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何で 「健康管理」 の 「気づき」 だけが法制化されるのか
2013/06/28(Fri)
 6月28日(金)

 6月21日、全国労働安全衛生センター連絡会議メンタルヘルス・ハラスメント対策局は、厚労省に労働安全衛生・労災補償について要請行動を行ないました。
 全国安全センターは、2月19日に要請行動を行ないました。しかし時間制限の中で充分な議論ができませんでした。今回は職場のパワハラ及び精神衛生問題に項目を絞り、前回の議論を踏まえて行ないました。

 職場のいじめ・パワハラ、メンタルヘルス対策は、せっかくの 「職場のパワーハラスメントの予防・解決に向けた提言」 が活かされていません。取り組む企業とそうでないところの温度差が大きく、強制力を持たないと主張する企業もあります。また中小企業やオーナー企業などでは事業主自らがパワハラの加害者だったりします。
 いじめに遭遇して都道府県労働局や労働基準監督署に相談に行っても法律がないと助言されたが諦めざるを得ないのかという相談もあります。
 このような問題について具体例をあげて、厚労省は 「提案」 発表後どのような研修を開催したか質問しました。

 厚労省は、労働紛争処理業務室や労基署の担当者を対象に 「提言」 の研修を実施したが周知徹底していないようならば徹底すると回答しました。
 労働大学で弁護士を講師に、問題が発生した時にどう対応するかの実務対応研修を行なったり、相談員には適切な対応ができるようロールプレーでの訓練などをしたとのことです。


 「提言」 を積極的に生かすためにもパワーハラスメントを予防するためのガイドラインを作成することを要請しました。

 厚労省としては、今、ガイドライン作成は検討していないが、企業の取り組みの好事例集を作成する予定で、それを活用して取り組んでいない企業にアピールするということでした。取り組みをしなければならない気分作りをするということです。


 「職場のパワーハラスメント対策法」 (仮称) 制定に向けた検討を行うことを要請しました。

 「してはいけない法律」 を作ると何がパワハラかの議論にもどり、「うちには関係ない」 ということになってしまうので、まずは 「提言」 に取り組んでもらうことを目指すとのことでした。

 しかしすでに 「うちには関係ない」 と表明する「労」使がかなりいます。


 職場のパワハラが原因で精神疾患に罹患し、休職に追い込まれている労働者に対して 「提言」 を生かした 「復職の手引き」 の改訂を要請しました。
 例えば、休職の原因で復職対策は違ってきます。①長時間労働、②過重労働 (責任)、③人間関係、④適性配置違反、⑤顧客、住民、モンスターペアレントからの攻撃のいずれかによって、それぞれ復職にむけた職場環境整備が違います。原因を取り除くための対応がなされなければ戻っても再発の危険性は大きくなります。
 また休職期間の長短によっても復職プログラムは違ってきます。

 「復職」 問題については、要請内容からの脱線もありましたが有意義な議論ができました。


 先日閉会した国会に、結局、職場のメンタルヘルス対策としていわゆる 「新たな枠組み」 を法制化しようとする 「労働安全衛生法改正 (案)」 (ストレスチェック義務化法案) は上程されませんでした。
 全国安全センターは一貫して 「新たな枠組み」 は 「患者の発見・選別・排除」 につながるという理由で反対してきました。
 労働者が健康を害さないためには、「作業環境管理」 「作業管理」 「健康管理」 の対策が必要ですが進めるには、順序が大切であると主張しました。
 具体的事実を指摘しました。2012年10月25日に平成23年 「労働安全衛生特別調査 (労働災害防止対策等重点調査)」 (新設) の調査結果が発表されました。概況の中の 【労働者調査】 に、メンタルチェックを 「自分で判断して受けなかった」 が10.9%あります。この数字は自分の意思をはっきり示した労働者で、本当は嫌だと思っている労働者はかなりいます。
 また3月25日に消防庁は全国からの東日本大震災に派遣された消防職員を対象とした調査結果 「大規模災害時等に係る惨事ストレス対策研究会報告書」 を発表しました。その中に 「チェックリストや問診には、正直に答えなかった 10.7%」 とあります。
 地元被災地消防職員を対象にした調査でも 「チェックリストや問診には、正直に答えなかった」 が3.9%です。職員は正直に回答したら何らかの不利益が生じると受け止めていることを物語っています。(2013年6月4日、6月7日の 「活動報告」 参照)
 これが多くの職場の実態です。だから対策は順序が大切なのです。

 厚労省は、メンタルヘルス対策は2000年3月31日付の 「労働者の心の健康の保持増進のための指針について」 に基づいて進めているが、そこでは 「作業環境管理」 「作業管理」 「健康管理」 を一体として総合的に取り組むことをうたっている、「新たな枠組み」 はそれに則した対策で、労働者本人に気づきを促し、患者の発見につながると説明しました。

 出席者からは総合的に取り組むということなら、何で 「健康管理」 の 「気づき」 だけが法制化されるのか、という質問がだされました。
 「新たな枠組み」 は 「作業環境管理」 「作業管理」 を放置して 「健康管理」 の自己責任を労働者に強制するものです。


