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若者世代と雇用の実態
2011/08/02(Tue)
8月2日(火)

 7月に『平成23年版労働経済の分析』(通称『労働経済白書』)が公表されました。

 『白書』作成に携わった石水善夫厚生労働省労働経済調査官から「震災後のいま、求められる雇用・労働政策とは」と題して分析経過や評価についての話を聞く機会がありました。
 “具体的内容は、時代状況と世代ごとに見える働き方”についてです。
 今、若者の雇用や若い世代とその他の世代のコミュニケーションの不成立が言われています。
 「白書」は次のように述べています。
 「バブルが崩壊した時、まだ就職する前だったか、もうすでに仕事に就いていたか、あるいは、それは若手だったのか中堅だったのか、また、高齢期から引退過程にかかっていたのか。職業人生には、それぞれの局面があり、バブルの崩壊後の時代を、どの年齢で迎えたかは、その後の職業生活に払うことのできない重大な痕跡を残した。働く人達は、それぞれの時代状況を背負って生きているのであり、現代の労働問題は世代ごとの問題として立ち現われている。」
 それぞれの世代がどのような青年期、成人期を送ったかで労働者の労働に対する認識や社会に対する意識が違います。
 1960年代後半以前に生まれた世代は、高度成長時代に就職をしています。70年代前半のいわゆる団塊ジュニア世代はバブル景気・景気崩壊の時に就職しまし。しかし就職はまだ困難ではありませんでした。
 その後の70年代前半のいわゆるPost団塊ジュニア世代は就職が困難でした。その背景としては、バブルの崩壊後の、97年の消費税5%への引き上げ、様々な税率の引き上げ、金融機関の相次ぐ破たんなど経済失政状況がありました。経済の失政は特定の世代に大きな“きず”を残しました。
 その後は長期に景気は拡張していきました。しかしそれは生活者のものではありませんでした。労働者にとって景気回復に見合った人件費増・賃金上昇はありませんでした。

 “学歴別就職者数と大学進学率の推移”についてです。
 かつて大学教育は一般教養に力点が置かれ、それに応用力をつけることを目標としていました。しかし90年代から、専門教育は会社任せではなく学校教育で行うようになっていきました。労働者は入社するとすぐに業績主義、成果主義に遭遇します。
 「白書」は次のように述べています。
 「大学進学率は、高度経済成長を通じて大きく上昇したが、1970年第後半から80年代にかけては横ばいないし減少で推移した。第二次ベビーブーム世代が18歳にたっすうる1980年第終わりから1990年代前半以降、大学進学率は再び上昇傾向に入り、1990年の24.6%から2000年には39.7%となり、2010年には50.9%と過去最高の水準となった。」
 72年から94年までの22年間は20%代でした。その後増え続け、大学が大衆化していきます。ただし卒業者数は30万人台を維持しています。98年に大学卒業就職者数が高校卒業就職者数を追い越します。
 「白書」は次のように述べています。
 「バブル崩壊以降、厳しい経済環境のもとで、正規雇用の絞り込みが行われ、1990年代の半ばから2000年代半ばにかけ、特に若年層の雇用情勢は悪化し、非正規雇用率比率は大きく上昇した。若年層の就職環境の厳しさは続いており、新規学卒者の雇用拡大と就職促進は引き続き課題であるが、大学進学率が上昇し、大卒就職者が多数を占める中で社会のニーズとの結びつけにも課題がある。」
 会社が即戦力を要求するなか大学教育の専門化は応用力を欠如させ、労働者の守備範囲を狭めています。

 世代ごとにみた入職初期の資質についてです。
 「入職初期のキャリア形成と世代間コミュニケーションに関する調査」の結果があります。
 「白書」は次のように述べています。
 「仕事をするために組織に所属するという経験を持たない若者にとって、働くことの意味をつかみ取ることは容易ではない。働くことには、所得を得ること、自らの能力を発揮すること、協力しあい社会に参加することなど様々な側面があり、それらがときがたく結びついている。就学年限があがることや組織的な参画の程度が低い非正規雇用ばかりが拡大することは、現代の若者の就業意識の形成にとって新たな障害をもたらしている。」
 調査結果では、「組織が求める役割と果たそうという意識が強い」と「自分の取り組みたい仕事へのこだわりが強い」との関係では、前者が40歳台以上では60%を越え、20歳台では約20%弱です。後者が40歳台以上では約10%、20歳台では30%を越えます。
 「会社内で業務に取り組む中で自らのキャリアが高まると考える」と「自らのキャリア形成や職業生活設計に関心が高い」との関係では、前者が40歳台以上では約50%、20歳台では約10%弱です。後者は40歳台以上では15%、20歳台では30%を越えます。
 「白書」は次のように述べています。
 「社会環境が変化する中で、意識面の世代ギャップも懸念され、組織への所属をめぐる意識は、世代間でギャップが拡大している可能性がある。企業の人事担当者に新人社員の特徴を世代ごとに答えてもらった調査があるが、かつても若者は、組織が求める役割を果たそうとする意識が強かったが、最近では、自分の取り組みたい仕事へのこだわりが強くなっているとみられている。また、若い世代ほど自らのキャリア形成や職業生活設計への関心が高い。」

 “若手人材の育成において重視すること”について「白書」は次のように述べています。
 「若手人材の育成は、多くの企業で喫緊の課題になっている。近年における人事配置の一般的な姿をみると、若手は実務の第一線に配置され、その分野の担い手として訓練するという手法が多用されてきた。こうした方法が広くみられたのは、バブル崩壊後、コスト抑制や即戦力思考が広がったことと強い関連があり、本社の人事担当部門も、それぞれの業務分業の実務者の意向にそって、採用、配置を行う傾向がみられた。」

 さまざまな調査結果から見えてくることは、現在、会社の中に組織を横断的に考えられる者がいなくなりました。コミュニケーション不足ではなく不成立状態にあり、会社は人材育成の機会を奪っています。
 バブル崩壊後の乱暴な雇用形態は20年近くを経てその結果が明らかになりました。そのあり方を捉えなおし、若者だけでなく労働者を大切にする政策に転換しないと会社も社会も崩壊していきます。


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