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「お父さんは眠れていない」 睡眠保障は会社の責任
2012/01/31(Tue)
1月31日(火)

 1月10日、警視庁がまとめた2011年の自殺者数が30.513人と発表されました。
 残念ながら、14年連続で3万人を超えてしまいました。しかし2年続けて減少です。
 昨年6月に発表された内閣府発表の「平成23年版 自殺対策白書」については6月14日の「活動報告」で触れましたが、もう少し労働者の実態を見てみます。

 職業別推移をみると、被雇用者(労働者)は1997年までの6.000人未満から98年に急増し、それ以降は8.000人前後を推移しています。
 無職者は97年までの1万1.000人台から、98年以降は1万5.000人台を維持しています。無職者とは、警察の資料は、自営業や学生以外の雇用関係がないもの、雇用保険の受給者も含みます。一応失業者のデータはありますが、無職者と失業者の区別ははっきりしません。自殺者数は決算期に多いという状況みられるので、その動向は失業率と似ているというのは当たっていないとは言われています。

 年齢別に見てみます。
 男性は15歳から24歳1.326人、25歳から34歳2.657人、35歳から44歳3.668人、45歳から54歳4.131人、55歳から65歳4.988人です。年齢が上がるとともに増えています。
 98年に急増した時、すべての年齢別がそうでしたが、特に45歳から54歳と55歳から65歳はすさまじいものでした。しかし2つの年齢別においてはその後の減少も目立ち、特に45歳から54歳においてはピーク時から1.500人の減少になっています。この辺をもう少し詳しく検討すると防止対策方針が見えてくるように思われます。
 女性は15歳から24歳605人、25歳から34歳1.085人、35歳から44歳1.224人、45歳から54歳1.102人、55歳から65歳1.387人です。年齢が上がるとともに増えていますが、男性の3分の1です。

 データは年齢別分類区分を変えていますが、被雇用者が占める割合は、男性は20代 44.1%、30代49.5%、40代46.0%、50代39.8%です。女性においては20代30.8%、30代26.9%、40代22.1%、50代16.8%です。
 無職者が占める割合は、男性は20代35.6%、30代42.3%、40代40.0%、50代41.0%です。女性は20代53.6%、30代70.3%、40代72.4%、50代76.6%です。

 被雇用者のどの業種が多いかということについては、労働人口における構成割合・数が明らかにされていませんのでわかりません。
 都道府県別の被雇用者、無職者の割合にも特別気になるような大きな差は案と思われます。

 白書には「職場におけるメンタルヘルス対策の推進」との項目で、労働者に対する対策が載っています。
 「『労働者健康状況調査』(平成19年)(厚生労働省)によると、仕事や職業生活に関して強い不安、悩み、ストレスを感じている労働者が約6割に上っている。」から始まり、メンタルヘルス対策に対する法改正、指針などが紹介されています。しかしその成果については触れられていません。
 成果が上がっていないのは、実効性があるような政策ではないからです。内閣府が提言しても厚労省が拒否します。厚労省が提言しようとしても使用者が拒否します。
 労働者の不安、悩み、ストレスは職場で起きています。しかし政府と使用者は職場の問題として解決するのではなく、つまりは核心を外して個人的問題として対応を迫ります。

 具体的に、労働時間や睡眠時間不足の問題があります。
 内閣府が作成している「共生社会政策」「いのち支える自殺対策」のホームページの「睡眠キャンペーン」は現在も相変わらず「お父さん、眠れてる?」が載っています。
 同じコーナーに「睡眠に関するQ&A」があります。
 そこには「もともとその人が必要としている睡眠時間には大きな個人差があるため、何時間以上眠れば大丈夫、という万人に通じる基準はありません。」「適正な睡眠時間の量について、万人に当てはまる基準を設けることはできません。これは必要とされる睡眠時間に個人差が存在するためです。発明家のエジソンの睡眠時間は非常に短かったと言われていますが、一方で、物理学者のアインシュタインは1日に10時間以上眠っていたそうです。」とあります。使用者や受験生の親・受験業者が見たら泣いて喜ぶ内容です。
 このようなことを平気で載せているということは、内閣府が自殺者を生み出していると言えるのではないでしょうか
 その中で、労働者が体調不良に陥ったら、労働者の自己管理と「お父さん、眠れてる?」とチェック・監視をしなかった家族の責任とさせられます。
 労働者が不愉快になるようなキャンペーンはいい加減やめてほしいものです。

 なぜ長時間労働、睡眠時間不足が発生しているのか。ノルマ、人員不足、責任感と支援体制の不在、雇用不安などなどです。子育てとローンを抱えて家族のために我慢をしている世代が多いのはその理由です。
 長時間労働は、前々回にも触れましたが、労働者の生活のバランスが保てなくなり安眠が確保できません。体調を崩します。
 長時間労働、睡眠時間以外にも、ノルマやいじめなど原因はたくさんあります。これらはすべて職場の問題です。
 しかし会社は、労働者の自殺を家族の悲劇と捉えても、一過性の問題と扱い、会社の悲劇や損失とは捉えられていません。労働者を人材とみていません。悲劇が悲劇を生み出しています。
 