 職場のメンタルヘルス対策に長時間労働の防止は不可欠です。しかし現在の労働法制には長時間労働を合法化する抜け道が用意されています。使用者が開催する研修会などでは 「時間外労働が100時間以上は安全配慮義務違反になる、それ以下なら大丈夫」 という指導が行われています。
 そこでまず、厚労省として事業場を無作為に抽出し、届けられている36協定と当該事業場の実労働時間数を比較する調査をして実態を掌握することを要請しました。
 そして今回、厚労省は全国1万社を対象に労働時間の実態調査を予定しているが、調査項目に管理職や裁量労働制の労働者など変形労働者についての実労働時間調査を入れること、調査結果発表は、正規・非正規を区分して行うことなどを要請しました。

 厚労省の担当者は、これまでも労働基準法を遵守していると回答しました。
 今回の実態調査は、事業主を対象にするのか、労働者を対象にするのかを質問すると事業主に対する訪問調査ということでした。派遣労働者やパート労働者も調査に含まれるということです

 しかしそれでは実態をつかめる回答が得られるか疑問が生じます。
 例えば、1か月間に80時間の時間外労働をした管理職について、きちんと時間外労働80時間の回答となるのか、管理職は時間管理をしないから時間外労働ゼロとなるのかと質問しましたが、わからないという回答でした。
 管理職や裁量労働の労働者は時間管理がきちんとなされていません。多くの場合、ゼロか少ない一定の時間数が設定されています。しかし平均労働時間を算出する時、そのような実態とかけ離れた時間数が総労働時間に加算されると総雇用者数で割り算をした平均労働時間は実態を反映しません。さらに、短時間労働者が区分されずに総労働時間数と雇用者総数に加算されたりするとますます実態からかけ離れます。

 具体的問題を指摘して質問を続けると担当者は突然不機嫌になりました。回答不能な質問をしていたわけではないのにです。
 厚労省にとって、労働時間の問題は鬼門のようです。

 後日に詳しく報告しますが、世界人権宣言に基づく社会権規約委員会は労働などの社会権を保障する条約の施行状況について定期的審査をします。今年4月30日に日本について審査をしました。
 日本政府は労働時間については労働基準法できちんと対処しているという内容の報告書を提出していました。
 これに対して過労死家族会や過労死弁護団などはカウンターレポートを提出し、さらに各国の審査委員とロビー外交を行いました。カウンターレポートには、2011年7月20日の 「活動報告」 で紹介した、大庄が経営する日本海庄の裁判に提出された資料などが盛り込まれていました。
 5月17日に社会権規約委員会は総括所見を発表しました。日本政府に対して 「多くの労働者が長時間労働に従事していることと、過労死や精神的なハラスメント (嫌がらせ) による自殺が職場で発生し続けていることを懸念する」 として立法措置を含む新たな対策を講じるよう勧告しました。
 そして委員会は日本政府に、次回の定期報告書を2018年5月31日までに提出することを要請しました。

 日本の労働者と労働組合は、過労死家族会と過労死弁護団の奮闘によって、政府に長時間労働解消にむけた取り組みをさせるチャンスをもらいました。
 今後、政府と経営団体は、労働時間管理をうやむやにする法律の改訂や制定を目論んでくることが予想されます。
 労働者と藤堂組合は政府がごまかしの報告書を作成することに加担するか長時間労働解消に向けた取り組みに参加して改善させた実態を報告させるか。労働者と労働組合に課題が提起されました。


 精神障害の労災についての実態報告についても事前に提出して要望書には盛り込んでいました。
 要請行動は、ちょうど厚労省が報道関係者に 「平成23年度 脳・心臓疾患および精神障害などの労災補償状況まとめ」 を発表した直後でした。そこでついでに報告書の内容や報告書から漏れていることについて質疑応答も行うことができました。
 精神障害で労災認定されて長期療養している被災者の後遺障害認定の実態についての認定件数や等級の集計について公表を要請していました。集計されていないので公表できないとのことですが統計資料をもらいました。


 おそらく、厚労省に労働安全衛生・労災補償に関する総合的な課題で要請行動を行っているのは全国安全センターだけだと思われます。
 労働安全衛生問題について、日常的活動のなかで直面している問題、労働現場の実態を集約して報告し、改善を要望していくことはますます重要性を増しています。 
 

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ぼくは、へいわなときにうまれてよかったよ
2013/06/25(Tue)
 6月25日(火)

 6月23日は 「沖縄慰霊の日」 でした。日曜ですので家でテレビニュースを注視していました。
 「沖縄慰霊の日」 は組織的沖縄戦が終わった日です。しかし20万人以上の亡くなった方たちの名前が刻まれた 「平和の礎」 の隣で開催された式典で、政府関係者は普天間基地の辺野古移転を語っています。沖縄の人たちを愚弄する行為以外の何ものでもありません。
 同じ式典で、テレビには映りませんでしたが、小学1年生が詩を朗読しました。

    へいわって すてき

   へいわってなにかな。
   ぼくは、かんがえたよ。
   おともだちとなかよし。
   かぞくが、げんき。
   えがおであそぶ。
   ねこがわらう。
   おなかがいっぱい。
   やぎがのんびりあるいてる。
   けんかしてもすぐなかなおり。
   ちょうめいそうがたくさんはえ、
   よなぐにうまが、ヒヒーンとなく、
   みなとには、フェリーがとまっていて、
   うみには、かめやかじきがおよいでいる。
   やさしいこころがにじになる。

