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間接的退職強要は手を変え品を変えて
2013/01/29(Tue)
 1月29日(火)

 TBS系列テレビで木曜日夜9時から成田空港で働くJALパック社員を取り上げたドラマ 『あぽやん ~ 走る国際空港』 が始まりました。
 「感情労働」 を最初に取り上げたアメリカの社会学者アーリー・ホックシールドの著書 『管理される心』 は航空会社の乗務員の心理状態の調査をもとに書かれました。ドラマの舞台である地上職員もまさに感情労働に曝されています。搭乗客だけでなく親会社の日本航空社員からや社内の人間関係もあります。(「感情労働」 については、「ホームページ」 → 「こころのケア」 → 「感情労働」 を参照)

 JALパックは、日本航空が国土交通省の 「指導」 で人員削減、退職金減額などが進められていた時、同じく人員削減が進められました。
 方法は、まず管理職をピックアップして退職勧奨をおこないました。応じないと人事部付にされ、就職あっせん会社に出向して自分の再就職先を探すという業務命令が出されました。再就職先では以前の賃金分は保障するという条件です。しかし確約の履行は国交省次第ということでした。
 就職あっせん会社も再就職先も関連会社ではありません。出向規定が拡大解釈されました。しかしあっせん会社への出向を含めて、賃金が下がらない中では具体的不利益は存在しないことになり、「違法ではない」 ということになります。会社は解雇を回避し、雇用を継続する手段だと主張しました。
 このような手段は以前にJALで行われていたということです。

 大手企業は共同出資で就職あっせん会社を設立しています。
 そこにリストラ対象の労働者を業務命令で3か月間とか6か月間送りこみ、再就職のセミナーを受講させて再就職先を斡旋するという手法をかなり前からとっています。乱暴な解雇をしてトラブルになるよりは安くつくという算段です。
 そこの指導員の話術は凄いです。ほとんど全員を騙します。
 再就職はこれまでの会社を退職するということです。あっせん会社は再就職させたら任務終了です。
 騙されなかった人の体験談です。セミナーでも斡旋されても、「私は業務命令でここにきているだけですので再就職する気はありません。早く元に戻れるように会社と話をしてください」 と言い続けました。そうしたら、1か月過ぎた頃、「明日から来なくていいです」 と言われて元の職場に戻りました。

 逆に、就職あっせん会社の社員の話を聞きました。希望者が100%満足するような会社を見つけて斡旋したら2度と顧客として訪れません。満足いかずに2~3年ぐらいで転職を希望するような会社を斡旋するのが 「腕」 なのだそうです。双方満足したら求職者も求人もなくなります。就職あっせんはビジネスです。


 今、「追い出し部屋」 が問題になっています。
 1月9日、厚労省は実態把握に乗り出すと言いました。珍しいことです。調査対象には松下政経塾のスポンサーも含まれています。民主党政権時代はやりにくかったのでしょうか。それとも新政権による民主党と連合に対する遠慮ない対応のアピールなのでしょうか。

 「追い出し部屋」 を話題にすると、どこでも 「今さら」 という声が返ってきます。体調不良者を中心に昔からありました。100人単位で存在しているのが何社もあります。
 「追い出し部屋」 は会社と社内組合が共闘して維持されています。
 対象となった当該が社内組合に相談します。組合は 「違法ではない。気持ちの持ち方次第だ」 と回答します。そして翌日に会社から 「お前不満なのか。これからどうするんだ。まさか外に相談に行くようなことはないだろうな」 と脅されます。
 逆に、上司に相談すると、直後に組合から 「あなただけではないのだから。悪いようにはしないから」 と我慢することを説得されます。すでに 「悪いようにされている」 のにです。

 そのような労働者が社外の労働組合・ユニオンにたくさん相談に来ています。会社に交渉要求するとさらに 「追い出し部屋」 内 「追い出し部屋」 に隔離されたりして他者と接触できなくさせられます。
 当該や小さなユニオンがいくら社会に声を上げても問題にされませんでした。交渉で個別問題として解決に至らざるを得ないことが多くあります。
 闘いに疲れ切ったころ、新聞が取り上げました。遅いです。
 前回の「活動報告」に書きましたが、今回調査対象になっている会社で自殺者が出ているという情報があります。社内のトイレで発見されましたが、すぐに箝口令が布かれ、会社は突然死と発表したと言います。 
 対象になっている会社以外にも生命保険会社や銀行業界にあります。


 国労組合員と話をしたら、「元祖は国労組合員の人活センターだ」 と言われました。国労や支援団体が人権問題だと訴えても政府や国鉄は 「違法ではない」 と主張しました。法律は人権を守りません。廃止させたのは国労組合員の不屈の闘いです。
 国労の闘いを連合系の労働組合は支援しませんでした。「労働者の痛みを感じない労働組合」 の感性は今もそのままなのです。

