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パワーハラスメントを受けた後、「何もしなかった」 が46.7%
2012/12/21(Fri)
 12月21日(金)

 12月10日、コミュニティ・ユニオン全国ネットワークは厚生労働省に要請行動を行ないました。
 昨今のご時世ではどうしても要請項目は多くなり、項目ごとの細かいところまでの話し合いには到りませんでした。
 事前に提出した 「要請書」 に、職場のいじめ・嫌がらせ対策の項目は、
 ① 職場のいじめ・嫌がらせを防止するガイドラインを作成すること。
 ② 具体的に相談を受けて解決しているユニオン等の団体、被害者の意見を聞く場を設けること。
と記載しました。
 当日、全国ネットが11月9日と10日に開催した 「全国一斉 職場のいじめ・パワハラホットライン」 の報告書を提出しました。
 ホットラインは全国22都道府県32ユニオンが開設し、126件の相談が寄せられました。
 報告書の 「相談の傾向」 です。
 「相談件数126件のうち、60%をセクハラを含むハラスメント関係が占めました。ハラスメント以外の相談の内訳は上記表 (賃金関係、雇用関係、労働時間など) のとおりです。業種は、サービス業、医療、・社会福祉関係、教育公務職場が多かったです。特にハラスメント関係については、通常の相談に比べ、医療・社会福祉関係が目立ちました。
 後に特徴的な相談事例を載せているとおり、パワハラの実態はひどいものがあり、職場の荒廃が進んでいる様子が現れていました。なぜ、職場でこれほどまでの人権侵害行為が横行するのか、という根本的な問題を行政、労使が追及しなければならないと考えています。実態をよく知るユニオン等の団体、被害者の意見を設けるよう求めます。
 パワハラ被害事態の相談に加え、『誰にも相談できない』 『既に会社には報告・相談したが何も対応してくれない』 『会社に相談窓口はあるが信用できない。かえってひどくなるようで怖い。』 という人が多かったです。これは、使用者側に 『職場のハラスメントが重大な人権侵害である』 という認識が欠けており、使用者側の対策が不十分であると言うことができます。早急に、職場のいじめ・嫌がらせ防止のガイドラインを作成し、使用者側に 『パワハラの根を絶やす』 取り組みの必要性を周知徹底させるよう求めます。
 また、パワハラの横行は、長時間労働や過重な競争、非正規雇用等による就業環境の悪化、未払残業や不利益変更等の使用者の違法行為も影響していると考えます。労働法の規制強化、使用者の違法行為に対する指導監督体制の強化を求めます。」

 教育現場からのパワハラ相談の多さは、3月6日の 「活動報告」 で紹介した2月24日と25日、全国労働安全衛生センター連絡会議主催のホットラインでも実感しました。このような教育現場を見ていたら児童・生徒のいじめが “起きないはずがありません。”

 厚労省の回答は、円卓会議の 「提言」 の後、職場のいじめ問題に取り組むためにホームページを立ち上げていることを紹介しました。また、今年7月から9月にかけて実施した 「職場のパワーハラスメントに関する実態調査」 の報告書を近日中に発表するということでした。


 「実態調査」 が12月12日に発表されました。
 アンケート調査には企業4.580社、従業員9.000名が参加しました。従業員の対象者摘出は、調査業者の協力をえて、総務省「就業構造基本調査」を参考に、性、年代、正社員・正社員以外の3点から割付を行い、調査に際して、「パワーハラスメント」 の理解のために円卓会議の概念規定を提示しました。インターネットでの直接回答ということで会社のチェックを受けていません。