   「ドドーン、ドカーン」
   ばくだんがおちてくるこわいおと。
   おなかがすいて、くるしむこども。
   かぞくがしんでしまってなくひとたち。

   ああ、ぼくは、へいわなときにうまれてよかったよ。
   へいわなかぞく、
   へいわながっこう、
   へいわなよなぐにじま、
   へいわなおきなわ、
   へいわなせかい、
   へいわってすてきだね。

      沖縄県与那国町立久部良小学校 1年  安里 有生

 本当は平和な沖縄とは言えないけれど、曾祖父母、祖父母などから聞く辛苦と比べたらまだましだと思えたのでしょうか。


 今年で 「沖縄復帰」 から41年を迎えました。
 「復帰」 は沖縄が平和憲法のもとで暮らせることを保障することにはなりませんでした。米軍基地は強化されました。
 テレビを見ながら海勢頭豊の 「喜瀬武原 (きせんばる)」 の歌が浮かんできました。

   「喜瀬武原」

   喜瀬武原 陽は落ちて 月が昇る頃
   君はどこにいるのか 姿もみせず
   風が泣いている 山が泣いている
   皆が泣いている 母が泣いている

   喜瀬武原 水清き 花のふるさと
   嵐がやってくる 夜明けにやってくる
   風が呼んでいる 山が呼んでいる
   皆が呼んでいる 母が呼んでいる

   *闘い疲れて ふるさとの山に
    君はどこにいるのか 姿もみせず

   喜瀬武原 空高く のろしよ燃え上がれ
   平和の祈りこめて のろしよ燃え上がれ
   歌が聞こえるよ はるかな喜瀬武原
   皆の歌声は はるかな喜瀬武原

   *闘い疲れて家路をたどりゃ
    友の歌声が心に残る

 喜瀬武原は沖縄本島中部の西海岸に面している恩納村内の集落です。
 恩納村と東海岸の金武町を結んで谷間を県道104号線が走っています。
 「復帰」 後の73年3月30日から、米軍はこの県道104号線を封鎖して北側のキャンプハンセンから南側の金武岳、ブート岳に向かって155ミリ砲の実弾演習を開始しました。演習の時は一帯が立ち入り禁止になります。
 地元住民は着弾地点の山に立て籠って反対運動を展開して中止に追い込みました。しかし人影が見えても演習が続けられることもありました。
 地元の報道陣も立て籠りに加わってフィルムを回しました。そのフィルムが映画に編集されました。タイヤを燃やして狼煙をあげ、飯盒で作ったインスタントラーメンとコンビーフの食事をとり、肩を組んで歌をうたってお互いを励まし合いながら死を覚悟して長期戦を闘いぬきました。
 これに対して日本政府は反対運動を排除するために 「日米安保条約に基づく刑事特措法」 を制定しました。

 しかし住民は闘いを止めません。
 1975年9月、原水禁に結集する支援者が山に入りました。特措法違反ということで逮捕され、起訴されます。その裁判支援のために作られたのが 「喜瀬武原」 の歌です。
 歌詞もメロディーも勇ましいものではありません。立て籠っている仲間や支援者を 「闘い疲れて」 と表現する闘いの歌はこれ以外知りません。しかし沖縄の人たちの心情を歌ったものとして歌い継がれています。

 この歌を初めて聞いたのは、貸切バスで沖縄を廻った時に 「平和バスガイド」 の方が歌ってくれた時です。力強くありません。しかしズシーンと心にしみるものがあり、みな聞き入りました。海勢頭豊コンサートでは必ず歌われます。
 実際に県道104号線北側の丘に登って金武岳、ブート岳を見ると山が大きく傷ついています。山が泣いています。

 しかし米軍にとっては反対運動だけでなく、演習場が狭いという問題を抱えていました。解決策として実弾演習場は、北海道千歳、矢臼別、宮城県王城寺が原、岩手県岩手山、富士演習場、大分県日出台の自衛隊基地に移っていきました。米軍はだまって撤退しません。


 「平和バスガイド」 は、80年代初めころから登場します。
 それまでバス会社の貸切バスで観光案内するバスガイドは、会社が作成したマニュアルに沿って戦争の悲惨さを語り、亡くなった兵士も住民も 「お国のため」 の犠牲者という内容を語りました。しかし違和感を覚え始めます。バスガイドたちは自分たちで沖縄の歴史の勉強を始め、その内容でガイドを始めまます。会社や観光客からの抵抗もありましたが逆に 「平和バスガイド」 を指名する客も増えていきました。