 その後、ブリジストンの 「窓際族」 が社会問題になりました。50歳代後半の社員から業務を奪い、窓際に並べられた机に向かって、「私の将来」 のタイトルで作文を書かせる日が続きました。「会社に貢献したい」 と書いたら書き直しです。「趣味を生かして過ごしたい」 と書くと 「今直ぐ始めてはどうだ」 と勧められます。そのような状況が続く中で1人の管理職が社長室で抗議の割腹自殺を決行しました。
 そのあと 「窓際族」 は解消されました。
 しかし手を変え品を変えて間接的退職強要は続けられてきました。

 トナミ運送では、ヤミカルテルを公正取引委員会などに内部告発した労働者を 「教育研修所」 に異動させました。狭い個室に1人で隔離し、草むしりなどをさせました。その後、隔離はなくなりましたが約30年間、昇格はありませんでした。
 この事件の裁判判決は大きく取り上げられて有名になり、会社はイメージダウンになりました。
 地方の労働者から電話相談がありました。部長職でしたが経営者の機嫌を損なったら職務を外され、1日中工場内の草取りを命じられているといいます。近くに紹介できるユニオンがありません。労働局に相談するようアドバイスしました。(地方連合を紹介する気は起りませんでした)
 労働局に相談すると担当者はから 「何が問題ですか」 と言われたといいます。
 厚生労働省は12月12日、「職場のパワハラに関する実態調査報告書」 を公表しました。その中の 「精神的な攻撃」 の 「過小な要求」 の具体的例に 「草むしり (男性、50歳以上)」 があげられています。
 草むしりは、労働者を専門職から外してプライドを傷つけ、他の社員への見せしめにするための常套手段です。
 しかし日本で人権が侵害され、人格を傷つけられたことに対して改善を要求するのは本当に困難が伴います。

 数年前から、ある日突然、自宅待機命令を出されるという相談が続いています。期間は1か月間でも退職を了承するまで何度も更新されます。
 理由は後から作られます。評価は何とでもなります。業績評価が良いと行動評価が低いと説明、その逆だったりします。以前から顧客からのクレーム、経営者や他の社員が不満を募らせていて我慢できないと言って来ていたなどと説明されたりします。クレームは本人を含めてすぐに対応するのが人事部・上司の責務です。しないのは人事部等のリスク管理放棄、怠慢です。しかしまとめて通告してきます。理由が後から作られるからです。
 労働者にとって、突然の自己が否定されます。反論すると追い打ちで理由付が追加されます。何が起きているのかわけがわからないなかで人格が破壊され、反撃する気力も奪われていきます。
 評価は労働者の人格を直接的に否定します。評価する側は労働者を傷つける職務に慣れていきます。このような人間関係の中で日常的に職務を遂行しているのです。
 同じコンサルタント会社が顧客にアドバイスしたと言われています。


 以前、熊沢誠さんは 「人権は会社の門前で立ち止まる」 と言いました。
 「労働は商品ではない」。この 「フィラデルフィア宣言」 を踏まえ、労働法制は労働者の人権・人格、生活権を保障するものとして制定されました。しかし最近は商品以下の扱いです。労働組合員にとって、労働組合は役員の生活を保障する組織でしかありません。


 昨年3月15日、厚生労働省は 「職場のパワーハラスメントの予防・解決に向けた提言」 を発表、そのなかで「職場のパワーハラスメントとは、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいう。」 と概念規定しました。
 「追い出し部屋」 はまさしく 「職場のパワーハラスメント」 です。厚労省は提言を積極的に活用して 「職場のパワーハラスメント」 をなくす取り組みを強化する必要があります。
 そして 「提言」 を、通達や法律に作り変えて強制力を持つものにしていく必要があります。  

  
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自殺防止は 「社長、社員を安眠させていますか」 をスローガンに
2013/01/25(Fri)
 1月25日(金)

 1月17日、警察庁は2012年の自殺者数の速報値を発表しました。1998年から3万人を超え、「自殺者数3万人時代」 と言われていましたが、3年連続で減少し、3万人を切って27.766人です。男性が19.216人、女性が8.550です。
 「白書」 は毎年5月頃に発表されますが、この間の様々な取り組みの効果が出ていることは確かです。民間団体は、自殺者を水際で止めています。また自治体も取り組みを開始、対策窓口などを設置しています。

 自殺者の報告書の様式は警察庁で統一しています。傾向を探る目的もあるのでしょうが長年変更されていません。(2007年まで様式は未公表でした。2008年に国会での質問の積み重ねなどを経てやっと公表されました) そこでは労働者の実態は見えにくくなっています。被雇用者数ははっきりしても、失業して雇用保険が切れた労働者や未加入または雇用期間が短かくて雇用保険が適用されない失業者、個人事業主扱いの労働者は 「無職」 の数値に含まれます。
 このような 「無職」 の労働者は体調不良から経済問題が発生しています。


