなっています。時間は早く進み、突然占領されるかもしれません。秘密裏に軍事物資の運搬に鉄道を利用するかもしれません。
 法案には、ある日、列車を撮影しようとしている “鉄ちゃん” たちが理由がわからないままに排除されたり、カメラを取りあげられたり、逮捕されたりする危険性が含まれています。冗談ではなく起こりうるのでする。


 東日本大震災での原発事故の状況は地元自治体や住民には隠し続けられたという事態がありました。政府は原発事故は機密に当らないと答弁しています。しかし原発と軍事は密接な関係があることは皆知っています。

 9月6日付の 『毎日新聞』 です。
 「2011年3月11日の電源喪失後、東京消防庁のハイパーレスキュー隊が当時国内に1台しかなかった特殊防護車で駆けつけるまでの8日間、現場で救助活動を担ったのは双葉郡8町村でつくる 『双葉地方広域消防本部』 だった。
 この間、原子炉3基の建屋が相次いで爆発し、残る3基や第2原発も危機的な状況にあるとの懸念が高まっていた。情報や資機材不足の中で、隊員たちは 『地域を守る』 という使命感を胸に、世界最悪級の原子力災害に向き合った。
 4号機が爆発した3月15日午後。前線基地となっていた川内村の出張所で、消防長の秋元正 (まさし) (62) は東京電力からの要請に言葉を失った。「外国製の消防車両を確保したが、(第1原発の) 自衛消防隊は取り扱いに慣れていない」 と原子炉への注水活動の協力を求められたのだ。
 平時の火災であれば、出動要請に 『待った』 はない。今回は初めての原子力災害に加え、11日以降の活動の中で最も危険な任務となる。だが、状況の説明を求める秋元に、東電と経済産業省原子力安全・保安院 (現・原子力規制委員会) は 『スタッフがそろわない。回答は後日』 と繰り返した
 秋元はその日の夜、隊員約100人を出張所に集め、要請内容を伝えた。『命の危険を冒してまで東電に協力しなければならないのか』。東電への不信と、消防の使命感の間で隊員の心は揺れた。卒倒する者もいて、結論は出なかった。
 翌16日午前6時17分。『4号機で再び火災』 の一報が入った。秋元は 『要請に応えられない消防は消防でない』 と腹をくくる。出動を命じ、最後には全ての責任を自分が引き受けようと決めた。
 30〜50代の隊員21人に役割がふられた。渡部友春 (37) は 『選べるなら行かない。出動なら行かざるを得ない』 と言い聞かせた。二重、三重に手袋をし、倉庫にずっと保管されていた全面マスクや防火服に加え、初めて防護服も取り出した。秋元は前夜、拒否した部下たちが黙々と準備する姿に 『これが消防の本能か』 と目頭を熱くした。
 消防車6台に分乗した21人は約1時間で免震重要棟に到着。渡部の計測で空間線量は毎時約200マイクロシーベルトを示した。『数時間は消火活動はできる』 と思ったが、灰色の空に吸い込まれる3号機の水蒸気が目に入った。その直後、緊急退避命令が出され、撤退。後から知った3号機付近の線量は毎時300ミリシーベルトで、最初から近寄れる値ではない所で活動を求められていたのだ
 これに先立つ13日にも、第1原発敷地内にある貯水タンクへの注水のため出動した岡本博之 (41) が持っていた、積算1マイクロシーベルトごとに警報が鳴る小型線量計は3秒ごとに鳴った。付近で活動していた東電作業員の姿は既になかった。『緊急退避命令が出てっぞ。知らないのか』。戻ってきた作業員の声で、慌てて構外に逃げ出した。
 翌14日には同じ場所で同じ作業をしていた自衛隊員ら11人が、3号機の水素爆発で重軽傷を負った。
 食料など物資の補給は滞り、警察も国の対策本部も退避した中で、地元の消防だけが、十分な情報を受けられないまま現場に立ち続けた。そんな事実も後から知った。」
 消防隊員の使命感には頭が下がりますが、東電対しては重ねて怒りがわいてきます。

 情報管理は、「敵」 に漏れないために行うだけのものではありません。『味方』 を騙して犠牲を負わせ、上層部の者たちだけは助かるためにも行われます。
 情報管理で人びとは 『味方』 から犠牲を強制されることにもなりかねません


 社会と人びとが閉塞感に襲われる、国家が1人歩きして国民は国家に統治される関係制は過去のお問題ではなくすでに身近にあります。
 労使関係論の研究を続けている熊沢誠さんは 『人権は会社の門の前で立ち止まる』 と言いました。会社のなかには人権が存在しない状態を言い当てたものです。トヨタなどの企業城下町は町内会組織を含めて町内に民主主義がありません。しかしみな慣らされてしまっています。
 特定秘密保護法案が通過すると、人権が存在しない門の中、企業城下町の状況、そして物言えない職場の状況が全国化します。
 怖いです。怖いということに気付かない感性を持たされて慣れてしまうことはもっと怖いです


