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第三者機関に解決を委ねても……
2012/06/08(Fri)
 6月8日(金)

 5月29日、厚労省から「平成23年度個別労働紛争解決制度施行状況」が発表されました。
 総合労働相談件数は110万9,454件(前年度比20,780件1.8%減)、そのうち民事上の個別労働紛争相談件数は25万6,343件(前年度比9,436件3.8%増)、助言・指導申出件数9,590件(前年度比24.7%増)、あっせん申請受理件数6,510件(前年度比1.9%増)です。
 民事上の個別労働紛争相談件数は2007年度の197.000件から2008年に236.000件に急増し、その趨勢がつづいています。
 助言・指導申出件数は2006年度から増え続けてはいましたが、2010年度の7.692件から急増しました。あっせん申請受理件は2008年度が8.457件で最高でした。

 民事上の個別労働紛争相談の内訳は『解雇』18.9%(前年度21.2)、『いじめ・嫌がらせ』15.1 %(13.9%)、『労働条件』12.3%(10.4%)、『労働条件の引き下げ』12.1%(13.1%)、『自己都合退職』(使用者が自己都合と主張してるが労働者が直接・間接の退職強要と主張している事案)9.5%(7.2%)となっています。前年度と比べると、『いじめ・嫌がらせ』(16.6%増)、『退職勧奨』(3.6%増)、『自己都合退職』(28.1%増)などが増加しています。
 相談者の内訳は、『正社員』41.5%、『パート・アルバイト』17.2%、『期間契約社員』10.5%、『派遣労働者』4.3%となっています。前年度比では、『正社員』の相談件数が減少し、『派遣労働者』、『期間契約社員』の件数は増加しました。

 助言・指導申出を受け付けたものは、9,590件です。内容の内訳は、『解雇』2,006件(19.6%)と最も多く、次いで『いじめ・嫌がらせ』1,466件(14.4%)、『労働条件の引下げ』988件(9.7%)と続いています。前年度比では、件数は全ての項目で増加しています。そのうちでも増加割合が高いのは『いじめ・嫌がらせ』、『雇用管理等』です。
 事業所の規模は、『10~49人』が29.5%と最も多く、次いで『10人未満』が19.7%、『100~299人』が11.1%で、労働組合のない事業所の労働者が64.4%です。
助言・指導申出を受け付けた9,590件のうち、手続を終了したのは9,580件です。手続を終了した9,580件のうち、9,325件(97.3%)について助言・指導を実施しました。申出が取り下げられたものは182件(1.9%)、手続が打ち切られたものは47件(0.5%)です。助言・指導の手続を終了するまでの期間は、1カ月以内が96.8%(前年度比0.8%減)であり、概ね1カ月以内に手続が終了した。

 あっせん申請を受理したのは6,510件、内容の内訳は、『解雇』2,415件(35.2%)と最も多く、『いじめ・嫌がらせ』1,121件(16.4%)、『雇止め』609件(8.9%)と続きます。『解雇』が減少、『いじめ・嫌がらせ』などが増加しました。
 事業所の規模は、『10~49人』が29.8%と最も多く、次いで『10人未満』が19.3%、『300人以上』が15.1%で、労働組合のない事業所の労働者が73.7%です。
 あっせん申請を受理した6,510件のうち手続きを終了したのは6,362件です。手続を終了した6,362件のうち合意が成立したものは2,438件(38.3%)、申請人の都合により取り下げられたものは361件(5.7%)、紛争当事者の一方が手続きに参加しないなどの理由で、あっせんが打ち切られたものは3,550件(55.8%)となっています。
 あっせんの手続を終了するまでの期間は1カ月以内が54.4%、1カ月を超え2カ月以内が40.1%であり、2カ月以内に終了したものが94.5%(前年度比 0.9%増)となっています。

 これらの数字からここ数年の労働紛争の動向を探っても大きな変化、特徴は見出せません。

 助言・指導申出は手続きが終了したということでも、その内実がわかりません。
 あっせん申請は3分の1強しか合意が成立していません。紛争当事者の一方が手続きに参加しないで切られたものが半分以上です。
 これらがこの制度が抱える問題点です。
 あっせんをする【紛争調整委員会とは】の説明に「弁護士、大学教授等の労働問題の専門家である学識経験者によりあっせんを行うために組織された委員会であり、都道府県労働局ごとに設置されている。この紛争調整委員会の委員(約380名)のうちから事案ごとに指名される3名のあっせん委員が、紛争解決に向けてあっせんを実施するものである。」とあります。

 ユニオンなどに、個別労働紛争解決制度を利用したが駄目だったと言ってくる相談者が多くいます。それは相談者が「無理難題を主張した」からということではなく、担当者の権限と力量とによるところが大きいと言えます。
弁護士、大学教授等は本当に労働問題の専門家である学識経験者なのでしょうか。労働問題・労使関係は法律とその解釈だけで対応できるものではありません。はっきりしているのは、彼らには現場感覚がありません。労働者の肌感覚がありません。
 法律によって縛られる職場秩序は息苦しいだけです

 同じことが労働審判員にも言えます。労働者側の審判員はほとんどが労働組合の役員やその経験者です。個人加盟のユニオンには審判員を出している労働組合の組合員からも「会社の組合に相談したが取り組んでもらえなかった」「個人的問題は取り組まないといわれた」などと言って相談が来ます。相談内容が個人的問題ではなく制度の不備や職場環境の場合などの場合もそうです。労働組合は、「会社の労使関係秩序を壊してくれるな」という主張で排除してきます。
 組合員の相談にまともに対応しない組合役員が外部の個別紛争に対応できるはずがありません。そのような労働組合が出している労働審判員がまともな判断をするはずがありません。労働審判員同士、自分の職場できちんと対応しないことがアルバイトとしての労働審判員の仕事を作ることになっています。
 だからすでに労働審判には期待が持てないという話があちこちから聞こえてきています。
 労働委員会の労働者側委員にも同じことが言えます。

 いじめ メンタルヘルス労働者支援センターは昨年、厚生労働省が主催した「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議」に意見書を提出しました。その中に次のように述べました。
 「そもそも、裁判は職場のいじめ・嫌がらせの金銭的賠償を求める唯一の機会ですが、再発防止のために、何が問題で、何をなすべきかといったことを見いだす助けにはならず、逆に真実を明らかにすることを困難にするといっても過言ではありません。
 裁判に現れた事件は、氷山の一角に過ぎないのです。加えて、判決は、事件を強制的に『終了』させますが、『解決』するわけではありません。『終了』と『解決』は違います。裁判でたとえ被告が勝訴したとしても、多くの場合、被害者の心の傷は癒えず、加害者は納得するのではなく、不承不承判決に従うだけであり、反省するわけではありません。判決によって、荒廃した職場の人間関係を再構築することはほとんど不可能といってよいでしょう。判例は労使紛争の解決の失敗例です。」

 労働者は、残念ながら労働組合の活動に期待がもてないなかで第三者機関に解決をゆだねます。しかし第三者に委ねた解決は借り物の労使関係の構築にしかなりません。
 労働組合が労働者の側に立って、相手と交渉する団体交渉の手段こそが、労働者と労働組合を鍛えて強くし、安定した労使関係を作り上げる手段です。
 もし、労働者や労働組合が裁判や労働委員会を活用する場合は、組合としての活動と併用して「利用する」という位置づけをしないと有効性が発揮できません。 


   当センター「いじめ・メンタルヘルス労働者支援センター」のホームページ・ご相談はこちらから
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