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韓国のメンタルヘルスケア対策
2012/08/10(Fri)
 8月10日(金)

 7月30日付の新聞に 「精神疾患の検診実施 韓国 来年から全国民に」 の記事が載りました。
 「学校や職場などで厳しい競争にさらされ、ストレスから精神疾患にかかるケースが多いためで、検診によって早期の発見、治療を目指す。
 保健福祉省の昨年の実態調査によると、18歳以上の国民の14.4%にあたる519万人が精神疾患にかかったことがあるという。また自殺率は経済協力開発機構 (OECD) の加盟国の中ではワーストだ。
 こうした状況を受け、同省は精神疾患に対する総合対策をまとめた。来年から全国民を対象に、郵送による問診形式で検診することにし、就学前に2回、小学校で2回、中学・高校で各1回、20台で3回、それ以降は30代、40代など年代ごとにそれぞれ2回ずつ実施する。
 また、精神疾患への社会の偏見が強い中で、精神科への相談をしやすくするため、薬の処方が必要ない相談の場合には、健康保険の適用を請求する際に 『一般相談』 として処理できるようにする。」

 韓国のうつ病患者は、昨年の調査時点で270万人と10年間で1.6倍、2011年の年間自殺者数は、10年間に2.4倍になっています。
 保健福祉部は、昨年、全国の成人男女およそ6.000人を対象に精神疾患実態を調査しました。その結果、成人の6人に1人が1年以内に精神疾患罹患を経験しています。さらに成人の4人に1人がこれまでに1回以上、精神疾患罹患を経験していたことが分かりました。性別では男性が16.2%、女性が15.8%です。
 アルコール・ニコチン中毒が伴う 「アルコール・ニコチン使用障害」 を除いた精神疾患の1年有病率は10.2%、生涯有病率は14.4%です。
 しかしそのうち、病院や専門家による治療を受けているのはわずか15.3%にとどまっています。大半が周囲の目を意識して治療を受けていません。
 韓国政府は軽度のうつ病などがカルテに記録されることで就職などに不利な影響を与えないよう、精神健康検診の実施においては精神疾患の細分化など対策づくりに取り組み、「精神疾患」 の範囲を縮小することを決定しました。
 実施に際しては、乳幼児と青少年は注意欠陥多動性障害 (ADHD) やうつ病、インターネット中毒など、青年や壮年はストレスやうつ病、不安障害、自殺の危険性、アルコールによる障害などについて重点的に検査を予定しています。また、60代以上の高齢者はストレス、うつ病、自殺の危険性などの傾向を検査する予定です。

 韓国でも日本同様、精神疾患の問題が深刻です。
 韓国政府は、日本で今衆議院に上程されている 「労働安全衛生法」 改訂案を真似しています。
 しかし、「学校や職場などで厳しい競争にさらされ」 と 「社会の病」 の原因がはっきりしています。だとしたらその対策が不可欠です。採られようとしている対策では本質的解決にはなりません。

 この間の韓国でのメンタルヘルスに関連する新聞記事を拾ってみます。

 「ハンギョレ新聞」 2012年7月4日
  「光州 (クァンジュ) 市民軍出身の医師 “5月の傷” を治癒」
    カン・ヨンジュ氏 光州トラウマセンター長内定
    高3で参加して道庁鎮圧前に脱出
    “生きている者の負債意識” から民主化運動
    欧米留学生事件連累 拷問受け
    「国家暴力被害者の一人として5・18で苦しんでいる人を助けたい」

 彼は今でも “南山 (ナムサン)” に行けば息がぐっと詰まってしまう。脈拍がはやくなって不安になる。ソウルの南山(ナムサン) は過去中央情報部 (現国家情報院) の対共調査局の建物 (現ソウル市庁南山 (ナムサン) 別館) があった所だ。多くの人が引っぱられて行ってぞっとするような拷問にかけられた。1995年当時国家安全企画部が瑞草区 (ソチョグ) 内谷洞 (ネゴクトン) に庁舎を移すまで “南山 (ナムサン)” は 「飛ぶ鳥も落とす」 という情報機関の別称だった。
 収監14年目の1999年に最年少非転向長期囚として出所したカン・ヨンジュ (50・ソウル アナパ医院の院長) 氏にとって、南山 (ナムサン) は依然として威圧的な場所だ。カン院長は2日「何ヶ月か前に故キム・グンテ先生の放送番組製作のため南山 (ナムサン) 別館に同行し私が拷問された場所がここですと言った瞬間、不安感に襲われてその場に立ったまま泣いてしまった」 と語った。