 数字からも、自殺防止対策は、雇用政策・失業対策抜きにしては語れません。
 白書には、「失業者等に対する相談窓口の充実等」とあります。
 確かにハローワークの機能は以前と比べたら改善は図られています。
 しかし、基本的には、求職者をどこかに押し込んで事足れりという対応が強いということをよく聞きます。特に、委託されている民間事業者にその傾向が強いようです。中味ではなく件数稼ぎです。さらにカウンセラーやアドバイザーが「精神論」を振り回すとも聞きます。
 日本においてはカウンセラーが氾濫していますが、自分の価値観を押し付けたり、相談者・クライアントの人格を否定したり、変えようとするのはカウンセリングとは言いません。人格に対する暴力です。
 失業者等に対しては、住宅問題をはじめとする生活の保障による心身の安定、その時間的保障が必要です。
 求人会社が即戦力を要求するなかで、教育・訓練の機会の「格差社会」は自己責任では克服が困難です。再起に向かっての職業訓練の機会の提供が必要です。現在の期間は短すぎます。
 失業が社会に対する失望と同義語になっているのは克服されなければなりません。
 
 政府が「問題がある」「困った」と言えば深刻な事態をきちんと捉えているように受け止められがちですが方便にしか聞こえません。
 本当に困っているなら、現場労働者から直接実態と希望・要望を聞いてみればいいのです。実態と『白書』とは大きなかい離があります。 


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「感情労働」が深刻な健康問題を発生させている
2012/01/27(Fri)
1月27日(金)

 関西労働者安全センターの機関紙『関西労災職業病』には、「韓国からのニュース」のコーナーがあります。韓国のアスベストなどの職業病問題やパワハラ、セクハラ問題、労災制度の法制度などが紹介されています。
 2011.11・12合併行のコーナーには「感情労働も産業災害誘発する危険要因/労働安全保健体系で管理できるように法改正を」という見出しの、2011年10月28日付「毎日労働ニュース」の記事が載っています。
 新聞に「感情労働」の見出しで記事が載るというようことは日本ではめったにありません。
 いつか紹介しようと思っていましたがなかなか機会がありませんでした。全文紹介します。

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  「感情労働も産業災害誘発する危険要因/労働安全保健体系で管理できるように法改正を」

 感情労働を、産業災害を誘発する有害・危険要因と規定しなければならない。チョン・ジンジュ社会保険研究所所長が、生き生き女性労働行動が主催した『対案女性労働フォーラム―感情労働と労働安全』の討論会で話した。
 顧客の満足のために、自身の感情を押さえて無条件に合わせなければならない感情労働は、流通業・病院・銀行・公共交通・公共機関・電子製品修理業など、顧客と応対する労働者に必然的に伴う労働だ。ヨーロッパなど先進国では、感情労働を将来腫瘍に浮び上がる社会・心理的有害・危険要因だとして着目し、相談と教育を実施してきた。
 チョン所長は、「韓国でも産業現場では感情労働による様々な健康問題が発生しているが、製造業中心の安全保健対策のために、感情労働の深刻性が認識されていない」と指摘した。
 労働者は体験する苦痛は様々だ。チョン所長は「感情を抑制すれば、心臓疾患と、神経体系を過度に使うことによる高血圧と、癌発生率を高める」とし、「精神的には自己嫌悪感とうつ病、冷笑などの現象を産む」と心配した。しかし、労働者は気分転換をしたり離職をするなどの個人的な方法で問題を解消している。チョン所長は労働者に転嫁された感情労働に伴う苦痛を、社会と企業が分け合わなければならないと主張した。
 彼は「政府は労災を誘発する主要な危険有害要因に感情労働を含ませ、一方的な労働安全保健管理体系の中で管理できるように、産業安全保健法を改正しなければならない。」「消費者と会社に対する社会的な教育を実施し、態度変化を誘導しなければならない」と話した。また「会社は不良な顧客に対する対処法を準備するなど、感情労働について健康問題を提起できる通路を事前に用意し、労働条件を改善しなければならない」と付け加えた。
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 韓国の感情労働の問題は、11月28日付と11月30日付の「ハンギョレ新聞」でも取り上げられました。2つの記事を続けて紹介します。

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   販売・サービス業‘強要された笑顔’休暇・手当て 補償 共感拡散(ママ 拡散では?)
   (11月28日付)

    悪口・セクハラなどに苦しみながらも明るく応対する‘感情労働’
    一部業者では手当・文化費 支援
    ロレアル労組‘感情休暇’推進 
    "人格尊重など認識変化が至急必要"
 