 従業員への調査結果です。
パワーハラスメントの原因を探れる項目として、パワーハラスメントを受けた経験の有無の後に、経験ある者とない者に分けて同じ質問をしています。そこから職場の特徴をさぐってみます。
 パワーハラスメント経験者の選択比率が高く、かつ未経験者とのギャップが大きい項目として、「正社員や正社員以外など様々な立場の従業員が一緒に働いている」 (経験者の選択率46.0%、未経験者の選択率38.1%)、「残業が多い/休みが取り難い」 (経験者40.5%、未経験者22.2%)、「失敗が許されない/失敗への許容度が低い」 (経験者29.7%、未経験者11.8%)、「上司と部下のコミュニケーションが少ない」 (経験者35.2%、未経験者17.8%) が挙げられています。
 職場のコミュニケーションに関する状況に関して、「悩み、不満、問題と感じたことを会社に伝えやすい」 という質問に対して経験者は 「あまり当てはまらない」、「全く当てはまらない」 の合計の回答比率が64.0%に対し、未経験者では35.9%となっています。
 「悩み、不満、問題と感じたことを上司に伝えやすい」 という質問に対して経験者の同比率は57.9%に対し、未経験者では31.9%となっています。
 「同僚同士のコミュニケーションが円滑である」 や 「仕事以外のことを相談できる同僚がいる」 の質問に対して経験者は、「あまり当てはまらない」、「全く当てはまらない」 の合計の回答比率はそれぞれ34.6%、39.9%となっています。「非常に当てはまる」、「まあ当てはまる」 は36.0%、37.5%となっています。
 この結果、現在の職場でのパワーハラスメント経験者の回答や未経験者との回答の差を見る限りにおいて、コミュニケーション上の問題としては、「会社や上司に対する相談のしやすさ、話しやすさ」 といった点が重要であることがうかがえるとあります。

 職場がパワーハラスメントの予防・解決に向けた取組を実施しているかどうかについの質問に対して、回答者全体の中で 「積極的に取り組んでいる」 4.6%、「取り組んでいる」 19.5%、「ほとんど取り組んでいない」 22.9%、まったく取り組んでいない」 34.9%です。
 従業員規模別に見ると、大きくなるほど取り組んでいるが増え、1000人以上では 「積極的に取り組んでいる」、「取り組んでいる」 の合計が51.9%となっています。

 では具体的にどのような取組を行っているかの質問に対して (複数回答可)、「パワハラについて相談できる窓口を設置している」 44.1%、「就業規則などの社内規定に盛り込んでいる」 25.4%、「パワハラについて講演や研修会を行っている」 19.7%、「トップの宣言、会社の方針 (CSR宣言など) に定めている」 16.9%などの順になっています。


 過去3年間に 「パワハラを受けたことがある」 の質問に、全体の25.3%が 「経験あり」 と回答しています。「自分の周辺でパワハラを受けているのを見たり、相談を受けたことがある」 28.2%、「パワハラをしたと指摘されたことがある」 7.3%です。
 自分自身が最近3年間にパワーハラスメントを受けた者を年代別に見ると、30歳代が27.2%と最も高く、40歳代が25.7%、50歳代以上が24.8%、20歳代は23.3%となっています。性別では、男性26.5%、女性23.9%です。
 職種と性別の切り口では、管理職 (男女合計) が31.1%、管理職を除いた女性正社員29.0%、男性正社員26.8%、正社員以外の男性社員20.9%、女性社員19.3%です。


 「パワーハラスメントの内容」 については、【職場のパワーハラスメントの行為類型】 の6つのタイプのどれにあてはまるかを質問しています。(複数回答) パターン全体では 「精神的な攻撃 (脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言)」 55.6%が最も多く、「過大な要求 (業務上明らかに不要なこと、遂行不可能なことの強制、仕事の妨害)」 28.7%、「過小な要求 (業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)」 18.3% の順で、「身体的な攻撃 (暴行・傷害)」 が4.3%です。
 性別、年代別にみると、女性や20歳代で「人間関係からの切り離し」 (女性29.0%、20歳代30.8%)、「個の侵害」 (女性23.2%、20歳代26.2%)が高くなっています。男性や30歳代で 「過大な要求」 (男性31.2%、30歳代33.3%) が高くなっていて、性別や年代でパワーハラスメントの内容に違いが見られます。
 「精神的な攻撃」の具体的例としては 「同僚の前で無能扱いする言葉を受けた。(男性、50歳以上)」、「過大な要求」 は 「休日出勤しても終わらない業務の強要。(男性、30歳代)」、「過小な要求」 は 「 草むしり (男性、50歳以上)」、「身体的な攻撃」 は 「胸ぐらを掴む、髪を引っ張る、火の着いたタバコを投げる (男性、40歳代)」などが挙げられています。
 パワーハラスメントをする相手は、「上司から部下へ」 77.7%と圧倒的に多く、「先輩から後輩へ」 15.7%、「正社員から正社員以外へ」 10.6%と続き、上位者から下位者への行為が大半を占めています。