 国家暴力被害者であるカン院長が、早ければ今月末開院する 「光州トラウマセンター」 のセンター長 (非常勤) に内定した。トラウマ (外傷後ストレス障害) は戦争、拷問など国家暴力や事故、犯罪被害のような身体的・精神的衝撃を体験した後現れる精神障害を意味する。 国内初の公立の光州 (クァンジュ) トラウマセンターは、政府と光州市が67億5000万ウォンずつ出して設立する。光州 (クァンジュ) 西区 (ソグ) 治平洞 (チピョンドン) の光州都市公社の建物でスタートし、来年は尚武 (サンム) 地区の5・18教育館のそばに建物を立てて入居する方針だ。カン院長は精神保健分野の看護師や心理相談分野の専門家など10人余りと共に、5・18被害者と家族、国家暴力の被害者たちの傷を治療する。 拷問被害者であり同時に拷問被害者の治癒プログラムを実施してきたので、適格者に挙げられる。

 彼は全南 (チョンナム) 大の医学部生だった1985年、安全企画部が発表したいわゆる 「欧米留学生スパイ集団事件」 に連累され無期懲役を宣告された。ソウル南山 (ナムサン) 安全企画部別館に引っぱられて行き60日間拷問にあったあげく嘘の自白をしてしまい、一枚の転向書を書くことを拒否して14年閉じ込められていた。

 「5・18光州 (クァンジュ) 虐殺や拷問のような国家暴力の被害者は、数十年が過ぎたけれどもいまだに怒り、酒を飲み、事故を起こし、うつ病になります。性格の問題ではないのに個人の責任のようにされてきました。」 国家暴力被害者の精神は傷つけられたその瞬間をほんの一寸も抜け出せないまま、さ迷い徘徊しているという。2009年の統計を見れば、5・18の負傷後遺症死亡者380余名のうち自殺者が41名 (10.8%) だ。経済協力開発機構 (OECD) 会員国の平均自殺率0.02%より300倍も高い。

 彼は光州 (クァンジュ) 望月洞 (マンウォルトン) の5・18墓地に行けば今でも平常心を失う。高校3年の時5・18に市民軍として参加し、鎮圧の前日に旧全南道庁を抜け出したのが傷となって残った。「生き残った者の恥ずかしさのために一層激しく独裁と闘おうとしました。そうするうちに拷問で「ごみ箱に捨てられた私の魂」 を見て傷つきもしたが、内面の傷に対面することで自ら治癒しました。」

 1999年復学して2004年卒業したカン院長は家庭医学専門医になった2008年、精神科医師であるチョン・ヘシン博士とともに拷問治癒の会 <真実の力> を設けて現在まで拷問被害者治癒の会の活動に精を尽くしている。

 カン氏は 「5・18被害者らと家族が体験している苦しみの原因が国家暴力であるということを分からせ、治癒の道を助けたい」 として 「5・18が他の国の民主主義の手本となったように、光州がアジアのトラウマ治癒のハブの役割をしなければならない」 と話した。


 「ハンギョレ新聞」 2012年1月10
  「果てしなく続く下請け ‘IT土方’ 量産…‘韓国版ジョブズ’は永遠の夢」
    元請け業者の要求合わせるために毎日徹夜勤務も茶飯事
    延長勤労手当ては受け取れず慢性的ストレスに露出

 政府が先端知識産業を育成するとして作ったソウルデジタル産業団地 (旧、九老工団)。 ここから ‘韓国版スティーブ・ジョブス’ が出てくることがありうるだろうか? 情報技術 (IT) 労働者は ‘甲-乙-丙-丁’ まで続く下請け構造、これにともなう長時間労働慣行がなくならない限りは不可能なことだと口をそろえた。
 ITベンチャーブームが真っ盛りだった1998年に業界に飛び込んで14年目、職場9か所を転々として通ったパク・ヨンオン (仮名・41) 氏は自身を‘IT土方’だと言った。パク氏はソウルデジタル産業団地のあるソフトウェア開発業者で仕事をしている。昨年には ‘甲’ である大企業との契約の関係上 ‘乙と丙’ の間くらいのちょっとはマシな所で最新型スマートフォンにソフトウェアを植える仕事をした。元請け業者が要求したソフトウェア開発完了期間は3か月. この期間にパク氏はほとんど毎日夜明かしをしたようなものだ。

 彼は 「一日の開発成果を送れば翌日には他の下請け業者からバグ (エラー) 目録を送ってくるが、あたかもコンベヤーベルトでねじを締めるような感じだった」 として 「このような環境でスティーブ・ジョブズのような人が出てくるということは有り得ない」 と話した。

