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被災地派遣自衛隊員のメンタルヘルスケアに危険信号
2012/03/30(Fri)
3月30日(金)

 昨年の4月19日、陸上自衛隊は、3月13日から原発事故に伴い福島県の郡山駐屯地に派遣されていた練馬駐屯地所属の3等陸曹を逮捕し、同日付で懲戒免職にしたと発表しました。除染作業をする部隊の無線通信を担当していたが恐怖心でパニックになり、自衛隊のトラックを盗んで逃走しました。容疑はトラック等の窃盗ということです。
 4月20日、神奈川県警港南署は、海上自衛隊横須賀基地所属の潜水艦救難母艦「ちよだ」乗組員の3等海曹を公然わいせつ容疑で現行犯逮捕したと発表しました。3等海曹は前にも、宮城沖の遺体収容作業に従事したが再出動予定でした。捕まったら出動しなくていいと思ってわざとやったと言います。
 今この2人はどうなっているのでしょうか。気になります。

 10月19日、新潟県上越市の自衛隊宿舎で、陸上自衛隊の連隊長の1等陸佐が自殺しているのが発見されました。理由は不明ですが、3月11日の東日本大震災発生直後からおよそ3カ月にわたり、福島県の被災地に派遣されて人命救助や行方不明者の捜索の指揮を取っていました。前日までは普段どおり出勤していたが、19日の朝連絡が取れず部下が自宅を訪れたところ、首を吊って自殺していたといいます。
 10月18日にも、岩手県などの被災地に派遣されていた青森県青森市の3等陸佐が自殺しています。
 また被災地での公務中に急な病気などでは3人が亡くなっているといいます。(j-cast ニュース 11.10.22)   

 東日本大震災においては最大10万人の自衛隊員が被災地で救助、捜索の任務に赴きました。
 自衛隊員の自殺率の高さはかなり前から指摘されています。隊員数は陸海空合わせおよそ25万人ですが、自殺者は2003年度までは年間40人~70人台で推移していました。2004年のイラク派遣以降は毎年80~100人に及んでいます。イラク派遣に参加した自衛隊員のべ2万人弱のうち16人が在職中に自殺しています。  
 自衛隊は、日本の軍隊が持っている独特の体質からいじめ等が発生し、自殺者が多いと言われています。遺族が提訴して進行中の裁判もあります。
 しかしイラク派遣以降の増加は、明らかに参事ストレスが原因で、適正な対策がとられる必要がありました。

 今年の3月7日の衆議院内閣委員会で、自衛隊員のメンタルヘルスケア問題が取り上げられました。
 議事録です。
 ○玉城委員 民主党の玉城デニーです。
  自衛官には、……発災から一年になります東日本大震災の現場において、発災直後から本当に想像
 を絶するような活動、活躍をしていただきました。……
  気になるのは、派遣された自衛官の方々のいわゆるメンタルヘルスといいますか、心のケアについて
 でございます。
  やはり心のケアについても、大変大事なところだと思いますので、国としてどのような対策をしているの
 か、渡辺副大臣にぜひお伺いしたいと思います。お願いします。
 ○渡辺副大臣 東日本の大震災で派遣をされました隊員のメンタルヘルスについて御質問をいただきま
 した。
  昨日、現地、被災地に派遣をされました自衛官のメンタルヘルスのチェックの大体、概要が報告されま
 したので、申し上げますと、陸上自衛隊で58.050人を帰隊後1か月調査したところ、PTSD等の原因
 となる、高リスク者がおよそ3.3%、うつ病等の高リスク者がおよそ2.2%でございます。まだ実施中の
 調査もございますし、また、ちょうど先生御指摘の1年でございますので、またここで改めてメンタルヘ
 ルスチェックを行うこととしております。
  また、海上自衛隊については、6.112人を対象に調査したところ、PTSDの高リスク者が4.3%でござ
 います。うつ病の高リスク者の調査は未実施でございまして、今、この理由を問いただしているところ
 でございます。もう既に5名の海上自衛隊の隊員がPTSDと確認をされておりまして、現在はケアを
 受けながら職場復帰をしているというところでございます。
  また、航空自衛隊においては、3.319名のうち7.5%がPTSDの高リスク者、ちょっと対象人員が違う
 んですが、うつ病の高リスク者が2.829人中6.5%。ここではPTSDは確認をされておりません。
  防衛省といたしましては、この後もまたずっと継続をして、まさに国家的な危機に直面をして、本当に不
 眠不休で活動した自衛官のメンタルケアについては、24年度の予算でも、部外カウンセラーの招聘で
 すとか臨床心理士等の増員等で対応することとしておりますが、とにかく、長期にわたってしっかりと万
 全の対応、体制を尽くしていきたいというふうに考えております。