 これまで何度も紹介したことをまたまたします。
 2008年9月14日、第4回 「WHO世界自殺予防デー」 シンポジウムで 『自殺実態白書2008』 が発表され、その分析結果が報告されました。
 1人の自殺の背景には平均4つの 「危機要因」 があります。自殺は、ある要因が発生し、それがまた別の要因を引き起こし、要因が連鎖していきながらいわばプロセスで起きています。そのプロセスを 「危機経路」 と呼びます。
 例えば、被雇用者の事例としては
  ① 配置転換 → 過労 + 職場の人間関係 → うつ病 → 自殺
  ② 昇進 → 過労 → 仕事の失敗 → 職場の人間関係 → 自殺
  ③ 職場のいじめ → うつ病 → 自殺
 離職者(就労経験あり)の事例としては
  ① 体調疾患 → 休職 → 失業 → 生活苦 → 多重債務 → うつ病 → 自殺
  ② 帯保証債務 → 倒産 → 離婚の悩み + 将来生活への不安 → 自殺
  ③ 犯罪被害 (性的暴力) → 精神疾患 → 失業 + 失恋 → 自殺
などが挙げられています。
 この連鎖を断ち切ることが自殺対策になります。

 自殺者数は警察署ごとに発表されますが、2004年から2006年までの被雇用者の多い警察署をリストアップすると (警察署の規模、人口数は違うことを踏まえなければならないが)、1位が愛知・豊田、2位が山梨・富士吉田、3位が福岡・筑紫野、4位が北海道・苫小牧、5位が北海道・北、6位が神奈川・厚木……の順になっています。2位の山梨・富士吉田は富士山を管轄しています。
 この分析を首都大学東京の宮台教授が報告しました。特徴として①工業地帯 (隣接) が多い、②地方都市が多い、③製造業が多いなどがあげられました。そこの製造業の特徴は①国際的競争から長時間労働が多い、②24時間交代の深夜労働がある、③誘致してもらったという地域性は労働法規を守りにくくしている、④非正規労働者 (特に派遣労働者) が多い、⑤成果主義・ノルマに負われている、です。

 このシンポジウムは土曜日でしたが、翌日はかのリーマン・ブラザーズが倒産し、その後、世界的な不況に陥りました。
 せっかく自殺防止対策の方法が発見されたのですが、打ち消されてしまいました。そして派遣労働者が大量に解雇されていきました。秋葉原で派遣労働者による殺人事件も起きてしまいました。
 入学試験のシーズンです。合格に向けては 「わからなくなったら基本に戻る」 「大切なところは繰り返す」 「いつやるのか、今でしょう」 です。
 その後労働者への対策は進んでいません。入学試験なら、自ら不合格になっています。


 なぜこのことを繰り返して紹介するのかというと、大手電機メーカーの工場閉鎖、退職希望者募集と自殺者数の関連性が気になるからです。本工だけが問題にされていますが関連会社、下請会社、非正規労働者を含めたらかなりの労働者が解雇されています。2007年の分析結果のようなことが繰り返される危険性があります。
 昨今 「追い出し部屋」 で問題になっている (実際はかなり前から存在し続けています) メーカーで自殺者が出ているという情報があります。社内のトイレで発見されましたが、すぐに箝口令が布かれ、会社は突然死と発表したと言います。大手企業は隠す手法も持っています。
 このような数は自殺者数に含まれません。労働者の自殺者数は実際はもっと多いです。
 安倍政権は経済成長の後に雇用創出ができると言っています。命が後回しになっていいます。

 政府は自殺防止対策の検討会を開催しました。そのなかで 「スクリーニング」 が提案されました。そして 「おとうさん、眠れてますか」 のスローガンを盛り込んだポスターを作製しました。
 それを受けて厚労省は今、労働者の体調管理のために労働安全衛生法を改定して使用者にストレスチェックのスクリーニングを義務付けようとしています。家庭では家族がお父さんのチェックをします。使用者の過重労働防止などは免罪です。
 労働者が健康を害さないための措置は、「作業環境管理」 「作業管理」 「健康管理」 の順序でおこなう必要があり、「作業環境管理」 「作業管理」 を抜きにして 「健康管理」 はありえません。「健康管理」 だけの手法は、長時間労働の固定に利用され、体調不良の労働者の排除に繋がる危険性があります。
 お父さんが過労死などに至った時、家族はお父さんのチェックが不充分だったと責任転嫁されかねません。労働者のメンタルヘルス対策を促進させるきっかけになった 「電通過労死裁判」 の控訴審判決は、両親が一緒に生活していながら監視を怠ったという理由で一審判決の賠償額を減額したことがありました。

 政府の 「自殺総合対策大綱」 には、「社会的要因も踏まえ総合的に取り組む」 と書かれています。しかしこれはいいろんなところにも書かれていますが枕詞でしかありません。
 労働者の健康管理は自己責任でも家族の監視責任だけではありません。まずは使用者の責任です。
 対策を小手先だけで進めてもすぐに行き詰ります。
 「社長、社員を安眠させていますか」 をスローガンにする必要があります。

 2011年3月5日、NPO法人ライフリンクは 「いのち支えるシポジウムこれからの 『自殺対策』 の話をしよう」を開催しました。会場に展示された自死者の生きざまを語るパネルのタイトルは 「弱かったのは個人ではなく支える力でした」 でした。