 金融圏システム統合 (SI) ソフトウェア開発のフリーランサーとして仕事をするチェ・某 (29・女) 氏も 「一旦プロジェクトが始まれば正常な暮らしは不可能だ」 として 「10か月間サウナ定期券を買って1日に3~4時間だけ寝て働いたが、賃金と労働時間を計算してみると最低賃金にも至らなかった」 と話した。主に契約の関係上 ‘丙’ または ‘丁’ の役割を担うソフトウェア開発業者で仕事をする経歴3年目のキム・某 (28) 氏も 「元請けが提供する小さな会議室で一日中PM (プロジェクト マネジャー) の顔色を見ながら仕事をするが、夜勤をしなければ能力がないという評価を受ける」 として 「経歴が短い労働者は多段階下請け構造で被害者にならざるを得ない」 と話した。

 昨年ソウル南部地域労働者権利探索事業団 ‘労働者の未来’ がこの地域のIT労働者213人を調査した結果によれば、回答者の68%が週当り45時間以上働いたことが分かった。また、1日10時間を超えて勤務した日が1か月に20日を超えるIT労働者も23.5%にもなった。一般事務職労働者ではこの比率が9.4%に過ぎない。長時間労働は精神的・肉体的ストレスにつながる。回答者の10%は業務上脱尽を訴え、61%は腰・肩などに疾患があると答えた。

 民主労総情報通信産業労働組合はこのように劣悪な労働条件で仕事をするIT労働者が全国的に少なくとも15万人、多くて30万人に達すると推算している。

 ナ・ギョンフン情報通信産業労組事務局長は 「大企業の単価切りと多段階下請け慣行が消えない限り、IT労働者の暮らしは変わらないだろう」 とし 「政府がIT労働者に対する深層的な勤労点検・監督を通じて不当労働行為を根絶しようとする意志を示すべきだ」 と話した。


 「ハンギョレ新聞」 2011年10月10日
  「事故目撃後にうつ病自殺も業務上災害」
    「裁判所 『サムスン火災、保険金支給せよ』」

 列車事故を目撃してうつ病にかかった乗務員が自ら命を絶った場合、これを業務上災害と見なすべきだとする裁判所の判決が下された。
 ソウル中央地方法院民事合議16部 (裁判長 チェ・ポクキュ) は、自殺した列車乗務員イ・某氏の遺族チョン・某氏らが、サムスン (三星) 火災海上保険を相手に訴えた保険金請求訴訟で、「遺族に計1億ウォンの保険金を支給せよ」 との判決を下したことが9日、明らかになった。

 韓国鉄道公社に所属の機関士であったイ氏は2004年6月、列車を運行中、線路に横たわっていた泥酔者を轢く事故を体験した。泥酔者がその場で亡くなると、すぐにイ氏は直接、遺体を収拾して警察に引き渡し、それ以後、毎晩、発作症状を体験することになった。イ氏は2005年、「詳細不明の精神・身体性障害」 と 「うつ病」 の診断を受け、休職中に自ら命を絶った。その後、勤労福祉公団は約1億ウォンの遺族給与を支給したが、サムスン火災が「被保険者の自殺・自害は補償しない」という約款を理由に、団体障害保険の保険金支給を拒否すると、直ちに遺族は訴訟を起こした。

 裁判所は判決文で、「事故によって不安障害とうつ病など精神疾患が発生し、イ氏はこの疾患の症状である自殺願望により命を絶った」 として 「精神科疾患と業務上災害は、相当な因果関係がある」 と遺族側の主張を認めた。


 「ハンギョレ新聞」 2011年9月16日
  「[低い声] 灰皿投げられても喉首捉えられても… "愛しています、お客様"」
    「感情労働者の涙」

 あなたのご両親が亡くなっても笑わなければならないとしたら?
 一般人としては想像だに難しいことだ。だが、こういう状況に置かれている人々がいる。
 ほかならぬ ‘感情労働者’ だ。‘感情労働’ (emotional labor) という単語は米国の社会学者ラッセル ホックシールドが著書 <管理される心:人間感情の商品> で書き初めて世間に知られた。感情労働は本来の感情は隠し職業上他の表情と身振りをしなければならない状況を称する。美容業、コールセンター、販売職、カジノディーラー、スチュワーデスなどがこれに該当する。韓国ではまだ統計上 ‘感情労働者’ の項目が別になく、販売・サービス職従事者統計を根拠に630万人余りの感情労働者がいると推定している。
 ちょっと見には感情労働者は華麗に見える。労働をする場所がホテル、デパート、カジノのような消費の上層を占める空間であるためだ。だが、こういう華麗さの裏面に ‘蝕まれた心’ が存在するということが専門家たちの指摘だ。

