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何で 「健康管理」 の 「気づき」 だけが法制化されるのか
2013/06/28(Fri)
 6月28日(金)

 6月21日、全国労働安全衛生センター連絡会議メンタルヘルス・ハラスメント対策局は、厚労省に労働安全衛生・労災補償について要請行動を行ないました。
 全国安全センターは、2月19日に要請行動を行ないました。しかし時間制限の中で充分な議論ができませんでした。今回は職場のパワハラ及び精神衛生問題に項目を絞り、前回の議論を踏まえて行ないました。

 職場のいじめ・パワハラ、メンタルヘルス対策は、せっかくの 「職場のパワーハラスメントの予防・解決に向けた提言」 が活かされていません。取り組む企業とそうでないところの温度差が大きく、強制力を持たないと主張する企業もあります。また中小企業やオーナー企業などでは事業主自らがパワハラの加害者だったりします。
 いじめに遭遇して都道府県労働局や労働基準監督署に相談に行っても法律がないと助言されたが諦めざるを得ないのかという相談もあります。
 このような問題について具体例をあげて、厚労省は 「提案」 発表後どのような研修を開催したか質問しました。

 厚労省は、労働紛争処理業務室や労基署の担当者を対象に 「提言」 の研修を実施したが周知徹底していないようならば徹底すると回答しました。
 労働大学で弁護士を講師に、問題が発生した時にどう対応するかの実務対応研修を行なったり、相談員には適切な対応ができるようロールプレーでの訓練などをしたとのことです。


 「提言」 を積極的に生かすためにもパワーハラスメントを予防するためのガイドラインを作成することを要請しました。

 厚労省としては、今、ガイドライン作成は検討していないが、企業の取り組みの好事例集を作成する予定で、それを活用して取り組んでいない企業にアピールするということでした。取り組みをしなければならない気分作りをするということです。


 「職場のパワーハラスメント対策法」 (仮称) 制定に向けた検討を行うことを要請しました。

 「してはいけない法律」 を作ると何がパワハラかの議論にもどり、「うちには関係ない」 ということになってしまうので、まずは 「提言」 に取り組んでもらうことを目指すとのことでした。

 しかしすでに 「うちには関係ない」 と表明する「労」使がかなりいます。


 職場のパワハラが原因で精神疾患に罹患し、休職に追い込まれている労働者に対して 「提言」 を生かした 「復職の手引き」 の改訂を要請しました。
 例えば、休職の原因で復職対策は違ってきます。①長時間労働、②過重労働 (責任)、③人間関係、④適性配置違反、⑤顧客、住民、モンスターペアレントからの攻撃のいずれかによって、それぞれ復職にむけた職場環境整備が違います。原因を取り除くための対応がなされなければ戻っても再発の危険性は大きくなります。
 また休職期間の長短によっても復職プログラムは違ってきます。

 「復職」 問題については、要請内容からの脱線もありましたが有意義な議論ができました。


 先日閉会した国会に、結局、職場のメンタルヘルス対策としていわゆる 「新たな枠組み」 を法制化しようとする 「労働安全衛生法改正 (案)」 (ストレスチェック義務化法案) は上程されませんでした。
 全国安全センターは一貫して 「新たな枠組み」 は 「患者の発見・選別・排除」 につながるという理由で反対してきました。
 労働者が健康を害さないためには、「作業環境管理」 「作業管理」 「健康管理」 の対策が必要ですが進めるには、順序が大切であると主張しました。
 具体的事実を指摘しました。2012年10月25日に平成23年 「労働安全衛生特別調査 (労働災害防止対策等重点調査)」 (新設) の調査結果が発表されました。概況の中の 【労働者調査】 に、メンタルチェックを 「自分で判断して受けなかった」 が10.9%あります。この数字は自分の意思をはっきり示した労働者で、本当は嫌だと思っている労働者はかなりいます。
 また3月25日に消防庁は全国からの東日本大震災に派遣された消防職員を対象とした調査結果 「大規模災害時等に係る惨事ストレス対策研究会報告書」 を発表しました。その中に 「チェックリストや問診には、正直に答えなかった 10.7%」 とあります。
 地元被災地消防職員を対象にした調査でも 「チェックリストや問診には、正直に答えなかった」 が3.9%です。職員は正直に回答したら何らかの不利益が生じると受け止めていることを物語っています。(2013年6月4日、6月7日の 「活動報告」 参照)
 これが多くの職場の実態です。だから対策は順序が大切なのです。

 厚労省は、メンタルヘルス対策は2000年3月31日付の 「労働者の心の健康の保持増進のための指針について」 に基づいて進めているが、そこでは 「作業環境管理」 「作業管理」 「健康管理」 を一体として総合的に取り組むことをうたっている、「新たな枠組み」 はそれに則した対策で、労働者本人に気づきを促し、患者の発見につながると説明しました。