 1985年、「国家機密法」 反対運動が盛り上がっていた頃 『朝日新聞』 の 「朝日歌壇」 に投稿がありました。

   牢獄を 怖るる者はペンを執れ
    弱き者こそ 阻むべし 「機密法」

 復誦しているうちに覚え込んでしまっていましたのを思い出していました。 
 
  
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感情労働 ・ 「職場の暴力」 に安全な職場環境づくりで対抗を
2013/11/22(Fri)
 11月22日(金)

 全国労働安全センター連絡会議・メンタルヘルス・ハラスメント対策局は2カ月に1回、情報・意見交換、課題検討などを行なっています。10月の会議で、自治体窓口での自治体職員と住民とのトラブル、学校でのモンスターペアレントからの攻撃、サービス業への暴力につて議論になりました。
 これまでも感情労働、職場の暴力として取り上げてきましたが、最近はエスカレートして深刻になっているように思われます。社会問題になっている中で“被害者”の防衛策だけでは解決しないことも明らかです。


 今年7月12日、宝塚市役所にガソリンを入れたワインボトルに火をつけて市職員に投げつけた住民が現行犯逮捕されました。
 この住民は、昨年11月5日、税滞納による差し押さえ処分を受けたことで市役所1階の市税収納課を訪れ、対応した職員2人に 「俺よりもっとひどい目に遭わせてやる」 「お前らの家族も覚えとけよ」 などと脅し、カメラ付き携帯電話で顔と名札を撮影していったといいます。
 市は9月2日に検証委員会の中間報告を発表し、再発防止策として、防犯ブザーや防犯カメラを設置する方針を示しました。
 防犯ブザーは、職員が暴力や脅迫などの行為を受けた際に押して周囲に危険を知らせるシステム。市税収納課などが入る庁舎1階の執務室に設置後、順次全庁に広げます。ブザーの通報先は警備員室、警察OBの嘱託職員などを検討しています。
 防犯カメラは、複数の庁舎出入り口付近に設置。不審者の侵入や犯罪の抑止を目的とし、市民のプライバシー保護の観点などから庁舎内には設けないといいます。
 検証委は今後、有識者ら第三者に意見を求め、年内に最終報告をまとめます。
 県内では、丹波市が職員通用口に防犯カメラを設置しているといいます。

 10月31日、東京都千代田区役所で戸籍謄本の発行を申請した住民に対応した男性職員が身分証明書がないと発行できないと説明すると 「目ん玉くりぬくぞ。表に出ろ。土下座しろ」 などと怒り、「俺の時間をどうしてくれるんだ」 と詰め寄り、職員に土下座を強要し、頭を踏みつけるなどをして逮捕されました。
 身分証明書を持参していませんでした。「職員の話が矛盾していて、腹が立った」 と供述しているといいます。


 いずれも生活に直接する部局の窓口で起きています
 最近、行政の窓口職員の多くが非正規労働者、委託労働者です。不安やストレスを抱えて生活に関連する用事で訪れる住民への対応を生活不安を抱えた低収入の労働者が対応してトラブルに遭遇する構造が生まれています。
 千代田区役所で、対応した男性職員をカバーする職員がいなかったとしたら、職員は二重にかわいそうです。


 対策の取り組みをはじめた自治体や教育委員会も出てきています。
 千葉県は自治体としては取り組みが早く、2007年に 『適正な行政執行の確保に向けて ~ 行政対象暴力対応マニュアル~』 を作成しました。
 行政窓口等でのトラフルを 「行政対象暴力」 と表現し、「行政対象暴力とは、暴行、威迫する言動その他の不当な手段により、県に対し違法又は不当な行為を要求することをいう。」 と捉えています。
 内容は、県は一方的被害者の立場です。そしてあまりにも 「お役所・官僚的」 対応、上から目線、排除です。作成当時の状況は、「行政対象暴力」 はそのことを目的に行われることが多かったのかも知れません。しかしこのような姿勢が今もさまざまな自治体で貫徹しているのも事実です。
 「行政対象暴力」 には毅然とした態度での対応が必要です。しかしこの 『マニュアル』 を現在発生している状況に適応したらトラブルが拡大してしまいかねません。


 非がなくても住民からストレス発散のための攻撃を受ける事態が続いています。
 住民や顧客の多くも職場や社会でストレスを抱えています。その解消として、自分の 「頭にきた」 感情で抵抗しない行政機関や営業やサービス業労働者を探して攻撃してきます。クレームをつけることを目的にしています。
 労働者は我慢をし、その結果、傷つきます。一方、相手は図に乗ってきます。このような場合は 「行政対象暴力」 としての対応が必要です。

 しかしそのような行為は誰か自分の相手をしてほしい、自分を高く評価してほしいという思いの変形した表現方法です。本当は “人恋しい” 人たちです。他者に謝らせたり、騙したり落とし込めることで自分の存在を確認し、快感を得ることを繰り返しますが本質的原因は他にあります。
 実態は 「社会を写す鏡」 です。