 80年代半ばに沖縄に行った時、那覇空港で待っていたのは 「平和バスガイド」 でした。
 発車すると 「みなさま、本日はご利用くださいましてありがとうございます。」 ここまでは普通の挨拶です。「本日、皆様をご案内するのは運転手が私鉄総連〇〇支部観光課分会書記長△△、車掌は青婦部の××です。」 と続きました。胸にPLUのバッジをつけています。度肝を抜かれました。
 ちょうど組合バッジを着けて就労していた国労組合員が処分されていた頃です。
 ガイドの内容は、隠されていた歴史も含めて真実に基づいて 「偏向」 していました。
 バスは南部のアブチラガマ (糸数壕) に着きました。住民が避難していたガマに軍隊がなだれ込んで一番安全なところを確保しました。その後には野戦病院にもなりました。
 今、アブチラガマは修学旅行のコースにも組み入れられています。
 当時は調査段階で、長靴に履き替え、汚れてもいいように着替えて縦穴をもぐって中に入っていきました。真っ暗闇を各自が懐中電灯を照らして進みますが、気を付けてみると人骨が散在していました。
 この頃からガマの調査が本格化していきます。


 4月16日の「活動日記」に書きましたが、沖縄戦が始まるまでは、首里から普天間まで真っ直ぐな街道が走っていて両側に3000本の琉球松が生い茂っていました。沖縄戦で一番の激戦だった嘉数高地の戦闘で街道が廃墟になると、そこに米軍は普天間飛行場を建設します。朝鮮戦争で重要性が認識され、強化されていきます。基地建設で追い出された住民はその周囲に住居を建てていきました。
 普天間基地撤去の運動が強まり、そして基地機能を果すには手狭になったということでの移設計画が辺野古基地建設です。基地機能の拡大強化、機能集中化です。
 やはり米軍は黙って撤退しません。


 今、沖縄の人たちは、革新と呼ばれる人たち以上に保守と呼ばれる人たちの方が沖縄の米軍基地反対の姿勢が頑固です。
 沖縄の人たちが沖縄戦についての掘り起こしを本格的に始めたのは 「復帰」 後に 「復帰」 の捉え返しをする中からです。沖縄戦を体験した人たちが閉ざしていた口を開き始めました。
 今、普天間基地の辺野古移設問題は、戦後の米軍支配と安保体制の捉え返しの中からが語られているように思われます。なぜこれ以上本土の犠牲にならなければならないのか、いつまで続くのかという思いに駆られています。
 騙されてきたました。しかしもう騙されないという決意が湧いていました。「疲れて」 も闘いを続けます。


 続けて4月16日の 「活動日記」 からです。
 20年前、恩納村に米軍が都市型戦闘訓練施設が建設されようとした時、喜瀬武原区民と安富祖区民は村ぐるみで反対運動を展開しました。
 現地を訪れた時、村民の思いが団結小屋のむしろに墨で大書きして吊るしてありました。

   山は心のささえ
   山死なば 村も死す
   山死なば 我が身諸共
   我が身死すとも 山守れ
   我心の富士 恩納岳
   山青き 水清き
   心のふるさと 恩納岳
   見殺すな 恩納岳
   戦世の思い 忘れるな
   山死して 国栄え
   山死して 村滅ぶ
   許すまじ 国の横暴

 この思いは今の辺野古の人たち、沖縄の人たちのものでもあります。
 
 辺野古基地建設反対の意思表示は、次世代に禍根を残すことなく、「ぼくは、へいわなときにうまれてよかったよ」 といわれる島をつくっていくための闘いです。  


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日本野球機構の体質は特異か
2013/06/21(Fri)
 6月21日(金)

 6月11日、日本野球機構 (NPB) と労働組合日本プロ野球選手会の事務折衝が行われました。その席で選手会側は 「統一球が昨年より明らかに飛んでいる」 と指摘し、日本野球機構は “微調整を加えていた” 事実を認めました。その後日本野球機構は記者会見をして事実を公表しました。
 ペナントレースが始まってから3か月経っています。

 日本野球機構は選手のことを何も考えていません。バカにしています。
 もし、今年から飛ぶボールに変更されるとわかっていたら、昨年限りでユニフォームを脱ぐことを決意しなかった選手がいたかもしれません。
 シーズンに入ってからは、投手陣に野手陣が不満・不信を抱き、チームワークに不協和音が生じたという事態があったかもしれません。
 日本野球機構は、野球からチームワークを奪いました。


 事件を労働問題として検討してみます。
 プロ野球選手は年俸制です。
 年俸制は6つの型がありますが、プロ野球選手に運用されているのは 「単一確定型」 と呼ばれます。シーズンオフになると球団はそのシーズンの選手の業績査定をして契約解除を通告したり、翌年の年俸を提示して交渉し、翌年度の年俸額を合意決定します。「単一確定型」 は、その年については球団の業績が悪くなっても、選手の実績が奮わなくても途中で変更されることはありません。
 査定は厳しく、選手の主張が受け入れられずに交渉が年を越したということもニュースになったりします。それくらいシビアなものです。ハイリスク・ハイリターンの職業です。
 交渉では球団の期待と選手の決意で来季の目標設定を課せられます。

 日本野球機構と球団による秘密裡の飛ぶボールへの変更は、投手に目標達成の可能性が小さくなったにもかかわらず、同じ目標を維持させていたということです。
 これまでと同じ調整をしながら抑えることができない焦りからコンディションを崩した投手がいるかもしれません。自分の力量に自信を失ってしまっている投手がいるかもしれません。
 今回の事件は、日本野球機構と球団は選手を大事にしないということを明らかにしました。
 プロ野球選手会と各選手は今年のシーズンオフの交渉に、投手の年俸については1人のダウンも認めないことを意思一致して臨む必要があります。