 調査は派遣直後から6か月の間に行われました。航空自衛隊は、津波で大きな被害を受けた東松島市の松島基地の隊員らを調査対象にしたため、数値が高く出た可能性があるといいます。

 9月30日の「活動報告」の再録です。
 「震災から3が月後、これとは全く逆のニュースが流れていました。
  宮城県内にある陸上自衛隊基地は、救助活動に参加する隊員のために『心のケア相談室』を設置しま
 した。3 か月間に相談者は1人いたということです。
  その状況を管理職は『うちの隊員は強固な者が集まっていますから』と語っていました。
  未曽有の出来事に対応するのに最初から精神的に強固な者などいません。隊員は相談室に行けない
 雰囲気があったのです。このような対応のままだったら、残念ながらおそらく多数の体調不良者が続出
 していると思われます。隊員がかわいそうです。」

 東日本大震災から7カ月過ぎた10月20日に、陸上自衛隊衛生学校のコンバットストレス教官である下園壮太著『平常心を鍛える 自衛隊ストレスコントロール教官が明かす「試練を乗り切るための心の準備」』(講談社+α新書)が刊行されました。そこには
 「東日本大震災において、自衛隊員は過酷な環境の中、粘り強い災害派遣任務を遂行した。
  多くの被災者から感謝の声をいただいたが、同時に、隊員のストレスを心配する声も聞かれた。……
  この『人のため』という姿勢は、実は隊員自身のストレス対策においても重要な役割を果たしていた。実
 際、非常に過酷な勤務にもかかわらず、ファーストショックで勤務できなくなる隊員はほとんどいなか
 った。」
とあります。
 著者は、「不眠、悪夢を見る、食欲不振、他社とのコミュニケーションを拒否する、自己を思い出すものを避ける……ような最初の反応」を“ファーストショック”と呼んでいます。
 読んだとき、漏れている情報からも実態と違うなと不信感を持ちましたが、国会討論で明らかにされた事実と違います。著者は実態を知る立場にいました。『本』の中の対応策の説得性をも消してしまいました。
 繰り返しますが「隊員は相談室に行けない雰囲気があったのです。このような対応のままだったら、残念ながらおそらく多数の体調不良者が続出していると思われます。隊員がかわいそうです。」そしてこのことが、ファーストショックが落ち着くころ、そして周囲も少し安心するころ、本人の中で、ひたひたと心を侵食してくる苦しみである“セカンドショック”を引き起こします。心が壊れてうつやPTSDになります。

 日本の自衛隊のメンタルヘルス対策は個人的精神主義を重視で、組織対策・対応とはなっていません。(4月4日、4月7日、4月22日の「活動報告」)
 震災1周年を迎えるにあたってフジテレビは自衛隊の1年間の活動を取り上げたドキュメントを放映しました。その中で、当時の防衛大臣は被災地に赴く隊員たちに「遺体は、生きた人間として遺族に渡すまで扱っていただきたい」と訓示していました。この訓示どおりに任務を遂行したら体調不良者を増大させます。このようなことすら周知されていないのです。
 地元の消防隊員と遺体処理の話をした時、「あの訓示はダメだよ」と一蹴されました。
 自衛隊は消防庁の対策から基本を学ぶ必要があります。

 『本』を読んだ感想は、否定的には捉えませんが、自衛隊は「平和ボケ」しています。そして「平常時ボケ」しています。災害救助支援を任務とするなら「平常時ボケ」はより大きな危険に遭遇させます。
 自衛隊がメンタルヘルスケアにきちんと対応しないということは隊員の人権・人格・生活を大切にしないということです。
 早急な対策の転換が必要です。 

  
  当センター「いじめ・メンタルヘルス労働者支援センター」のホームページ・ご相談はこちらから
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