 しかし現在起きているトラブルはそれだけではありません。
 住民はみな制度や手続きを熟知しているわけではありません。生活不安定の中で相談を兼ねて訪れた窓口で、そんなことも知らないのかという態度でつっけんどんな対応をされることがあります。最初は冷静に話をしていても不快感を覚え、少しずつ不満を募らせて大声を出してトラブルになったというケースが多々あります。
 住民は、自分が不利になるような行為を最初から目的にしているはずがありません。このような場合、一方的に住民を責めることはかわいそうです。「行政対象暴力」 とは捉えきれません。
 どこで線引きするかは難しいですが、背景を捉えてみることなく対処することはトラブルを拡大するだけです。

 ある女性の窓口職員から話を聞いたことがあります。
 手続きの最中に住民が大声を出し始めました。
 負けないくらいの大声で「私はあなたのことを思って話をしているんですよ。今日は駄目なものは駄目。だけどあと〇〇があれば大丈夫だからそれを準備してもう一回来なさい。それが一番早い解決です。」
 住民は、持参した書類を放置して黙って帰ろうとしました。
 「持ってきた書類は持ち帰ってください」
 「また来るからあんたが預かっておいてくれ」
 数日後、足りないと指摘した書類を持って訪れて、ベテラン職員を指名しました。
 「この前は悪かったな」
 これで手続きはスムースに進みました。

 なぜ大声で反論したのかを尋ねました。
 「他の職員がフォローしてくれるとはあてにしていませんでした。自分で解決するしかありません」
 「住民が困っているなかで、最善の解決策を提示したという自信がありました」
 「自分はトラブルを大きく発展させたことはありません」

 このケースは、住民は最初から 「行政対象暴力」 を目的としたものではありません。
 窓口職員全員がこのような対応ができるわけではありません。
 しかし、住民の心情を踏まえてどう対応するかの問題意識を共有するようなことは行われていません。非正規労働者、委託労働者には業務内容の研修すら満足に行われていません。


 東京都教育委員会は2010年1月、学校の教職員向けに 『学校問題解決のための手引』 を作成して発表しました。
 「作成の背景及び目的」 は、「昨年度実施した 『公立学校における学校問題解決施策の検討に関する実態調査』 では、学校だけでは解決困難ケースが約1割の学校で発生していること、また、そもそも学校の初期対応に課題があり、要求を理不尽にさせていく事例が半数以上あることが明らかになった。」 「学校問題の未然防止や解決に当たっては、初期対応をはじめとする学校の組織対応能力の向上が極めて重要である。学校が保護者や地域の方々と共に 『相互協力』 していく関係を築けるよう、教職員に啓発を図るため、『学校問題解決のための手引』 を作成する。」 です。
 そして 「このように手引書は、決して 『モンスターペアレント対策』 などではなく、対応する学校や教員の側の意識改革を求めたもの、と言えます。ただ、人の話を 『聴く』 ことや、クレームの裏にある本音を察することは、気持ちの余裕や体力がないと、難しいものです。学校・教員と保護者・一般社会の間の意識がずれつつあることも確かですが、子どもや保護者と十分に対応できる時間を、教員が持つことも大切です。意識改革と同時に、教員の多忙化解消を図る施策も不可欠でしょう。」 とあります。
 結局のスタンスは、教職員と学校に保護者の受け入れと我慢できるくらいの忍耐力を身につけろ、そして自分で解決しろと説いています。

 地方の教員からの相談です。
 授業が開始しているにもかかわらず、保護者が長時間電話で次から次へと難癖をつけ続けることがありました。事情を説明したり、譲歩したり、納得しない謝罪をしたりしながら対応していました。教頭は近くにいても知らんぷりです。
 やっと切れた時、教頭から 「いつまでもたもたしているんだ。早く授業に行け」 と怒鳴られました。
 憤怒をぶつけられた側には、恥の感覚と挫折感が入り混じった独特の屈辱感が生じます。そこから回復するには仲間、理解してくれる人との会話が必要です。
 その後教員は、自信を失い、体調を崩して休職に至りました。

 教職員が個人で解決しかねる場合でも、管理職は学校全体の問題と受け止めることや指導をしないで力量不足という評価で責任転嫁することが多々あります。校長、教頭は教育委員会やマスコミを気にしながら自分を守ります。
 モンスターペアレントは暴力です。学校全体で対応する必要があります。


 千葉県の 『行政対象暴力対応マニュアル』 を上から目線といいましたが、東京都教育委員会の 『学校問題解決のための手引』 はいわば 「お客様は神様です」 の姿勢に徹しろという業務命令です。
 マニュアルは、誰かが勝手に作って通達したり、個人的解決方法を押し付けては有効性を持ちません。職場、職務での共通の課題として現場の意見を取り入れて、解決策をみんなで探り、納得して共有化するできるものでなければなりません。そして働いている労働者の尊厳を守り心身共の健康を守り安全な職場環境づくりにつながるものでなければなりません。
 ILOは 「職場の暴力」 と捉えて指針を発表しています。
 2013年3月12日や8月27日の 「活動報告」 で韓国のサービス業の労働者の要求を紹介しました。「感情労働者に不当要求拒絶、謝らない権利、電話を一方的に切る権利を付与せよ」 「顧客が王様なら、従業員も王様だ」 の主張をかかげた運動を展開しています。
 その取り組みの視点を見習い、対策を急ぐ必要があります。
 