 暗い話だけではストレスがたまりますので明るい話を。
 『日本社会精神医学会雑誌』 に慶応大学大学院の岡檀教授と山内慶太教授の論文 「自殺希少地域における自殺予防因子の探索――徳島県旧海部町の住民意識調査から」 が載りました。それを読んで現地を訪れた森川すいめいさんの報告 「自死の少ない町に――徳島県旧海部町を歩く」 がみすず書房の 『みすず』 2012年12月号に載っています。抜粋して紹介します。

 「その町で生まれた互助グループが、朋輩組だ。その組の最大の特徴は、排他性が少ないことだという。日本でもっとも自死の少ない町の仕組みは、おそらくこれにある。」 「話を聞いていく中で朋輩組には、3つの力が伸びる仕組みがあると感じた。3つの力とは①コミュニケーション能力、②情報集積力、③危機介入力である。」
 コミュニケーション能力とは、「独居の高齢者が、孤独死するのが問題だと片方で言い、もう片方では部屋以外の居場所を奪う。」 「『ベンチがあれば、自然と人が集まって、そこでコミュニケーションが勝手に育つのです』」 です。あちこちに座るところがあり、またどこにでも座って話をします。
 情報集積力とは、「知らないことは学び、わからないことは相談し、話し合っていく。援助力はこうしておのずと伸びていく。援助力が伸びると、仕事は楽しくなる。」 「知らないことを調べる力がついている。問題は課題へと置き換えられ、課題は解決するものだと知っていると、危機介入力がきわめて高くなるから、安心して人は悩むことが出きる。」 「この町の人は相談することに慣れている。」です。
 危機介入力とは、「コミュニケーション能力が高まる利点は明らかである。たとえば、お互いに仲違いするような誤解があったときには、ことばや行動によって誤解は解決されやすくなるし、調子の悪くなったときは、『調子が悪い』 と遠慮なく話せるようになる。この町の格言がある。『病は市に出せ』 こうして、何かあった時にすぐに助けられるようにもなっている。」 「この町は 『申し訳ない』 と思う人が少ないそうだ。」 「この町は、精神病院に入院しなくてもいいようになっていると言う。それは、個人を尊重することの繰り返しによって、ひとりひとりが自分のペースで生きられるからと思われた。」 です。

 どれも難しいことではありません。
 町を職場に言い換えることができる環境を作りたいものです。 

  
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「常識を 言ってるあなたが 非常識」
2013/01/22(Tue)
 1月22日(火)

 昨年末はいろんなことがありました。まだ昨年の話です。
 12月24日、文部科学省は 「2011年度 公立学校教職員の人事行政状況調査」 を発表しました。毎年、年末年始頃に発表されますが、24日は 「祝日」 です。文科省は 「祝日」 も勤務していたのでしょうか。報道解禁日だったのでしょうか。
 新聞報道は25日朝刊です。毎日新聞は1面右上に 「『心の病』 休職教員5.274人」 の5段見出しと社会面に関連記事を載せました。さすが労災問題にこだわっている新聞社です。一方、朝日新聞は社会面に 「定年後3割が再任用」 の2段見出しで、「心の病」 は最後に10行触れています。同じ発表について捉え方がまったく違います。
 この違いは、聞こえてくる話ですが、社の社員へのメンタルヘルス対策と同じです。記事の大きさは対策をとっているかどうかで違います。とっていないで大きくすると社内からの跳ね返りが出てきます。

 「調査」 結果、「心の病」 休職教員の動向として、09年の5.458人まで17年連続で増え続けましたが、10年度は5.407人、11年度は5.274人に減少しています。5.000人台は08年からです。
 年代別では50代が39%、40台が32%、30代が21%、20代が8%です。
 年齢構成などを含めて分析をしないと実態がはっきりしませんが、経験を積むほど高くなっています。管理職もいます。

 教職員が体調不良に陥る原因は、児童・生徒への対応、管理職や教職員間の人間関係、父母への対応、それらが関連してなどがあります。
 日教組女性部の組合員が中心に定期購読している雑誌 『女も男も』 の2012年秋号は 「職場のいじめ・パワハラとメンタルヘルス対策」 を特集しています。その中で、日教組女性部長の佐野由美さんは学校現場でのパワハラ防止の取り組みについて書いています。
 「現在の学校職場は、とてもストレスフルです。社会の状況の厳しさが保護者の生活にも影響し、子どもたちの生活や教育にも影を落としています。さまざまな子どもたちや保護者の声に対応することが求められる現状がありますし、熱心であればあるほど一生懸命何とかしようと頑張ります。本来の教材研究にとりくむゆとりがない現状があります。一般の教職員にとっても管理職にとってもストレスのかかる職場になっています。」
 このような中で、女性組合員を中心にパワハラへの取り組みが開始され、兵庫県を皮切りに大阪府などでパワハラ防止指針が作成されていきます。

