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本当に危険なのは放射能よりも福島と被災地を差別する心です
2012/12/25(Tue)
 12月25日(火)

 数十年前の話です。「議会選挙」 などと口走ると 「ナンセンス」 「議会主義粉砕」 などの怒号が即刻飛んでくる時代でした。
 何とか入学して初めて顔を合わせる仲間同士の自己紹介は、いつの間にかこれまで読んで面白かった本・お勧めしたい本を紹介しながら進んでいきました。太宰治やカミュが流行していた頃で当然多かったですが、いろんな本が紹介されました。
 ウィーダの 『フランダースの犬』 をあげたのはブルドックのような顔をしていたヤツでした。梶井基次郎の 『檸檬』 をあげたのは、冷静さと落ち着きがあるヤツでした。織田作之助の 『夫婦善哉』 は関西出身者です。トルストイの 『戦争と平和』 やファーブルの 『昆虫記』 などの大作があるなか、文学はやはり井原西鶴の好色ものと主張する者もいました。
 ディケンズの 『クリスス・キャロル』 をあげた者がいました。正直者を絵に描いたような人物で、年末になると笑ったり、涙を拭きながら読み返しているということでした。
 みな受験勉強に“集中し過ぎないで”適当に息抜きをしていたようです。
 紹介されたのを読み、紹介者と本を重ねるとみな合点がいきます。そして感想を語り合う中で友好を深めてい行きました。

 『クリスマス・キャロル』 はその年末になって読みました。
 その後、舞台も何度か見ました。都営三田線の千石駅近くにあった三百人劇場で劇団昴の上演を観ました。場面の展開の速さを、裏表の回り舞台ではなく120度の回転で演出していました。

 『クリスマス・キャロル』 は、1800年代中期のロンドンが舞台です。
 主人公スクルージは商店を構え、事務員を雇っています。商店は数年前に亡くなったマーレイから引き継いだものです。
 スクルージの性格については、ケチだということを始めとして合わせたら文庫本3ページ分ぐらい書かれています。しかし褒められている個所はありません。

 クリスマスの前日に、甥がクリスマスを一緒に祝おうと誘いに来ますが 「ばかばかしい」 と言って断ります。事務員が明日は家族でクリスマスを祝うので1日休みたいと申し出ると、明後日は早出をすることを条件に許可します。
 クリスマスイブを1人で過ごしていると、亡くなったマーレイの幽霊が表れます。そして後に3人の幽霊が表れることを通告します。1人目は、スクルージの過去の生活に連れ戻します。2人目は事務員の家族と甥の家族のクリスマスパーティーの見学に連れ出します。そこでは、食べ物が少なくても誰も不満を言うことなく、お互いのために乾杯を繰り返します。スクルージのためにも乾杯がおこなわれていました。みんなの幸せのために祈ります。
 3人目はスクルージの未来を暗示します。
 これらを 「体験」 して、スクルージは 「改心」 します。甥の家にこっそりと七面鳥を送り、事務員の遅刻を咎めることもしませんでした。


 今年も紹介者に倣って 『クリスマス・キャロル』 を読み直しながら、今の世にこそ幽霊が出てほしいという思いにかられました。
 幽霊が連れ出して欲しい人物は、選挙前の政権者、選挙後の政権者、そして放射能も軍事基地も自分の周囲に持ち込まれさえしなければいいと捉えている人たちです。連れて行って欲しい場所は、東日本大震災の被災地・福島、沖縄、そして各地の 「路上生活者」 がいる公園です。
 それぞれの人たちの今の生活の状況をちゃんと見るべきです。今置かれている状況は、彼らの誰にも非はありません。しかし差別され無視されて、現状を強制されています。
 そして 「改心」 して早急に対策を取るべきです。

 今回の選挙での投票率の低さは、どの政党にも風が吹かなかったということです。どの勢力の政策も受け入れられなかったのです。その結果が、客観的に信任されていない勢力が圧倒的多数で政権を握ることになったのです。
 価値観が多様化する中で二大政党論や小選挙区制度は排除の論理が作動します。

 労働者に支持基盤をもつ政党はみな投票数を下げました。労働者からそっぽを向かれたのです。
 民主党には労働政策を取り扱う部門はあっても機能していません。すべて最大の労働組合組織である連合の言うなりです。民主党と連合はこの3年間、労働者のためにどれだけのことをしたのでしょうか。民主党の衰退の姿は、連合の近い将来を暗示しています。
 労働組合員が民主党に投票しなかったということを真面目に受け止める必要があります。

 労働組合を通して特定候補への投票要請があっても投票しなかった、投票に行かなかったという行為は、1つの自立した自主的行為です。
 投票に行くことは権利であっても、行かないことも権利です。投票結果に期待を持てなければ責任も持ちたくないからです。無理やり投票に行かされ、狭められた選択肢のなかから選ばせることは自由な意思表の保障に反します。だから選択肢がないから投票しない、選挙結果に従わないで別の行動を摸索することも政治行動です。棄権行為は諦めや無関心だけではありません。

 国会だけが政治ではありません。原発に反対する人たちは国会の外で政治を展開しています。その運動は各地の電力会社の包囲に発展しています。
 福島の人たちは、本当につらいのは福島を差別する心だと訴えています。本当に危険なのは放射能よりも福島と被災地を差別する心です。
 爆発した原発で作業に携わっている労働者が安全に続けられるよう東京電力に要求し、監視を続ける必要があります。

  「沖縄に生まれしものに
    戦前も戦後もなかり 時計草咲く」(「朝日花壇」)
    
 沖縄では “島ぐるみ” で基地撤去の運動を展開しています。
 民意が政府に対峙しています。

 仕事を奪われ、住居を追われ、クリスマスイブにもお正月にも家族のもとにも帰れないでひっそり過ごす労働者が大勢いいます。その人たちに年末年始には各地で炊き出しが行われます。人びとの中では互助組織が育ち始めています。