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救援者でもある教職員への救援対策が急務
2013/11/19(Tue)
 11月19日(火)

 11月14日付の 『河北新報』 に 「教職員『燃え尽き』 22.7% 震災対応、多忙化 宮城」 の見出し記事が載りました。
 県教委は、6月下旬に県下の教職員約1万8800人を対象にアンケート形式で健康調査を実施しました。回答率は85.4%でした。2011年12月に続き2回目です。
 今回は初めて 「心身ともにがっくりと疲れを感じる」 「仕事に熱意が持てなくなった」 など16項目の 「燃え尽き症候群」 の兆候を調べました。22.7%が兆候を示していました。専門機関の受診が必要なレベルと判断された割合は全体で17.3%。地域別地域別では東部圏域 (石巻市、東松島市、女川町) 18.3%、仙台圏域 (名取市、塩釜市など13市町村) 18.1%、仙台市18.0%でした。比較的軽いレベルは5.4%でした。東日本大震災で被災した児童・生徒の心のケアや施設復旧の調整など、震災対応にエネルギーを注いだケースが多いといいます。

 現在の体調は、「あまり良くない」 「悪い」 は24.7%で前回の21.3%からやや増加しています。精神面の健康の自己評価で、相談機関によるケアが 「かなり注意が必要」 「要注意」 は11.2%で前回の11.1%とほぼ同じです。
 ストレスを 「大変強く感じる」 「強く感じる」 は24.6%で前回より2.6ポイント上昇。中でも、南三陸地域 (気仙沼市、南三陸町) 28.3%、東部圏域27.3%と高くなっています。「ストレスを感じている」 の回答者に震災との関連について質問すると 「ある」 が南三陸33.1%、東部圏域29.7%で、県全体14.1%の2倍以上となっています。原因は 「多忙・業務量の拡大」 が13.4%、「勤務内容の変化」 が9.0%です。
 深刻な状況です。しかも増えています。

 7月18日の 「活動報告」 に岩手県の教職員について書きましたが、被災地はどこも深刻です。
 被災地の教職員は被災者です。そのうえに避難所等の管理者、児童・生徒の心のケアをする救援者でもあります。しかし自分自身が被災者であるにもかかわらず、他の被災者や児童・生徒への対応を優先して行動してきました。緊張の中で自分が抱えているストレスにも気が付かないくらいの多忙を極めていました。
 他者の悩み、怒り、ストレスの話を聞く行為は大きな精神的負荷がかかります。児童・生徒、保護者の心情を理解できる分だけ共有してしまって体調を崩します。それがずっと続いていました。

 しかしこれまで震災・災害後の教職員の “心のケア” について関心が寄せられることが少なく、対策が遅れているのが事実です。
 専門家派遣というような対策に留まらない取り組みが必要です。


 阪神淡路大震災においても児童・生徒への心のケアは対策がとられましたが教職員の “心のケア” の必要性に気づいたのはしばらく経ってからでした。
 阪神淡路大震災発生後10年間、兵庫県の関連機関は毎年 『阪神・淡路大震災復興誌』 を刊行しています。その最終版・第10巻の第6章教育から学校の状態、児童・生徒の心理状況はどうだったのか、それに教職員はどう対応していたのか拾ってみます。実際に教職員がどのような活動をしていたのかを見る中から、教職員への対応策が探れるからです。

 「被災児童・生徒の心のケアといえば、教育復興担当教員があげられ、学級担任が対応しきれない 『心のケア』 に、担任教諭、保護者、養護教論、スクールカウンセラー、関係機関の間に立って、コーディネータ一役を果たした。被災児童・生徒一人ひとりの症状を把謹し、『個に応じた心のケア』 を進め、家庭訪問をくり返し、教室に入れない児童・生徒に相談室で個別指導を行った。」
 「心に大震災の傷を負った被災児章・生徒の教育的配慮に取り組む 『教育復興担当教員』 は2004年度に55人配置と、大幅減となった。要配慮児童・生徒の減少、震災から10年経過などによるもので、配置市町は、1998年度から変わらず、6市2町。……
 教育復興担当教員は国の加配措量による配置で、1995年度に128人、1996年度から2000年度まで207人、2001年度180人、2002年度130人、2003年度65人と、要配慮児童・生徒の減少に伴って削減された。2004年度は当初、文部科学省が全廃方針を打ち出したが、兵庫県教委の強い要望で55人体制で継続された。
 2005年度からは教育復興担当教員としては廃止され、『阪神・淡路大震災に係る心のケア担当教員』 に名称変更して、神戸、西宮、芦屋、宝塚の4市に、計36人 (前年より19人減) が配置された。」