 佐野さんは、なぜ女性たちが取り組みに立ち上がったかについて4点あげています。
 1つは、従来からセクハラについて女性が当事者として予防や対策に取り組んできた。2つめは、女性であることを理由とする理不尽な対応にぶつかる経験を持っていて、ハラスメントに敏感になっている。3つ目は、女性は男性と比べて、雑談のなかで職場の様子などをよく話して情報交換をしている。4つ目は、女性は職場や家庭のなかでもケアする立場を担うことが多いという現実が関係している。
 泣き寝入りをしない、おかしいことはおかしいと言い合いながら、体験を活かして実態に対応すると具体的対策が可能となりますが、男性にとっては身近で起きていていることで、同じような体験もしているはずです。姿勢を見習う必要があります。避けることは解決を遅らせることにしかなりません

 佐野さんは、兵庫県教育委員会の指針を紹介しています。「指針」 は、パワーハラスメントになりうる言動例を、1、攻撃する、2、否定する、3、強要する、4、妨害する、に分類して具体的に示しています。その中の学校特有の例を挙げてみます。
 1、攻撃する。「児童・生徒や他の職員の前で大声で命令したり、声高に叱る等、見せしめに類する言動をする。」 自分の体面を保つためにフォローがない叱責のみということがあります。
 2、否定する。「校務を進めるにあたり、担当者を無視し、その者を職場で孤立させる。」
 3、強要する。「困難な保護者の対応を 『自己責任』 として一個人でさせる。」
 4、妨害する。「仕事上必要な情報や助言を与えない。」

 「困難な保護者の対応を 『自己責任』 として一個人でさせる。」 は今、深刻な状況になっています。モンスターペアレントは社会問題になっています。
 教師がかつてのような尊敬される対象でなくなっています。そのなかで父母が些細な問題や学校に関係ない問題について子どもを盾にストレス発散の対象にしてきます。自分の価値観を押し付けてきます。
 教職員は1人で過重な対応を迫られます。そもそも不可能な要求もたくさんあります。しかし即応性を求められます。
 そのため教材研究ができなくなるなどの状況に追い込まれます。自分の価値観を押し付けられることは管理職や他の教職員からもあります。
 日常的に人間関係を構築しながら職務を遂行するコミュニケーションが必須の職場にもかかわらず、実際は教職員同士のフォローがない状況のなかで孤立していきます。
 各地の個人加盟の労働組合・ユニオンには教職員からの相談もたくさん寄せられています。(12年12月21日の 「活動報告」 参照)
 体調不良者の増加ははっきりした原因があります。


 今、行政窓口などの職員が、非がなくても住民からストレス発散のための攻撃を受ける事態が続いています。しかしほとんどの行政窓口は、住民との対応が職務であるにもかかわらず、業務に関する法律や条例は熟知させても対応マニュアルを確立していません。
 民間企業では、顧客を相手にするサービス業や営業職の社員などに対しては、クレームや攻撃は起こることを前提に対策を取っています。担当者には業務の一環として対応スキルを身に着けさせます。
 行政機関の窓口に住民は切実な、そして複雑な問題を抱えて訪れます。どこが担当窓口かわからなかったり、制度の拡大解釈を要求するなどの無理難題を押し付けたりします。また、現在の政府の政策における制度の限界に対する不満を繰り広げます。さらに現在の政府や行政機関トップからの公務員バッシングがそれに拍車をかけます。
 住民にとって地方自治体の窓口は都道府県や政府と一貫したものなのです。窓口担当者は行政機関トップの対応を要求されているのです。

 対応マニュアルは、窓口職員が行政機関トップの対応を要求されていることを踏まえたら、行政機関として一体感を持った対応が必要です。理不尽な要求に対しては、まずトップから職員を守る姿勢をはっきりさせる必要があります。最終的責任はトップが負うというアピールです。
 そのうえで対応スキルが必要となります。
 住民の切実さに共感しながら制度説明して無理なことは無理と言う、複雑な問題については他部署と連絡を取り合って連携するなど、相手の立場に立って簡単に 「門前払い」 をしないなどです。そして部署内でのサポート体制を確立して孤立させないようする必要があります。
 しかし、現在は担当者個人の対応スキルしか頼るものがありません。穏便に解決すれば当然のように取り扱われ、トラブルが拡大するとサポートもなく、後に個人の対応のまずさだけが問題にされます。サポートがないことは同僚に対する不信感も発生します。
 上手に対応するためのスキルの共有する機会もありません。

  同じことは学校でも起きています。
 さらに文部科学省や教育委員会からの管理強化は職場での孤立化を促進しています。メンタルヘルスケア対策を進めているという一方で、体調不良者を作り出しています。
 昨今のいじめ問題を見ると、問題が発生しても、多くの教職員が見て見ぬふりをすることでトラブルに巻き込まれることを回避しています。その結果、問題を拡大させていきます。
 いじめは起こるものであることを踏まえて、いじめは許さない、見逃さない、そしてその対応方法、予防対策を学校全体で確立していたなら、1人ひとりの教職員は自身を持って対応できます。
 保護者からの無理難題の要求については、1人の教職員に対する要求ではなく学校への要求として捉え、教職員を守る立場をはっきりさせ、学校の方針を伝えて毅然とした対応が必要です。