 今回の ‘低い声’ ではカジノ ディーラー、デパート販売職に従事する女性感情労働者の声を聞いてみた。彼らは “中が腐る一歩手前” とし鬱憤を晴らした。以下の記事はインタビューを土台に独白再構成されたものだ。名前は全て仮名だ。

 特級ホテル カジノディーラー キム・ジョンミン氏

 こんにちは。 私はソウルにある特級ホテルのカジノでディーラーとして仕事をしているキム・ジョンミンといいます。 年齢は28才で経歴5年目です。初めて入社した時は私の特技である中国語を思う存分活用できるという夢を膨らませていました。しかし、教育を受けた時から何か変でした。基礎的なディーラー技術を習ってからは継続的に ‘忍耐’ 教育を受けました。 会社では "無条件に我慢しろ" とばかり言いました。"カジノという所はお金を得る人より失う人々が多いので、顧客が怒るのは当然だ" と言いながらです。教育を終えて現場に投入されると、なぜこらえなければならないのか実感できました。悪口くらいは基本ですよ。お金を失った顧客がテーブルを叩き、ののしり、乱暴を働いてもじっとしているほかはありませんでした。そのように教育を受けたからです。 韓国のお金で最大8千万ウォンまでベッティングが可能ないわゆる ‘大口’ 顧客たちにはより一層気を遣わざるを得ません。実際ディーラーに何の罪がありますか。自分たちが失敗してお金を失ったのに、なぜ私たちが災いをみな受けなければならないのですか。

  "お金を失い、なぜ八つ当たりするの
  灰皿投げるのは止めてください
  各種疾病にうつ病まで…
  あと5年やったら辞めます"

 私たちはタバコの煙にも無防備に露出しています。勤務が終われば喉に痰がいっぱいです。賭博する人々はなぜタバコをあんなにたくさん吸うんでしょうか。自然にテーブル上の灰皿も多くならざるをえません。ところで灰皿が最近、陶磁器からプラスチック製に変わりました。お客さんが腹が立てば投げるからです。よく知っている後輩はお客さんの投げた灰皿に当たって病院で治療を受けたこともあります。本当に生命の脅威を感じる程度まで達して初めてプラスチック灰皿に変えたんですよ。
 顧客たちの暴力はそれでも耐えることができます。あまりにひどければ保安要員が制止したりするからです。でも、外国人が自分たちの言語でするセクハラは本当に我慢できません。私たちが聞き取れないだろうと思って、あらゆるわい談をならべます。私たちはみな分かっていますね。 ほとんど全員が外国語を特技として選ばれた人々なのに、それが分からないと思いますか? ア、考えただけで怒りがこみあげてきます。

 勤務環境も劣悪です。朝6時~午後2時、午後2時~夜10時、夜10時~朝6時、このように3交代で回ります。一回時間が指定されれば2か月連続で勤めます。深夜班になれば2か月間 何をして暮らすのか、ぼんやりしています。一日8時間勤務で良いですって? 中間に昼休みもありません。ご飯を10分で食べなければなりません。そのためかディーラーたちの大部分が神経性胃腸病を持っています。ここに一日中立っていると首・腰・膝が全て良くありません。太陽の光を見られずに屋内生活だけする結果、うつ病症状も出てきます。精神科診療を受けている同僚も多いのです。私も3年目になって、からだが壊れていくのが感じられましたよ。風邪を引くとなかなか治りません。名節ですって? 外国人対象カジノなので国内の名節とは関係ありません。ストレス解消はどのようにするかですか? 大部分は ‘お酒’ です。不規則な勤務時間のせいで友人たちと会うことも難しく、仕事を終えて同僚たちとお酒を飲むのがストレス解消の全てです。からだはもっと壊れることですね。本当に、私はぴったり5年だけ働いて辞めます。ぴったり5年だけ。


 私はイ・ミョンジンといいます。今年35才です。ある外国有名化粧品ブランドの販売社員としてデパートを巡りながら通って17年間勤めました。元々は陸軍士官学校に行きたいと思っていた気の強い女子高生でした。高等学校を卒業する頃に父が倒れました。やむを得ず生計のために飛び込みました。先生の紹介で国内化粧品ブランドのデパート販売員として就職しました。私が熱心に働いたようです。およそ2年ほど仕事をしたところ、外国ブランドからスカウト提案がきました。その時から今までこちらで仕事をしています。17年間どうだったかって? 私の中がみな腐っちゃいましたよ。こちらの平均勤務期間が3~5年にしかならないのです。みな出て行きます。私のように10年を越す長期勤務者と新入社員だけがいる計算です。中間がいないのです。