 「カウンセラーが行う心のケアの分野で、教育援興担当教員は大きな役割を果たした。教師ならではの方法で成功した。担任ではないが、個別的な児童・生徒へのかかわりが活動の中核になった。学校とは集団の論理で運営されるが、個の論理を置き、個別指導を中心に置く活動だった。
 『声かけ・励まし・日記指導』 など教師の常のスタイルが80% 。加えて 『生活指導・学習指導で自信を持たせる』 支援を続けた。教師の技法というより自然的なかかわりで、相談活動も 『日常会話の中で』 が突出した。家庭、保護者との連携、相談にも積極的だった。1998年9月の台湾地震後、現地の日本人学校へ文部省が兵庫の教育復興担当教員を派遣したことは取り組みの成果を高く評価したからだ。」


 「しかし、被災から10年たっても児童・生徒が負った心の傷は今も残されている。大震災からの援興が広い分野で進んだ中で、いまだに解決、解消の道が遠い課題でもある。大震災から学んだ教訓だ。
 兵庫県教委は、被災直後の1996年から、震災による教育的配慮を必要とする児童・生徒数の調査を続けている。1998年度の4,106人をピークに、1997年度から3年間は4,000人の大台を超え、2000年度から減少傾向となった。要因別に見ると、被災から5年を境に、事情が変わってくる。前期は 『震災の恐怖によるストレス、住宅環境の変化、通学状況の変化』 などが主な要因。後半は 『家族・友人関係の変化』 や 『経済環境の変化』 などが漸増傾向を見せるようになる。これを県教委は 『二次的要因』 と位置づけている。
 要因はどうあれ、要配慮児童・生徒は、10年後の2004年度1,337人、2005年度808人にのぼる。県教委をはじめとして教育現場では、初体験の 『心のケア』 に取り組んできた。その成果が要配慮児童・生徒数の減少である。その中心的役割を果たしたとして評価されるのが 『教育復興担当教員』。略称 『復興担』 は被災後、国の教員加配措置で配置され、『心のケア』 と 『防災教育の推進』 に努めた。」


 「大震災で子どもが負った心の傷を調べる 『教育的配慮を要する児童・生徒の実態調査』 は兵庫県教委が1996年度から7月1日現在で続けている。
 2001年度までは県内すべての公立小・中学生を調査対象にしたが、2002年度から震災後に出生した子どもを除くことにし、2004年度は小学1 、2 、3 年生が調査対象外となった。
 2004年の調査対象は小学校828校1分校、15万9,697人。中学校359校3分校 (芦屋国際中等教育学校を含む)、14万9,117人。合計1,187校4分校、30万8,814人。
 調査結果によると、配慮が必要な小学生556人 (前年比420人減)、中学生781人 (同151人減)、合計上1,337人 (同571人減)。毎年減少となっているが、被災9年後に新たな発症が74人もいた。」

 「要配慮児童・生徒の2004年度要因 (複数回答) は 『住宅環境の変化』 が43.5% (前年40.1% 、前々年40.0%)。『経済環境の変化』 が37.1% (34.7%、33.1%)。『家族・友人関係の変化』 が36.9% (39.0%、41.0%)。『震災の恐怖によるストレス』 が29.9% (35.3%、36.8%) で、これら4項目が要因の大半を占める。4項目以外では 『学校環境の変化』 4.9% (6.9%、8.6%)、『通学状況の変化』 4.3% (4.7%、5.5%) など。
 トップの 『住宅環境の変化』 は前年と変わらないが、『経済環境の変化』 が2位 (前年4位、前々年4位) につけた。『家族・友人関係の変化』 は3位 (前年2位、前々年1位)。「震災の恐怖によるストレス」 は4位 (前年3位、前々年3位)。要因別順位は2位以下にかなりの変動が見られた。『震災の恐怖』 が大きくポイントを下げたのに対し、『経済環境』 は毎年ポイントを上げ、最近の二次的要因の特徴を2004年度も見せた。
 9年間の調査結果の流れを見ると、1996年度から1999年度までは 『震災の恐怖』 の割合が最も高かった。『住宅環境』 は1996年度、1997年度は40%を超える高い割合を占め、その後、一時減少したが、2002年度以降、再び、40%を超え、2004年度は最も高い。
 生活基盤を揺るがす災害は、直接の衝撃だけでなく、その後の生活の不安定さなどの二次的ストレスが、心理的に大きな影響をもたらし続けることが指摘されている。この調査でも1995年度から2001年度まで 『家族・友人関係の変化』 が増加し、その後やや減少したとはいえ、2004年度でも36.9%を占めている。
 また、『経済環境の変化』 は1995年度以降、一貫して、その割合が増加し、2004年は37.1%、第2位となった。このような二次的ストレスが、震災の恐怖などのストレス体験を呼び起こすことも指摘されており、今後の取り組みは、調査結果の流れ、傾向を踏まえて進める必要がある。
 『震災の恐怖ストレス』 は倒壊家屋の下敷きになるなどの体験により、再び地震があることへの極度の緊張感を持ったり、地震の夢を見て泣き出すなど。
 『住宅環境の変化』 は避難所での苦しい生活や住民移転の影響など。
 『家族・友人関係の変化』 は震災による家族や身近な人の死、保護者の別居、離婚、友人との別れなど。『経済環境の変化』 は震災の恐怖体験をしたうえ、家庭が経済的に悪化したり、保護者が失業。自宅の再建や転居費用がかさんだりするなど。」