 裁判ニュースをもらったら、フランスの空き家占拠運動 (住宅への権利運動) が載っていました。空き家の占拠は 「不法占拠」 ですが、裁判闘争を経て法的な正当性を獲得しました。
 支援者は、空き家占拠の直接行動に参加する時、「私たちが今これからやることは、違法だけれど、正当なことです」と繰り返し強調します。何が 「公共性」 を持つかの判断の問題です。行為において法律に抵触しても、その社会運動の訴えが違法性を上回る公共性を持つ場合があります。人権より優先されるものはないのだから、人権のための社会運動が 「公共性」 を有することは言わずもがなという訴えです。
 運動がその主張を公に聞いてもらうための制度的な回路が閉ざされている時に、非制度的な、時に空き家占拠のように 「違法」 とされる方法をとる以外に人権を擁護できない場合があります。人の命の尊厳の尊重を妨げるような法律があるのならば、ごちゃごちゃと法律談義をするまでもなく、人の命と尊厳が優先されるという論理です。住宅は人の命と尊厳の問題に他なりません。
 この論理で 「必要に迫られての空き家占拠は刑法に違反しない」 として 「不法占拠」 の正当性を判決で認めました。

 「まんが日本昔話ばなし」のテーマソングです。

   「いいな いいな 人間っていいな
    おいしい おやつに ほかほかごはん
    子どもの帰りを 待ってるだろな
    ぼくも帰ろ おうちへ帰ろ
    でんでん でんぐりがえって
    バイ バイ バイ!」

 今の日本の人間社会は動物からも笑われます。
 住宅は、不動産としての財産ではありません。


 投票行為だけが政治参加ではありません。
 世論は直接的表明が行われたものだけではありません。
 爆笑医問題の太田光は東日本大震災の後、「何もできないと思うことは、思うことで支援をしている」 と言っていました。
 “声なき声” の “声なき行為” は立派な政治行動です。大きな力を蓄えています。
 それを見損なうと、どんでん返しが待っています。

 2013年がどんでん返しの年になることを期待します。   
 

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パワーハラスメントを受けた後、「何もしなかった」 が46.7%
2012/12/21(Fri)
 12月21日(金)

 12月10日、コミュニティ・ユニオン全国ネットワークは厚生労働省に要請行動を行ないました。
 昨今のご時世ではどうしても要請項目は多くなり、項目ごとの細かいところまでの話し合いには到りませんでした。
 事前に提出した 「要請書」 に、職場のいじめ・嫌がらせ対策の項目は、
 ① 職場のいじめ・嫌がらせを防止するガイドラインを作成すること。
 ② 具体的に相談を受けて解決しているユニオン等の団体、被害者の意見を聞く場を設けること。
と記載しました。
 当日、全国ネットが11月9日と10日に開催した 「全国一斉 職場のいじめ・パワハラホットライン」 の報告書を提出しました。
 ホットラインは全国22都道府県32ユニオンが開設し、126件の相談が寄せられました。
 報告書の 「相談の傾向」 です。
 「相談件数126件のうち、60%をセクハラを含むハラスメント関係が占めました。ハラスメント以外の相談の内訳は上記表 (賃金関係、雇用関係、労働時間など) のとおりです。業種は、サービス業、医療、・社会福祉関係、教育公務職場が多かったです。特にハラスメント関係については、通常の相談に比べ、医療・社会福祉関係が目立ちました。
 後に特徴的な相談事例を載せているとおり、パワハラの実態はひどいものがあり、職場の荒廃が進んでいる様子が現れていました。なぜ、職場でこれほどまでの人権侵害行為が横行するのか、という根本的な問題を行政、労使が追及しなければならないと考えています。実態をよく知るユニオン等の団体、被害者の意見を設けるよう求めます。
 パワハラ被害事態の相談に加え、『誰にも相談できない』 『既に会社には報告・相談したが何も対応してくれない』 『会社に相談窓口はあるが信用できない。かえってひどくなるようで怖い。』 という人が多かったです。これは、使用者側に 『職場のハラスメントが重大な人権侵害である』 という認識が欠けており、使用者側の対策が不十分であると言うことができます。早急に、職場のいじめ・嫌がらせ防止のガイドラインを作成し、使用者側に 『パワハラの根を絶やす』 取り組みの必要性を周知徹底させるよう求めます。
 また、パワハラの横行は、長時間労働や過重な競争、非正規雇用等による就業環境の悪化、未払残業や不利益変更等の使用者の違法行為も影響していると考えます。労働法の規制強化、使用者の違法行為に対する指導監督体制の強化を求めます。」

 教育現場からのパワハラ相談の多さは、3月6日の 「活動報告」 で紹介した2月24日と25日、全国労働安全衛生センター連絡会議主催のホットラインでも実感しました。このような教育現場を見ていたら児童・生徒のいじめが “起きないはずがありません。”

 厚労省の回答は、円卓会議の 「提言」 の後、職場のいじめ問題に取り組むためにホームページを立ち上げていることを紹介しました。また、今年7月から9月にかけて実施した 「職場のパワーハラスメントに関する実態調査」 の報告書を近日中に発表するということでした。


 「実態調査」 が12月12日に発表されました。
 アンケート調査には企業4.580社、従業員9.000名が参加しました。従業員の対象者摘出は、調査業者の協力をえて、総務省「就業構造基本調査」を参考に、性、年代、正社員・正社員以外の3点から割付を行い、調査に際して、「パワーハラスメント」 の理解のために円卓会議の概念規定を提示しました。インターネットでの直接回答ということで会社のチェックを受けていません。

