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『メンタルヘルスの労働相談』を出版
2011/08/26(Fri)
8月26日(金)

 メンタルヘルス・ケア研究会は、『メンタルヘルスの労働相談』を7月末に出版し、すでに書店にも並んでいます。おそらくメンタルヘルス・ケアの問題について労働者・労働組合の側から出版された最初のものです。
 手にした方から感想も寄せられています。9月20日(火)6時半から、務所で出版パンパーティーを開催します。

 「あとがき」に出版に至る経過について触れていますが補足します。
 2003年頃から精神疾患に罹患している労働者の相談が急増しました。そのことに気付いた時、周囲の者たちと何らかの対策を取らなければならないという結論になり、手探りの中で始めたのがメンタルヘルス・ケア研究会です。そこでは、当該の心象、要望を聞いたり、医師の講演会の開催、関連する本・資料の検討などを続けてきました。その中ではっきりしてきたことは、これまで労働者の側に立ってこの問題を取り上げた組織はなかったということでした。
 しかしまさに問題は労働現場で、業務遂行上で発生しています。だとしたら医療機関などに解決をゆだねるのではなく、労働者の職場環境の問題、労働組合の取り組むべきかだいであるはずです。その立場で研究会を続けてきました。
 研究会の参加者は多くありません。しかし少数でも続けることが必要です。厚労省から通達等がでたり、法改正があります。社会的変動にも影響を受けます。それらに対応することが必要です。これまでに70数回開催してきました。

 精神疾患に罹患している労働者の労働相談は正直大変です。
 2人一組で相談を受けることを決めていても、いつの間にか隣の相談員がいなくなっていることがしょっちゅうありました。相談員は相談内容の得手不得手があります。不得手と思う人を強制できません。体調不良を招く危険性もあります。
 相談者の中には医者から「あなたの病気は医者だけでは治らないから、こだわっている労働問題については労働組合に相談した方がいいです」とアドバイスを受けて訪れる例もたくさんあります。そうするとユニオンと医師は相談者のために連携でき、いい解決に向かうことができます。
 心理カウンセラーやコンサルタントから対応方法を相談されたこともありました。
 正直、大手企業の人事課や総務部からもありました。講演依頼もありました。
 労も使も苦闘している課題です。

 一昨年のコミュニティ・ユニオン全国交流会の分科会資料として「いじめ相談マニュアル」を作成しました。コンパクトにするつもりがなかなかうまくいきませんでした。いっそのことちゃんとしたものを作成してみようと挑戦したら、A4版で100ページになってしまいました。『労働者のための メンタルヘルス・ケア相談マニュアル』のタイトルにして作成しました。
 それを昨年3月に、取材に来た新聞記者に渡したら紹介記事を載せてくれました。しかも最初は小さな記事の予定だったのが、デスクからもっと大きな記事にしろと指示されたということでかなりの大きなものになりました。記事は、内容紹介とともに「労働組合関係者だけでなく使用者にも読んでほしいと」書いてくれました。
 そうすると使用者からも入手希望の電話が相次ぎ、最終的に650部作成しました。記事を載せてくれた新聞社の人事部からも5部の要請がありました。行政の労働相談機関や図書館、社労士などからもありました。
 しかし労働組合からの要請はそう多くありませんでした。

 交流会などを開いても労働組合や相談員は、うまくいった相談事例の報告はしますがそうでなかったのは隠します。しかしうまくいくかどうかは、彼我の力関係、問題の困難さ、などで違います。使用者の中には体調不良に陥った労働者をなるべく早く社外に追い出そうといい退職条件を提示してくることがあります。しかしそれを受け入れることがいい解決と言えるかどうかは別です。
 逆に、問題を深刻にとらえ返して職場環境改善に向かおうとして検討している使用者に対しては拙速な解決は止めた方がいいと思うこともあります。
 しかしいずれにしても相談者である当該の意思は尊重されなければなりません。
 相談者は体調不良に陥ると、ややもすると使用者に“仇討ち”的な、無理な要求を出したりすることがあります。“仇討ち”は解決ではありません。
 相談者は、自分が思うような解決に向かわないとなると相談員に批判の矛先を向けてきたり、裁判をしたいという希望を出したりします。裁判は、当該相談者だけでなく使用者も望むことがあります。使用者にとってはそのほうが楽だからです。手続きを進めていけばいつかは終了します。
 しかし労働紛争を安易に訴訟に持ち込むことは、労働組合・労働者としては自分たちの力量不足を認め、労使関係づくりを放棄することにつながりかねません。ましてや労働者の体調不良問題を司法の判断にゆだねるということは労働組合としては逃げです。労働組合はもっと困難に対応し、苦闘して力量を付けるべきです。

 精神疾患に罹患している労働者を生み出す職場の環境改善は労使双方の責務と位置付けた取り組みが必要ではないでしょうか。労使関係を関係法律の解釈とするのは双方の感性が干からびているという証拠です。問題の解決に向けて一緒に考えていく必要があります。
 労働紛争の最終的解決とは、労働者が生活維持の基盤を固めて再スタートすることができるようになることです。そして安定した生活、人生を送ることです。
 そのために常に意識しておかなければならないのは、金銭的な問題もありますが、心身のこれ以上の悪化を防ぎ、より早期の健康回復をすることです。

 このようなことを考えながら、失敗した事例も公然とさせながら(もちろん個人情報は守りながら)、他の者の事案対応の経験を聞きながら、新たな案件は何とかうまく解決するように、うまく解決しなくても失敗を小さくするようにと知恵を絞りだしてきた経験を集積したのが今回の本です。


   当センター「いじめメンタルヘルス労働者支援センター」ホームページ・ご相談はこちらから
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