 お客さんに悪口・セクハラ・人身攻撃を受けてもじっと耐え、笑って答えなければならないサービス業労働者の‘感情労働’に対して、その深刻性を認め適切な補償をしなければならないという共感が広がっている。
 27日、化粧品販売会社の‘ロレアルコリア’労組などの話を総合すれば、この会社の労組は関連業界で初めて来年度団体協約要求案に‘感情休暇’制度を導入する方案を用意し去る10日に会社側に提出した。 この要求案には年次休暇とは別に‘年6回(有給)感情休暇を実施する’という内容が含まれた。イ・ウンヒ ロレアルコリア労組委員長は「2006年から感情労働にともなう手当てを受け取ったが、感情労働者のストレスを緩和・解消する実質的な方法としては限界がある」として感情休暇の推進背景を説明した。
 感情労働とは顧客満足のために自身の感情を抑制し、常に親切な表情と語り口で応対しなければならない労働形態を意味する。 販売・サービス業の競争が熾烈になる中で労働者に過度な親切を要求する傾向が増え関連業種従事者らのストレスとうつ病が激化している。昨年11月、民間サービス産業労組連盟が労働環境健康研究所とともに民間サービス労働者3.096人を対象に職種別うつ病程度を調査した結果、専門的な相談が必要な重症以上のうつ病が化粧品販売員の場合、32.7%、カジノ ディーラー31.6%、レジ26.5%と現れた。これは事務職の23.9%、施設職23.7%より高い数値だ。
 ロレアルコリアをはじめとする一部販売・サービス会社では状況の深刻性を認め、すでに数年前から労働者らの感情労働価値を認め‘感情手当て’を支給している。連盟の調査内容によれば、2006年ロレアルコリアを始まりに、現在までにシャネル・クラランス・エルカコリア・資生堂・クムビ・LVMH・ブルベルコリア(以上 化粧品販売),教保ホットレクス(レコード・DVDなど販売)と釜山パラダイス免税店などが月3万~10万ウォンずつの感情手当を支給している。 また、一部業者ではストレス緩和のための心理相談(ロレアルコリア)と文化公演費支援(シャネル)等も行なっている。
 チョン・ミンジョン民間サービス産業労組連盟女性局長は「2006年には事業主が感情労働を認識すらできない状況であったし、労使共に適切な代案を見つけられないまま感情手当を導入した」として「だが、連盟も手当支給が本質的な代案ではないと認識し、来年から連盟傘下事業場に感情休暇制度が導入されるよう推進する計画」と明らかにした。
 しかし、感情労働問題を根本的に解決しようとするなら労働者に休暇や手当てで補償する次元を越え、社会的認識変化のための努力が必要だという提案が出てきている。これに伴い、国家人権委員会はサービス業事業主を対象に‘感情労働ガイドライン勧告案’を用意して今年中に発表する予定だ。(原文にアンダーラインはありません)勧告案にはひざまずいて注文を受けるなどの行き過ぎたサービスを規制し、お客さんが悪口・暴行などを働いた場合、事業場で対処する基準などが盛り込まれるものと見られる。
 キム・ジョンジン韓国労働社会研究所研究員は「西ヨーロッパや日本に比べて我が国の感情労働問題が深刻な状況」とし「サービス労働者に過度な親切を要求し、労働者を人格的に尊重しない社会的雰囲気を変えなければならない」と話した。

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   ‘無理な親切’感情労働者 人権侵害 深刻カテゴリ(11月30日付)

    顧客暴言にも無条件にこらえろ…膀胱がはじけそうでも顧客用トイレは使うな…
    人権委、労働者29人にインタビュー
    会社、監視しながら責任は回避
    消費者、苦衷知りながらうっぷん晴らし
 
   (写真2枚の説明)デパートが‘顧客便宜’を掲げるほどデパート労働者の労働強度は強くなる。‘華
              麗の象徴’であるデパートを注意深く覗いて見れば、感情労働に苦しめられ、そこ
              そこの休憩室一つとしてない労働環境で働く労働者が見える。