 従業員への調査結果です。
パワーハラスメントの原因を探れる項目として、パワーハラスメントを受けた経験の有無の後に、経験ある者とない者に分けて同じ質問をしています。そこから職場の特徴をさぐってみます。
 パワーハラスメント経験者の選択比率が高く、かつ未経験者とのギャップが大きい項目として、「正社員や正社員以外など様々な立場の従業員が一緒に働いている」 (経験者の選択率46.0%、未経験者の選択率38.1%)、「残業が多い/休みが取り難い」 (経験者40.5%、未経験者22.2%)、「失敗が許されない/失敗への許容度が低い」 (経験者29.7%、未経験者11.8%)、「上司と部下のコミュニケーションが少ない」 (経験者35.2%、未経験者17.8%) が挙げられています。
 職場のコミュニケーションに関する状況に関して、「悩み、不満、問題と感じたことを会社に伝えやすい」 という質問に対して経験者は 「あまり当てはまらない」、「全く当てはまらない」 の合計の回答比率が64.0%に対し、未経験者では35.9%となっています。
 「悩み、不満、問題と感じたことを上司に伝えやすい」 という質問に対して経験者の同比率は57.9%に対し、未経験者では31.9%となっています。
 「同僚同士のコミュニケーションが円滑である」 や 「仕事以外のことを相談できる同僚がいる」 の質問に対して経験者は、「あまり当てはまらない」、「全く当てはまらない」 の合計の回答比率はそれぞれ34.6%、39.9%となっています。「非常に当てはまる」、「まあ当てはまる」 は36.0%、37.5%となっています。
 この結果、現在の職場でのパワーハラスメント経験者の回答や未経験者との回答の差を見る限りにおいて、コミュニケーション上の問題としては、「会社や上司に対する相談のしやすさ、話しやすさ」 といった点が重要であることがうかがえるとあります。

 職場がパワーハラスメントの予防・解決に向けた取組を実施しているかどうかについの質問に対して、回答者全体の中で 「積極的に取り組んでいる」 4.6%、「取り組んでいる」 19.5%、「ほとんど取り組んでいない」 22.9%、まったく取り組んでいない」 34.9%です。
 従業員規模別に見ると、大きくなるほど取り組んでいるが増え、1000人以上では 「積極的に取り組んでいる」、「取り組んでいる」 の合計が51.9%となっています。

 では具体的にどのような取組を行っているかの質問に対して (複数回答可)、「パワハラについて相談できる窓口を設置している」 44.1%、「就業規則などの社内規定に盛り込んでいる」 25.4%、「パワハラについて講演や研修会を行っている」 19.7%、「トップの宣言、会社の方針 (CSR宣言など) に定めている」 16.9%などの順になっています。


 過去3年間に 「パワハラを受けたことがある」 の質問に、全体の25.3%が 「経験あり」 と回答しています。「自分の周辺でパワハラを受けているのを見たり、相談を受けたことがある」 28.2%、「パワハラをしたと指摘されたことがある」 7.3%です。
 自分自身が最近3年間にパワーハラスメントを受けた者を年代別に見ると、30歳代が27.2%と最も高く、40歳代が25.7%、50歳代以上が24.8%、20歳代は23.3%となっています。性別では、男性26.5%、女性23.9%です。
 職種と性別の切り口では、管理職 (男女合計) が31.1%、管理職を除いた女性正社員29.0%、男性正社員26.8%、正社員以外の男性社員20.9%、女性社員19.3%です。


 「パワーハラスメントの内容」 については、【職場のパワーハラスメントの行為類型】 の6つのタイプのどれにあてはまるかを質問しています。(複数回答) パターン全体では 「精神的な攻撃 (脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言)」 55.6%が最も多く、「過大な要求 (業務上明らかに不要なこと、遂行不可能なことの強制、仕事の妨害)」 28.7%、「過小な要求 (業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)」 18.3% の順で、「身体的な攻撃 (暴行・傷害)」 が4.3%です。
 性別、年代別にみると、女性や20歳代で「人間関係からの切り離し」 (女性29.0%、20歳代30.8%)、「個の侵害」 (女性23.2%、20歳代26.2%)が高くなっています。男性や30歳代で 「過大な要求」 (男性31.2%、30歳代33.3%) が高くなっていて、性別や年代でパワーハラスメントの内容に違いが見られます。
 「精神的な攻撃」の具体的例としては 「同僚の前で無能扱いする言葉を受けた。(男性、50歳以上)」、「過大な要求」 は 「休日出勤しても終わらない業務の強要。(男性、30歳代)」、「過小な要求」 は 「 草むしり (男性、50歳以上)」、「身体的な攻撃」 は 「胸ぐらを掴む、髪を引っ張る、火の着いたタバコを投げる (男性、40歳代)」などが挙げられています。
 パワーハラスメントをする相手は、「上司から部下へ」 77.7%と圧倒的に多く、「先輩から後輩へ」 15.7%、「正社員から正社員以外へ」 10.6%と続き、上位者から下位者への行為が大半を占めています。

 パワーハラスメントを受けた後でどのような対応をしたかの質問に対し、全体として 「何もしなかった」46.7%と最も多くなっています。「何もしなかった」者の属性を見ると、性別では男性53.5%と高く、年代別では40才代 (50.0%)、50~64才 (49.0%)が、「性・職種別」 では管理職 (60.0%)、「男性正社員」 (52.5%) が高くなっています
 「何もしなかった」 のほかは、クロス集計では、「社内の同僚に相談した」が14.6%、「会社を退職した」が13.5%、「社内の上司に相談した」 が13.6%、「しばらく会社を休んだ」 が5.4%、「社内の担当部署」 が3.9%、「労働組合」 が2.4%、おそらく個人加盟労働組合・ユニオン等を指すと思われる 「会社とは関係のない専門家に相談した」 が2.3%、「社内の相談窓口」 が1.8%、「会社が設置している相談窓口」 が1.4%の順です。相談した人は一箇所に相談するのではなく、複数に相談するなど、解決に向けた行動をとっています。

 また 「労働組合」、「社内の相談窓口」、「会社が設置している相談窓口」 が機能していません。これらはすでに “会社側” の評価を受け、信頼ができないからです。
 「しばらく会社を休んだ」 とは、体調を崩して休職に至ったということだと思われますが、クロス集計では 「会社とは関係のない専門家に相談した」 が28.3、「会社が設置している相談窓口に相談した」 が25.8%、「弁護士に相談した」 が23.8%、「公的な機関に相談した」 が22.9%、「会社を退職した」 が11.1%となっています。社内に信頼できる相談窓口がないことを物語っています。「しばらく会社を休んだ」 後は、1割以上が 「会社を退職した」 が現実となっています。 あなたがパワーハラスメントを受けたことを知った後、会社はどのような対応をしましたかの質問に対して、実際に従業員が受けた行為を 「パワハラと認めた」 が11.6%、「パワハラと認めなかった」 が22.3%、「判断せずあいまいなままだった」 が57.7%となっています。

