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スクリーニングはやはり怖い
2012/06/15(Fri)
 6月15日(金)

 いじめ メンタルヘルス労働者支援センターと労働安全衛生センター連絡会議メンタルヘルス・ハラスメント対策局は、現在衆議院に上程されている労働者安全衛生法改正案・「医師又は保健師による労働者の精神的健康の状況を把握するための検査を行うことを事業者に義務付ける」、いわゆる「新たな枠組み」について、5月18日付で厚労省に「要請書」(ホームページ ―→ 「要請・提案」参照)を提出しました。

 6月11日に厚労省と意見交換を行いました。
 この法案の先取り的状況として発生している問題と検査(スクリーニング)の悪用例を示し、法案は慎重に取り扱われる必要があると要請しました。さらに5月27日の『活動報告』に書いた独立行政法人 日本労働政策研究・研修機構発行のパンフレット『職場におけるメンタルヘルス対策に関する調査』を資料として示し、労働者の健康問題について個人情報保護法・プライバシーが徹底されていない状況では労働者の不安は増すと主張しました。
 「調査」結果を録します。
 「メンタルヘルスのケアでのプライバシーにかかわるルールをどのように定めているか」の質問について、「特段のルールはないが、気を付けて対応するよう求めている」が46.2%と半数近くを占めもっとも割合が高く、次いで「プライバシー情報全般に関して定めたルールでカバーしている」が28.1%、「ルールも慣行もなく、特段の対応をしていない」が18.2%などで、制度としてプライバシーの問題を扱っている事業所は多くないのが現状です。
 企業規模別による違いは大きく、規模が大きくなるに従って、「プライバシー情報全般に関して定めたルールでカバーしている」事業所の割合は高まり、1.000人以上規模では44.0%となっています。逆に、規模が小さいほど「ルールも慣行もなく、特段の対応をしていない」割合が高くなっています。
 事業主のプライバシー保護の認識はこの程度です。本人の知らないところでどのような扱いをされているかわかりません。

 厚労省は、法案の目的を、2006年に「労働者の心の健康の保持増進のための指針」を発表したが対策が必要と捉えている企業は半数で残りは取られていない状況がある、そのようななかでの対策としてチェック→面接を法律で義務付けて強制させる必要があると説明しました。
 法案は、「職場におけるメンタルヘルス対策検討会」の報告を受け、「政策審議会」からも妥当という答申を受けて法案化したと説明しました。
 そして、これまでチェック→面接を希望した労働者に対しては87%が事後処置がされた、その7割が時間短縮だったと説明しました。

 いじめ メンタルヘルス労働者支援センターと労働安全衛生センター連絡会議メンタルヘルス・ハラスメント対策局は、検討会を手分けして毎回複数で傍聴しました。
 昨年11月4日の「活動報告」に書いたように、「職場におけるメンタルヘルス対策検討会」は議論が白熱化しました。「報告書」作成は座長預かりとなりましたが、座長預かりとは厚労省が作成するということです。出された「報告書」に委員は「騙された」と不満を抱いたはずです。議論された方向と「報告書」は明らかに違っています。
 「政策審議会」は政(日本はほとんど学者などの専門家)・労・使で構成されますが、悲しいことに労働現場を知っている、労働安全衛生に精通している「労」代表はいません。その中で審議されるので意見は出されません。形式です。
 チェック→面接を希望したものに処置が行われているというとあたかも制度がいい方向で機能しているように思われます。
 チェック→面接を希望する主な原因である長時間労働への処置は、労働者が労災申請することを回避するために行われます。長時間労働による体調不良は個人的問題ではありません。しかし個人的対応で済まされています。事業所全体の長時間労働の短縮には至りません。
 労働者はスクリーニングを体調不良者あぶり出しの手段と捉えるから正直に回答しません。あぶり出されるとコースから外され雇用不安に誘導されます。いくら不利益な取り扱いはしないと謳われても、そうなっている実例を労働者はたくさん知っています。

 現在の厚労省の「労働者の心の健康の保持増進」「職場におけるメンタルヘルス対策」は、長時間労働に耐えられる労働者を作ることを目的にしているとしか捉えられません。個人的問題と捉えて面接・指導、カウンセリングが行われることは、個人としてのストレス受容を大きくするためのものです。
 体調不良者を出す職場の構造の改善がまず先です。