 デパートの化粧品売り場で19年にわたり仕事をしているチョン・某(36)氏は、6年前に顧客の前でひざまずいた記憶を今も忘れることはできないと語った。 ショッピングバッグをくれといったある女性に‘100ウォンを出して買わなければならない’という規定を案内した結果だった。腹を立てたその女性客はぞんざいな言葉で大声を上げひざまずけと要求した。このようなとんでもない不満にもデパート側は反対に販売社員に黙って従うように合図する。
 デパート側が販売社員の勤務態度をこっそりとチェックし、それを根拠にテナント業者に販売社員の交替を要求することもあり、チョン氏はマニュアルに従い挨拶の角度、表情、視線処理などを常に気を遣わなければならない。 彼女は自身が体験したことを夫にも打ち明けられず独りで泣くことが茶飯事だ。
 チョン氏は「2000年以後、流通業社間の競争が熾烈になり親切サービス強要も激しくなった」として「会社は私たちの苦痛に耳を傾けない」と話した。無礼な消費者と機械的な親切だけを強調する会社との間で女性サービス労働者らの人権侵害実態が深刻なことが分かった。
 国家人権委員会は29日‘感情労働’(顧客満足のために自身の感情を抑制し親切を維持しなければならない)をするマート販売員、コールセンター相談員など女性労働者29人に深層インタビューした結果を発表した。昨年基準で販売・サービス分野で働く女性労働者は約301万人に達する。
 インタビューで労働者は消費者が暴言を言ったり、さらには物を投げても無条件にこらえなければならないため心理的に萎縮し自尊感が落ちると訴えた。また、休息や食事時間もとても足りないと調査された。
 デパート売場の販売社員であるイ・某(21)氏は「休む空間がなく階段や廊下で休む」として「数百人が仕事をする空間で女子用トイレはせいぜい2つで、会社側では顧客用トイレは使わないよう要求している」と吐露した。(2枚の写真はこの光景)また、彼女らは会社側が挨拶、語り口、表情管理などは機械的に教育し監視しながらも、自分たちが顧客から受ける被害に対しては責任を回避していると指摘した。
 消費者は女性労働者たちのこういう苦衷を知りながらも‘うっぷん晴らし’をしていることが明らかになった。人権委が去る10月、首都圏市民303人をアンケート調査した結果によれば、回答者の22.3%が女性サービス労働者にうつ憤を晴らしたことがあると答えた。しかし回答者の81.2%は女性サービス労働者の苦衷を知っていたし、57.7%は腰を深く曲げた挨拶を受ける時に快く思わないと答えた。
 人権委のカン・ウンスク調査官は「外国では我が国のように女性サービス労働者を過小評価し、無理な親切を要求するケースはない」として「休憩施設設置義務化やコールセンターの応対件数制限など、感情労働を減じられる保護装置が用意されなければならない」と話した。人権委はこの日<女性感情労働者人権ガイド>を発刊し事業主らに配ることにした。
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 感情労働の問題は、1900年代末から取り上げられていますが、日本では2000年にアーリー・ホックシールド著『管理される心―感情が商品になるとき』(世界思想社刊)が翻訳・発刊されて少しずつ問題が取り上げられ始めました。『本』は、その定義とともに、飛行機の客室乗務員がクレームにどのように対応しているかなどを具体的に紹介していなす。
 鎌田慧氏の著書『空港〈25時間〉』には客室乗務員からの聞き取りが載っています。社長や会長らしい客は客室乗務員に多少ミスがあってもクレームを言わない、一方、ビジネスクラスに乗る日本人のビジネスマンはミスを探してクレームをつけてくるし、しつこいという報告を紹介しています。
 日本では、営業やサービス業では「笑顔はタダ」ということで作り笑顔を強制しています。しかしそのために労働者は傷つき、顧客は図に乗ってきます。顧客の多くも職場でストレスを抱えていて、その解消の対象を営業やサービス業労働者に向けています。悲しいことです。
 問題解決は、韓国で主張され始めたように、構造的な問題を含めて進めていく必要があります。

 日本の鉄道労働者は顧客から「暴力」の被害を受けていますがオランダでの日本のJRに当たる国鉄DSBコペンハーゲン駅では、ちゃんと対策が取られています。(11年7月12日付の「活動報告」参照)

 なお、「感情労働」の詳細は、「ホームページ」 → 「心のケア」 → 「感情労働」を参照してください。  

   
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サービス残業解消ではなく、残業を減少させる取り組みを
2012/01/24(Tue)
1月24日(火)

 昨年12月、連合総合生活開発研究所は、第22回「勤労者の仕事と暮らしについてのアンケート」調査報告書を発表しました。
 調査は、昨年10月初めに全国の20代から50代までの正規・非正規労働者2.000人を対象にして行われました。

 その中から労働時間と健康問題についてピックアップしてみます。
 まず週当りの平均実労働時間についてです。
 男性正社員は、40時間以上50時間未満47.6%、50時間以上60時間未満21.1%、60時間以上14.7%です。
 男性非正社員は、40時間以上50時間未満34.7%、50時間以上60時間未満9.5%、60時間以上10.9%です。
 女性正社員は、40時間以上50時間未満50.3%、50時間以上60時間未満10.5%、60時間以上4.6%です。
 女性非正社員は、短時間労働者が多く含まれているため、データの活用はしない方がいいようです。
 短時間労働の非正規労働者を含めた全労働者の9.4%が60時間以上となっています。週60時間以上とは、月当りの時間外労働は80時間以上ということです。
 所定外労働を行った労働者の月平均所定外労働時間は45時間です。
 雇用形態に関係なく長時間労働状態になっています。

 男性正規労働者の41.5%、男性非正規労働者の27.2%、女性労働者の35.5%の職場に労働組合があります。(それぞれに「組合があるかどうかわからない」の回答があり、平均15.2%です)
 細かく取り上げませんが、労働組合の有無に関係なくサービス残業の実態があります。労働組合はこの問題に取り組んでいません。
 非正規労働者の雇用形態は、正社員と同じ労働をさせながら劣悪な雇用契約・労働条件を押し付けるためのものになっていることが裏付けられます。しかし、本来格差是正、差別を撤廃させるために機能するはずの労働組合が機能していません。
 労働組合が正規労働者のためのものにもなっていません。

 現実の生活について、仕事と私生活(仕事以外の生活)のどちらを重視しているかを質問しています。
 <仕事重視>が全体平均の30.7%、<私生活重視>が33.5%と回答し、ほぼ拮抗しています。
 一方、仕事と私生活のどちらを重視したいか希望を質問すると、<仕事重視>が14.2%、<私生活重視>が64.5%と、圧倒的に<私生活重視>の割合が高くなっています。
 本人の希望は<私生活重視>、現実は<仕事重視>になっています。