 かつて、ヤクルトスワローズに小山田健一という 「名ブルペン捕手」 がいました。
 投手の性格を掌握してボールをうけ、コンディション調整を補助します。
 松岡弘投手が先発の日、スピードが落ちている時はミットを広げてわざとバシッという音をたててスピードがあるように見せかけます。ボールが走っていない時はミットをしぼめてドスッという音を作ります。コントロールが定まっていない時は動作をすこし速めて正面で捕ったように見せかけます。そのような “演出” をして、調子がいいと自信を持たせてマウンドに送り出しました。そのためにはミットの手入れを怠りませんでした。
 そうすると松岡投手は打者に攻撃的に立ち向かうことができます。
 投手は、自信を持てば攻撃的に立ち向かえます。少しでも迷いがあったならプロの打者は見逃しません。
 もちろん、ブルペン捕手は監督、正捕手にブルペンでの調子を分析して正確に伝える役割を持っています。野球はレギュラーだけでないチームワークのゲームです。

 逆に飛ぶボールは野手の打撃成績が眉唾であることを明らかにしました。
 年間試合数が増えた中でのホームランやヒットの年間数などの記録を騒ぎ立てることは、それだけでも過去に記録を作った選手に対する冒とくです。
 今回の事件は野球の歴史に泥を塗りました。


 球団と選手は雇用契約を結んでいます。シーズン前の目標設定を踏まえて業績を査定し、翌年の目標設定をして更新します。契約はお互いに対等な立場で結ぶのは前提です。
 糾弾は、業績に対する査定は、評価基準に基づいて公正に遂行する責務を負います。年俸ダウンや期待したアップ幅が小さいことの説明責任は球団にあり、選手を納得させなければなりません。使用者に自由裁量権はありません。
 公正な評価をおこなう条件として公平な条件・基準の透明性が必要です。
 目標設定は、評価項目と基準を明確にし、労使対等な立場で行われた協議に基づく合意によって決定されます。一方的な設定は違反となり無効です。

 そのための法的根拠は 「信義誠実の原則」 です。
 民法第1条②は 「権利ノ行使及ヒ義務ノ履行ハ信義ニ従ヒ誠実ニ之ヲ為スコトヲ要ス」 と謳っています。また、民法第90条は 「公ノ秩序又ハ善良ノ風俗ニ反スル項目ヲ目的トスル法律行為ハ無効トス」 と謳っています。

 労働条件・基準の変更は事前提示と合意が必要です。成果主義賃金制度を運用する時の鉄則です。
 労使関係を改めて確認して見ます。
 労働基準法第15条は 「使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間、その他の労働条件を明示しなければならない」 と規定しています。
 また労働基準法第89条は、就業規則に盛り込む項目としての 「賃金」 について 「二、賃金の決定、計算及び支払の方法、賃金の締め切り及び支払の時期の決定並びに昇給に関する事項」 と規定しています。
 査定は賃金を決定する先行手続です。ですから賃金にリンクする評価規定は就業規則の一部です。評価規定の採用・運用については労使で協議、決定し、労働条件として就業規則に明示されなければなりません。
 飛ぶボールの採用は労働条件の変更です。
 アンフェアーはスポーツ界に一番あってはならないことです。しかもおかしいと指摘されて追認するという行為は使用者として失格です。結果として 「努力しても報われない」 者が出現する一方 「努力しなくても報われる」 者が登場してします。
 しかし日本野球機構はそのような認識を持っていません。興業成績しか考えていません。野球でメシを食っている選手の生活をかえりみません。

 今回の事件を、プロ野球選手会は指摘しましたが監督は黙認していました。選手は不信感を持ちます。管理職として失格です。
 プロ野球選手会の存在と役割はますます大きくなっていきます。

 さらにミズノ社は日本野球機構の隠蔽に加担していました。「よいスポーツ品とスポーツ振興を通じて社会に貢献する」 の経営理念を掲げるミズノはスポーツからフェアプレー精神を捨て去ることに加担したのです。


 ホームランが増えて面白くなったという捉えるファンもいます。
 しかし不公平を押し通して選手生命を奪う権利は誰にもありません。選手あってのプロ野球です。

 今回の飛ぶボール事件を、それぞれの職場の労使関係、労働条件と照らし合わせて捉えると日本社会が抱える体質が改めてクローズアップしてきます。見過ごしていると労働者の権利が奪われていきます。
 
  
   
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「それぞれの人生劇場の幕を勝手に降ろさないでほしかった」
2013/06/18(Tue)
 6月18日 (火)

 6月初め、福島県飯館村を20人で訪問しました。
 飯館村は福島第一原発から西北方向に直線距離で30キロメートルから50キロに位置します。
 放射能汚染の避難指示地域は福島第一原発から北西方向に幅広く延びています。帰還困難区域の先に居住制限区域があり、その周囲に避難指示解除準備区域があります。飯館村は、一部が帰還困難区域でそれ以外は居住制限区域になっています。
 南東は浪江町、東は南相馬市、西は川俣町、西北は伊達市、北は相馬市に囲まれています。
 阿武隈山地の一角を占める山あり、里ありの自然に恵まれた村でした。2010年9月には 「日本で最も美しい村」 に選ばれましたが半年後に立ち入り禁止区域になってしまいました。