 内も外も、「常識を 言ってるあなたが 非常識」(『女子会川柳』から)が多くあります。

 雑誌 『女も男も』 の出版を記念して、3月2日(土) 1時間から日本教育会館で、執筆者による講演とパネルディスカッションが予定されています。日教組女性部長の佐野由美さんもパネラーとして出席します。    
   

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“あたりまえ” を獲得するには困難が伴う
2013/01/16(Wed)
 1月16日(水)

 1月17日で阪神淡路大震災から18年目を迎えます。

 震災2週間後から1年間、神戸市中央区の廃校になった小学校の避難所に何度も通いました。
 最初の時は日曜日でした。昼頃に学生が友人を探しているといって訪ねてきました。直後から時間を作ってずっと探しまわっているとのことです。在所者名簿に名前は見当たりません。「気を落とさずに」 といって送りました。夕方また来ました。同じ結論です。
 「食事はとったの」 と聞くと 「朝から何も食べていません」 とのこと。こっそりと配給用のパンを渡そうとしたら 「被災された方用ですから」 と断られました。街はまだ店を開けることができるような状況ではないので食料を手に入れる手段もありませんでした。
 神戸大学は学生の負担を小さくしようと、学生課が廉価のアパートや下宿を探して斡旋していました。しかしそのような建物が崩れ、火災が襲い多くの犠牲者を出しました。善意が仇になってしまいました。

 阪神淡路大震災は、活断層が走っていた上の被害が大きかったと言われますが実際はそれだけではありません。
 震災は、町を選んでいます。道路1つ隔てただけで、町名が変わっただけで被害の大きさが違います。被害が大きかった地域の中には、震災がなくても火災が発生したら消防車が入れる道路がなかったり、消火栓がない地域もありました。
 神戸市は法律による消防車の配置基準台数を大きく下回っていました。
 高速道路は、壊滅が大きかった部分と大丈夫だった部分の境は、担当した土建会社の境でした。

 阪神淡路大震災の被害者は、「衣食住は自己責任」 を強制されました。
 震災で住居が壊滅しても再建への支援はありませんでした。住宅は生活保障や福祉政策、社会保障の問題ではないのです。不動産として自力で購入するものなのです。政府は、その姿勢を崩しません。同じ姿勢で仮設住宅の建設は土地があっても積極的でありません。
 20世紀の最終段階で、非常事態に遭遇しても 「衣食住は自己責任」 だったのです。

 被災者は放置された状況が続きました。
 連日カンパ額が報道されます。うなぎ上りです。被災者は給付を期待しました。しかし行政は、カンパは被災地に届けられたのであって被災者にではないという対応です。
 被災者は何度も国会や政府に支援請願を繰り返しました。当初はたくさんの国会議員も支援を表明しましたが時間が経つとともにいなくなりました。
 そのような中で作家の小田実さんたちが 「被災者生活再建支援法案」 を作成、成立に向けて活動を始めます。神戸から東海道線沿いを行進しながら支援を訴え、国会にたどり着きます。思いは 「被災者が苦しむのは阪神淡路大震災を最後にしよう」 でした。
 98年5月にやっと成立させました。その後、各地の災害、東日本大震災でも不充分ながらも政府から生活再建支援を受けられるようになりました。
 ここまで辿り着くのに、小田さんたちの粘り強い闘いがあったことを忘れることはできません。
 “あたりまえ” を獲得するのは日本では本当に困難が伴います。


 不条理を目の当たりにすることが連続の避難所通いでした。

 避難所でのボランティアは、食事の配給と救援物資の手続きが済むと暇ができます。
 春過ぎ、校舎を探索していると漫画 『はだしのゲン』 が数巻放置されていました。日向ぼっこをしながら読みました。
 神戸と広島が重なりました。
 ボランティアの待機場所は音楽室です。オルガンやアコーディオンが放置されたままです。
 オルガンに向かった時、無意識に手が動いたのは梅原司平 『折り鶴』 でした。

   生きていてよかった それを感じたくて
   広島のまちから 私は歩いてきた
   苦しみをことばに 悲しみをいかりに
   きずついたからだで ここまで歩いてきた

    ※ この耳をふさいでも 聞こえる声がある
      この心閉ざしても あふれる愛がある
      はばたけ折り鶴 私からあなたへ
      はばたけ折り鶴 あなたから世界へ

   生きていてよかった それを見つけたくて
   長崎のまちから 私は歩いてきた
   この胸のいたみを うた声にたくして
   焼けあとの下から ここまで歩いてきた