 具体的に勤務のある日の平均的な時間配分を質問しています。
 全体平均は、睡眠6.2時間、仕事9.1時間、通勤時間1.4時間、生活時間1.8時間、自由時間4.2時間です。
 望ましい時間配分は睡眠7.3時間、仕事8.0時間、通勤時間1.1時間、生活時間1.8時間、自由時間4.92時間です。
 現実の睡眠時間が6.2時間であるのに対して望ましい時間配分は7.3時間と1.1時間長くなっています。また、現実の仕事時間が9.1時間であるのに対して、希望は8.0時間と1.1 時間短くなっています。
 労働者は、仕事時間を減らして睡眠時間を増やしたいという希望を持っています。

 NHKは5年毎に世論調査をしています。その結果を行政機関も活用しています。
 そこでは、労働者の1日の生活スタイルの平均時間は、睡眠時間が7.4時間、生活必要時間(通勤時間を含む)が5時間となっています。それに労働時間9時間(昼休み1時間)を足すと、21.4時間です。残りの2.6時間を趣味・娯楽時間に充てることができます。
 2つの調査の睡眠時間に1.2時間の差があります。睡眠時間が7.4時間は出勤しない日を含めたり、短時間労働者を含めた平均だと思われます。フル勤務の労働者の、勤務のある日の、時間数ではないこと、この数字を行政が使用するのは慎重さが必要だと指摘しておく必要があります。
 以前の安全衛生法改正の検討会において、労働者が6時間以上睡眠をとった場合は医学的に脳・心臓疾患のリスクはないが、5時間未満だと脳・心臓疾患の増加が医学的に証明されていると説明されました。
  勤務のある日の睡眠6.2時間は深刻です。所定外労働時間時間を含めて捉えたとき、残された時間が睡眠時間になっています。生活にバランスがなく安眠ではありません。リスクが生じる寸前の状況と捉える必要があります。(11年4月20日の活動日記参照)

 なぜ残業時間が長いのか。
 所定外労働を行った人のうち、所定外での「仕事をやりたくないと感じることが多かった」(「やらされ感」が強かった)と回答した人は35.7%となっています。
 また、所定外労働時間が長くなるほど「やらされ感」は強まり、所定外労働が80時間以上の層では、やりたくないと感じることが多かったと回答した労働者が55.4%にもおよんでいます。

 どのような理由から所定外労働を行わざるをえなかったのでしょうか。
 「所定外労働を行った」と回答した労働者だけからの集計で、「突発的な仕事があるから」との回答が最も多く44.1%、「人手が足りないから」43.7%、「残業を織り込んだ業務運営となっているから」31.2%と続きます。
 さらに、所定外労働時間数が多い層ほど「人手が足りないから」、「残業を織り込んだ業務運営となっているから」と回答した割合が高くなる傾向にあり、職場のありかたが長時間の所定外労働発生の原因になっていることが見て取れます。
 上司が「労働時間が過重にならないように業務量を調整していると思う」、「仕事の進め方について明確な指示をしていると思う」、「健康を気遣っていると思う」と回答した労働者割合は、いずれも4割になっていません。また、1 週間の平均実労働時間が長い労働者ほど、上司による時間管理(実際の労働時間の把握、業務量の調整、仕事の進め方についての明確な指示、健康に対する気遣い)が行われていると思う割合が少ない傾向にあります。

 このような中で、労働者の健康はどのような状態になっているでしょうか。
 過去6か月間に長時間労働で体調を崩した経験があるかどうかの質問に、17.0%が「体調を崩した経験がある」と回答しています。1週間の平均実労働時間が「50時間以上60時間未満(1か月の所定外労働が40時間以上80時間未満)」では26.5%、「60時間以上(1か月の所定外労働が80時間以上)」では33.5%が、体調を崩したことがあると回答しています。
 厚労省は2006年3月に「過重労働による健康障害防止のための総合対策」を策定し、具体的には1か月100時間、2~6か月平均では月80時間、長期間では月平均45時間以上の時間外労働は健康障害のリスクが高い、時間が長くなるほどリスクが高くなるということを踏まえ、適切な就業上の措置を総合的に講じることを提案しています。
 厚労省の総合対策は、現在あまり認識されていませんが徹底が必要なことが浮き彫りになっています。
 労働時間の問題は、まだ大丈夫ではなくて、もう危ないの捉え方が必要です。

 長時間労働は労働者の健康にとって深刻な問題です。
 しかし、新たに出された「労災認定基準」でも、3人に1人が体調を崩している1か月の所定外労働が80時間だけでは労災認定になりません。
 「労災認定基準」は実態にあっていません。厳しすぎます。

 長時間労働問題の根本的解決は、「労災認定基準」を緩和するということではなく、強いている理由が明らかになっているのでその解消から始めなければなりません。 
 労働者と労働組合は実労働時間に対してきちんと賃金を支払え、サービス残業は違法だという主張をします。
 しかし労働者の健康実態を見たならば、残業問題は、サービス残業解消ではなく、残業を減少させる方向での取り組みが必要です。
 アンケートの結果はありますが、連合の方針は見えません。  


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問題の本質に迫った議論を
2012/01/19(Thu)
1月19日(木)