 「震災で心に傷を負った児童について、兵庫県教委は毎年行う調査で、震災後生まれを対象から外している。2004年度の調査では小学3年生以下が除かれ、4年生以上を調査対象とした。
 兵庫県教職員組合と兵庫教育文化研究所は、2004年7月、教育復興担当教員が配置されている神戸、西宮、芦屋、宝塚各市と北淡町の19小学校で、教育復興担当教員から開き取り調査を行った。その結果、小学1-3年生の中でも、約4%にあたる242人に心のケアが必要なことがわかったと発表した。
 242人には 『怖い夢を見る』 『乳幼児のような言動が現れる』 『集中力に欠ける』 『落ち着きがない』 『いらいらしやすい』 『攻撃的』 『音や振動に過敏』 などの症状が見られたという。
 これらは要ケアの判断基準になっている症状で、理由について、兵教組は 『家族・友人関係の変化』 『住宅・経済環境の変化』 など2次的要因によるものと分析している。
 家族が震災で死亡したり、失職や離婚など、乳幼児期に家庭環境の急変を経験して、ストレスが出ている。不安定な生活の中で子育てが、子どもの心の成長に影響を与えていると主張している。」

 時間の流れとともに要因は変化していきます。10年たっても問題は深刻です。
 このような事態は東日本大震災の被災地においても今後同じような状況が生まれることが予想されます。
 対応するのは教職員です。救援者でもある教職員への救援対策が必要です。


 兵庫県における震災から2年後の教職員の調査を行った兵庫庫県精神保健協会 こころのケアセンターの岩井圭司医師による 『教職員のメンタルヘルス調査 報告』 (兵庫県精神保健協会こころのケアセンター 1998年3月) を紹介します。

 調査から見えてきたことを [考察と提言] としてまとめています。
 ①震災の被害の大きかった地域に勤務する公立学校教職員ほど評価尺度上の得点が高い傾向があっ
  た。
 ②非被災地域の学校に勤務する教職員の評価尺度得点も、一般人口中のそれに比べて著しく高く、学
  校教職員は平時から強いストレスにさらされていることがうかがわれた。
 ③震災時の個人的被災状況が深刻であった者および震災後の業務内容が過酷であった者ほど、調査
  時点での精神健康が低下していた。
 ④震災時の個人的被災状況が深刻であった者および震災後の業務内容が過酷であった者では、その
  後の生活においてもより甚大なストレス状況にさらされやすい傾向を認めた。
 ⑤長期的な精神健康の低下をもたらす予測因子としては、震災後の業務内容よりも個人的被災状況の
  方が重要であると考えられた。
 ⑥勤務先の学校が避難所になったかどうかにかかわらず被災地にある学校に勤務する者は、調査時点
  においても震災の影響を精神健康面でこうむり続けていた。
 ⑦被災状況・業務内容が同程度であった場合には、女性の方が男性に比して評価尺度上高得点をし
  めす傾向があった。

 これらのことを踏まえて対策を考察しています。
 「災害をはじめとする心的外傷事件traumatic eventによる精神健康の低下においては、その予後ないし全般的な重症度は、急性期の重症度としてよりも回復の遷延というかたちで出現することがこれまでの研究でしられている。また、被害の軽重は、急性期のある時点における横断的な重症度よりも慢性期の重症度と相関することが多い。
 そしてこのことこそが、本調査を意義づけるものであるといえる。学校教職員は災害後も長期にわたって学校という場所に恒常的にとどまり続ける者であり、長期的な展望と対策を必要とするからである。
 学校は教育機関であり、児童・生徒に広い意味での “援助” を与える場である。そして、学校教職員はトレーニングを受けたプロの救助者・災害援助者ではない。したがって、被災した児童・生徒に適切な教育的援助を提供することが優先されるべきであって、教職員たちが本来の学校教育以外の責任や業務を担うことは最小限にとどめるべきであろう。」

 「大災害後の被災した児童・生徒のケアにあたっては、精神保健専門家 (精神科医、臨床心理士、精神科ソーシャルワーカー等) の関与が望ましい。しかし、子どもたちの現在の状態を災害前からの生活史の中に位置づけてとらえることに関しては、専門相談機関や専門家よりも学校教職員の果たす役割が大きい。特に、災害で保護者をなくしたり、保護者と離れて暮らすようになった児童・生徒を、生活状況・家庭状況の変化を考慮しつつよりトータルな援助者として見守り続けていくことができるのは、担任教師を措いて他にはない。つまり、被災した生徒・児童に対しては、教職員にしかできない援助というものがある。それゆえ、援助者としての教職員に求められるのは “簡便な” 精神保健知識ではなく、あくまでも教育者としての専門技能の延長上に位置づけられるべきものとしてのアドヴォカシー (擁護的・保護的援助) を提供する能力であり、その一環としての精神保健知識であるといえる。学校教職員にとって最小限の災害心理学の知識は、学校避難所に避難してくる被災者のためにではなく、教職員自身と子どもの精神健康の維持のために必要である。」