    ※ 繰り返し

 被爆者は、長崎から、広島から行進をして国会にたどり着き 「被爆者援護法」 の制定を訴え続けました。その時にこの 『折り鶴』 も歌われました。


 『はだしのゲン』 の原作者中沢啓次さんが12月21日亡くなりました。
 中沢さんの作品を最初に詠んだのは 『黒い雨に打たれて』 でした。
 戦後も数年経つと原爆は忘れられ、被爆者はさまざまな差別に遭遇します。心身が傷つけられた被爆者を主人公にした短編が集められています。
 出口のない思いに駆られました。

 その後、『はだしのゲン』 が連載が始まります。
 映画にもなり、舞台にもなりました。
 ミュージカル舞台を観ました。チケット購入のために連絡先に電話すると 「はい、中沢です」 とご本人が応対してきました。
 舞台は映画よりも立体感があり実感に迫ります。会場全体が真っ赤になったり、側面や後ろから爆音が轟くと同時に客席が振動しました。
 しかし、本や映画、舞台と実体験の違いは人間が焼かれた臭いの存在です。このことを画家の丸木俊さんが、ご自身のカット絵が教科書から消されようとした時に文部省に抗議しながら訴えました。
 東日本大震災ではヘドロの臭いです。

 91年に、小学生から社会人までの 『はだしのゲン』 の読者からの感想や質問と中沢さんの回答で構成した 『「はだしのゲン」 への手紙』 が出版されました。昭和天皇が体調を崩した頃です。
 小学5年生が 「中沢けいじさんは、家族を殺した戦争と、天皇がにくいですか?」 と質問しました。
 中沢さんは 「天皇を憎むゲンの気持ちは、私の本当の気持ちです」 と答えます。
 今も戦争責任はあいまいにされたままです。そして 「戦争の受難は国民等しく受け入れる」 ことが国の方針になっています。だから生活維持は自己責任で戦後処理も放置されています。
 晩年中沢さんは視力を失いましたが、まだまだ戦争を憎む姿勢で描きたいことがあったと思います。

 『本』 の中で高校2年生が中沢さんにお願いしています。
 「ところで、1つだけ、たった1つだけ、お願いがあるのです。それはゲン親子を最後には幸福にして上げてください。最後の最後のページまで、暗く悲しい物語だと、私の未来への希望がしぼんでしまいますので…… (キャー、ヨクイウヨ)。よろしくお願いします。ではこれからもどうぞ歴史的反省の力作を描き上げていってくださいネ。楽しみに読ませて貰います。では、風邪を引かれませんように、さようなら。」

 ゲン親子が幸福になるためには中沢さんが幸福だと思える題材が必要でした。その題材は、たくさんの読者が力を合わせて中沢さんに提供する必要がありました。
 中沢さんの無念は、多くの人たちの無念のままです。

 “あたりまえ” を獲得するのは本当に困難が伴います。 

  
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格差社会は 「隣りに人がいなくなる」 状況を作り出す
2013/01/12(Sat)
 1月11日(金)

 昨年12月19日、東京都人権啓発センター主催の人権問題都民講座 「現代貧困問題入門」 が開催されました。講師は湯浅誠さんです。まさに老若男女が参加していましたが、難しい問題を誰にでもわかるように話す術は神業です。

 2009年から政府は貧困率を発表しています。16.0%です。
 調査方法はOECDの作成基準に基づいています。全世帯の中で等価可処分所得の中央値の半分以下で生活している人の割合です。わかりやすく言うと、全世帯の中で所得が真ん中の人の半分以下の人の割合です。日本では中央値が250万円、貧困線は125万円です。生活保護の額と似ています。2000万人が該当します。
 2006年は、3年に1回2万世帯を対象に実施されている国民生活基礎調査によると15.7%でした。
 現役世帯 (世帯主が18歳以上65歳未満で子どもがいる世帯) の貧困率は14.2、失業率0.4%です。母子世帯の貧困率は54.3%で国際的にトップです。
 収入には資産は入っていません。(貧困層は資産を持っていません) 実際の中央値、貧困線はもっと高くなります。

 子育て世代の貧困率と失業率の関係を比較すると日本の実態が客観的に見えてきます。日本の失業率は0.4%でユニセフ調査では最下位です
 アメリカは貧困率22%と失業率2%、イギリス16%と8%、スウェーデン4%と2.5%、フランス7%と6%、ドイツ11%と9%などです。
 日本と貧困率が似ているポーランドは失業率9%、カナダは4%、イタリアは16%と4%です。
 日本は働いてはいても貧困な世帯が多い、働いている者が貧困に陥っているという状態が浮かび上がってきます。いわゆるワーキングプアです。
 日本で2人以上働が働いている世帯は4割います。しかしそのうちの4割が貧困率に加算されています。働いても低所得の非正規労働者が多いからです。
 かつてダブルインカムはリッチの代名詞でしたが、今はダブルインカムでもワーキングプアです。