 5月22日の『活動日記』に「過去1年間にメンタルヘルスで1か月以上の休職または退職した労働者がいた事業所におけるメンタルヘルスの取り組み状況をみると、『取り組んでいる』は64.0%と過半数を占める一方、休職・退職者がいるにもかかわらず『取り組んでいない』が3分の1と少なくないのが目立つ結果となっています。取り組み状況は、大手企業と中小企業に差があります。
 『取り組んでいない』が3分の1の数字は、他の様々な調査の中で出てくる『固定値』です。縮めるのは至難の業です。まず厚労省の“やる気”が問われます。」と書きました。対策を打たない企業は多く存在します。さらに労働組合の「固定値」はもっと大きいです
 しかしこの数字を事業所へのスクリーニングの義務化では解決しません。
 メンタルヘルス・ケアへの取り組みが、事業所にとってこのような成果があった、メリットがあったということを具体的に示して説得すると固定値が減少します。

 国際安全衛生センターの資料からです。
 2004年11月、イギリス安全衛生庁(HSE)は、職場ストレスに関する新しいマネージメント基準を発表しました。基準は法で規制されるものではないですが、企業が職場のストレスレベルを測定し、その原因を特定し、この問題に取り組むスタッフに役立てることを目的としています。
 最初のマネージメント基準は2003年6月に公表されました。この基準では6つの重要な職場のストレッサーである「作業要求」、「管理」、「支援」、「関係」、「役割」、「変化」を低減する目標を設定しています。この目標達成のためには、一定の割合のスタッフが、ストレッサーの管理方法に満足しているということを示すことが事業者にとって必要となります。
 さらに法では、5人以上の労働者を有する企業は、労働関連ストレス、いじめ、いやがらせを防止する上での対策が含まれている安全方針を文書で作成しなければなりません。
  職場ストレス原因は多種多様ですが最も重要ないくつかの潜在的根源をあげ、克服できないものないと断言しています。効果的なストレスマネージメントの鍵の1つは、これらのストレッサーが発生するおそれがある場所を認識し、ストレッサーが現実の問題となる前に、それに対応する準備があるかということです。

 職場ストレスの主原因として、次のようなものが特定されています。
 ・企業内での不適切、あるいは不十分なコミュニケーション、特に人事異動期間中についての
 ・家庭及び仕事に基づいたストレスは成長し、お互いに影響し合い増大する
 ・個々人に与えられた作業要求は、各々の能力に適合したものでなければならない。そして、作業量は
  作業要求にふさわしい作業方法に見合っていなければならない
 ・過重労働及び過少労働ともにストレスになり得る
 ・交替制勤務及び夜勤は、本質的にストレスが多く、災害発生の高いリスクにつながるおそれがある
 ・自宅勤務は、労働者に孤独感を感じさせるおそれがあるので、支援体制が必要となる
 ・ホット・ディスキング(職場で個々人の机を決めていないこと)や、短期間契約は、特別なプレッシャーに
  つながる
 ・役割のあつれき、不明確で変化する役割は、全てストレスにつながる
 ・神経をすり減らし、いじめがある管理の仕方は相談、支援、管理でのバランスが必要となる
 ・中間管理職のコミュニケーションスキルの不足。管理職は、コミュニケーション訓練が要求され、通常の
  人よりも、このスキルが必要となる
 ・余剰人員整理のためには、スペシャリストを訓練するという特別なニーズが必要となる
 ・照明が不適切で不十分な職場は、スタッフが不快に思い、かつモチベーションが高まらない環境とな
  る
 ・新技術の導入において、計画的かつ、斬新な方法で行われない場合には、ストレスレベルを高める
 ・労働者が常に働いていることを要求されているように感じる職場環境

 日本とは、ストレスは個人的問題か、職場全体の問題かという捉え方が大きく違います。
 イギリスがこの地平に至ったのは、労働政策の決定が政・労・使で激論のすえ行われているからです。日本は使・使の代弁者・労不在で行われていのが実態です。 


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