 広島刑務所からの脱獄事件は市民を恐怖に追いやりました。逮捕されてほっとしました。
 事件に関連して、受刑者が増えている、刑務官が不足していることが報道されました。
 だとしたら、なぜ受刑者が増えているのかを、もう少し論議してもいいのではないでしょうか。
 昨今の報道を見ていると、労働者を含めて生活苦を原因にした事件が増えています。
 以前、日比谷派遣村の「村民」は、ちょっと前まで自分たちの近くにいた人たちだったと書きましたが、受刑者の多くもそうです。経済犯などを含めて刑務所は社会状況を映す鏡です。

 数年前、秋葉原で派遣労働者が歩行者を殺害する事件が発生しました。
 事件は、個人が起こした問題ではなく、派遣労働者が置かれている状況を抜きにしては語れない問題でした。
 会社が製造する商品には会社の名前が商品名につきます。たとえば「トヨタのカローラ」という風に。そしてトヨタの社員は「カローラを製造しているトヨタの社員」です。
 しかし実際に商品を製造している派遣労働者には仕事をしている派遣先の社名がつきません。まさしくトヨタが考えだした「ジャスト・イン・タイム」の、必要な時に「取り寄せ」、不要になったら「返品する」部品でしかなく、派遣労働者は商品以下に取り扱われています。
 秋葉原の事件は派遣労働者が事件を起こしたという報道だけで、派遣元も派遣先も明らかにされませんでした。ましてやそこでの労働条件などに関心を示しませんでした。しかしそこに問題の本質がありました。
 世論は派遣労働者の生い立ちを家族の責任と一緒に語り始めました。マスコミは、20歳を過ぎ、離れて暮らしていた子供の行為について親に謝罪させました。取材する側は、実際に親にどれくらい責任があると捉えていたのでしょうか。問題の本質をずらしました。
 秋葉原事件を起こした派遣労働者の行為を肯定するわけではありませんが、社会から、会社から、同僚から排除された者たちが、生きるために逸脱した行為に走ってしまったと思われる事件が多く発生しているように思われます。
 自殺者が減少しない問題にも同じことが言えます。
 個人の問題と捉えては問題は改善されません。

 失念しましたが、終戦直後数年間の「外国人の犯罪件数」の統計資料がありました。
 刑法別の件数をみると、強盗罪、強姦罪はアメリカが1位、窃盗罪、傷害罪は朝鮮籍が1位です。占領国アメリカ国籍者は統治国で「強」の犯罪を繰り返します。強制連行された朝鮮籍の人たちは帰国も出来ずに止まり、生活のために「犯罪」に走らざるを得ませんでした。
 占領国アメリカ国籍者の強盗罪、強姦罪は、沖縄ではまだ続いています。この問題の終局的解決は米軍の撤去しかありません。

 60年末の学生運動が華やかだった頃、逮捕者は増えましたが拘置所と刑務所在監者は多くなかったといいます。学生運動が衰退すると逮捕される学生者は減りましたが在監者が増えました。
 ある学生街で長年店舗経営をしていた店主は、学生運動が華やかだった時は被害も被ったけど経営は順調で生活は楽だった、学生に元気がなくなると経営が苦しくなり始めたと回想していました。経済成長の影響があるのは確かですが、学生運動が華やかだったころは経済成長率と比較すると物価上昇率は緩やかで、学生の社会運動が抑制させていたと捉えられます。
 現在は残念ながら、学生運動にも、労働運動にも社会に影響を及ぼす力がありません。

 犯罪は、なぜ発生するのか。社会状況を抜きにしては語れません。刑罰を重くすることで防げるものではありません。
 刑務所の問題が語られる時、出獄者の再犯率が高いことが問題にされます。しかし経済的理由から犯罪に走ってしまった者が出獄する時の所持金は、新たな生活をスタートさせることができるものではありません。獄外の最低賃金にもはるかに及ばない「賃金」労働を強いられています。出獄後の備えができません。悪循環を断ち切らなければなりません。

 もう1つ広島刑務所事件に関連して、住宅の近くに刑務所があるのは恐怖だとでも言いたそうな報道が行われました。刑務所が住民の生活区域にあってはいけないのでしょうか。
 刑務所とは何なのでしょうか。更生施設(どのように更生させるのかの問題がありますが)という発想が完全に欠落しています。隔離施設になっています。だからなおさら怖がられ、嫌がるのです。
 住宅は、広島刑務所の周囲に後から建設され続けたのです。

 広島刑務所から海側の方向に広島聾学校があります。(今は名称が変わっています)
 戦前の広島盲聾唖学校は、現在の平塚町、爆心地から東に0.6キロの繁華街のはずれにありました。戦時中、聾学校と盲学校を分けて移転するに際して、聾学校は爆心地から南に2キロ以上離れた、周囲は建物がまばらな広島湾に面したところに建てられました。(現在地)盲学校は北に離れた山の方でした。二校とも、障がいがある児童・生徒、付き添い者にとっては不便で危険だという理由で反対運動が起きましたが強行されました。
 その頃は広島刑務所も周囲に建物はまばらでした。
 ついでに長崎の盲唖学校は、爆心地である浦上刑務所から1キロ離れた、警戒され続けたキリスト教徒が通う浦上天主堂の近くにありました。浦上刑務所や浦上天主堂は市の中心部から離れた所に建設されましたが盲唖学校も同じでした。
 障がい者は隔離の対象でした。このことは、例えば、東京都の聾学校がどのようなところに建てられたかを見てもはっきりします。畑の中や都県の境付近です。