 マイクロバスで村内を巡りました。通行人はいません。本当のたまに車とすれ違います。
 一戸建ての大きな家が点在しています。立派に建て替えて間もない家もあります。豊かな村だったことを物語ります。
 下調べの資料では、6月頃は田植えが終わり、水をはった水田で苗が育っています。水面が陽に反射しています。カエルの合唱がうるさい季節です。しかし田んぼには雑草が高く伸びて荒れています。田んぼだったと気が付かなければ “緑ゆたか” な草原です。しかし草原だらけは人が営みを続けてきた村の姿としては異常です。
 畑もまた雑草です。背丈の半分ぐらいまで伸びています。
 田植えが終わると村民は蕨などの山菜取りをしました。きのこも採りました。村内には 「蕨平」 の地名もあります。しかし山菜もきのこも採ることができません。放置が続くと山は荒れていきます。
 
 車窓からキツネが探索している姿が見えました。聞くと狸も熊も出るといいます。昨今は山に食料が減ったということで人里に出没するようになったと言われますが、人里にも食料がありません。
 所どころに、除染作業で除去した土壌を詰めた黒いビニール袋が大量に山積みになっているところがあります。仮置き場です。その先の処分方法は決まっていません。


 20人は、福島原発が爆発するまで飯館村に住んでいた10世帯30人が、2012年5月23日、東京地裁に東京電力を相手に慰謝料を請求して起こした裁判を支援している人たちです。
 裁判では、現在1人につき月10万円支払われている手当を30万円に引き上げて事故日に遡って支払えと要求しています。金額の問題だけではなく、東電の姿勢を問うと同時に原発の廃止を要求しています。
 現在は他にも数件の原発事故被害者訴訟が起こされていますが、東電を相手にした裁判の最初のものです。

 原告である市澤秀耕さん・美由紀さん夫妻は、最近、村の歴史と自分史を合わせてた本 『椏久里の記録』 (言叢社) を出版しました。
 そのなかからうかがわれるのは、原発の危険性だけではなく、爆発した後の情報伝達、避難指示に翻弄されたことへの怒りです。飯館村が 「計画的避難区域」 に発令されたのは4月11日です。東電や政府、村は事故を過小評価して、危険性を隠そうとしました。不信は消えません。住民をどう捉えていたかという基本的な問題です。

 その姿勢は今も続いています。
 村は放射能の測定器を配布しています。原告の1人の方のお宅で測定しました。参加者が持参した測定器と数値を比べると2割引きで表示されました。
 配布された測定器はみなそのような数値を示すと公然と言われているようです。しかし村はそれをもとに帰村を訴えています。
 バスの中や、下車した個所で放射線量を計りましたが、草むらなどはかなりの高い数値を示しました。
 除染作業は効果があるのかという話題になりました。あまりあがっていません。そのための予算は他の対策に回した方がいいという意見が多く出ています。地元住民の雇用対策だとも説明されていますが、その総元締めは大手建設会社で、作業従事者に支払われる賃金は知れたものです。


 『椏久里の記録』 でも触れられていますが、阿武隈山地は、終戦後に満州から引き上げてきた人たちが開墾した地域もあります。苦労を重ねて安住の地を築き上げてきました。
 出稼ぎをしなくてもよくなり、Iターン、Uターン組も増えて村おこしも軌道にのっていました。

 3月8日の 「活動報告」 で、満州から浪江町に入植した人たちを取り上げた 『河北新報』 の連載 「再び流民となりて 旧満州移民と原発避難」 を紹介しました。生まれ育った故郷を追われ、敗戦で満州を追われ、原発で避難を強制された人たちの現在の状況を取り上げています。国策によって3度生活の地・糧を奪われました。


 原告の1人である岡本易さんの第1回裁判での意見陳述です。
 「…… 『「飯館村」 ―6000人が美しい村を追われた―』 の著者・小澤祥司さんは、そのあとがきで次のように書いています。『人はそれぞれの物語がある。ささやかな生活があり、積み重ねてきたものがあり、夢がある。原発周囲――警戒区域や計画的避難地域など高濃度に汚染された地域――に暮らしていた人びとも当然だろう。原発事故はそれらをぶち壊し、台無しにした』
 私は言いたい それぞれの人生劇場の幕を勝手に降ろさないでほしかった・・と。

 虫一匹、魚一匹の命を大切にしようという時代に、東京電力は安全神話をでっち上げ、10数人もの罪なき人びとを死に追いやり、16万人にも及ぶ人たちに直接被害を与えておいて、『お被害者のみなさま』 などとおかしな日本語で、交通事故以下の損害賠償で 『お支払しますからどうぞ!』 といわんばかりの姿勢。“公正かつ迅速” にとは言っていますが、少しも “公正” ではありません。事故から1年余りもたっているのに、その姿勢は未だに改まっていません。頻発する地震があるたびに、未だ手つかずの福島第一原発4号機の使用済み燃料が気になります。ヒロシマ型原発の2000倍以上の破壊力があるそうです。住環境の悪いところで、先の見えない生活を強いられているだけで十分だというのに、このような不安を押し付けられている状態を、どうしたら理解してもらえるでしょうか!賠償責任を認めるとのことですから、被害者の立場に立った真の意味での “公正・妥当かつ迅速” な対応を望みます。」