 実態調査報告書は、「これらの窓口に相談した人が 『社内の同僚』、『社内の上司』 にも相談している傾向が見られる。会社の窓口への相談の前段階として 『同僚』 や 『上司』 が機能していることが推察される。」 と記載していますが、以前の同じようなデータと比較すると数値が小さくなっています。機能の回復が課題となります。


 では、会社はパワーハラスメントを受けていることを知った後でどのような対応をしたかについては質問しています。「特に何もしなかった」 41.8%です。ただし、「担当部署」 や 「社内の相談窓口」、「会社が設置している相談窓口」 といった窓口に相談した場合、「特に何もしなかった」 比率は少なく (それぞれ18.2%、15.0%、6.5%) なっています。ここからは上司の 「見て見ぬふりをする」 実態が浮かんできます。

 会社がパワーハラスメントを受けていることを知った後に対応した結果についての質問に対して、「パワハラと認めた」 11.6%、「パワハラと認めなかった」 22.3%、「判断せずあいまいなままだった」 57.7%です。
 このような実態が 「特に何もしなかった」 に戻っていきます。

 パワハラを見たり、相談を受けたりした後、あなたはどのような行動をしましたかの質問に対する回答です。
 具体的な対応として、「被害者の話を聞いた」 45.5%、「被害者にアドバイスをした」 26.7%、「自分自身が相談窓口などに知らせた/相談した」 5.7%です。「何もしなかった」 は39.4%です。


 あなたの勤務先には労働組合がありますかの質問に対して、回答者全体の34.8%があると回答しています。そのうち加入している22.0%、加入していない12.8%です。従業員規模が大きいほど比率は高く、従業員1.000人以上では73.5%です。
 労働組合がある者への 「あなたの勤務先の労働組合は、従業員の悩み、不満、苦情、トラブルなどについて相談にのってくれたり、解決に向けた支援をしてくれますか」の質問に対して、「相談にのったり、解決に向けた支援をしてくれる」 49.9%、「支援をしてくれるかどうか分からない」 43.8%、「相談にのったり、解決に向けた支援はしてくれない」 6.3%です。(複数回答可)
 日常的相談活動からは、うかがえるのは、「相談にのったり、解決に向けた支援をしてくれる」 49.9%は大きな期待度を含んでいると思われます。


 実態調査報告書は、最後に、「まとめとパワーハラスメントの削減に向けて」 があります。
 調査において確認できた <パワーハラスメントの予防・解決のための取組を進める上での課題> として、
 ・企業はパワーハラスメントに該当するかどうかの判断が困難であると感じている
 ・ 従業員から、必ずしもパワーハラスメントに該当すると言えない相談が寄せられること
 ・従業員向けの相談窓口の設置がない、あっても従業員が活用しないなど、企業がパワーハラスメント
  の事実を十分に把握できていない
 ・パワーハラスメントを受けた (と感じた) 従業員のうち4割強が 「何もしない」 こと
 ・パワーハラスメントの予防・解決に向けた取組を実施することでパワーハラスメントの相談件数の減少
  等、効果はあるものの、効果が現れるまで時間がかかること
とあります。
 そして <パワーハラスメントの予防・解決のための取組を進めるための3つの視点> を挙げています。
 ① 企業全体の制度整備 (相談窓口の設置と活用の推進、パワーハラスメントの理解を促進するための
  研修制度の充実等)
 ② 職場環境の改善
 ③ 職場におけるパワーハラスメントへの理解促進
です。
 
 ② 職場環境の改善については、
 「今回の調査により、パワーハラスメントが発生する職場の特徴として、上司と部下のコミュニケーションが少ないことや、残業が多い、休みが取りにくい、失敗が許されないことなどが挙げられているが、これらを原因とする従業員の疲労やストレスの高まりが背景として考えられる。したがって、パワーハラスメントをなくすためには、職場におけるコミュニケーションの活性化や、疲労・ストレスの少ない環境に改善することが必要である。
  パワーハラスメントの実態を把握し、解決につなげるアクションを促すためには、従業員に相談窓口の活用を促すだけでなく、職場におけるコミュニケーションを活性化しつつ、上位者がパワーハラスメントについて理解した上で、部下等とのコミュニケーションを行うことにより、パワーハラスメントが生じにくい環境を作り出すとともに、パワーハラスメントに関する相談がしやすい職場環境を作り出すことが、パワーハラスメントの予防・解決につながると期待できる。
……」

 企業への調査結果については取り上げませんが、従業員への調査結果とは隔たりがあります。企業には認識がずれていると思わざるを得ない箇所もたた見受けられます。職場からパワハラをなくすのは使用者の任務です。企業は独りよがりではなく、労働者と充分に 「コミュニケーション」をとって進めることを期待します。
 

 全国ネットの 「報告書」 と厚労省の 「実態調査」 には似た内容になっているところが見受けられます。
しかし、報告はしませんが企業からのデータ集約とはやはり隔たりがあります。企業には認識がずれていると思わざるを得ない箇所がまだまだ見受けられます。
 職場からパワハラをなくすのは使用者の任務です。独りよがりではなく、労働者と充分に 「コミュニケーション」 をとって進めることを期待します。

  
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「復職の手引き」 を豊富化させよう
2012/12/18(Tue)
 12月18日(火)

 12月7日、うつ病の予防・治療日本委員会主催の 「職場のうつ病対策シンポジウム」 が開催されました。だれでも参加できるといっても昼間の開催では参加者は使用者や企業の担当者が中心です。講師もそう捉えて話をします。そのため使用者側の本音を聞くことができます。その一方、企業としてメンタルヘルスケアに思考錯誤しながら真剣に取り組んでいる話を聞くこともあります。
 使用者の本音と、企業の真剣な取り組みの双方を紹介します。