 出席者からは総合的に取り組むということなら、何で 「健康管理」 の 「気づき」 だけが法制化されるのか、という質問がだされました。
 「新たな枠組み」 は 「作業環境管理」 「作業管理」 を放置して 「健康管理」 の自己責任を労働者に強制するものです。


 職場のメンタルヘルス対策に長時間労働の防止は不可欠です。しかし現在の労働法制には長時間労働を合法化する抜け道が用意されています。使用者が開催する研修会などでは 「時間外労働が100時間以上は安全配慮義務違反になる、それ以下なら大丈夫」 という指導が行われています。
 そこでまず、厚労省として事業場を無作為に抽出し、届けられている36協定と当該事業場の実労働時間数を比較する調査をして実態を掌握することを要請しました。
 そして今回、厚労省は全国1万社を対象に労働時間の実態調査を予定しているが、調査項目に管理職や裁量労働制の労働者など変形労働者についての実労働時間調査を入れること、調査結果発表は、正規・非正規を区分して行うことなどを要請しました。

 厚労省の担当者は、これまでも労働基準法を遵守していると回答しました。
 今回の実態調査は、事業主を対象にするのか、労働者を対象にするのかを質問すると事業主に対する訪問調査ということでした。派遣労働者やパート労働者も調査に含まれるということです

 しかしそれでは実態をつかめる回答が得られるか疑問が生じます。
 例えば、1か月間に80時間の時間外労働をした管理職について、きちんと時間外労働80時間の回答となるのか、管理職は時間管理をしないから時間外労働ゼロとなるのかと質問しましたが、わからないという回答でした。
 管理職や裁量労働の労働者は時間管理がきちんとなされていません。多くの場合、ゼロか少ない一定の時間数が設定されています。しかし平均労働時間を算出する時、そのような実態とかけ離れた時間数が総労働時間に加算されると総雇用者数で割り算をした平均労働時間は実態を反映しません。さらに、短時間労働者が区分されずに総労働時間数と雇用者総数に加算されたりするとますます実態からかけ離れます。

 具体的問題を指摘して質問を続けると担当者は突然不機嫌になりました。回答不能な質問をしていたわけではないのにです。
 厚労省にとって、労働時間の問題は鬼門のようです。

 後日に詳しく報告しますが、世界人権宣言に基づく社会権規約委員会は労働などの社会権を保障する条約の施行状況について定期的審査をします。今年4月30日に日本について審査をしました。
 日本政府は労働時間については労働基準法できちんと対処しているという内容の報告書を提出していました。
 これに対して過労死家族会や過労死弁護団などはカウンターレポートを提出し、さらに各国の審査委員とロビー外交を行いました。カウンターレポートには、2011年7月20日の 「活動報告」 で紹介した、大庄が経営する日本海庄の裁判に提出された資料などが盛り込まれていました。
 5月17日に社会権規約委員会は総括所見を発表しました。日本政府に対して 「多くの労働者が長時間労働に従事していることと、過労死や精神的なハラスメント (嫌がらせ) による自殺が職場で発生し続けていることを懸念する」 として立法措置を含む新たな対策を講じるよう勧告しました。
 そして委員会は日本政府に、次回の定期報告書を2018年5月31日までに提出することを要請しました。

 日本の労働者と労働組合は、過労死家族会と過労死弁護団の奮闘によって、政府に長時間労働解消にむけた取り組みをさせるチャンスをもらいました。
 今後、政府と経営団体は、労働時間管理をうやむやにする法律の改訂や制定を目論んでくることが予想されます。
 労働者と藤堂組合は政府がごまかしの報告書を作成することに加担するか長時間労働解消に向けた取り組みに参加して改善させた実態を報告させるか。労働者と労働組合に課題が提起されました。


 精神障害の労災についての実態報告についても事前に提出して要望書には盛り込んでいました。
 要請行動は、ちょうど厚労省が報道関係者に 「平成23年度 脳・心臓疾患および精神障害などの労災補償状況まとめ」 を発表した直後でした。そこでついでに報告書の内容や報告書から漏れていることについて質疑応答も行うことができました。
 精神障害で労災認定されて長期療養している被災者の後遺障害認定の実態についての認定件数や等級の集計について公表を要請していました。集計されていないので公表できないとのことですが統計資料をもらいました。


 おそらく、厚労省に労働安全衛生・労災補償に関する総合的な課題で要請行動を行っているのは全国安全センターだけだと思われます。
 労働安全衛生問題について、日常的活動のなかで直面している問題、労働現場の実態を集約して報告し、改善を要望していくことはますます重要性を増しています。 
 

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