 阪神淡路大震災における貴重な体験を活かしていかなければなりません。
 教職員に対する “心のケア” と “ゆとり” が必要です。
 「被災した生徒・児童に対しては、教職員にしかできない援助というものがある。」
 児童生徒の心理状態は、体験だけでなくその後の生活変化、社会の変化にも大きく影響されています。1人ひとりに目が届くだけの教師の人的配置体制が必要です。
 兵庫県のような “心のケア” ができる 「教育復興担当教員」 の配置は、教員同士で “ゆとり” を作り出すこともできます。安易なカウンセラーの導入はかえって学校現場を混乱させます。
 「痛みある心」 は児童・生徒も教職員も持っています。それを癒すのは 「痛みある心の裡」 をも共有している人たちとの人間関係です。


 12月21日1時半から東京南部労政会館で、向明戸静子さん (日本教職員組合執行委員 震災時は岩手県久慈市の学校に勤務 雑誌 『女も男も』 に「被災地の実態から考える子どもと教職員の心のケア」 を執筆) をお招きして 「震災の支援活動に従事する労働者への心のケアは」 のテーマで講演会を開催します。 
 
  
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差別は見えない形で存在してる
2013/11/15(Fri)
 11月15日(金)

 精神疾患で労災申請をしたが却下された事案を東京地裁に提訴した行政訴訟が続いています。準備手続が行われる日は1時間前から裁判所正門前で情宣活動を行います。開廷曜日の関係からか、狭山差別裁判で再審請求・証拠開示要求を行っている石川一雄さんと支援者の人たちの情宣活動と何度も鉢合わせになります。話し合って時間を調整します。
 それにしても狭山事件が起き、石川さんが逮捕されてから50年が過ぎました。不可思議なことが多いいい事件です。石川さんの冤罪は明らかですが再審開始を勝ち取るのは至難の業です。

 事件が東京高裁段階に移った段階から部落解放同盟は、部落差別に根差した冤罪・「狭山差別裁判」 と捉えて無罪獲得と部落解放を訴えて全国運動を開始しました。福岡から各地を巡って東京高裁まで行進が行われました。その時に 『差別裁判を打ち砕こう』 の歌が生まれました。

  1.西から東に 無実を叫び
    荊冠旗のもと 我らは進む
    差別裁判うちくだこう
    差別裁判うちくだこう

  2.狭山差別の 裁判を
    断固我らは 闘わん
    石川青年とりもどそう
    石川青年とりもどそう

  3.我が行動隊 無実を叫び
    三百万の 兄弟と
    差別裁判うちくだこう
    差別裁判うちくだこう

 高裁で公判が開かれる日は、全国から部落解放同盟と支援者は裁判所向いの日比谷公園に集まり審理の間中座り込み、何度も繰り返して歌いました。
 みな高裁判決は無罪と確信していました。

 現地調査にも何度も参加し、冤罪を確信しました。
 サークルで無罪を確信する議論をしていると、1人が 「国家権力を甘く見るな。裁判所が無罪判決をだして部落差別があったことを認めたら国は部落解放に真面目に取り組まなければならなくなる。そんなことをする気はない。だから無罪判決を簡単に出さない」 と言いました。
 司法の独立などということを信じてはいませんが、ここまで盛り上がった運動をかわすことは簡単にできるはずがないというのが確信の根拠でもありました。
 しかし、やはり国家権力を甘く見ていました。石川さんは有罪、つまり犯人にされたままでした。

 その後、最高裁でも高裁の判決が維持されて下獄、再審請求も却下が続いています。
 今は “仮釈放” です。
 「石川青年」 は現在74歳。高裁前で元気にマイクを握って訴え続けています。


 この10月31日、1974年に高裁の不当判決が出た日、石川一雄さんと早智子夫婦を撮った映画 『SAYAMA みえない手錠を外すまで』 が完成、上映が始まりました。チラシには 「50年殺人犯というレッテルを背負いながら 泣き笑い 怒り 日々を “凛” と生き抜く夫婦の物語!」 とあります。
 これまで事件を取りあげた映画やドキュメント映画は、経過や状況説明、証言がほとんどを占めています。今回の映画はその逆です。夫婦の今の日常を追いました。

 内容を紹介します。
 石川さんは “仮釈放” 後、早智子さんと結婚します。
 元気の秘訣は、毎日のマラソン、野菜中心の食事、まめな家事仕事寺、そして夫婦で出かける水泳、山登りなどのようです。