 大阪の使用者側弁護士は、最近の裁判例を紹介しました。
 大阪地裁平成24年2月15日判決の 「建設技術研究所事件」 です。
 原告は2001年4月に入社します。2002年の1か月平均時間外労働は135時間に及びました。遅刻が目立つようになり12月に精神疾患を発症、2003年4月2日から1か月間休職します。「ほぼ寛解状態」 の診断で5月2日から週5日勤務、定時退社の労働条件で職場復帰します。
 7月に 「完全寛解の状態」 の診断が出ると10月から深夜残業が増加します。そのため再発して12月1日から2回目の休職に入ります。2003年1月に主治医の「寛解状態」の診断が出たことによりにより5月6日から職場復帰します。2004年に入った頃には 「完治」 の診断が出されました。
 2005年4月25日から3回目の休職に入ります。しかし9月21日に会社の統括産業医から 「就労は可能である」 旨の診断が出されると、休職は欠勤と扱われて12月8日に解雇を言い渡されました。

 裁判では争点が4つのありました。
 ① 因果関係
 ② 安全配慮義務 (注意義務) 違反
 ③ 損害額
 ④ 解雇効力
 判決は、①については因果関係を肯定、②については違反を肯定しました。
 ③については、2002年の年間労働時間が3.565時間あったこと、会社員としての人生に大きな影響を受けたことを考慮して慰謝料400万円、弁護士費用40万円を認定しました。④については、精神疾患が完治していたと認められる以上、労基法19条1項の解雇制限には違反しないということで解雇は肯定されました。

 ここからが 「本裁判例を踏まえて」 使用者側弁護士の出番です。
 労働時間の管理が重要であるとして2点あげました。
 労働時間については、裁判所では 「在社時間-休憩時間」 が労働時間と認められる傾向にある、1か月の時間外労働時間が100時間を超えると因果関係が認められるので注意するようにとアドバイスしました。あたかも100時間以内なら因果関係はないと主張して使用者側が勝てるといわんばかりです。長時間労働は労働者にとって体調不良に陥る危険性があるので改善した方がいいというような話はまったくありません。
 弁護士の役割は、法律と通達と判例によるギリギリ 「違法でない」 基準の伝授なのです。

 原告は、会社が「復帰の手引き」の考慮が充分ではなかったと主張しました。
 「手引き」 は使用者に支援復帰プログラムの作成を提案しています。しかし会社は作成していませんでした。
 裁判所の判断は、「手引き」 は法的義務を課すものではない、だから準拠しなくても義務違反にはならないと原告の主張を認めませんでした。
 今後、「復帰の手引き」 の扱いが改めて問題になりそうです。

 とはいながら、復職問題に関連して別件の面白い事例を紹介しました。
 労働者から復職期間満了直前に 「復職可能」 の診断書が提出されました。会社は満了期間を超えても様子を見て復職を認めました。
 すると労働者は、満了期間後から復職するまでの期間の賃金支払いを請求しました。
 裁判所の判断は請求を認めませんでした。(大阪府保健医療財団事件 大阪地裁平成18年3月24日判決)
 弁護士は賃金支払いが認められなかったことを紹介したかったのです。
 しかし、労働者の側に立って話を聞くと、事案についての詳細は分かりませんが、休職期間満了を過ぎても復職が真近の場合は、就業規則で定めている退職や解雇条項を停止して復職を待つ会社があるということです。
 実際に団体交渉の中ではそこまで辿り着かせることもそれなりにあります。裁判ではなく交渉だからこそできる業です。労働組合は団体交渉で規則に縛られることなく要求していく必要があります。
 労使関係は、法律や規則ではなく交渉力です。


 キャノンの人事担当者が 「企業におけるメンタルヘルス施策」 の報告をしました。
 メンタルヘルスケアが必要になっている状況として、雇用環境の変化を挙げました。
  ① 就労意識の変化
  ② 日本型人事制度の変化が会社と社員の関係に影響 (ex)成果主義によって、個人業績評価がオ
   ープンに)
  ③ コミュニケーション不足
  ④ 上司はかつてなく多忙
  ⑤ コミュニケーションが苦手な若者像?
 です。まさにその通りです。成果主義や個人業績評価は職場の労働者どおしをライバルにします。そして忙しいのは上司だけではありません。
 このため精神的に体調不良に陥ったり、休職している労働者が多く出ています。そのなかで医療関係者に頼るだけでなく、人事部としての対応策も検討しています。

 復職プロセスにおける視点を、復職の意思、労働意欲を踏まえて5点あげて整理しています。
 1、体調管理
  自分の病気についての理解
  体調が悪くなった時の対処について把握している
 2、病状の回復
  就労のために睡眠覚醒リズムや食事等の生活リズムの安定
  通勤時間帯に1人で安全に通勤可能
  会社が設定している通勤・勤務時間での就労が可能
 3、会社のルールの理解
  会社の一員の意識
  会社のルールや規則を十分に理解し、仕事に取り組む意欲がある
 4、業務遂行能力の回復
  業務遂行に必要な注意力・集中力が回復
  業務に必要な作業をこなすことができる
  作業等による疲労が翌日までに充分回復
 5、上司・同僚との協調性
  組織の一員として上司や同僚と連携・協力し、周囲にあわせながら仕事に取り組む意識がある

 5つの視点は、労働者にとっても使用者にとっても、客観的判断を行なうための目安、目標と捉えることができます。

 そのために、まず自主トレーニングとして、通勤・勤務を意識して生活リズムと体調を整えることが必要です。
  ① 通勤を想定して起床する。
  ② 通勤時間に合わせて会社付近までくる。
  ③ 夕方まで外で過ごす。
  ④ 集中力・持続力。対話力などを回復する。
  ⑤ どのように過ごしたか、毎日記録をつける。
 これらができるようになったら、復職が可能と言えます。
 復職に際しては、体調・仕事・生活のバランスがとれるようにする必要があります。そのために、復職後の職場勤務に際しては、当初は職務調整しながら徐々に軌道に乗せていきます。そのためには、
  ① 仕事の負荷の調整
  ② 勤務時間・条件の制限
  ③ 定期的なフォロー面談
などが必要となります。

