2012/03 ≪  2012/04 123456789101112131415161718192021222324252627282930  ≫ 2012/05
EUで「労働における心理社会的リスクに関するキャンペーン」開始
2012/04/10(Tue)
 4月10日(火)

 全国労働安全衛生センターの機関紙『安全センター情報』2012.4号は「労働における暴力」を特集し、アメリカとヨーロッパの新たな動きを取り上げています。
 前回のアメリカの「職場の暴力」に続いて欧州の「職場の暴力」と「労働における心理社会的リスク」についてかい摘んで紹介しています。

 2012年、欧州上級監督官会議(SLIC)は「労働における心理社会的リスクに関するキャンペーン」を開始しました。
 キャンペーンにたどり着く経過があります。
 2004年、欧州社会パートナーは労働関連ストレスに関する枠組みについて基本的合意を得て協定を締結しました。
 協定4条は、労働関連ストレスの問題分析には
 ・労働編成及びプロセス
 ・労働条件および環境
 ・コミュニケーション
 ・主体のファクター
のファクターが含まれ、それらが確認された場合にはそれを予防、除去及び低減するための行動がとられなければならない、適切な対策を決定する責任は、使用者に課せられると謳っています。
 第6条は、対策には
 ・管理的及びコミュニケーションの対策
 ・管理者及び労働者のトレーニング
 ・情報の提供
が含まれると謳っています。

 2007年に、欧州の社会パートナーは「労働におけるハラスメント及び暴力に関する自主的枠組み協定」を締結しました。
 そして2010年9月30日に「労働に関連した第三者暴力及びハラスメントに対処するための他部門ガイドライン」が締結されました。
 「ガイドライン」の目的は、「第三者暴力及びその結果を予防、低減及び緩和するための使用者、労働者、労働者代表/労働組合による取組を支援することで、採ることができる現実的なステップを設定しています。
 EU及び各国の法律は、使用者及び労働者双方は、安全衛生の領域における義務を負っていると謳っています。労働者も安全衛生の領域における義務を負っているのです

 近年数十年間における労働世界で生じてきた著しい変化は、労働安全衛生の領域において新しいリスクをもたらし、物理的、生物学的及び科学的リスクの他に、心理社会的リスクを出現させたといいます。
 労働関連心理社会的ハザーズは、安全衛生に対する現代の主要な課題のひとつとして認められ、労働関連ストレス、職場暴力、ハラスメント及びいじめなどの職場の問題と結び付けられています。さらにストレスが不十分なパフォーマンス、高い欠勤率及び災害率の増大と関連している証拠があります。
 欧州生活労働条件改善財団の報告では、労働関連ストレスは、労働者の病気の原因の中で共通であり、欧州中の4千万人に影響を与えているといいます。
 2005年に行われた第4回欧州生活労働条件調査では、労働が健康に影響を及ぼしたと指摘した労働者のうち、EU15か国の労働者の20%、10新加入国の労働者の30%が自らの健康が労働関連ストレスによってリスクにさらされていると考えていました。
 2002年にEU15か国における労働関連ストレスの年間経済コストは2千億ユーロと推計されています。
 部門でみると、困難な顧客、患者、生徒等の対処に対応している保健、社会福祉、ホテル、レストラン及び教育部門が高いといいます。部門ごとのストレスに関連したリスクは、一定の状態及び条件のもとで組織的です。この点に関連してストレッサーではなくストレスの源という用語を使うことを提案しています

 キャンペーンは、目的を、上級労働監督委員会(SLIC)の監督によって、労働における心理社会的リスクに対する特別の注意を払うことであるといいます。
 そして労働監督官のための手引きを作成しました。その中で使用者が行うべきことを謳っています。
 ・定期的にリスクを評価する
  心理社会的リスクは、例えば、対話、インタビュー、観察、テェックリストまたはアンケート調査を通じ
  て、調査、評価されなければならない。
 ・対策の計画を立てる
  これには、リスクを根絶または管理するためにとられるべき措置が含まれる。誰が責任を持つか?
  いつ?
 ・措置が取られた場合にはチェックを
です。

 同じような報告は、『損保ジャパン総研クウォータリー』 09.10.30号に論文「欧州におけるメンタルヘルス対策と取り組み」が掲載されています。(「IMCのホームページ」 → 「労働安全衛生」 → 「海外のメンタルヘルスケア」で見ることができます。または http://www.sj-ri.co.jp/issue/quarterly/data/qt53.pdf)

 アメリカや欧州の取組からは、逆に職場の暴力やいじめは日本だけでなく世界的に深刻になっていることが覗えます。「日本的経営」・働かせ方が輸出されました。
 しかし日本と違うことは、問題に対する取り組みが早いということです。

 『公衆衛生』2010年1月~3月にジャーナリスト・山本三春さんが「働く人と健康 フランス在住ジャーナリストの立場から プシコソシオ問題(職場のメンタルヘルス)で闘いを開始したフランス」を連載しました。
 そこでは「過労自殺の歴史とテクノサントル・ルノーの悲劇」と題して、フランスで労働関連自殺(過労自殺)が急増し、衝撃が広がっている、なかでも、2008年2月以来自殺が相次いでいた電話通信のフランス・テレコムは2009年10月15日、ついに20か月で25人目の犠牲者を出すに至ったと報告されています。
 一方、2002年1月に施行されたいわゆる「モラルハラスメント」法規制を含む「労使関係現代化法」の制定によって、少なくても3つの重要な成果をもたらしたと報告されています。
 1つは、罰せられるようになったことで、犠牲者自身が苦悶を乗り越え、堂々と提訴して救済される事例が増加した。
 2つ目は、判例が蓄積してきたため、何をすると認定されるか具体的に明確になってきて、雇用者、管理職、一般職員に至るまで“してはいけないことの自覚が高まり、抑止効果が生まれている。
 3つ目は、モラルハラスメントが原因で労働災害に認定されるようになると、職場での予防、改善するうえでの巨大な武器となっている。

 日本は取り組みが遅いです。急がなければなりません。急がせなければなりません。 


  「いじめ・メンタルヘルス労働者支援センター」のホームページ・ご相談はこちらから
この記事のURL | 労災 | ▲ top
| メイン |