 パワーハラスメントを受けた後でどのような対応をしたかの質問に対し、全体として 「何もしなかった」46.7%と最も多くなっています。「何もしなかった」者の属性を見ると、性別では男性53.5%と高く、年代別では40才代 (50.0%)、50~64才 (49.0%)が、「性・職種別」 では管理職 (60.0%)、「男性正社員」 (52.5%) が高くなっています
 「何もしなかった」 のほかは、クロス集計では、「社内の同僚に相談した」が14.6%、「会社を退職した」が13.5%、「社内の上司に相談した」 が13.6%、「しばらく会社を休んだ」 が5.4%、「社内の担当部署」 が3.9%、「労働組合」 が2.4%、おそらく個人加盟労働組合・ユニオン等を指すと思われる 「会社とは関係のない専門家に相談した」 が2.3%、「社内の相談窓口」 が1.8%、「会社が設置している相談窓口」 が1.4%の順です。相談した人は一箇所に相談するのではなく、複数に相談するなど、解決に向けた行動をとっています。

 また 「労働組合」、「社内の相談窓口」、「会社が設置している相談窓口」 が機能していません。これらはすでに “会社側” の評価を受け、信頼ができないからです。
 「しばらく会社を休んだ」 とは、体調を崩して休職に至ったということだと思われますが、クロス集計では 「会社とは関係のない専門家に相談した」 が28.3、「会社が設置している相談窓口に相談した」 が25.8%、「弁護士に相談した」 が23.8%、「公的な機関に相談した」 が22.9%、「会社を退職した」 が11.1%となっています。社内に信頼できる相談窓口がないことを物語っています。「しばらく会社を休んだ」 後は、1割以上が 「会社を退職した」 が現実となっています。 あなたがパワーハラスメントを受けたことを知った後、会社はどのような対応をしましたかの質問に対して、実際に従業員が受けた行為を 「パワハラと認めた」 が11.6%、「パワハラと認めなかった」 が22.3%、「判断せずあいまいなままだった」 が57.7%となっています。

 実態調査報告書は、「これらの窓口に相談した人が 『社内の同僚』、『社内の上司』 にも相談している傾向が見られる。会社の窓口への相談の前段階として 『同僚』 や 『上司』 が機能していることが推察される。」 と記載していますが、以前の同じようなデータと比較すると数値が小さくなっています。機能の回復が課題となります。


 では、会社はパワーハラスメントを受けていることを知った後でどのような対応をしたかについては質問しています。「特に何もしなかった」 41.8%です。ただし、「担当部署」 や 「社内の相談窓口」、「会社が設置している相談窓口」 といった窓口に相談した場合、「特に何もしなかった」 比率は少なく (それぞれ18.2%、15.0%、6.5%) なっています。ここからは上司の 「見て見ぬふりをする」 実態が浮かんできます。

 会社がパワーハラスメントを受けていることを知った後に対応した結果についての質問に対して、「パワハラと認めた」 11.6%、「パワハラと認めなかった」 22.3%、「判断せずあいまいなままだった」 57.7%です。
 このような実態が 「特に何もしなかった」 に戻っていきます。

 パワハラを見たり、相談を受けたりした後、あなたはどのような行動をしましたかの質問に対する回答です。
 具体的な対応として、「被害者の話を聞いた」 45.5%、「被害者にアドバイスをした」 26.7%、「自分自身が相談窓口などに知らせた/相談した」 5.7%です。「何もしなかった」 は39.4%です。