 とはいうものの、復職問題は実際には簡単ではありません。
 疾病の傾向に応じた対応が必要です。
  ① 比較的軽度で仕事に影響がなく早期の回復が見込める場合
  ② 1~2回の休職を経てその後は安定就労が見込める場合
  ③ 医療的なケアが適切に行われておらず、回復にむけてのプロセスも確立されておらず、休復職を
   繰り返したり、周囲の対応も困難が伴う場合
  ④ 比較的重い疾病により休復職を繰り返したり、回復が困難な場合
 いずれの例もたくさんあります。
 復職支援と言っても①や②ならまだしも③や④は医師も使用者も、そして企業内労働組合も放置します。使用者はいざとなったら就業規則に従って退職や解雇で事足れりです。そのために産業医も利用します。裁判の例がまさにそうです。
 ③や④の労働者が、個人加盟の労働組合・ユニオンに大勢相談に来ています。


 よく言われますが、主治医は症状しか診ません。労働現場のことを知りません。上記の裁判例のような年間労働時間3.565時間だった労働者が、どのような病名・症状か詳細にはわかりませんが、そもそも簡単に 「寛解」 や 「完治」 するはずがありません。そのような状況で職場に戻ったら再発するのは予測できました。このようなことは労働相談を受けている者たちにとっては “常識” です。
 また復職を繰り返すと労働者は自信を喪失します。復職の失敗は労使双方の責任です。復職は1回で成功させるのが望ましいです。
 「復職の手引き」 は法的義務を課すものではなく、準拠しなくても義務違反にはならないと位置づけるのではなく、成功に導くためにもっともっと豊富化させる必要があります。

 問題解決の本質は、使用者も弁護士も労働者を人間・「生き物」 と見ていないことにあります。労働者の体調を数字で測るのは間違いです。すべてがビジネスに純化しています。使用者にとっては代わりはいくらでもいるのです。企業内労働組合は組合員を数としか見ていません。
 人間らしい労働を捉え返し、キャノンの人事部が気付いた雇用環境の変化、そして長時間労働を解消したら体調不良者、休職者は激減し、自殺者数も減少します。本当の “むだ” をなくせます。  

  
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「東京は、自由な街ですか。」
2012/12/14(Fri)
 12月14日(金)

 12月4日から10日までの人権週間にちなみ、東京都人権啓発センターはポスターを作成しました。期間中は山手線などにも貼られていました。
 ポスターは、土手を下から見上げるアングルで、土手の上に自転車が停まっていて、バックは朝焼けが残る青空です。
 青空にのなかに
 「東京は、差別のない街ですか。
  東京は、迫害のない街ですか。
  東京は、貧困のない街ですか。
  東京は、虐待のない街ですか。
  東京は、いじめのない街ですか。
  東京は、自由のない街ですか。」
の文字が浮かんでいます。
 その下に 「今、考えよう、人権のこと」 とあります。人権は大きい文字です。

 インターネットで検索したらデザイナーの思いが載っていました。
 「世界人権宣言の条文を読んだことがありますか。『すべての人間は、生まれながらにして自由であり~』 という書き出しで始まるその全文は、人権が私たちにとっていかに大切なものであるかということ、私たちがいかに人権に守られた存在であるかということを端的に教えてくれます。今回のポスターはこの条文をもとに、東京に暮らす誰もが人権とあらためて向き合うきっかけになればと考えて制作しました。人権とは何なのか、人権を守るとはどういうことなのか。一人ひとりがほんの少しでも考えるとき、人権は初めて生きた言葉となり、人を守る力を持つと思うのです。」

 「世界人権宣言」 は、1948年12月10日に国際連合第3回総会で採択されました。これを記念して12月10日を 「人権デー」、4日から10までを 「人権週間」 と定めています。
 「宣言」 の第一条は、「すべての人間は、生れながらにして自由であり、かつ、尊厳と権利とについて平等である。人間は、理性と良心とを授けられており、互いに同胞の精神をもって行動しなければならない。」 と謳っています。
 そして第二条以降にポスターに書かれている差別や迫害などの禁止事項や、保護規定などが謳っています。

 とはいうものの、ポスターを見た瞬間は 「世界人権宣言」 を思いつかず、ついつ前都知事の顔を思い浮かべて、大胆なアイロニーと受け取ってしまいました。
 1項目ずつ 「はい」 「いいえ」 で答えろと言われたら 「自由のない街」 以外は大きな 「いいえ」 です。ポスターは的を得て啓発しています。
 他の団体が同じようなポスターを作成したら没にされかねません。しかし東京都人権啓発センターは毎年すばらしいポスターを作り、講演会や展示会を開催している伝統があります。没にしたら、それこそ 「東京は、自由のない街」 になってしまいます。

 東京は差別、迫害、貧困、虐待、いじめがある街ですが、自由のない街です。
 少し前から、東京都は、反・脱原発を訴える人たちが日比谷公園に集まって国会までデモ行進するのを規制するため、日比谷公園に大勢集まる場合は日比谷公会堂か野音の使用許可をとれといってきました。使用許可は数か月前からの申請が必要で、有料です。実質的デモ禁止攻撃です。