 両親は裁判のたび、全国で開催される支援集会によばれると出席してお礼のあいさつをしていました。しかし石川さんが獄中にいる間に亡くなりました。
 石川さんは1994年に “仮釈放” されますが、いまだ両親のお墓詣りをしていません。無罪判決を勝ち取って報告できるまではしないと決めています。“仮釈放” はみえない手錠が架けられているのです。

 両親とともに苦労をしたのがお兄さん夫婦です。夫婦は両親と弟を支え続けてきました。
 大工をしていたお兄さんは仕事先で弟が犯人だという話を聞かされます。その時は仕事を辞めて帰ってきたといいます。仕事の依頼も減りました。
 つれあいの方は家族から反対されながらお兄さんと結婚します。買い物に行った店などで露骨な嫌味を言われます。しかし堪えてきました。両親が集会などに出かける時はいつも付き添いをしました。
 つれあいの方がインタビューで辛かったことの質問を受けます。「忘れた、つらかったことはみんな忘れた」 そういいながら顔をそらして涙を拭きます。

 石川一雄さんにつれあいの早智子さんが小さかった頃のことを語ります。徳島県の被差別部落で生まれた早智子さんは高校の頃に部落差別を知ります。
 お祖父さんは 「差別されてもしっかり生きていけ」 というようなことを言い聞かせます。それに反論します。「しっかり生きていても差別される」
 お祖父さんの体験を踏まえた孫への思いやりです。孫は理不尽さを受け入れることができませんでした。
 今はお祖父さんの思いを理解して受け止めなかったことを悔やみます。

 石川さんと足利事件、布川事件の元被告が一堂に会します。そこで交わされた一言にみなが頷きます。
 「本当にやっていないから長くなっても頑張れる」
 これは何ものにも勝る無罪証拠です。


 石川さんは獄中で文字を覚えました。今の夢は、無罪を勝ち取ったら夜間中学に通うことだと語ります。学校を奪われ、言葉を奪われ、文字を奪われたために騙され、権力のでっち上げたシナリオにまんまと載せられてしまいました。
 そのことを今も悔やみ、学校に通いたいという思いを強く持っています。

 このように紹介すると暗い映画のように思われますが、みな淡々と、時には笑いを交えて語ったり、振るまっています。必ず無実を勝ち取ることができるという確信が明るくさせています。それが見る側の気持ちを軽くします。
 本当は、家族が50年間の人生を奪われ、今も続いている重い話です。


 さて、東京地裁で続いている行政訴訟も冤罪がからんでいます。(2011年12月21日の「活動報告」に狭山差別裁判と非正規労働者への差別問題を書きましたが、それとは別件です)
 ある運送会社での派遣労働者の事案です。
 派遣契約の更新に際し、直属の上司はこれまで1年だった契約期間を3か月に変更すると通告しました。納得いかないので直属の上司の上司に相談すると、直属の上司が勝手にしたことがわかりました。その後、直属の上司の上司が転勤すると嫌がらせは強まります。
 倉庫から荷物が紛失しました。
 広い倉庫に取り付けられていた防犯カメラのビデオに派遣労働者を含めた数人が映っていました。しかし本来荷物があった付近に映っていたわけではありません。しかしビデオを見せられて取り調べの対象にされます。ビデオは一般職員と一緒に見せられました。ターゲットを絞った調査が公然と進められました。管理職を含めて派遣労働者への対応は変わりました。
 紛失事故はこれまで何度もありましたがその都度保険で処理されていました。
 しかしこの時だけは警察に連れて行かれてうそ発見器にかけられました。
 結果は “シロ” でした。管理職から社外のコーヒーショップに呼び出されて聞かされ、謝罪されました。
 しかしそれで解決したわけではありません。
 職場全体に知れるように調査が進められましたが “シロ” の結果は職場全体に周知されません。周囲の労働者は疑ったままです。
 “シロ” の直後の契約は変更されましたが翌年は 「予定通り」 更新しないことを通告されました。

 日常的に直属の上司から嫌がらせを受けていた時から体調を崩していました。紛失事故の嫌疑をかけられるとさらに悪化しました。警察署に連れていかれた時は拘留されて家に帰れなくなるという恐怖感に襲われました。うそ発見器の結論が“シロ” と出るまで恐怖と不安が支配しました。“シロ” の後も同僚から疑られたままでした。このよう状況でも雇用不安を抱えて我慢を続けました。
 離職後退職は体力回復に努めていましたが、少し元気を取り戻して電話で労働相談をしました。そこでのアドバイスで会社と交渉、労災申請に至りました。

 裁判で明らかになったことがあります。
 会社が紛失したと警察に被害届を出した荷物は、メーカーでは作っていないものでした。世の中にないものが紛失したのです。本当に紛失事故はあったのでしょうか。


 事件、事故が起きると嫌疑がかけられる対象が特定されます。
 狭山事件では、警察の捜査が息詰まると被差別部落に絞られました。
 部落差別は解消していません。見えない形で存在しています。
 会社では、正規職員は最初から対象外にされます。
 そこには明らかに差別が存在し、利用されています。

 格差社会と周囲の “見て見ぬふり” が差別を助長しています。 
 
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