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個別労働紛争解決制度――低い解決率
2013/06/14(Fri)
 6月14日(金)

 5月31日、厚労省は 「平成24年度個別労働紛争解決制度施行状況」 を発表しました。
 「概況」 からです。
 総合労働相談件数106万7,210件 (前年度比3.8%減) で、そのうち民事上の個別労働紛争相談件数が25万4,719件 (同0.6%減)、助言・指導申出件数10,363件 (同8.1%増)、あっせん申請件数6,047件 (同7.1%減)です。
 総合労働相談件数は、5年連続で100万件を超えています。民事上の個別労働紛争に係る相談件数は、高止まりです。助言・指導申出件数は制度施行以来増加傾向にあり、初めて1万件を超えて過去最多です。
 『いじめ・嫌がらせ』 に関する相談は、増加傾向にあり、51,670件。民事上の個別労働紛争相談の中で最も多かったという結果です。
 助言・指導は1カ月以内に97.4%、あっせんは2カ月以内に93.8%を処理しています。


 総合労働相談件数はリーマンショック (2008年9月) 直後の21年度をピーク (1,141,006件) に減少を続けています。
 相談件数が減少するのは、好景気の時と、景気悪化が続く時の2つの場合があります。
 今回は、景気悪化が続き、正規労働者が減って非正規労働者が増えているからだと思われます。経済的基盤が弱い非正規労働者はトラブルに遭遇しても争うゆとりがありません。すぐに次の就職先を探します。
 このことは、助言・指導申出件数は増加、あっせん申請件数が減少していることによっても裏付けられます。

 21年度と24年度を比較してみます。
 相談内容の比率が大きく減少しているのが 『解雇』 で24.5%から16.9になっています。10年前から減少傾向にあります。逆に 『自己都合退職』 が5.9%から9.8%に上昇しています。ここ4年間は上昇しています。
 21年度は、民事上の個別労働紛争に係る相談件数の内訳で他年度と比べて 『雇止め』、『退職勧奨』 の比率が高くなっています。『いじめ嫌がらせ』 はこの年度から増え続けています。
 このことをどう分析したらいいでしょうか。雇用は安定に向かっているわけではありません。経営者が 「賢くなった」 ということです。
 雇用契約の解約を直接通知するのではなく、騙して退職届を書かせる、脅したりすかしたりして退職を迫るということです。その手段として 『いじめ嫌がらせ』 が行われています。

 相談内容の 『その他の労働条件』 の比率が21年度の9.8%から12.4%に上昇しています。
 日々の相談活動では雇用契約書を取り交わしていない相談者がかなりいます。そのなかで突然解雇でもない、退職勧奨でもない雇用契約の解約・期限終了を通告されます。おそらくこのような相談が含まれていると思われます。
 どうしてきちんと契約書を取り交わしていなかったのかと質問しても、そもそも力関係が違い、使用者を信用したり、やっと働くことができたという安心感から後回しにして忘れてしまったりします。(ハローワークや就職あっせん会社にも問題があります)
 これを裏付ける数値として、就労形態別 (雇用形態別) の相談件数において 「その他・不明」 が相談件数も割合も増加しています。

 今、使用者側は 「解雇規制の緩和」 を推し進めようとしています。騙す手法から 「合法的」 に解雇しようとしています。


 内訳の中で 『いじめ・嫌がらせ』 は、21年度の35,759件 (12.7%) から、22年度39,405件 (13.9%)、23年度45,939件 (15.1%)、24年度51,670件 (17.0) と急増しています。
 相談内容は、社会的問題になった事項については多くなります。
 今回いじめが増えたのは、大津いじめ事件などの報道でいじめにあった時は泣き寝入りをしないで早めにどこかに相談するということが周知された、厚労省の 『提言』、「職場のパワハラ」 の概念規定、その広報などで労働者が主張しやすくなった (=潜在的な問題が顕在化した)、厚労省の 「職場のパワハラ」 の概念規定はこれまでのパワハラの概念を拡げた (個人の問題から構造的問題に) などによります。
 この件数を詳細に分析して対策に役立てることが必要です。