 飯館村を離れて福島市で買った 「おーいお茶」 の俳句大賞作品に

  小石ひとつ 故郷の野に 置いてくる

 を発見しました。


 この地方の民謡に 『相馬盆歌』 があります。

   ハアアー イヨー 今年ゃ豊年だよ
   (ハアコーリャコリャ)
   穂に穂が 咲いてヨー (コラショー)
   ハアー 道の小草にも
   ヤレサー 米がなるヨー
   (ハアヨーイヨーイ ヨーイトナ)

 催し物があると必ず歌われ、踊りが添えられました。今も各地の盆踊りで流れています。
 歌詞のような村でした。
 もう1つ 『新相馬節』 があります。

   ハアー…アア…
   はるか彼方は 相馬の空かヨ
   ナンダコラヨート
   (ハア チョイチョイ)
   相馬こいしやぁ 懐かしやぁ
   ナンダコラヨート

 望郷の歌です。村民は歌詞のような生活を強制されています。

 布施明は支援のコンサートで 『新相馬節』 をアカペラで熱唱しました。Yue TuBeで聴くことができます。 
 

    当センター「いじめ・メンタルヘルス労働者支援センター」のホームページ・ご相談はこちらから
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個別労働紛争解決制度――低い解決率
2013/06/14(Fri)
 6月14日(金)

 5月31日、厚労省は 「平成24年度個別労働紛争解決制度施行状況」 を発表しました。
 「概況」 からです。
 総合労働相談件数106万7,210件 (前年度比3.8%減) で、そのうち民事上の個別労働紛争相談件数が25万4,719件 (同0.6%減)、助言・指導申出件数10,363件 (同8.1%増)、あっせん申請件数6,047件 (同7.1%減)です。
 総合労働相談件数は、5年連続で100万件を超えています。民事上の個別労働紛争に係る相談件数は、高止まりです。助言・指導申出件数は制度施行以来増加傾向にあり、初めて1万件を超えて過去最多です。
 『いじめ・嫌がらせ』 に関する相談は、増加傾向にあり、51,670件。民事上の個別労働紛争相談の中で最も多かったという結果です。
 助言・指導は1カ月以内に97.4%、あっせんは2カ月以内に93.8%を処理しています。


 総合労働相談件数はリーマンショック (2008年9月) 直後の21年度をピーク (1,141,006件) に減少を続けています。
 相談件数が減少するのは、好景気の時と、景気悪化が続く時の2つの場合があります。
 今回は、景気悪化が続き、正規労働者が減って非正規労働者が増えているからだと思われます。経済的基盤が弱い非正規労働者はトラブルに遭遇しても争うゆとりがありません。すぐに次の就職先を探します。
 このことは、助言・指導申出件数は増加、あっせん申請件数が減少していることによっても裏付けられます。

 21年度と24年度を比較してみます。
 相談内容の比率が大きく減少しているのが 『解雇』 で24.5%から16.9になっています。10年前から減少傾向にあります。逆に 『自己都合退職』 が5.9%から9.8%に上昇しています。ここ4年間は上昇しています。
 21年度は、民事上の個別労働紛争に係る相談件数の内訳で他年度と比べて 『雇止め』、『退職勧奨』 の比率が高くなっています。『いじめ嫌がらせ』 はこの年度から増え続けています。
 このことをどう分析したらいいでしょうか。雇用は安定に向かっているわけではありません。経営者が 「賢くなった」 ということです。
 雇用契約の解約を直接通知するのではなく、騙して退職届を書かせる、脅したりすかしたりして退職を迫るということです。その手段として 『いじめ嫌がらせ』 が行われています。

 相談内容の 『その他の労働条件』 の比率が21年度の9.8%から12.4%に上昇しています。
 日々の相談活動では雇用契約書を取り交わしていない相談者がかなりいます。そのなかで突然解雇でもない、退職勧奨でもない雇用契約の解約・期限終了を通告されます。おそらくこのような相談が含まれていると思われます。
 どうしてきちんと契約書を取り交わしていなかったのかと質問しても、そもそも力関係が違い、使用者を信用したり、やっと働くことができたという安心感から後回しにして忘れてしまったりします。(ハローワークや就職あっせん会社にも問題があります)
 これを裏付ける数値として、就労形態別 (雇用形態別) の相談件数において 「その他・不明」 が相談件数も割合も増加しています。