  “パンフレットを引き裂いて顔に投げ付け
  トラブルが起きたと言って喉首つかまえ
  土下座して謝れとまで…
  家族だと考えてみて下さい”

 そのはずです。私もこれまで何度も泣き喚いて辞めようとしましたよ。でも生きていくことがそんなにたやすいものではありません。そうするうちに17年が流れましたね。私たちは1日に12時間程度勤めます。デパートのドアが開く前から閉じて整理する時間まで合わせればその程度になります。日曜祝日? エイ、そんなものがあるわけないでしょう。日曜祝日がデパートの稼ぎどきでしょう。週5日制? それはどこの国の制度でしょうか? 有名ブランド化粧品だから給与も高いかですって? 私たちは給与の30~40%がインセンティブです。化粧品をたくさん売ったか、売れないかによって給与が決まります。販売が低調な月は給与が少ないだけでなく、デパートから担当職員の交替要求までしてきます。毎月実績が出てくる度にビクビクですね。

 私は他の感情労働者たちも尊重します。でも、デパート化粧品売場の職員たちほど哀歓がある感情労働者もないようです。他のショッピングとは違って、化粧品を買いに来られる顧客はとても鋭敏になっています。大部分が皮膚トラブルのために苦労されたり、老化現象によるシワのために機嫌を損ねた女性の方が多いのです。こうした方々を対象に化粧品を売らなければならないため、どんなに苦労するでしょうか。

 デパート売り場はサンプル贈呈行事をたくさんします。パンフレットが発送されて当日になれば大騷ぎになります。限定数量なのですぐ品切れになるのは当然ですね。顧客はそのことに抗議します。パンフレットをビリビリに破って顔に投げつけます。紙で頬を打たれる気持ち、わかりますか? それに対して私たちは “申し訳ありません、お客様” と言うほかはありません。本社では ‘ミステリーショッパー’ (職員親切度を検査するための偽装顧客) をいつも入れてきます。 顧客が入ってきて出て行くまで、マニュアルどおりにしなければ、徹底的にチェックして人事考課に反映させます。だから‘無限服従’するほかはありません。

 私は全ての災難に遇いました。暴力団員が恋人にあげる化粧品を買っていってトラブルが出たとして、私の喉首をつかんで引っ張っていったこともあります。あるお客さんは土下座して謝れば許してやると大騒ぎをするなかで、実際にひざまずいたこともありますよ。ア、本当にその時のことを考えただけで涙が出ますね。3年前ぐらいには流産しました。ストレスのためでした。お腹の中で死んだ子供を産婦人科でかき出しました。そして3日後には出勤しました。職員がいないというからどうしようもありません。血を流しながらずっと勤務しました。それに耐えて今はマネジャーになりましたが、マネジャーになると一層顔色を伺うしかなくなりました。‘甲’であるデパートの言いなりになるほかはありません。デパートの化粧品チーム長が突然会食でも招集すれば、すべての化粧品コーナーのマネジャーが一ヶ所に集まります。そこで俗称‘妓生役’をするほかはありません。お酌をして、2次会に行って歌を一緒に歌ってですね。なぜそうすると思いますか? 本社人事評価項目に ‘デパートとの関係’ という項目があります。簡単に言えば、うまくやれということでしょう。それでも化粧品チーム会食くらいは理解できます。なぜ私たちと関連もない経理部会食に呼ぶんでしょう? 「今、経理部長がいるので来てください」 と電話で言って切るのです。行かないで済むと思いますか? 私が以前に仕事をしたデパートでは、あるチーム長がそのような会食の席でセクハラをして辞表を出したこともあります。

 最後に言いたいことがあります。お客さんの皆さん、皆さんが真に尊重されたいならば、デパート職員たちのことも尊重して下さい。自分の家族がそこで仕事をすると考えてみて下さい。心からお願い申し上げます。


 韓国の感情労働問題については、今年1月27日の 「活動報告」 でも11月28日付と30日付の 「ハンギョレ新聞」 を引用しました。
 PTSD、惨事ストレス、過重労働、感情労働など日本と同じ状況が起きています。
 日本でも同じですが、精神疾患に罹患することへの対応が個人の主体の問題、克服されるべき課題とされています。
 「社会の病」 は社会で解決しなければ治りません。そうしないと 「犠牲者」 は増え続けます。 
  
  
   
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