 かつて、日比谷公園の北西にある現在の 「健康広場」 は 「日比谷小公園」 と呼ばれていました。健康広場の向いの検察庁庁舎の敷地に、かつては東京高裁と地裁がありました。日比谷小公園に集まって意思一致をして裁判所に傍聴に向かう、裁判終了後の報告会を行うのに便利でした。
 狭山差別裁判の開廷のたびに、この日比谷小公園を中心に、日比谷公園全体でいくつもの集会が開催されました。
 しかし、東京都は、ここを 「健康広場」 に作り変えて体力測定機材などを固定し、集会が開けなくしました。
 JR有楽町駅近くの数寄屋橋公園はメロドラマで有名なだけではありませんでした。
 この公園を拠点にして通行人に様々な呼びかけが行われました。古くは原爆ドーム保存の訴え、原水爆実験に抗議する署名活動、韓国の政治犯釈放を要求するハンストなどです。
 しかし東京都は、公園と道路の境に大きな石を並べ、使いにくくし、実質的に排除しました。
 これらが行われたのは、中曽根政権・後藤田官房長官の時です。2人の内務官僚出身者は直接的手段を行使しないでで、人々から直接的行動、表現の自由を奪いました。全国でポスター掲示を禁止するために屋外広告物条例などが改悪されたのもこの頃です。

 今、毎週土曜日の夕方5時から6時に、60年代末の毎週土曜日には 「フォーク広場」 になった新宿駅西口 「通路」 に、イラク派兵問題や沖縄の米軍基地問題を訴える人たちはポスターを持って立ち、「サイレンス」 で訴えをしています。声を出したりチラシを配ると排除されます。
 しかし東京都はすべての人々から自由を奪っているわけではありません。
 様々な団体が集団でメガホンやのぼり旗などを持って署名や募金、チラシ配りをしています。12月になると赤い羽根運動や救世軍鍋は恒例になっています。
 一方で大きな音を出しながら活動するのが許され、その隣では 「戦争反対」 と肉声で訴える行為さえ禁止されるのです。“何かを持って立ち止まっている行為”だけならばかろうじて許されるのです。
 現在進行形のほんとうの話です。


 東京都の 『広報東京都』 12月1日号も人権週間を見開きで取り上げています。
 「みんなで築こう人権の世紀」、テレビコマーシャルは 「支え合い、誰もが夢にチャレンジできる社会へ。」 です。やはりコピーは “穏やか” です。
 「24年度啓発活動協調事項」 には、「女性の人権を守ろう」 や 「子供の人権を守ろう」 など17項目あります。
 その中に 「ホームレスに対する偏見をなくそう」 があります。
 考えさせられてしまいました。「ホームレス」 は存在する問題で、「偏見をなくそう」 は正しいのですが、この言い方は、グローバル時代は住居も自己責任という発想を前提にしているように受け取れます。
 「東京は、貧困のない街ですか。」 、なぜ貧困が発生しているのかをきちんと検討し、「ホームレスに住居の保障を」 こそが人権ではないでしょうか。

 12月4日の 「活動報告」 で、本 『東京満蒙開拓団』 から引用をしました。
 「……なお、『ホームレス』 のことを今日では 『路上生活者』 と呼んでいるが、当時は 『屋外居住者』 と呼んでいた。彼らは必ずしも 『路上』 にいるわけではなく、やむを得ず公園や河原で生活しているので、こちらの方が用語としても、居住という事実を認め表したものとして正確だと言えよう。」
 それをうけて 「『屋外居住者』 の言い方には、まだ本来居住は屋内というニュアンスが含まれます。しかし 『路上生活者』 の言い方には、生活の場所確保は自己責任と見放していることを裏づけています。そして公園からは排除という言い方でもあります。」 と書きました。「ホームレス」 はさらに冷たい響きがする言葉です。
 改めて住居の保障が人権とは結びついて捉えられていないということを実感させられます。人権保障は、お互いの存在を認め合うことから始まります。しかし 「ホームレスの存在」 を “認め続ける” ことはやはり人権からははずれます。

 「ホームレスに対する偏見をなくそう」 もそうですが、東京都の項目は人権というよりは高所からの “ほどこし” の姿勢が見えます。
 人権は、お互いの違いを認め合って存在することが当たり前の社会に作り上げることによって保障されます。そのためには不条理なことに対しては一緒に改善させるための声を上げていくことが必要です。 

  
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「詩」 が突き付ける放射能被害
2012/12/11(Tue)
 12月11日(火)

 12月8日は、「パールハーバー」 の日です。
 なぜ日本は戦争に突入していったのか、今後同じ過ちを繰り返さないためにどうしたらいいかを改めて考えるにはいい機会です。
 今年は衆議院選挙戦中のため例年のように記念の催しはもたれなかったようですが、在韓被爆者問題市民会議は、詩人の石川逸子さんをお呼びしてお話と朗読で構成する 「詩が語る非核・非戦の集い」 を開催しました。

 被爆者問題から戦争を捉え返し、まだ解決していない被爆者問題、戦後補償を語る時も、東日本大震災と福島原発、原発問題を抜きにすることはできません。フクシマを繰り返させてはいけません。
 たくさんの詩が朗読されましたが原発に関係する3編を紹介します。


    『ナミダ』

          石川逸子

  おびただしい袋に 詰めても詰めても
  詰め切れない ナミダ が
  今日も また 今日も
  泥土に滲み 丘に溜まり
  あるいは 海へ ひそひそと ながれていく

    夜更け 昼のせつない笑顔を落として
    顔をおおっていた 娘が
    ふと立ち上がり 空を見上げると
    満天の星

  ヒトの作った灯りはいっとき とだえても
  天然の光はあるのだね
  気が遠くなるような時をへて
  星々の放った光が
  いまこの地を照らしている

    ちぎれた アルバム ランドセル
    真っ逆さまの車 割れたかまど
    放射能降りそそぐ 無人の村の山吹 さまよう犬
    すこし泣き顔の 地蔵尊

  ごらん いま 星々の光を浴びて
  瓦礫のなか 海 丘の上 で
  おびただしい袋に 詰めても詰めても
  詰めきれない ナミダ が
  真珠のように 光っているよ