 講演から話がそれます。
 では現実問題としてかの膨大な国債を買い支えている銀行等に預貯金をしているのは誰なのでしょうか。
 資産を抱えている高齢者です。資産家の資産が銀行等と政府との間で循環するのが日本の経済になっています。結局は資産家に税金で利息を支払っているだけです。
 また、資産を抱えている人たちは株の売買に走り、株価に恐々としています。株主の発言は強まっています。労働者のことなど考えません。人件費が削減され、非正規労働者が増えていきます。
 このような状況で社会が活性化するはずがありません。格差はますます固定されて拡大します。


 話を講演に戻します。
 社会保障問題です。
 湯浅さんは、高度経済成長期の 「3つの傘がしぼむと、雨に濡れる人が増える」 の図を示しました。
 いちばん上の傘は国、2番目は企業、3番目は正社員の傘です。
 国は、企業に様々な助成金と税制度の優遇などをする一方、子育て・家族の扶養、住宅問題は企業・個人に委ねました。本来の国の責務である社会保障の多くを企業が担いました。
 企業は、男性正社員に扶養家族手当を支払います。妻を働かせないで子育てに専念する代わりに夫に長時間労働 (2人分の労働) を強いました。そして社宅保障や住宅ローンの支援をしました。さらに福利厚生施設まで提供しました。
 だから正社員は企業に忠誠を誓います。そして子供のために教育費を蓄えます。しかしゆとりはありません。ローンに縛られ、企業の傘から追い出されると家族全員の衣食住が奪われる恐れがあるからです。
 妻は労働を奪われたのです。働く場合は家計補助の理由で低賃金のパート、アルバイトなどでした。その収入には課税免除額が設定されました。

 その一方、傘から追い出された母子家庭や日雇い労働者は、国や企業が正社員に行っていた保障を受けずに生活を維持していかなければなりませんでした。子育てをしながらワーキングプアに追いやられました。
 親の経済格差が子供の教育格差を生み出しています。

 バブルがはじけるとそれぞれの傘が閉じられます。貧困は傘の外に追い出された人たちを襲います。
 男性非正規労働者が増大しました。男性は 「社縁」 が切れると 「地縁」 も切れます。そうなると 「血縁」 も切れることになったりします。互助組織から排除されます。その結果が自殺に至ったりします。
 格差社会は、会社でも、地域でも「隣りに人がいなくなる」状況を作り出します。
 隣りの人に思いを寄せる、その関係性を作っていく中から社会全体の問題を捉えかえして貧困問題を解決していく必要があります。


 体験です。
 80年代から90年代にかけての頃、労働組合が春闘のベースアップ要求アンケートを取るとパート労働者の回答は必ずほぼ3つの等分に分かれます。上げてほしい、上がらなくていい、どちらでもいい、です。上がらなくてもいいは、家計補助の収入は欲しいが扶養家族から外れるのはいやなのです。どちらでもいいは本来働かなくてもいいけど働いているからです。
 上がらなくていい、どちらでもいいのパート労働者は、上げてほしいパート労働者のことは考えません。バブル期、時給は上がり続けましたが、そうすると上がらなくていいパート労働者は契約時間を短縮してサービス残業しました。正規労働者は、パート労働者がサービス残業しているのにと迫られます。
 この時期の処遇改善 “放棄” が、非正規労働者の劣悪な労働条件の継続、貧困を作ったのでした。

 バブル経済が崩壊すると男性の非正規労働者が増え続けていました。
 女性税理士団体など、様々な女性団体がパート税制の存在は労働条件改善を妨げる、夫が死んだら遺族手当などを受給するような夫が死んでも扶養家族であり続けるような生き方はやめて自立しようと呼びかけました。パート税制の問題は男性の問題でもあると呼びかけました。しかし男性非正規労働者は声をあげることはありませんでした。過労死が社会問題になりました。


 今回の総選挙で民主党の没落は激しいですが、前回の総選挙に向けた民主党のマニュフェストの中の社会保障問題は、企業から自立した新たな社会保障制度への大きな転換を含み、期待できるものでした。
 「子供手当」 は、企業から支給されない扶養手当です。傘が萎んでも、傘から追い出されても支給される生活維持費です。
 企業は、扶養手当を止め、その分の原資を非正規労働者の時給アップに回すなら企業の人件費総額は増えません。また企業の法人税のアップも大きな負担になりませんでした。
 連合と労働組合はこのような提案を出して交渉する必要がありました。
 そうすれば最低賃金のアップも可能となり、貧困問題が少しは改善に向かいました。口で言うほどいう簡単ではありませんが少なくても問題解決に向かうチャンスではありました。
 しかし正規労働者は子供手当をダブルのベースアップとしか捉えていませんでした。一度つかんだ既得権は絶対に譲りません。資産を増やし続けることを目的とする資産家と同じ感性です。
 さらにあたかも子供手当が保育園増設等の要求と敵対するような世論が子育てをしている女性たちから発せられました。
 お互いが無関心と敵対し合う中で子供手当は自民党から反撃にあいます。自民党が政権を取ると元に戻す方向に転換しようとしています。

 民主党政権は、格差社会の底辺から抜け出せない人たちの期待に応えることができませんでした。そうすると人々は真逆に向かいました。
 
  
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