 聴覚障害者は、戦時中に学校での手話使用を禁止されました。禁止したのは鳩山兄弟の祖父の鳩山文相です。理由は、各地方で手話表現が違っていて統一していないということのようですが、国家的思想統一に方言や手話はなじまないと捉えられたようです。他にはスパイ暗号の危険性などが言われています。
 その後、聾唖者が手話を取り戻すまで40年近くを必要とします。
 1960年代末の、学生運動が華やかだった頃、その影響を受けて高校生運動も活発になります。京都聾学校の生徒は、自分の意思を表現するのにどうして自分の身体を使ってはいけないのかと主張・要求します。この要求を教師は真摯に受け止め、学校での手話の使用が始まります。
 しかし障がい者が戦時中に受けた差別とその後も続く差別を考えた時、親は、外見は障がいがあるように見えない聾唖者の子供に手話を使うことを禁止しました。

 聾教育に早くから取り組んだフランスでも、手話を禁止したことがあります。学校で手話を話した生徒の手を罰として後ろに縛ったということもあったようです。
 理由は、聾者は話をしないと結核になる恐れがある(結核の薬を飲むと難聴になることがあったことの逆)、身ぶりの官能的性質は良識に抗う、身ぶりでは抽象的、精神的概念を表現できない、などが理由のようです。

 2000年代になって、聴覚障害者の解雇が増えています。コミュニケーションが取りにくいということのようですが、会社は改善のための工夫や努力をしません。即戦力、実践力を基準にして排除されています。そのような会社は、他の社員にとっても働きやすいはずがありません。
 隔離、排除がある社会は住みやすい社会ではありません。

 ちなみに、何度もテレビに映った広島刑務所の正門は原爆遺跡です。
 戦後は、GHQが原爆に関する報道や出版を検閲するなかで、被爆した正田篠枝さんの歌集は広島刑務所でひそかに印刷・発行されました。 

   
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「もうちょっとだけ おらに力を貸してけねが」
2012/01/16(Mon)
1月16日 (月)

 1995年1月17日午前5時46分、阪神淡路大震災が発生しました。

 2週間後から、現地のボランティアに何度も行きました。住民たちが生活している真近かにいたいという思いから避難所に行きました。(2011年1月15日、1月17日、1月18日の 「活動報告」 参照)

 1周年目を迎える避難所は40人が生活していました。
 責任者の方に挨拶をすませると、以前いた住民たちの情報を教えてくれました。
 「○○さんな、去年暮ここで亡くなった。寒さに体力が持たなかった」 「○○さんな、ここを出ていったけどやることなくて、この前会ったら酒浸りで身体壊していた」。繁華街で飲食店を再開した人は、客が少なくて嘆いているということでした。
 17日、避難所で5時46分を迎えました。陽が昇る直前で薄暗い頃です。
 車の発車する音が一斉に聞こえてきました。5時46分は、停車して黙祷をしていたのでしょうか。
 昼頃になると、かつての住民が入れ替わり顔を出します。
 自閉症だった青年が来ました。彼は震災後、親と一緒に親戚を転々としたがどこも長居が出来なくて避難所に辿り着き、教室の一角で生活をすることになりました。
 夜、焚火を囲んで住人が語り合っているのを教室から出てきて近くで眺めています。混ざりません。しかし嫌な素振りではありません。住民が作業をしている時もそうです。
 家族は、仮設住宅の最初の抽選に避難所でただ1世帯当選しました。
 その彼は1年後饒舌でした。
「僕はこの付近に住んでいたわけではないんです。頼んで入れてもらったんです。
 僕は自閉症で、母と2人暮らしで1日中家の中にいました。地震がなかったら今頃もそうだったと思います。ここに来て、みんなの姿を見ていて、声をかけられて少しづつ話をするうちに誰とでも話をすることができるようになりました。ここのみんなのおかげです。死ぬまで人とちゃんと話ができると思っていませんでした。
 地震は、僕にとっては禍だけでなく福をもたらしました。」
 震災直後の避難所は、人びとから見えない壁を取り払い、お互いが心配し合っておせっかいを焼きました。「震災パラダイス」 と呼ばれます。
 このような人間関係が彼をも招きいれたのです。
 神戸では引きこもりや自閉症の人が回復したという話を多く聞きます。

 2周年目を迎えた神戸に行きました。
 あちこちで追悼集会が開催されています。夜通し市内を歩きまわりました。
 昼間、三の宮から鷹取まで山寄りの道路を歩きました。道路の拡張工事が行われています。道路沿いには建物が建ち始めています。しかし一歩奥に入ると空き地です。小さなお地蔵さんがあちこちに建っています。気のせいでしょうか、焦げたにおいが残っていました。
 鷹取から三宮まで海寄りの道路を歩きました。復興が順調に進んでいるように見受けられました。人出もそれなりにあります。年末にテレビに映し出された光のペーブメントは豪華でした。
 山側と海側を比べると、行政の復興報告に嘘があると思われました。力がないところは取り残されています。ギャップが埋まりません。
 この後神戸に行くことを止めました。行きたくなくなりました。出社拒否症のような感覚です。