  あの光は これからの道しるべなんだ
  だいじに 長く 灯していけるだろうか・・・


 静かな中で聞き入っていましたが、ゆずの 「栄光の架橋」 の熱唱がバックミュージックで流れている気がしていました。


     『ヒロシマ連祷 43
        ――松本直治『火の墓標』より」

                 石川逸子

  「もう、僕、わかっているんだ、
   死にたくなかったけど
   もう さよならなんだ。」

  晩秋の病院で父は息子にいわれた
  窓の外でイチョウが舞っている――
  その夜更け、ほんとうに息子は逝ってしまった。

  父を
  母を
  いといけない2歳の子を残して
  膀胱から脳までガンに食い荒らされて

  「原子力は第三の火だよ、
   危険性は全くない。」
  信じきったお返しは
  31歳でぼろぼろに崩れた骨だった。

  東海原子力発電所安全管理課に3年1か月、
  敦賀原子力発電所安全課に代わって3か月目に発病。
  病んではじめて彼の胸に
  疑問と不安が宿る。

  第一線ではたらく下請け原発労働者の被ばく量がふえている。
  ふえている。
  「一顧だにされない」 と日記に書く、
  彼はすでに舌半分を切りとっていた。

  腫瘍か、ガンか、原発のせいか、
  (安全は人と人との信頼感で保たれる)
  原子炉に入ったことのない役人のセリフに
  「怒りを感じる」
  と書く、
  頭が割れるように痛い。

  役人も原発の高級幹部も入ったことのない
  原子炉で、
  にんげんが、
  にんげんが はたらいている。

  パイプに着いたゴミを拭き取る、
  分解した部品のサビを落とす、
  バルブにパッキングを取り付ける、
  電気コードの配置をする、
  ビニール袋に詰めて運搬する、
  圧力容器から駆動装置を引き抜く、
  汚れた作業着をクリーニングする、
  そのどこにも
  放射能がうようよ漂っている。
  見えないだけだ。

  「ガーゼマスクくらいで
   彼ら下請け労働者は大丈夫なのだろうか、
   ぼくらは充分に勉強し、あらゆる装備をしているので安全ですが」
  あるとき まだ丈夫だった息子は父に書き
  その あらゆる装備をした 彼の
  鼻から 口から 放射能は入っていって
  彼のきれいな細胞をこわした。
  パパとなったとき、
  すでに彼の内側は蝕まれていた。

  第三の火は
  にんげんを焼き尽くす火だったのか。
  原子炉の死の灰は 息子を殺したが
  それで終わりではない。
  ストロンチューム90の半減期は28年、
  プルトニューム238は87.7年という、
  プルトニューム239にいたってはなんと
  2万4000年も生き続け 放射しつづけるのだ。
  おれたちのひまごのまごの そのひまごのまごの そのやしゃごの……
  はるか気が遠くなる先の 先の
  にんげんたちにまで
  いま生まれてしまった
  放射能が
  アルファ線を放射しつづける。

  そんなことは許されない
  ゆるされない と
  言ってくれ
  ぼろぼろの 崩れた骨で
  息子よ――

    オ父サン
    2万4000年ドコロカ
    アス アサッテガ 危ウイノデスヨ
    小サナコノ列島ニ
    32基ノ原発
    ボクノ子ドモヲ オ父サン
    ボクノ子ドモヲ 守ッテクダサイ

  そうだ お前を助けられなかった 父は
  せめて お前の子どもを
  でも どのように
  この ぎっちり 原発に囲まれた列島で

  夜
  ひとりの父親の
  嘆きが 怒りが
  いらだちが
  この小さな星となって
  この列島をかすかに照らしている。

  くらい窓をとおして 眠る この列島のひとびとの
  夢のなかに かなしく射しこんでいる。

           (『輴』1986年10月15日)


 20年以上前の作品ですが、今年6月に出版された 『詩文集 哀悼と怒り 桜の国の悲しみ』 (西田書店) に再録されています。放射能の 「過ち」 が繰り返され 「続けて」 います。

 被ばく労働問題については、被ばく労働を考えるネットワーク編 『原発事故と被曝労働』 (三一書房刊) や、布施祐仁著 『ルポ イチエフ 福島第一原発レベル7の現場』 (岩波書店) が現場の生の声を伝えています。一読をお勧めします。


     『沈黙』

            石川逸子

  「一番大変だったのは?」
  記者の質問に
  東京消防隊の隊長は
  いっとき 沈黙した

  「・・・一番大変だったのは 隊員です・・・」
  目に見えない敵 充満する放射能と戦いながら
  瓦礫で車が通れない道を
  350メートル近く手作業で 放水ホースをつなげたのだ

  「・・・残された家族に申し訳ない
   お詫びとお礼を申し述べたい・・・」
  こみあげるものを抑えての
  しずかな発言

  近隣圏内を わが家族を 列島まるごとを
  放射能地獄に悶えさせないための
  必死の 放水作業
   (原発を推進した人たちではないのに)

  かたや 1号炉水素爆発の折り
  負傷した作業員たちの数さえ 「確認」 する気もなかった
  経産省原子力安全保安院N審議官
  「早くしないと処分するぞ」 と消防隊を脅した政府関係者

  事故前には 地震学者の提言を無視
  住民の生命より 廃炉が未練で アメリカからの注水機の提供も断った
  東電の体質 許容してきた歴代の政府
  快適という麻酔をたしかに飲んできた わたし 

  隊員の被爆を恐れつつ
  しっかりと放射能測定器をにぎりしめ 原子炉への
  海水投入に全力を尽くしてきた 消防隊長の
  いっときの 沈黙

  そのわずかな 深い (間(ま))が
  啓示した これからの
  このくに の 在り方
   (どうか もう遅くないことを)

    …地元被災民が多いという作業員の方々の安否を気遣いつつ…


 東京電力と歴代の政府が起こした原発事故に対して消防関係者らは“命をかけて”対処しました。その献身性については感謝をしてもしきれるものではありません。(消防関係者の奮闘については、9月7日の 「活動報告」 参照) この奮闘は記録として残し伝えて行く必要があります。石川さんの詩はその役割をはたしています。
 そして現在も作業員は頑張り続けています。


 12月11日で、東日本大震災から1年9か月を迎えます。 

  
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