 今、使用者側は 「解雇規制の緩和」 を推し進めようとしています。騙す手法から 「合法的」 に解雇しようとしています。


 内訳の中で 『いじめ・嫌がらせ』 は、21年度の35,759件 (12.7%) から、22年度39,405件 (13.9%)、23年度45,939件 (15.1%)、24年度51,670件 (17.0) と急増しています。
 相談内容は、社会的問題になった事項については多くなります。
 今回いじめが増えたのは、大津いじめ事件などの報道でいじめにあった時は泣き寝入りをしないで早めにどこかに相談するということが周知された、厚労省の 『提言』、「職場のパワハラ」 の概念規定、その広報などで労働者が主張しやすくなった (=潜在的な問題が顕在化した)、厚労省の 「職場のパワハラ」 の概念規定はこれまでのパワハラの概念を拡げた (個人の問題から構造的問題に) などによります。
 この件数を詳細に分析して対策に役立てることが必要です。


 総合労働相談件数の就労形態別件数は発表されていません。
 助言・指導申出件数については就労形態別が発表されていますが正規労働者は緩やかに減少しています。この間の非正規労働者の増加状況を反映しています。
 就労形態別についてもう少し詳しく見ると、派遣労働者は20年度までは増加していましたが21年度は激減します。(9.6% → 4.5%) 20年年末に年越し派遣村が開設され、いわゆる派遣切りが社会問題になりました。それに代わるように期間契約社員は15年度の8.8%から増加を続け、24年度には16.2%になっています。
 あっせん申請件数の推移にも同じ傾向があります。使用者の雇用政策の転換です。

 助言・指導申出件数は前年度と比較して件数が増加していますが、あっせん申請は20年度をピークに激減を続けています。(8,457件 → 6,047件)
 あっせんの申請を平成24年度内に処理したものは6,059件です。そのうち合意が成立したものは2,272件 (37.5%) です。申請人の都合により取り下げられたものは363件 (6.0%)、あっせんが打ち切られたものは3,403件 (56.2%) です。打ち切られた3,403件のうち、紛争当事者の一方が不参加であったものは2,383件 (39.3%) です。
 発表データに記載はありませんが、申請人の都合により取り下げられた理由は、あきらめ、使用者と対峙する恐怖、次の就職先が見つかった場合などが推測できます。紛争当事者の一方が不参加は使用者側も労働者側もありますが労働者の側の理由も同じです。
 解決率がかなり低いと受け取らざるを得ません。そうすると労働者は期待を抱くことができず、今後も件数の減少し続きます。

 ではどのような改善策が必要でしょうか。都道府県労働局長は、助言・指導申出でもあっせん申請でも使用者が提示する契約内容、就業規則、職場環境に問題があると判断したら、労働者が諦めたり、取り下げたりしても、労働者個人の問題と捉えないで労働基準監督署等と連携して是正を指導するような体制を作っていく必要があります。
 申請人の都合により取り下げや紛争当事者の一方が不参加をそのまま終了と処理すると、使用者は違法行為のやり得になります。


 東京都産業労働局は昨年10月29日に 「平成24年度上半期の労働相談状況について」 を発表しています。東京都では、都内6か所の労働相談情報センターで労働問題の相談に応じています。
 その概要だけ紹介します。
 平成24年度上半期 (4~9月) の労働相談の特徴です。
 ・相談件数は、引き続き高い水準
  相談件数は、27,041件で前年度同期 (26,032件) より3.9%の増加となった。引き続き高い水準と
  なっている。
 ・相談項目のトップは 「退職」、以下 「解雇」 「職場の嫌がらせ」 と続く
  相談項目総数は、51,616項目 (1件の相談で複数項目にわたる相談があるため相談件数を上回
  る)。
  最多項目は、「退職」 が11.2%。以下、「解雇」 9.7%、「職場の嫌がらせ」 7.6%の順。
  ※「解雇」は、使用者の一方的な意思による雇用契約の終了であり、「退職」 は、使用者からの働きか
   け (勧奨や強要) も多いが、労使合意に基づき雇用契約を終了するものである。
  相談項目数でみると 「職場の嫌がらせ」 が、前年度同期比で21.5%増と大幅に増加した。
  上半期のメンタルヘルス不調者に係る相談件数が、前年度同期比で25.5%増と大幅に増加した。相
  談項目数をみると、「職場の嫌がらせ」 が最多となっている。

 やはり 「職場の嫌がらせ」 は増加している傾向にあります。

 もう1つ、東京都産業労働局の「平成23年度の労働相談状況」から年間あっせん件数及び解決率を紹介します。
あっせんとは「労働相談情報センターが行っている「あっせん」は、労働問題をめぐる労使間のトラブルに係る労働相談を受ける中で、労使だけでは自主的な解決が難しい問題について、労使からの調整してほしいとの要請を東京都が受けた場合に、労働相談情報センターが第三者としての立場で労使間の自主的な解決に向けて手助けを行うことをいい、労働関係調整法に基づき労働委員会が行う「斡旋」とは異なるものである。」です。
 労働相談のうち 「あっせん」 に移行したものは、602件 (前年度比5.8%減) で、そのうち 「あっせん」 により紛争当事者間の合意ができたのは、404件 (解決率67.1%) です。
 ここ数年あっせん件数は減少傾向にありますが解決率は60%後半から70%全般を維持しています。

 個別労働紛争解決制度における合意が成立した割合が東京都の2分の1の37.5%では低すぎます。
 制度改革とともに創意と工夫によるパワーアップが必要です。


   当センター「いじめメンタルヘルス労働者支援センター」ホームページ・ご相談はこちらから
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