 しかしここで神戸と縁を切ったら、ボランティアを追い出した神戸市長の思うつぼです。何ができるか。
 2週間後に行った避難所は、公然とアルコールを飲む人はいませんでした。しかし1つの教室だけワンカップを飲んでいる人がいました。聴覚に障がいがある人だといいます。地震の恐怖は健常者には想像がつかないものだったと思われます。教室内にもこれまでお付き合いのあった人はいません。手話ができる人もいません。コミュニケーションがうまくとれなかったようです。アルコールはストレスを発散させるものでした。
 街を歩いていると 「手話ができます」 と書いたゼッケンを着けている人たちを見かけました。少し安心しました。
 しばらく経ってから東京で開催された震災報告集会で、手話ボランティアの中には忙しすぎて頸肩腕症候群になり治療中の人がいるという報告がありました。治療は、労災にはならないので自費です。
 この話を聞いて、いつか役に立つと思い、手話の勉強を始めました。しかし○○からの手習いはなかなか上達しません。それでも1週間に1回の夜の授業を6年間続けました。

 昨年の東日本大震災の後に、13年ぶりに神戸に行く機会がありました。
 静かな、きれいな街でした。震災の傷跡を残すものは見当たりません。

 しかし記憶は風化していません。
 東日本大震災の後、神戸ワーカーズユニオンの黒崎さんと木村さんたちは車で被災地の労働組合を訪問してまわりました。
 9月に熊本で開催された全国コミュニティーユニオン交流集会で、兵庫県からの参加者は阪神淡路大震災の時に神戸の避難所から生まれた歌 「しあわせ運べるように」 を東北バージョンで歌いました。

 6月に、神戸市で活動している神戸定住外国人支援センターが南三陸町で炊き出しをするのを、仲間から誘われて手伝いました。首都圏での材料の調達と、現地までの道案内と東北弁の “通訳” の役割です。
 東京からは、活動開始前に海に向かって黙祷と献花をしようと花束を持参しました。
 神戸から運ばれてきた支援物資の品数と量はすごいものでした。○○のために△△、□□の時に△△というように目配り、気配りが行き届いたものでした。被災者の気持ちが理解できるからです。

 阪神淡路大震災の直後、「やめられない止まらない○○」 の菓子メーカーは大量に避難所に商品を届けました。避難所がテレビに映し出されるとその段ボールが映りました。
 広島に本社がある 「○○のポテトチップス」 では、社員が被災地に商品を届けようと車への荷積みを終えた時、社長からストップがかかりました。商品名が印刷してある段ボールでは売名行為になるので無地に入れ直すようにという指示でした。
 東日本大震災の直後、気仙沼市の避難所に、「S○○ハウス」 は社名が入った車で、社員が会社のユニフォームを着てペットボトルの水を届けるところがテレビに映りました。住民は助かりました。しかし 「もう営業活動を始めるのか」 という思いに駆られました。「S○○ハウス」 にはデリカシーがありません。
 宮城県下の仮設住宅建設は 「S○○ハウス」 のシェアが大きく締めました。(8月23日の 「活動報告」 参照) しかし今も暖房設備などが問題になっていますが、最初から欠陥とわかっていたものでした。宮城県はハウス業界に二重に利益をもたらしました。

 阪神淡路大震災の避難所としてテレビに映し出された教室いっぱいに 「はつゆめ」 の書初めが張られていました。
 東日本大震災の避難所となった体育館の演壇には 「卒業」 の横断幕が掲げてありました。
 被災地・被災者がそこから 「卒業」 するのにはこの後どれくらいの年月がかかるかわかりません。まだまだ支援が必要です。

 河北新報社は復興支援企画として 「ありがとう」 の詩を募集しました。
 応募作の中から最優秀作品の一遍に選ばれた一関市の高橋悦郎さん (62歳) の作品です。毎日支援に向かう多くの人たちのことを書いたといいます。

    ありがとがす

            高橋悦郎

   だらだらの汗 日焼けした顔
   泥まみれの作業服
   おめえ様とすれちがう時
   おらは目頭が熱くなるちゃ
   宿舎にもどっていくおめえさまの背中に向かい
   おれは心の中で最敬礼するのしゃ
   おめえ様は仕事だからと実に恰好いい
   おめえ様にも緑豊かな古里があり
   心やさしい家族が待っているべ
   ほんでも もうちょっとだけ
   おらに力を貸してけねが
   おらも精一杯努力すっから
   必ず夜の次には朝がきて
   泣いたあとには笑うときがくるちゃ
   この前テレビでどこかのばあちゃんが
   ありがとがすと何回も頭を下げていたのしゃ
   おらも同じだ
   ありがとがす ありがとがす ありがとがす
   おらも精一杯努力すっから
   ありがとがす

 方言の味は文字からだけでは伝わりませんが、朗読だったら 「ありがとがす」 の思いはもっと増します。 


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