 あなたの勤務先には労働組合がありますかの質問に対して、回答者全体の34.8%があると回答しています。そのうち加入している22.0%、加入していない12.8%です。従業員規模が大きいほど比率は高く、従業員1.000人以上では73.5%です。
 労働組合がある者への 「あなたの勤務先の労働組合は、従業員の悩み、不満、苦情、トラブルなどについて相談にのってくれたり、解決に向けた支援をしてくれますか」の質問に対して、「相談にのったり、解決に向けた支援をしてくれる」 49.9%、「支援をしてくれるかどうか分からない」 43.8%、「相談にのったり、解決に向けた支援はしてくれない」 6.3%です。(複数回答可)
 日常的相談活動からは、うかがえるのは、「相談にのったり、解決に向けた支援をしてくれる」 49.9%は大きな期待度を含んでいると思われます。


 実態調査報告書は、最後に、「まとめとパワーハラスメントの削減に向けて」 があります。
 調査において確認できた <パワーハラスメントの予防・解決のための取組を進める上での課題> として、
 ・企業はパワーハラスメントに該当するかどうかの判断が困難であると感じている
 ・ 従業員から、必ずしもパワーハラスメントに該当すると言えない相談が寄せられること
 ・従業員向けの相談窓口の設置がない、あっても従業員が活用しないなど、企業がパワーハラスメント
  の事実を十分に把握できていない
 ・パワーハラスメントを受けた (と感じた) 従業員のうち4割強が 「何もしない」 こと
 ・パワーハラスメントの予防・解決に向けた取組を実施することでパワーハラスメントの相談件数の減少
  等、効果はあるものの、効果が現れるまで時間がかかること
とあります。
 そして <パワーハラスメントの予防・解決のための取組を進めるための3つの視点> を挙げています。
 ① 企業全体の制度整備 (相談窓口の設置と活用の推進、パワーハラスメントの理解を促進するための
  研修制度の充実等)
 ② 職場環境の改善
 ③ 職場におけるパワーハラスメントへの理解促進
です。
 
 ② 職場環境の改善については、
 「今回の調査により、パワーハラスメントが発生する職場の特徴として、上司と部下のコミュニケーションが少ないことや、残業が多い、休みが取りにくい、失敗が許されないことなどが挙げられているが、これらを原因とする従業員の疲労やストレスの高まりが背景として考えられる。したがって、パワーハラスメントをなくすためには、職場におけるコミュニケーションの活性化や、疲労・ストレスの少ない環境に改善することが必要である。
  パワーハラスメントの実態を把握し、解決につなげるアクションを促すためには、従業員に相談窓口の活用を促すだけでなく、職場におけるコミュニケーションを活性化しつつ、上位者がパワーハラスメントについて理解した上で、部下等とのコミュニケーションを行うことにより、パワーハラスメントが生じにくい環境を作り出すとともに、パワーハラスメントに関する相談がしやすい職場環境を作り出すことが、パワーハラスメントの予防・解決につながると期待できる。
……」

 企業への調査結果については取り上げませんが、従業員への調査結果とは隔たりがあります。企業には認識がずれていると思わざるを得ない箇所もたた見受けられます。職場からパワハラをなくすのは使用者の任務です。企業は独りよがりではなく、労働者と充分に 「コミュニケーション」をとって進めることを期待します。
 

 全国ネットの 「報告書」 と厚労省の 「実態調査」 には似た内容になっているところが見受けられます。
しかし、報告はしませんが企業からのデータ集約とはやはり隔たりがあります。企業には認識がずれていると思わざるを得ない箇所がまだまだ見受けられます。
 職場からパワハラをなくすのは使用者の任務です。独りよがりではなく、労働者と充分に 「コミュニケーション」 をとって進めることを期待します。

  
  当センター「いじめメンタルヘルス労働者支援センター」ホームページ・ご相談はこちらから
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