 総合労働相談件数の就労形態別件数は発表されていません。
 助言・指導申出件数については就労形態別が発表されていますが正規労働者は緩やかに減少しています。この間の非正規労働者の増加状況を反映しています。
 就労形態別についてもう少し詳しく見ると、派遣労働者は20年度までは増加していましたが21年度は激減します。(9.6% → 4.5%) 20年年末に年越し派遣村が開設され、いわゆる派遣切りが社会問題になりました。それに代わるように期間契約社員は15年度の8.8%から増加を続け、24年度には16.2%になっています。
 あっせん申請件数の推移にも同じ傾向があります。使用者の雇用政策の転換です。

 助言・指導申出件数は前年度と比較して件数が増加していますが、あっせん申請は20年度をピークに激減を続けています。(8,457件 → 6,047件)
 あっせんの申請を平成24年度内に処理したものは6,059件です。そのうち合意が成立したものは2,272件 (37.5%) です。申請人の都合により取り下げられたものは363件 (6.0%)、あっせんが打ち切られたものは3,403件 (56.2%) です。打ち切られた3,403件のうち、紛争当事者の一方が不参加であったものは2,383件 (39.3%) です。
 発表データに記載はありませんが、申請人の都合により取り下げられた理由は、あきらめ、使用者と対峙する恐怖、次の就職先が見つかった場合などが推測できます。紛争当事者の一方が不参加は使用者側も労働者側もありますが労働者の側の理由も同じです。
 解決率がかなり低いと受け取らざるを得ません。そうすると労働者は期待を抱くことができず、今後も件数の減少し続きます。

 ではどのような改善策が必要でしょうか。都道府県労働局長は、助言・指導申出でもあっせん申請でも使用者が提示する契約内容、就業規則、職場環境に問題があると判断したら、労働者が諦めたり、取り下げたりしても、労働者個人の問題と捉えないで労働基準監督署等と連携して是正を指導するような体制を作っていく必要があります。
 申請人の都合により取り下げや紛争当事者の一方が不参加をそのまま終了と処理すると、使用者は違法行為のやり得になります。


 東京都産業労働局は昨年10月29日に 「平成24年度上半期の労働相談状況について」 を発表しています。東京都では、都内6か所の労働相談情報センターで労働問題の相談に応じています。
 その概要だけ紹介します。
 平成24年度上半期 (4~9月) の労働相談の特徴です。
 ・相談件数は、引き続き高い水準
  相談件数は、27,041件で前年度同期 (26,032件) より3.9%の増加となった。引き続き高い水準と
  なっている。
 ・相談項目のトップは 「退職」、以下 「解雇」 「職場の嫌がらせ」 と続く
  相談項目総数は、51,616項目 (1件の相談で複数項目にわたる相談があるため相談件数を上回
  る)。
  最多項目は、「退職」 が11.2%。以下、「解雇」 9.7%、「職場の嫌がらせ」 7.6%の順。
  ※「解雇」は、使用者の一方的な意思による雇用契約の終了であり、「退職」 は、使用者からの働きか
   け (勧奨や強要) も多いが、労使合意に基づき雇用契約を終了するものである。
  相談項目数でみると 「職場の嫌がらせ」 が、前年度同期比で21.5%増と大幅に増加した。
  上半期のメンタルヘルス不調者に係る相談件数が、前年度同期比で25.5%増と大幅に増加した。相
  談項目数をみると、「職場の嫌がらせ」 が最多となっている。

 やはり 「職場の嫌がらせ」 は増加している傾向にあります。

 もう1つ、東京都産業労働局の「平成23年度の労働相談状況」から年間あっせん件数及び解決率を紹介します。
あっせんとは「労働相談情報センターが行っている「あっせん」は、労働問題をめぐる労使間のトラブルに係る労働相談を受ける中で、労使だけでは自主的な解決が難しい問題について、労使からの調整してほしいとの要請を東京都が受けた場合に、労働相談情報センターが第三者としての立場で労使間の自主的な解決に向けて手助けを行うことをいい、労働関係調整法に基づき労働委員会が行う「斡旋」とは異なるものである。」です。
 労働相談のうち 「あっせん」 に移行したものは、602件 (前年度比5.8%減) で、そのうち 「あっせん」 により紛争当事者間の合意ができたのは、404件 (解決率67.1%) です。
 ここ数年あっせん件数は減少傾向にありますが解決率は60%後半から70%全般を維持しています。

 個別労働紛争解決制度における合意が成立した割合が東京都の2分の1の37.5%では低すぎます。
 制度改革とともに創意と工夫によるパワーアップが必要です。


   当センター「いじめメンタルヘルス労働者支援センター」ホームページ・ご相談はこちらから
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